2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

iPS細胞は、本当に難聴者を幸せにしてくれるのか

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難聴の治療と言えば、iPS細胞です。補聴器や人工内耳では聞こえを補えきれないため、治る可能性が高いiPS細胞に期待がかかっています。

さて、私の方で少しiPS細胞について考えてみました。タイトル通り、本当に難聴者を幸せにしてくれるか……についてです。耳が治れば全ての事が解決するように思いますが、個人的には、少し違った解釈をしています。こちらは、最大限の恩恵を受けられる人と残念ながら受けられない人がいます。そして、難聴というのは、耳だけが関係しているわけではありません。難聴が治っても難聴だった日々は変わりません。ここが変わらないとどのような問題が起こりえるのでしょうか。

今回は、このiPS細胞について考えていきます。

iPS細胞で治るところ治らないところ

こちらでは、仮にiPS細胞で耳が治ると仮定して考えていきます。iPS細胞を使用すれば、耳の聞こえはもちろん、言葉の聞き取りも良くなる。そんな(夢みたいな)技術だと仮定しましょう。

この場合、治るのは、耳の聞こえです。そして治らないのは、それ以外です。この治らないところがポイントになります。難聴になると聞こえが重いと重い程、しっかり話せなかったり、変に話してしまうことがあります。本来人は、聞いた音をそのまま発音して、言葉や意味を覚えていきます。そのため、耳の聞こえにより、発音がある程度決まります。聞こえが重い方は、聞こえにくさに加えて、発音の問題点が浮上します。

個人的に気になるのは、手話を使っている方々です。手話を使っている方々は、そもそも発音をしない(話さない)方がおり、それらの方には、iPS細胞が有効であるとは思えません。というのも耳が聞こえるようになったとしても話せないのであれば、コミュニケーションできないからです。

コミュニケーションするには、聞こえる事と話せる事が必要です。ここは、英語で考えるとよくわかります。言っている英語はわかるけれど、話す事ができなければ、コミュニケーションできませんし、そもそも言っている内容がわからなければ、返答しようがありません。また、言葉は、自然に覚えていくものではなく耳で聞いて脳に記録させる事で覚えていきます。耳で聞いていなければ、そのデータ蓄積ができていませんので、聞こえるようになったとしても理解はできません。英語が聞こえても理解できるのと聞こえるのは異なるように、言葉も聞こえるのと理解できるのは、異なります。

手話の方がiPS細胞を望んでいるのかどうかまではわかりませんので、ここは何とも言えません。iPS細胞とは、言葉を話せる人にしか恩恵がない技術です。難聴の改善は、コミュニケーションで考えていく必要があります。

余談 iPS細胞で気になる事

実は、こちら以外にも気になる事はあります。仮に聞こえたとして本当に望んだ通りに聞こえるかです。どうしても難聴を患っている側から見ると理想を思い浮かべてしまうのですが、本当のところはわからないのが現状です。それは、補聴器を装用する時も同様でしょう。

さて、iPS細胞で気になるのは、今まで聞いている音と難聴が治った時に聞く音はどれだけ違いがあるかです。人の脳は、音を聞いて様々な物や言葉を覚えていきます。海外の方でも日本で赤ちゃんを産めば、その子どもは、日本語ぺらぺらになります。人は生まれつき言葉や音を覚えいる状態で生まれてくるのではなく、現地で生活しながら音や言葉を覚えていきます。ということは、耳の聞こえが低下した人は、低下した耳で全ての音や言葉を覚えている……という理屈に至ります。ここで、治った時の聞こえと難聴時の聞こえに差があると差があるほど、戸惑いを覚え、再度学習していく必要があるかもしれない……と考えています。私の場合、生まれつき難聴ですので、聞こえる世界を知りません。もしかしたら的外れかもしれませんが、聞こえの世界を知らない人間からすると聞こえるというのがどのような状況かわかりませんので、こんな風にも考えています。

また、老人性難聴(感音性難聴)の方で聞き取りにくいというのは、神経上の問題もありますが、少なからずこの部分も関係しているのでは?と思っています。音や言葉を理解しているのは、脳であり、脳の中にあるデータベース(記憶)と一致するものは、理解できます。しかし、それと一致しないものは音が聞こえたとしても理解はできません。情報を送る過程にも問題があるかもしれませんが、元々保存してある記録と送られてくる情報が異なれば、それも理解できない要因の一つと考えられます。

音や言葉をどのように理解しているかを考えるとiPS細胞を使えば全て治る!というもの少し安直のような気もしています。

有効な人、そうでない人

ここまで来るとどんな人に有効か、そうでないかがわかると思います。判断基準は、話せるか話せないかです。話せる人には、有効であり、話せない人には、残念ながらiPS細胞で耳が良くなったとしてもコミュニケーション面で何かしら工夫しなければなりません。

現在話せる人は、難聴者のほぼ大半を占めている状態です。しかし、少なからず手話を使用している方、話せない方がいるのも事実です。話せない方は、今後どのようになっていくかが想像できません。

もう一つの欠点

実は、治せば全てが解決するか……と言われれば個人的に迷う部分があります。というのも治すという事は、健聴の人の社会に入る事も意味します。軽度難聴の方、中等度難聴の方は、既に健聴の人の社会で日々生きていますので、欠点が改善され非常に良いものとなります。しかし、健聴の人の社会で生きていない方にとっては、いきなりその社会に巻き込まれることにもなります。耳が治れば、当然耳が悪いなんていう言い訳もできなくなります。どんな社会に生きていたかで、治せば解決するか……が異なるような気がします。

気をつけなければならないのは、治ったとしても難聴者であった(今までの)日々は変わることがない事です。私の場合は、常に健聴の人の社会で生きてきましたので、私にとっては朗報です。それは、常に健聴の人の社会で生きてきたからです。言い方を変えれば、その社会で必要とされる技術、知識などを身につけてきたから言えることでもあります。

実社会で求められるレベルと乖離していれば、就職難民になる可能性を否定できません。別次元で今まで学んで来た方が、耳が治ったからといってその社会に必要な技術まで取得するわけではありませんので、この点は何とも言えません。

治すといのうは、このような欠点も持ちます。

治すという事を考える

これらの事から、ただ耳を治せば良い……という結論は、何とも安直のように感じています。難聴の赤ちゃんだったら、迷わず治療ですが、今までどのように生活してきたか、どのような社会で生きてきたかにより、治さないという選択肢も選ばれるのかもしれません。

今現在、私の頭の中にあるのは、実際に健聴の世界で生きている人は、迷わず治療。しかし、それ以外の方は、利点、欠点を伝えたうえで、治療するかしないかを相談します。理想だけを伝えるのではなく、こちらに記載したような欠点も伝えることがカギになってきます。

ただ、誤解のないように言いたいのですが、世界が変わるというのは、必ずしも悪いことではありません。今までできなかったことができるようになれば、それはそれだけ自分自身が変わるチャンスでもあります。自分自身の可能性も広がるチャンスでもあり、別の事ができるチャンスもあります。このチャンスをどのように捉えるかで見える景色は、異なります。

治す、治さないは個人次第です。重要なのは、どのような世界で生きたいかになります。

あとがき

iPS細胞について、治すということについて記載してみました。よくよく考えてみればわかる事なのですが、なぜか最近まで思いつきませんでした。治すという事をすれば、全てが改善するような錯覚に陥りそうになりますが、そうでもありません。どんなものにも必ず、利点と欠点が存在します。

iPS細胞は、難聴を改善させる一つの手段であり、その人のあり方を変えるほど強力な治療方法になりえます。しかし、どのようにありたいのか、を考える時が来ようとしているのかもしれません。iPS細胞は、耳を治すものですがそれ以外は治せません(リハビリ次第かもしれませんね)。

技術が進歩してくると障害は障害でなくなります。しかし、障害を抱えていた時期があったのは事実です。そしてそれにより、学ぶ機会損失が他の方と比べてあったのは、変えようのない事実です。ここは、しっかり考えなければならないところだと個人的には考えています。

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、お客様の聞こえを改善しています。私に関する内容は、書いている人の詳細をご覧下さい。当店の特徴は、こちらです。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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