人工内耳と補聴器の比較から見る人工内耳の凄まじい効果


人工内耳とは、重い聴力の方が装用する聴覚補聴機器です。聴覚補聴機器には、この他、補聴器があり、人工内耳は、補聴器の仲間でもあります。

では、この二つは、どのように異なるのでしょうか。補聴器と比較して、人工内耳とは、どのような機器なのでしょうか。

今回は、人工内耳の基礎から、補聴器との比較をしていきます。

人工内耳の基礎

こちらでは、人工内耳の基礎に関する事を記載していきます。主には、

  • 人工内耳の仕組み
  • 耳の仕組み

この二つになります。

人工内耳の仕組み

人工内耳は、通常の聞こえの補い方とは、異なり、直接音を内耳と呼ばれる器官に送ります。内耳とは、耳の中を通ってきた音を電気信号に変換して脳に送る働きがある器官です。脳は、音をそのまま(直接)理解する事ができないため、内耳で電気信号にし、その信号を認識する事で、音を理解します。この役割を代行したのが、人工”内耳”になります。

人工内耳3

※画像は人工内耳メーカーコクレア社より引用

耳にかけているマイクに音が入ると②のコイルに音が送られます。その後、頭の中にあるインプラントを経由して、蝸牛(かぎゅう、内耳の一部)に音が送られます。このような仕組みで、音を理解することができます。

一般の人の聞こえの経路

人工内耳を理解するには、一般の人がどのように音を理解しているのか……を知るとより理解しやすくなります。

耳の断面図。耳の中には、様々な部位がある

耳の断面図。耳の中には、様々な部位がある。

上記にあるのが耳の断面図です。一般的に私達が耳と言っている部分が耳介(じかい)と呼ばれる部分です。そして、耳の穴が外耳道(がいじどう)と呼ばれています。耳介は音を集める役割をしており、集めた音を外耳道に送ります。そして、鼓膜で音をキャッチし、さらに音を大きくして蝸牛に音を送り込みます。その後、蝸牛の中にある有毛細胞という音を感じ取る神経が送られてきた音をキャッチし、有毛細胞と繋がっている聴神経に音の情報を伝えます。聴神経は、その情報を脳に伝える働きがあります。

一般的な耳の聞こえは、様々なところを通って、耳で感じた音を脳に送ります。そして、脳に送る際、蝸牛で音を電気信号に変えて(厳密には、有毛細胞が蝸牛内に送られた音を電気信号に変えて)、脳に送ります。

人工内耳は、内耳の役割を代替する事

この耳の仕組みを利用したのが、人工内耳です。有毛細胞が音を感じて、電気信号に変換し、脳に送っているのなら、その役割を機械が補えば良いのでは?と思いつき、本当にそれを実現させてしまいました。人工内耳は、直接蝸牛内にある聴神経を刺激し、音情報を脳に伝える事で聞こえの改善をさせる事に成功しました。

難聴の人の耳は、有毛細胞が損傷している、あるいは無くなってしまっている特徴があり、これにより、音が聞きにくくなっているのではないか……と言われています。そのため、補聴器で音を大きくしても残存している有毛細胞のみを刺激する事になり、うまく音が脳に伝えられないという問題がありました。しかし、人工内耳であれば、この問題を改善しやすく、現に重度難聴の方は、補聴器以上の聞こえを得られている方が大半です。

人工内耳は、内耳の役割を代替する機械です。これは、耳の仕組みをうまく利用した方法で補っています。人工内耳は、仕組みを知ると知るほど、本当にすごい技術だと思います。

人工内耳の適合条件

人工内耳は、お察しの通り、耳の手術が必要です。そのため、人工内耳を行うには、ある一定の条件が必要になります。

II.医学的条件

手術年齢
A)適応年齢は原則1歳以上(体重8kg以上)とする。上記適応条件を満たした上で、症例によって適切な手術時期を決定する。
B)言語習得期以後の失聴例では、補聴器の効果が十分でない高度難聴であることが確認された後には、獲得した言語を保持し失わないために早期に人工内耳を検討することが望ましい。

聴力、補聴効果と療育
A)各種の聴力検査の上、以下のいずれかに該当する場合。
1、裸耳での聴力検査で平均聴力レベルが90 dB以上
2、上記の条件が確認できない場合、6カ月以上の最適な補聴器装用を行った上で、装用下の平均聴力レベルが45dBよりも改善しない場合
3、上記の条件が確認できない場合、6カ月以上の最適な補聴器装用を行った上で、装用下の最高語音明瞭度が50%未満の場合。
B)音声を用いてさまざまな学習を行う小児に対する補聴の基本は両耳聴であり、両耳聴の実現のために人工内耳の両耳装用が有用な場合にはこれを否定しない

日本耳鼻咽喉科学会乳幼児委員会 小児人工内耳適応基準(2014)より引用

太文字は私の方で記載しました。重要なのは、この三点です。早い話しが、聴力が重くて、補聴器でも効果が著しい場合に適合します。ただし、手術するので適応年齢は、1歳以上が条件となります。

人工内耳のメリット、デメリット

では、人工内耳と補聴器を比較したメリット、デメリットに関して、記載していきます。

人工内耳のメリット

こちらでは、人工内耳のメリットは

  • 聞こえの良さ
  • メリットの大きさ

この二つがあります。

人工内耳のメリットは聞こえの良さ

人工内耳のメリットは、何と言っても聞こえの良さです。音そのものが補聴器より、聞こえやすくなります。上記の人工内耳の説明には抜けてしまいましたが、人工内耳の場合、音が的確に伝わりやすくなります。

有毛細胞が損傷している状態では、いくら音を大きくしてもキャッチできる部分が損傷しているため、効果は出にくい傾向があります。しかし、人工内耳は、外にあるマイクから入力された音を直接内耳に送って聴神経に伝えられるため、音を伝えやすくなります。

これにより、聞こえが良くなるケースが大半です。

メリットの大きさ

個人的に大きなメリットとして感じているのは、メリットの大きさにあります。人工内耳を装用した子ども達に会う機会があるのですが、その効果の大きさに驚く事が多くあります。

人工内耳を装用した子ども達の中には、しっかり言葉を話せるようになっている子がおり、いままでではかなり難しい事を平気でやってしまっている子もいます。言葉をしっかり話すには、適切に音が聞こえている必要があります。人は、音を聞いてその音を口で表現して言葉を覚えていきます。そのため、しっかりと聞き取れないと言葉を覚える事ができません。

耳が聞こえにくくなると適切に音を捉えられないため、言葉が崩れやすくなります。特に難聴の程度が重いと重いほど、聞こえづらくなるため、結果的にうまく話しにくくなります。しかし、人工内耳を装用している子ども達は、それを感じさせないくらいにすごい子もいます。

この点を考えてみますと人工内耳で、しっかりと音が入っている事がわかりますし、それにより、言葉を話しやすくなっている事もわかります。メリットの大きさは、計り知れません。

人工内耳のデメリット

人工内耳のデメリットとしては

  • 金額が高い
  • 手術をする必要がある
  • 行動制限がかかる

この三点があります。

金額が高い

人工内耳は、金額が高くなりがちです。一台目は、保険が効きますので安くなりますが、二台目は効かなくなります。一台か二台かで金額が異なります。

1台であれば、健康保険、高額医療費用制度、心身障害者(児)医療費の助成により、結果として、1〜10万くらいになります。しかし、二台目になると約400万(本体価格、入院費、手術代込)くらいかかるそうです。厳密には、一台目もこのくらいかかっていますが、保険のおかげで、1〜10万くらいに抑えられています。

手術をする必要がある

人工内耳の一番のデメリットは、この部分です。耳の中に機器を入れなければなりませんので、手術をする必要があります。効果は非常にあるものの、悩みのタネが尽きない部分です。

とはいえ、現在は、手術をする子が非常に増えてきました。それには

  • 効果がある事が実証された事
  • 実際に人工内耳を装用している児童の補聴効果が凄まじい事

これらにより、増えてきています。

人工内耳のすごいところは、今まで難しかった事ができるようになる凄さにあります。話せるようになったり、聞こえるようになると、行動範囲も広がりますし、できる事も増えます。結果、その子の可能性が大きく広がる事になります。

そのような可能性を人工内耳は秘めています。

行動制限がかかる

頭の中に機械を入れますので、ぶつける事は厳禁です。また、MRIの時は、インプラント側の磁石を外す必要がありますので、頭を切開しなければなりません。

他、海は水圧の関係で25m以上深く潜らない事、サッカーなど体当たり系のスポーツはしない事です。基本的には、耳の中にあるインプラントを壊さないようにするための施策が必要です。

装用者の声

私は、補聴器屋に勤めていたこともあり、実際に人工内耳を装用している方々へお話を伺ったことがあります。聞こえに関しては、補聴器より聞きやすいそうです。今まで聞こえなかった小さな音も聞こえるようになり、騒がしく感じる事もあるようですが、それ以上に補聴器より聞きやすい事が嬉しいと語ってくれました。

しかし、初めは非常に聞きづらく、ロボットが話しているように聞こえると言っていました。何度も、音の聞こえ方を変えて、耳に馴染ませていく過程を経て聞こえるようになったようです。

人工内耳の場合、一般的には、馴染むまで半年かかるといわれています。お話を聞いた方も半年かかったようでした。手術や機械を頭の中に埋め込む事に関して、怖い感覚がありますが、それ以上に聞こえる事が何よりも嬉しかったと話してくださいました。

話しができれば、コミュニケーションができます。補聴器以上にコミュニケーションがしやすくなったのなら、その方の生活が良い方へ変わったのは安易に想像できます。もちろん人工内耳を入れれば全ての音が聞こえ、言葉を理解できるという事はありません。

しかし、より聞こえるようになれば、コミュニケーションしやすくなる可能性はあります。少しでもお話しできる機会が増えたり、誤解を受ける機会が減れば、それは人工内耳の効果です。

人口内耳は、耳を聞こえやすくするために存在しているのではなく、その方の生活を支えるために存在しています。装用者のお話を聞くと、この事を一番に実感させられました。

これらの内容より人工内耳を考える

効果はあるもののどうしても手術という壁が立ちふさがります。しかし、効果は絶大ですので、手話がメインでない方には、お勧めだと考えています。

音を聞き取る能力は、補聴器以上の効果がありますので、その実力はお墨付きです。ただし、中には効果が見込まれにくいものもあるようですので、この部分は医師との相談のうえで、どのようにしたら良いかの検討をお勧めします。

会話をメインでやっていきたい方に関しては、人工内耳がお勧めです。

追記:信州大学の動画

人工内耳に関しては、こちらの動画でもわかりやすく紹介されています。人工内耳の基礎、難聴の基礎、大人、子ども、何でもあります。大人の方は、初めのほうにあり、お子さんの場合は、11分11秒からとなります。

……文章より、動画の方がわかりやすいですね……。二重にはなりますが、より理解が深まれば幸いです。

あとがき

人工内耳に関する事を記載してみました。人工内耳の仕組み、効果、それらを知ることで、どんな機器なのかが理解できれば幸いです。

  • 会話をメインに考えている
  • 医師より適性があると言われた

このような状況であれば、人工内耳はお勧めです。

 

人工内耳をお考えの方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:人工内耳を考えの方、必見。早めに装用する事の重要性

リンク:人工内耳の現状をまるっと理解できる凄い論文発見!【解説付】