2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

あなたの仕事は「誰を」幸せにするかを読んで見える病院事情


あなたの仕事は「誰を」幸せにするか 北原 茂実氏 著作 を読んでみました。凄い本ですね。知らなかった事が多くあり、新しい気付きを教えてくれた本です。

社会派ブロガーであるちきりん氏のブログにのっていた事をきっかけに読んでみました。

現在の医療に関する事、医療の現状、変えるための策、どれをとっても非常に良い読み物です。

今回は、こちらの事について記載していきます。

北原 茂実氏とは

北原氏は、医療法人社団KNI理事長を務める人物です。

医療は、株式会社化すべき、国民皆保険は廃止すべき、医療は産業であると一見過激とも思われる発言をされている方でもあります。個人的には、なかなか面白い考えだと思い、本を購入してみました。

本を読んで感じたのは、社会全体を考えて「理想の医療」を捉えている事です。株式会社化も国民皆保険廃止も「理想の医療」のための一部でしかありません。根本的に「医療とは何か」を考え抜き、結論を出しているのが、読んでいてひしひしと伝わってきました。

また、ビジネスについて真剣に考えているところにも共感を持てます。

その中で勉強になったところを抜粋していきます。

現在の医療

日本の医療制度は、ご存知の通り、全ての方が何らかの保険に入っています。一部、この保険制度は、素晴らしい制度だと言われますが、そのような事はないと著者は一蹴。

むしろ著者は、ここに大きな問題があると指摘しています。

日本型の国民皆保険が定める「全国どこでも同一料金」というルール。

これは「全国どこの病院でも、まったく同じレベルの医療を提供している」という建前無くしては成立しないルールです。もっと下世話な言葉でいうなら、日本には名医もヤブ医者もいないのだし、どこの病院にかかってどんな医者から手術を受けようと、成功率に差はない、という話しになります。

では、実際にどうなのか?

医者だって人間ですから執刀医や病院によって医療レベルに差が出るのは当然です。同じ手術を受けるにしても、A病院なら5年後の生存率が80%、B病院なら、60%、C病院なら50%以下、といった現実はどうしたってあります。

問題なのは、こうしたデータが表にでないことです。

国民皆保険のフリーアクセス制が持つ「全国どこの病院でも、まったく同じレベルの医療を提供している」という建前を守るため、日本の医療は、基本的にアウトカム(医療行為の結果・成果)を公表しないし、公表できません。

患者としては、なんら確かなデータを与えられないまま、ギャンブルのように病院を選ぶしかない状況です。風邪やねんざ程度の診療ならともかく、命に関わる大手術でさえ、状況は同じです。

あなたの仕事は「誰を」幸せにするか P48~49 引用

現在の医療は、どこで受けても同一料金です。医療に関しては、診断、治療、処方、検査、全てにおいて国が金額を決めています。私も医療機器販売従事者でしたので、この点は知っていました。1ポイント10円でそれぞれの行為に点数が割り合てられています。この合計点数で治療費が決まります。

上記の文を読んだ時に、衝撃が走りました。確かにどこの病院で受けても同じ点数なら、どの病院で受けても同じサービスが受けられるものと考えてしまいます。

よくよく考えてみればおかしな事です。もし、どこの病院で受けても同じならセカンドオピニオンなんてものも存在しなくなります。

手術の結果に関してもそうです。私は全く考えた事がありませんでした。さらにこの部分に関しては、深く突っ込んだ内容もありました。

そこで最近、週刊誌などで頻繁に「日本の病院100選」といった特集が組まれるようになりました。心臓病の病院ベスト10、大腸がんの病院ベスト10、といったかたちで疾病ごとにランキングされる事もおおくなっています。

しかし、これらのランキングはその病院での手術数を比較しているだけで、成功率や生存率はカウントされていません。数さえこなしていれば成功率にかかわらず「優良」と判断される。しかも、その手術数すら自己申告制です。どれだけ正しいデータなのか、誰にもわかりません。

あなたの仕事は「誰を」幸せにするか P49~50 引用

何と言うか凄い世界です。確かに成功率や生存率がわからなければ、どう判断したら良いかわかりません。国民皆保険は、平等に医療を受けられる制度です。

しかし、その前提は、どこでも同じ医療を受けられる事でした。確かに少し考えれば、理解できたはずなのですが、この矛盾に私には気付きませんでした。

ただ逆に言えば、どこでも同じ料金で受けられるという事は、良い治療を行う病院は、患者が集まる事も意味するはず……。と思ったのですが、建前を守るために情報を出さないのであれば(判断基準がなければ)、ランダム要素が高くなります。上記の例の様に診察数が高かった、たまたま治っただけで判断されていたら、本当の意味で患者は判断できない事になります。

医療を改善するには

現在の医療現場を見たうえでの北原氏の解決方法については、このように述べています。

では、具体的に、医療をどう改革していくのか。

絶対に必要なのは、医療費の増大です。

医療崩壊とは、「医療費の崩壊」なのですから、どうにかして巨額の医療費を捻出していかなければなりません。これは国民の命にも直結する話です。また、医療に流れ込むお金がやせ細ったままでは、国内最大の産業が低賃金・重労働の夢も希望もない産業になってしまいます。

そして、医療をしっかりとした産業に育てていくためにかかせないのが、真の意味での自由化です。

国民皆保険と診療報酬に縛られた現在の医療には、ほとんど自由がありません。医療の「定価」を国がきめているのはもちろん、「できること」よりもはるかに多くの「できないこと」でがんじがらめにされているのが、日本の医療です。

あなたの仕事は「誰を」幸せにするか P65~66 引用

国民皆保険により、医療の定価が決められている以上、自由がありません。ではどうするのでしょうか。

具体的な方法として、次の様に述べています。

私の提言はシンプルです。病院の株式会社化を認め、理事長をCEO(最高経営責任者)にする。名前だけのCEOではなく、ほんとうに経営ができる人間に育ってもらう。そして(患者さんに負担をかけることなく)しっかりと利益を出し、よりよいサービスを提供できるよう、積極的な設備投資ができる体制をつくる。

あなたの仕事は「誰を」幸せにするか P65~66 引用

一見過激に思えますが、私はそのように思えませんでした。

株式会社化を認めてしまえば、市場主義という名の競争が始まります。自分達が提供するサービスがどれほど世に受け入れられ、または受け入れられなくなるのか、全ては市場により決定されます。

しっかりと患者さんを想う医療が進んだり、患者さんにとって居心地のよい空間を作る病院も増えてくるかもしれません。病院側は、どのようなベネフィットを出すかをしっかり考える事になります。

ある病院は、執事つきで快適な病院生活を売りにしたり、ある病院は、治療率、完治率が異常なまでに高いスーパーDr.集団を売りにしたり、またある病院はオーシャンビューが眺められる病院で治療帰りに海で遊べたり……。考えるだけでも多くの事が思いつきます。

また、一部の病院に患者が集まると「どのように経営しているのか」と気になる経営者は多くなります。患者にとって良い方法が広まれば、それを真似た良い病院も増えていきます。やる気の無い病院や患者の事を想わない病院は廃れていく可能性が高くなります。

そのような病院が増えると一番喜ぶのは、患者である私達ではないでしょうか。

このように記載すると治療でも格差が出る事を心配する方がいます。しかし、これらは上限値が増えるだけであり、最低限値を決めておけば良い事になります。

普通の治療を望むか、もっといいものを希望するか、この違いです。最低限の部分さえ確保しておけば、一定の質は保たれたままになるでしょう。

あとがき

医療の事を考えるきっかけになりました。多くの知見を与えてくれた一冊です。

北原氏のビジネスの見解についても非常に勉強になります。

氏はビジネスをこの様に捉えています。

政治以外のどんな手段で、変えていくことができるのか?

社会を変えるのは私たち一人ひとりの市民であり、社会を変えていく手段のことを、「ビジネス」と呼ぶ。それが私の答えです。

あなたの仕事は「誰を」幸せにするか P7 引用

ここは、起業家に通じる返答ですね。世の中を変えていく手段として起業し、ビジネスを展開して、世の中にサービスを普及させていく。そのままと言えます。

また、北原氏の実際のビジネスについて面白い記述が多くあります。多くの起業家は、読んだ方が良いのではないでしょうか。かなりビジネスよりの内容が多いです。ビジネスマン向きというより、起業家向けの内容ですね。

非常に勉強になった一冊でした。


この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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