2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

補聴器のボリュームを上げても聞きやすくならない理由


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騒がしい中で補聴器のボリュームを大きくしても、中々聞きやすくならない経験をした事はないでしょうか。これは、原理を考えるとある意味当たり前の事でもあります。ボリュームは、音を大きくするツールですが、使い方をしっかり考えないと思ったように効果が出ません。

今回は、このタイトル通り、聞きやすくならない理由と改善方法について記載していきます。細部にも記載していきますが、改善方法の思考まで記載していきますので、様々なものに応用できるようになっています。騒がしいところでの聞き取り改善にぜひお役立てください。

ボリュームでは聞きやすくならない理由

補聴器のボリュームで聞きやすくならない理由には、ひと言で言うと全ての音を大きくしてしまうからです。補聴器のボリュームは、聞きたい音と聞きたい音を邪魔する音まで大きくしてしまいます。ここにボリュームの最大の欠点があります。

ボリュームの機能は、補聴器から聞こえてくる音量が不足していると感じている時に使用するものであり、残念ながら騒がしい中で聞きにくいから、音量を上げて聞きやすくする……という場合に使用するものではありません。

まず、この点について理解しておきましょう。

聞きやすくするために必要な知識

では、どのようにして聞きやすくしていけば良いのでしょうか。その際に必要な知識をここから記載していきます。聞きやすくするための知識として、

  • SN比
  • 一般の人はなぜ聞こえるのか
  • ボリュームの問題点

この三つのワードにわけ記載していきます。ここをご覧になれば、なぜボリュームが聞きにくいのか、そして聞きやすくするためには、どのような事が必要なのかが見えてきます。

SN比を理解しよう

騒がしい中で聞こえを改善させるために重要なキーワードとして「SN比」というものがあります。これは、S=シグナル、N=ノイズ、の略で、聞きたい音(S)とそれを邪魔する音(N)がどれほどの音量かを比べる時に使われる単語になります。基本的に、どのようなケースにおいても、SがNより、小さい場合(聞きたい音より、周りの音が大きい場合)は、聞きやすくなる事はありません。これは、たとえ耳が健聴の方であっても同様です。

SN比の図

聞き取り改善のキーはSN比の改善

騒がしい中で重要なのは、いかにこのS(聞きたい音)を大きくさせるかになります。SがNより大きくなれば(SがNを超えれば)、基本的に聞きやすくなります。

一般の人はなぜ聞こえるのか

ここで一般の方の場合における騒がしい中で、どのように聞き取りを良くしているかを見てみましょう。ここに、聞きやすくさせる最大のヒントが隠されています。

例えば、周囲がうるさい場合、一般の方は、声を大きくしてお話しします。これは、つまり、S(聞きたい音)をN(周囲の音)より大きくさせる行為です。騒がしい中では、基本、人は声を大きくしてお話しします。これらは、自然に行われている事ではありますが、これこそSN比を改善させる行為といえます。

SN比の改善

Sを大きくできれば改善ができる!

一般の方でも騒がしい中で聞く場合、Nの方が大きい場合は「え?」と聞き返します。そのため、Sを大きくして、聞きやすくさせています。

補聴器のボリュームの問題点

さて、ここまで来ると、恐らく補聴器のボリュームの問題点、そして、補聴器のボリュームでは、なぜ聞きやすくならないかがわかってきたと思います。その理由は、初めに記載した通り「全ての音を聞きやすくしている」からとなります。

これは、一般の方が聞こえる理由をさらに深堀りしていくとより理解しやすくなります。一般の方の場合、耳の聞こえを良くさせるという方法ではなく、S(聞きたい音)を大きくさせるという手段をとる事によって聞きやすくしています。しかし、補聴器の場合は、耳そのものを良くさせるという手段を使って音を大きくしています。

ボリュームではSN比を改善できない

全てを大きくしてはSN比は改善できない

聞きたい音そのものを大きくさせる方法をとる場合、S(聞きたい音)のみ大きくなるため、N(周囲の音)より大きくしやすくなります。しかし、耳そのものの聞こえを良くさせるという手段を使った場合、当然SN比は改善されません。S(聞きたい音)もN(周囲の音)も両方大きくしてしまうからです。SもNも同じように大きくしてしまえば、S(聞きたい音)がN(周囲の音)より大きくなる事は理論上ありえない事になります。

ここに補聴器のボリュームの最大の欠点があります。このような理由により、補聴器のボリュームで音を大きくしたとしても聞きやすくなる事はありません。

騒がしい中ではどうする?

騒がしい中で使用する場合、SN比をどう改善させるかを念頭にいれる必要があります。補聴器の機能もこのSN比を改善させる効果が高いものほど、高額になっています。改善させる策には

  • 周囲の音を下げるプログラムを使う
  • 場所を変える
  • 思い切って補聴器を外す

この三つがあります。では、見ていきましょう。

周囲の音を下げるプログラムを使う

最もポピュラーな方法です。補聴器の機能の中には、騒がしい中で使用する用のプログラムがあります。こちらを使用すると聞きやすくなる可能性があります。しかし

  • 価格帯により、性能が天と地ほどの違いがある事
  • 感音性難聴である事

この二つにより、確実に効果があるとは言えないのですが、使用してみる事により、使用しないよりは聞こえやすくなる可能性があります。もし、プログラムが組んであるのでしたら、使用してみるのも良いでしょう。

補聴器の場合、基本的には、この機能を活用し、少しでも聞きやすくさせるようにしています。

場所を変える

昔からある方法です。邪魔する音がない場所に変える事で、聞きやすくします。N(周囲の音)を下げる施策と言えます。このようにする事でも聞きやすくする事ができます。

思い切って補聴器を外す

たまに私自身がやる方法です。居酒屋、人ごみが多すぎる場所では、聞こえる音が大きすぎてNを下げる事が困難になります。そうなりますと、聞きにくさが非常に強く出てきます。しかし、逆にいえば、周囲の人も大きな声を出しているため、周りの音を下げるために補聴器を外し、生の耳で近くで聞くという事をすると聞きやすくなる事があります。

ただし、致命的な弱点として、2〜3m先の声は、ほとんど気が付かない事、人によっては、1m先でも聞きにくくなります。あくまでも隣で聞くという場合にのみ有効です。この点は、聴力によっても変わりますので、何とも言えないのですが、できたとしても恐らく50〜60dBの聴力となります。

まとめ

私自身が知る限り、SN比を改善させる行為は、以上となります。補聴器の中で多いのは、いかに周囲の音を下げ、SとNに差を付けられるかになります。多いのは、補聴器の騒音抑制機能を使用する、場所を変えるという策になります。

改善方法を理解しよう

こちらで覚えていただきたい事は、いかにSN比を改善させるかになります。この点を理解いただければ、どのようにしてSN比を改善しようかと考える事で、聞こえを改善させる事ができる可能性があります。聞こえにくいとボリュームに手を出すお気持ちはよくわかるのですが(補聴器屋に入る前は、私もよくボリュームを操作していました)、それでは残念ながら聞こえを改善させる事ができません。

重要なのは、SN比をどのように改善するかという思考を持つ事です。それが理解できれば、あとは、どのようにして改善させるかを考え続ける事で、場所場所に応じて対応する事ができます。

これらの知識がお役に立てば幸いです。

あとがき

補聴器のボリュームを上げても聞きやすくならない理由という事で、記載してみました。補聴器屋に入る前の私は、よくボリュームを操作していましたので、ボリュームを操作するお気持ちは非常によくわかります。しかし、原理を見てみれば、どのようにしてもボリュームで改善できない事がお分かりになると思います。

今現在、各メーカーは、いかにこのSN比を改善させるかに力を入れています。中には、ボリュームの機能を均一に音を大きくするのではなく、人の音声部分を強調するような仕組みにしたり、各抑制機能を強めたり、弱めたりするボリュームまで出てきました(メーカー名:フォナックジャパン、フレックスボリューム、フレックスコントロール)。それらの根源にあるのは、どのようにして騒がしい中で聞こえを改善させるのかであり、どのようにしてSN比を改善させるのかでもあります。

騒がしい中での聞こえは、まだまだ難しいのが現状です。しかし、補聴器の機能を駆使して、少しでも聞きやすくなれば、それは良い事だと私自身は、思います。

これらの内容で、少しでも聞こえが改善させられれば幸いです。


この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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