2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

難聴児を取り巻く環境の変化による学校の変化

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難聴の子が通う学校には、一般学校に通いつつ、聴覚の補充指導は通級指導教室でうける形式と全ての事を一つの学校で行うろう学校の二つがあります。

時代の変化、医療の進歩、補聴機器の進化により、「取り巻く環境が変わってきたなぁ」と思う事があります。

特に、新生児聴覚スクリーニング検査と人工内耳による進歩は、目覚ましく、これにより多くの難聴が発見されたり、より重い難聴の子でも、お話ができる様になってきました。

今回は、これらの事が、二つの学校にどう影響するのかを考えていきます。

なおこれらをより理解したい場合は、こちらのエントリーもご覧下さい。

リンク:新生児聴覚スクリーニング検査と難聴早期発見の重要性

リンク:人工内耳と補聴器の比較、それから見る人工内耳の効果

リンク:難聴の子が通う通級指導教室とは?

難聴者の質の変化

最近感じるものは、人工内耳による、手術症例が増えてきた事です。これにより、人工内耳を装用する方が増えてきました。お子さんの場合、早めに人工内耳を装用した方が良いという結果や、それらの有効性についての論文も出ており、勢いに拍車をかけています。

人工内耳自体は、それほど新しい技術ではありません。人工内耳の手術を行われる様になってもう20年以上も経過していますし、日本耳鼻咽喉科学会で、初めて人工内耳適応基準が作られたのは、1998年の事です。

技術が新しい内は、それに関する情報が少なく、躊躇しがちになります。しかし、その技術が良いと理解されれば、一気に広まっていきます。人工内耳もこのような地道な活動により、少しずつ世の中に認められていきました。

人工内耳は、重い難聴の子に対し、非常に高い補聴効果を持っています。それは、その子の人生を大きく変えてしまう程、大きなものです。

では、人工内耳が変えたのは、それだけなのでしょうか。個人的には、人が変わった事により、学校の状況も変化したと思っています。

通級指導教室の変化

現在、通級指導教室とろう学校では、障害レベルの低い方が通級指導教室に通い、障害レベルの高い方がろう学校に通うようになりました。

今の制度では、就学指導委員会と呼ばれる就学先を決める取り組みにより、行く学校を決めています。保護者の意見に加え、特別支援教育に関わるスタッフや教育委員会のスタッフなどの意見により、その子の状況を見た上で、どこが最適に学習できるか決定します。場所により、重度障害のお子さんを受け入れる一般学校もありますが、数としては少なく、重度障害の場合ほとんどがろう学校になります。

昔は、聴力レベルで考えられてきました。聴力が重いと重い程、補聴器の効果も薄くなるため、音ではなく視覚に頼らざるを得ません。そうなれば、コミュニケーション方法が通常の方と異なる手話を用います。それであれば、その子が学習しやすい環境、生活しやすい環境は、そのように配慮されたろう学校となります。

しかし、人工内耳の登場により、聴力レベル重い=障害レベルが重いとは、限らなくなってきました。人工内耳を装用したお子さんは、言葉もキレイに発音していたり、お話ししていても、何も違和感を感じさせない子もいます。もちろん、聞きにくい場所はありますし、個人差もあります。

本当の意味で障害レベルが軽くなったとは言いませんが、従来の重度難聴のイメージとは、異なってきました。従来の重度難聴の方では、非常に難しかったことが、人工内耳により、可能になりつつあります。それは、難聴者の質が変化することになり、ゆくゆくは、学校の選択基準、通う場所にも影響してきます。

現在の通級指導教室は、人工内耳を装用した重度難聴の子も通っているケースが多くなっています。これは、医療の進歩、機器の進歩によるものです。人工内耳を装用し、障害レベルを低くできたからこそ、「一般の学校でも学習できるだろう」「音によるコミュニケーションもできるだろう」と判断され、一般学校に行く子も増えてきました。

物事の進化は、難聴者の質を変化させ、やがては、難聴者を取り巻く環境の変化を引き起こすでしょう。

もう一つの変化

通級指導教室に通うケースとしては、新生児聴覚スクリーニング検査、あるいは、聴力検査の精密性が上がったことにより、難聴を発見できた子ども達も含まれます。

スクリーニング検査の普及率、小さな子でも聴力が分かることにより、より軽度の難聴も発見できるようになってきました。昔は、軽度の難聴は発見できず、大人になって気付いた方や、何となく聞こえが悪いような感じがするけど気のせいだろう、のような感じが多くありました。

昔から、発見されてきたのは、聞こえが明らかに重い方や中等度の難聴のケースです。聴力レベルが重くなれば、重くなるほど、周囲と異なる反応をしますので、周囲の方から発見されやすくなります。逆の解釈をすると軽度の方は、周囲の方から発見されにくく、少し変わった子、集中力がある子などと思われるケースがあります。聞こえというのは、自分自身では判断できないため、このように思われる事が多かったと考えられます。

しかし、現在は、各検査により、聞こえの正常値とその子が聞こえている値を比べる事で、聞こえが正常なのか、一般的な数値より低下しているかが分かるようになりました。これにより、難聴の子に必要な補助ができたり、情報を提供する事が可能になりました。

これらを可能にしたのは、機器の進化とそれらの普及率です。まだまだ普及率は海外諸国と比較すると低いですが、実施する事により、多くの難聴の子が発見されてきています。

技術の進歩により、発見された子ども達も通級指導教室に通っています。

増える通級指導教室に通う子ども

現在、通級指導教室に通う子ども達が増えてきています。より軽度の難聴が発見されるようになった事と重度難聴の子も一般学校に通う事ができる様になった、これらの理由からです。

個人的には、今後さらに増えてくるのではないかと考えています。

加速する人工内耳の装用と新生児聴覚スクリーニング検査の普及率が高くなれば、安易に想像できます。

子どもの数自体が少なくなっていますので、爆発的に増えることはないにしても、徐々に増えてくるのではないか、と考えています。

ろう学校の意味も変わる?

ろう学校の存在は、どう変わるのでしょうか。

ろう学校は、難聴の子を教育する場として見られがちですが、それ以外にも通級指導教室の先生方に指導をしたり、このような特別支援に興味のある方を招いて、勉強会をしたりしているところもあります。また、これらを保護者の方へ行っているケースもあります。

このような場所で勤めている教員の役割やろう学校そのものが時代によって変わるのではないかとも考えています。

上記では、通級指導教室に通う子ども達が増えてくる事を記載しました。これは裏を返せば、ろう学校に通う子が少なくなってくることも意味します。医療が進歩すればするほど、障害レベルが高い子はいなくなります。

ろう学校のメリットとしては、一般学校より難聴に配慮されたシステムや設備があったり、専門性の高い教員が在中している事がメリットです。その他、同じ境遇の子と会いやすい事もメリットでしょう。

しかし、これらは、補聴機器が進化してくる事により、少しずつメリットにならなくなってきます。難聴で生まれてきたとしても、その難聴を補聴機器で補えるようになれば、障害レベルは、機器の進化に応じて低くなってきます。もちろん、難聴の子に関する教育的知識、技術はありますので、完全になくなるとは考えていません。しかし、少なからず、規模が縮小したり、別の形で運営することは考えられます。

教員に関しては、生徒を教えるだけでなく、どのような指導方法が良いか通級指導教室の先生が相談する先生になったり、通級指導教室に通う生徒の環境改善のために働きかけをしたりするようなことが増えてくるかもしれません。

また、通級指導教室に行く子ども達が増え、ろう学校に行く子が減れば、ろう学校、通級指導教室という区別はなくなり、聴覚学習支援の枠組みの一つになることも考えられます。

今後、教育現場がどのように変化していくのか、楽しみです。

あとがき

個人的に考えたことを記載してみました。

機器の進化、医療の進化により、環境が変われば、それぞれの状況は変わります。それらの進化により、どのように変わるかを考えてみました。

こちらに記載しているのは、あくまでも私の考えですので、今後、どうなるかは誰にもわかりません。

今後どのように適応していくのか、楽しみですね。

 

この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:Webの発達により変わるアクセスルート

リンク:補聴援助システムを購入前に理解したい欠点の改善方法

リンク:耳の聞こえは補聴器+αで考える時代の到来

リンク:意外と知られていない補聴器メンテナンスのメリット

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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