2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

3Dプリンターは補聴器業界をどう変えるだろうか


久々にメーカーズ 〜産業革命が始まる〜 クリス・アンダーソン氏 著作を読みました。2年前の本ですが、色々と考えさせられるものがあります。2年経った今なお、驚く事もあります。

この本は、3Dプリンターについて書かれた本です。3Dプリンターは、どんな事ができるのか、何がすごいのか、それを教えてくれる本です。

今回は、こちらを読んだうえ、補聴器業界について考えていきます。

3Dプリンターとは

3Dプリンターとは、簡単に言えば、物を作り出す機器です。設計図である3Dデータを使用し、様々な日常生活品を作り出す事ができます。一からものを作るタイプから、素材を加工して作るタイプもあります。

一から作る物は、プラスチック樹脂を使い、ものを作っていきます。3Dプリンター用の製作データを読み込ませ、そのデータ通りのものを作ってくれます。素材を加工して作るタイプは、鉄の塊をカットして作るようなタイプです。こちらも製作データを読み込み作っていきます。

3Dプリンターの凄いところ

それは、データさえあれば、誰でも作れてしまう事です。現にプリンターは、データさえあれば、誰でも気軽に印刷できますね。これの物版です。

データは、加工しやすく、気軽にサイズを変更したり、気になるところを修正する事ができます。

気軽に作れて、設計まで変更できる。この点が非常に優れています。

補聴器の市場は、どう変わるだろう

では、これらの3Dプリンターは、どう補聴器市場に影響するのでしょうか。

個人的には、

  • 補聴器を作れる事
  • イヤモールドを作れる事
  • アクセサリーが作れる事

この三点の変化が起こると考えています。

補聴器を作る事

3Dプリンターは、様々なものを作り出す事ができます。これは、補聴器もできるのではないかと考えられます。現在の技術では、難しくとも3Dプリンターの技術が上がれば、不可能とは言えません。

いま現在も作ろうと思えば、個人で作れます。現在は、メーカー企業であっても製品を一から十まで作っているところは少数です。アップルですら、台湾の鴻海(ホンハイ)と呼ばれる精密機器会社に製造を依頼しています。

補聴器に必要なイヤホンやマイクなどは、イヤホンメーカーが使用しているイヤホンで代用したり、マイクは、カラオケマイクに使用しているマイクで応用して作る……と考えれば、作れる事が思い浮かぶと思います。※代用の品は単なる例えです。

これらの部品を作っている工場と相談して、ものを作る事も可能でしょう。

3Dプリンターはプリント基板も作れるようになっています。将来は、3Dプリンターで作るのが難しい、イヤホン、マイク、アンプといった機器のみ外注して、作れるものは、3Dプリンターで作ってしまう。そんな事もできるかもしれません。

これができるようになれば、個人でも補聴器が作れるかもしれません。 そうなれば、様々な補聴器が製造されそうです。自分自身のために補聴器を製造しても良いですね。

イヤモールドを作る事

一番現実味が高いのがこちらです。

イヤモールドがその場で、すぐに作れる様になります。3Dスキャン機器を使い、耳の中をスキャンし、そのデータを加工してイヤモールドを作ります。

難聴で生まれてきた子は、早急に補聴する事が重要です。その場で、すぐに作れるという事は、このような子ども達にとって理想な環境となります。また、赤ちゃんだとイヤモールドが合いにくくなりがちです。その場で作られる様になれば、より適切な補聴をしやすくなるでしょう。

現在では、イヤモールドを製作する場合、7~10日かかります。しかし、その場で作られれば、30分、1時間でできてしまうかもしれません。必要なのは、耳の形状データと材料費だけです。

大幅な時間短縮とコストダウンができます。

病院、補聴器販売店に3Dプリンターがあれば、その日の内に作れる事ができるようになる世界がくるかもしれませんね。

もちろん3Dプリンターが各家庭に1台置かれる時代になれば、壊れたらその場で作る事もできるようになるでしょう。

イヤモールドは、最も現実味が高い部分であり、貢献度も高い部分です。

アクセサリーが作られる

3Dプリンターは、何も補聴器とイヤモールドだけに使えるわけではありません。補聴器そのものに装飾を施すものを作ったり(シール)、補聴器の形状が大きくて外れやすいなら、外れにくい様にする部品を作る事だってできます。

3Dスキャナを使い、補聴器の形状を取り込みます。その後、その形状に沿って作れば不可能ではないでしょう。簡単かどうかはわかりませんが、このような使用方法もできます。

これ以外にも発想によっては、様々なものができるでしょう。

問題はどこだろう

問題は、発展の仕組みです。

メーカーズでは、この流れを加速させた仕組みとして、それらを必要とするコミュニティを作った事があげられていました。オープンソース(無料で使用できるデータの事)が提供される環境では、それを必要とする方々が使用し、改善した物を次々と入手できると記載されています。アメリカの事ではありますが、日本でも同様の事が起こっているところを見た事があります。現にWebアプリの世界では、そのようになっています。APIと呼ばれるオープンソースを使用し、アプリを作っているところもあります。

現在では、補聴器を3Dプリンタで作るコミュニティはありません。しかし、他の3Dプリンターコミュニティが発達してきたときに、補聴器を作るヒントを得られる可能性は、ゼロではありません。

日本では、3Dプリンターの説明会や代理出力を請け負う会社が多く、コミュニティが発足しているイメージがありません。オープンイノベーションではなく、企業が情報を売ること自体、商売にしてしまっています。この部分が今後、どのように変わってくるかがポイントですね。

作れる事は悪い事?

このようなお話が出るたびに「医療機器だから、作れる様にするのは問題」、「全てプロに任せておいた方が良い」、「悪用品が出回ったらどうするのだ」という問題が起こります。

確かにこの部分には、一理あります。補聴器は、医療機器として認定されていますし、音の出力が大きすぎれば耳を痛める事も考えられます。そして、音が良く聞こえるかどうかはわかりません。しかし、補聴器を作ろうと考えている人が、これらを意識しない事がありえるのでしょうか。

言い換えれば、メガネを作ろうと考える人がレンズの度を意識しなかったり、フレーム部分を意識しないで、物作りをしようとするのでしょうか。個人的には、そのように思えません。

メーカーズを読むとより良い製品を目指して物を作っている様子がわかります。今ある多くの似た様な製品ではなく、自分に合った特別な物が欲しいから、製品を作り出します。このような方々が、音について意識しないとは、考えにくいと私は思っています。仮に自分自身で作ろうと考えるとより理解できます。悪い製品を作っても決して満足しないでしょう。

作る手段はより良い製品を作るために存在しています。決して大儲けするために存在しているわけではありません。悪用品が出る可能性は否定できませんが、悪用品が繁栄する事はないでしょう。

個人的に面白そうなのは、個人で作れるようになる事で、補聴器業界がどのように変化するかです。言わずとも補聴器の金額は、未だ高騰し続けています。これだけデフレであるのにかかわらず、補聴器の金額はあがりつつあります。この状況で、個人が気軽に作れるようになったら、どれだけの価格破壊が起こるのでしょうか。

補聴器を販売している人からすると「デジタル補聴器を作るのは無理」と考えているかもしれません。確かにデジタル補聴器であれば、仮に作れたとしても音の調整をするための機器やソフトが必要になります。この考えは一理ありますね。しかし、ユーザーは、デジタルでもアナログでも構わないのではないでしょうか。ユーザーはデジタル補聴器が欲しいのではなく、聞こえる補聴器が欲しいと考えているからです。つまり、聞こえる補聴器であれば、何でも良いのです。

それであれば、選択肢が増える事になります。自分自身で作る場合と市販の補聴器を購入する場合、どちらが自分にとって良いのかを選択できるのは、良い事だと思います。

自分で作ってみて「やっぱり市販の補聴器はすごいな。しっかり作られている」と見直す事も考えられますし「市販の補聴器は、なんであんなに高いんだ?自分で作った物と聞こえが変わらないじゃないか」となるかもしれません。

やってみなければわかりませんが、ユーザーにも作れる環境が整う事で、より正当な市場評価を受けられると考えています。

前者であれば、「高いけれどもしっかりお金を払う価値がある」と認められる事にもなります。その変わり後者であれば、業界そのものの信用は失墜します。

物を作れる環境は、このような情報を得られやすい環境でもあります。それは、ユーザーにとって非常に良い環境となるでしょう。

あとがき

3Dプリンターについて記載してみました。2年前の本とはいえ、やはりまだまだ勉強になる事があります。

補聴器、イヤモールド、どちらともさらに良い環境になります。せめてイヤモールドだけでもそのような環境になると良いですね。現在、イヤモールドを作るのには、早いところでも1週間くらいかかってしまいます。その間、どうしても不自由を感じてしまうのが現状です。仮に、3Dプリンターがあり、耳の中をスキャンしたデータがあれば、その場で作れるようになります。そのようになれば、より便利になることは、間違いないでしょう。ユーザーがより便利になる技術は、受け入れるべきです。

この技術は、確実にこの業界にとって良い技術だと考えています。

 

この内容をご覧になった方は、こちらもお勧めです。

リンク:3Dプリンターが起こす流通革命、より楽になる補聴器使用者

リンク:意外と知られていない補聴器の技術が使われているイヤホン

リンク:リアナ・ウェン氏の動画を見て思う補聴器業界の未来のあり方

リンク:業界が変わらなければ替わるかもしれないという発想


この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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