2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

補聴器は、場所に合わせて調整するに対する素朴な疑問

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補聴器の調整で聞く言葉といえば「補聴器は、場所に合わせて調整する事が大切です」があります。これは、その場、その場の音の環境に合わせて音を調節していくのが重要であるという意味です。その他「補聴器の購入選択は、場所やどんなところで聞きたいかをしっかり考えるのが重要なんです」という言葉も聞きます。

しかし、補聴器を装用している私は、いつも疑問に思っていました。はたして、その場所だけ聞きたいと思う事は、あるのだろうか……、そして、そのような調整方法で良いのだろうか……、という事です。

よく考えていただければわかりますが、その場所、あるいは、ある特定のシチュエーションで困っている事はあっても、その場所だけ困るという事は、ありえないからです。耳の聞こえが低下すれば、ある特定の場所だけでなく、他の場所も困っている事の方がむしろ考えられます。

今回は、こちらについて、私が思う事を記載していきます。

素朴な疑問を深く考える

こちらでは、今まで良く言われていた「補聴器は、場所に合わせて調整する事が大切です」そして「補聴器の購入選択は、場所やどんなところで聞きたいかをしっかり考えるのが重要なんです」について、考えていきます。

個人的に思うのは

  • そこだけ困るという事はありえるのか
  • そこだけ改善させるだけで良いのか
  • 決定的に抜けている思考

この三つに分けて、記載していきます。

そこだけ困るという事は、ありえるのか

冒頭の通り、ある一つのところが聞きにくくて、そこだけ聞きにくいという事は、果たしてあるのか……を考えてみると、むしろ、その他の部分も聞こえにくい可能性の方が、高くなると考えられます。なぜなら、今、困っているところは、音が聞こえにくい事によって起こっている症状の一つでしかなく、音が聞こえない事で困るのは、そこだけに限定されるものでは、ないからです。

仮に対面で人とお話しする時に少し、聞きにくいとした場合、テレビの音量も大きめにしている可能性も考えられますし、離れたところから呼ばれると気が付かなかったりしている可能性も考えられます。さらに、複数の方々とお話しや騒がしいところでの会話も基本難しくなります。もしかしたら、電話も聞き取りにくいと感じているのかもしれません。

難聴は、自分自身で気が付く事ができない症状です。音は、目に見えないものですから、聞こえないと聞こえていない事に気が付きません。このような難聴の側面もありますので、聞こえていない事に難聴者自身が気付いていないケースもあると考えています。

そこだけ改善させるだけで良いのか

他のところも聞き取りにくいと考えられるのなら、そこは、考えなくても良いのでしょうか。ここも気になるところです。難聴者である私が思うのは、難聴になると音そのものが聞きにくくなりますので、その他のところにも必ず影響が出ると考えています。

補聴器を外すと私自身が「○○だけ聞こえない」となるのではなく「全体的に音が聞こえない」となるからです。○○だけ聞こえないとなれば、そこのみの対応で良いのですが、全体的に音が聞こえない事の一部の症状として「○○に困っている」となっているのでしたら、細部を改善させるのではなく、全体を考えて改善する必要があります。

このように考えているのは、私自身が体験したある経験によるものです。それは、残念ながら補聴器ではなくメガネに関する事です。私自身、目が悪く高校生になってメガネを作りました。製作当時は、目の視力が0.6くらいになってしまい、黒板の字がとうとう見えにくくなってしまったので、それを改善させるために、メガネを製作しました。メガネを製作し、装用すると気持ち悪くもなりながら、見えるようになりましたので、始めは、医師の言う通り、困っている場所である学校の授業の時にしか使いませんでした。医師からも「授業の時に困るのなら、そこだけ使えば良いよ」と言われましたし、もともとそこでしか、不便を感じていなかった事もあります。

ある時、ふと、街中で、見えないものがあったので、メガネを使う機会がありました。何気なくメガネを装用した時、それまで自分自身が見ている景色とメガネが映し出す景色の差に愕然としました。メガネを装用すると普段の景色も全く違う事に、初めて気が付いたのです。0.6だと身の回りのものは、見えるのですが、離れたところは、ぼやけてしまいます。しかし、メガネをかけるとその先まで、しっかり見えるようになります。

その時、こんなににも見えていないかったんだ……という気持ちと「何で普段でも使うように言ってくれなかったのか……」という苛立ちの気持ちを感じました。恥ずかしながら、医師が軽く言っていたため、0.6は症状が軽いのだと勝手に私が誤解しまったのも原因の一つです。その後、私は、常に使い続けるようになりました。

この時感じた感覚は、今でも忘れていません。全ては、私の知識不足が原因ですが、正直「良いかい?0.6というのは、見えている様で、見えていないんだ。目というのは、しっかり見えて初めて意味がある。だから、常にメガネを使って、見えるようにしておこうね」とでも言ってくれれば、使ったのではないかとも思いました。

これは、補聴器にも共通する事では、ないでしょうか。そこだけ改善させるのではなく、むしろ患者さん、お客さんが気付いていないところまで、改善させてあげるのが最も必要な事だと個人的に考えています。

決定的に抜けている思考

補聴器の調整や補聴器を購入する際、今現在、困っているところを伺い、それを改善できるように補聴器の調整をしていく。これが、今現在、最も良く考えられている方法です。このように言われれば、ものすごくもっともに聞こえます。確かに、聞こえにくいと感じているところが改善すれば、お客さんや患者さんが求めている結果となり、どちらにとっても良いように思えます。

実際にあるのは、補聴器を選ぶ際に、「一対一の会話を聞き取りたい」か「テレビの音を聞き取りたい」あるいは「家族のお話しを聞き取りたい」など、聞き取りたいものをしっかり考えましょう、という内容です。しかし、個人的に思うのは「患者さんは、全部聞き取りたいと思うのではないか?」という事です。果たして一対一の会話を聞き取りたいだけで補聴器を購入したいと思っている人は、どれくらいいるのでしょうか。そして、そこだけ改善してもらいたいと考える人は、本当にいるのでしょうか、個人的には、いつも疑問視していました。

致命的なのは、人の生活にフォーカスして考えていない事です。困っているところだけ、改善させるという思考は、ここの部分を全く考えていません。これは、実際に人の生活環境を考えると良くわかります。

人の生活環境そのものを考えてみると、いくら家の中にいる機会が多いとしても、家の中で家族とお話しする機会もあれば、食卓をかこんで家族とお話しする機会もあります。友人とお話しする事もありますし、一緒に出かける機会もあります。外出は、遊びに行くだけでなく、日々の日常用品や食料を購入しに出る事もありますし、気晴らしに散歩にでる事もあります。散歩に出れば、近所の人と会い会話するケースもあります。このように、いくら家の中にいる機会が多い方でも、様々な場所で、会話する機会はあります

仮に車いすで生活している方でも、病院に行ったり、お連れの方と様々な場所で会話する機会もあります。家族との会話もあるでしょうし、食卓をかこんで会話する事もあるでしょう。足が制限されている方でも、様々なところで会話していますし、会話する機会もあります。

人の生活環境を考えてみると「その場に合わせる」という思考は、疑問に感じざるを得ません。場所に合わせるような考えでは、このようなケースに対応できないからです。本当に考えなければならないのは「どのようにしたら聞こえにくい人の生活が豊かになるか」では、ないでしょうか。

補聴器の調整に関する思考

では、調整については、どのように考えていけば良いのでしょうか。個人的には、その場、その場にあわせるのではなく、耳そのものをしっかり聞こえるようになるには、どのようにしたら良いか……で、考えています。そのように考えた方が、全体的に、聞こえるようになるからです。

全体的に聞こえるようになれば、聞こえにくいと感じているところも改善しますし、それ以外に聞きにくかったところも改善します。耳が聞こえにくい事で、聞きにくさを感じるのなら、やはり耳そのもののあるべき姿に戻していく(聞こえを改善していく)事が大切であると考えています。

場所という限定的な考えではなく、全体を見て改善させる。それが大切だと感じていますし、それこそが、聞こえにくい人の生活を豊かにする思考であると、私は思います。

あとがき

補聴器は、場所に合わせて調整するに対する素朴な疑問について記載してみました。その場、その場に合わせるのではなく、耳の聞こえが低下しているのなら、その他のところにも影響が出ていると考え、耳そのものをどのように聞こえるようにしていくかを考える事の方が、個人的には、大切だと思っています。その場、その場に合わせた調整は、その場しか見ていないようで、何とも言えません。聞こえにくくなっているのであれば、その他のところにも影響が出ているのは、簡単に推測できます。

テレビが聞きにくいと言われて、テレビの音だけ対応するのは、本当に良いのでしょうか。テレビが聞きにくい状況を考えると、テレビの音が聞きにくいくらいなら、人とのお話しも聞きにくいと感じる事は、あるでしょうし、呼ばれた際に気が付いていない可能性もあります。一つの症状から、その人の全体を見れるようになれば、もっと補聴器で改善できるところも出てきます。

耳そのものの機能から考えるようになると「その場」だけでなく、耳全体を良くする事ができます。もちろんそれでも聞きにくいところは、出てきますが、この方が限りなく耳を補えるのではないかと私は、考えています。

 

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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