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これはすごい……要約筆記を調べてみてわかった業界の現実

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さて、昨日は、要約筆記の概要について調べた内容を記載しましたが、今回は、要約筆記について調べていくうちに見えてきた現実について載せていきます。調べていく課程でですが「これは、知っておいた方が良いかも……」と思える内容がちらほら出てきました。私も難聴者ですので、こういった事実は、隠さず、その社会で生きる人間として、理解しておくと良いと思い、記載する事としました。

なお、こちらの内容は、厚生労働省が実施した地域生活支援事業(コミュニケーション支援事業)の実施における地域間の差. 異に関する調査と同じく厚生労働省が実施した平成21 年度障害者自立支援調査研究プロジェクト. (厚生労働省助成事業).要約筆記者養成等調査検討事業. 報告書を参考に記載していきます。

要約筆記で起こっている事

ネットで要約筆記について調べてみると出てくるのは、

  • 給料が安い
  • 断られるケースがある

この二つでした。どちらも要約筆記で調べてみると、意外と出てくる内容となります。

給料が安い

ネットの中で良く出てくる内容は、

  • 給料が安い
  • それだけでは食っていけない

というような内容でした。では実際どうなのかという事で、調べられる限り調べてみますと、要約筆記の利用に関しては、市区町村のサービスを利用する場合、報酬が決まっているようです。しかし、調べてみるとその報酬については、各地により異なる事がわかりました。

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地域生活支援事業コミュニケーション支援事業)の実施における地域間の差. 異に関する調査より引用

こちらは、一時間辺りの謝金になり、各自治体が定めている謝金となります。驚く事に、最小値は、なんと一時間500円でした。その辺のアルバイトより安い金額です。意外に思ったのは、謝金の平均は、1,000〜1,100円である事です。全体的に、安い印象を受けるのは否めません。さらに調べてみると、こんなデータまで出てきました。

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地域生活支援事業コミュニケーション支援事業)の実施における地域間の差. 異に関する調査より引用

こちらは、各自治体が謝礼に関してどのようにしているのかを調べた統計結果なのですが、実通訳時間のみの謝礼であったり(交通費は自己負担)、家から会場、会場から家までなど、通訳時間のみの謝礼から、そこの会場までつくのにかかった交通費も込みで謝礼にしたりと、自治体によって差がある事がわかりました。

二つの情報を照らし合わせると、もしかしたら一時間辺りの謝金500円で、さらに交通費負担という事もあり得るのでしょうか?仮にありえるのだとしたら、安いどころではなくもはやマイナスになる可能性も出てきます。そうでなくても基本的には、ただ働きに近い事になりますね。これも奉仕と書かれている故なのでしょうか。

要約筆記団体の給料までは調べられず、不明でしたが、自治体では、このような状況である事がわかりました。仮に、自治体の料金体制を要約筆記団体も行っていると仮定した場合、給料が少ないと思ってしまうのは、うなずけるお話しですね。

これらの内容から考えると給料が安い、食っていけないというお話しは、信憑性があります。

断られるケースがある

調べてみて出てきたのは、断られるケースがあるという事です。利用者からしたら、困っているので利用しようとしたら断られてしまうのですから、泣きっ面に蜂といったところでしょうか。こちらに関して現状について調べてみると興味深い内容が出てきました。

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地域生活支援事業コミュニケーション支援事業)の実施における地域間の差. 異に関する調査より引用

こちらは、各自治体が要約筆記の派遣をしているかどうかの返答なのですが、なんと全体で48.7%の実施率である事がわかりました。さらに調べてみると、要約筆記は、障害者総合福祉法の地域生活支援事業に関わっている内容であり、どうも、各自治体で実施できるようにする事が必須となっているようです。

以下、厚生労働省より引用です。

障害者総合支援法における主な改正点

(1) 市町村と都道府県の役割分担の明確化
障害者総合支援法の施行に伴い、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則において、市町村と都道府県の具体的な役割分担を明確に区分できるよう規定しています。
これにより、市町村と都道府県が行う意思疎通支援を行う者の養成については、市町村と都道府県の必須事業となっており、その役割分担については以下のとおりです。

  • 市町村は、手話奉仕員の養成
  • 都道府県は、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員の養成

また、市町村と都道府県が行う意思疎通支援を行う者の派遣についても、市町村と都道府県の必須事業となっており、その役割分担については以下のとおりです。

  • 市町村は、手話通訳者及び要約筆記者の派遣(点訳、代筆、代読、音声訳等による支援を含む)
  • 都道府県は、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣のほか、複数市町村の住民が参加する障害者団体等の会議、研修、講演、講義等や専門性の高い分野など市町村が派遣できない場合などにおける手話通訳者及び要約筆記者の派遣

厚生労働省 意思疎通支援 障害者総合支援法における主な改正点より引用

必須事業である事は、ともかく、実施率が半数となると、断られるケースというのは、あるという事、あるいは、利用できない事あるという事がわかります。

そして、あくまでもこちらは、自治体が実施している、していないの問題ですので、自治体が実施していたとしても、何らかの理由で断られる、あるいは、利用できなかったという部分を考慮していません。それらの部分も入れると、さらに多くなる可能性も否定できません。

要約筆記は厳しい

これらの事から見ますと要約筆記は、利用する側にとっても働く側にとっても厳しいのが現実のようです。利用者側からすれば、使用できない時に利用できないのは、大きな欠点です。困っているから利用しようとしているのですし、そもそも困らなかったらサービスを利用しようとも思わなくなってしまいます。

働く側の視点からすれば、得られるお金は仕事を継続していくうえでは非常に重要です。要約筆記者も生活がありますから、安くても良いという訳にも行きません。受け取るお金が安ければ、それでやっていく事ができず、要約筆記者も他の道を探さざるを得なくなり、やがて産業は衰退していく事になります。これは、仕方がない事です。要約筆記者も人間なのですから。

中には、ボランティアだからというケースもあるかもしれませんが、聴覚障害の方は、ボランティア感覚で対応されて喜ぶのでしょうか?ここも少々疑問が湧きます。

調べていく課程でわかったのは、以下のようなものもあります。

(1)聴覚障害者の状況等

我が国における聴覚障害児・者の数は、『平成18年身体障害児・者実態調査』(平成20年3月、厚生労働省)によると約36万人となっています。また、聴覚障害者(約34万人)のうち必要とするコミュニケーション手段については、筆談・要約筆記を必要とする方が約3割(約10万人)となっていて、手話・手話通訳を必要とする方の約2割(約7万人)を上回っています。

これは、日常のコミュニケーション手段に文字を伝達方法として使用する人の多いことを表しています。コミュニケーション手段が文字によるものであることと、コミュニケーション支援を要約筆記に頼ることは全く同じとはいえませんが、要約筆記が、手話同様聴覚障害者のコミュニケーション支援として機能している状況を示しているといえます。

しかし、コミュニケーション支援事業を担う派遣登録者の状況(厚生労働省調べ:平成19年度末実登録者数)では、手話通訳派遣の実登録者数が約2万人であるのに対し、要約筆記派遣の実登録者数は約1万人となっていて、手話通訳派遣者の半数に留まっています。

平成21 年度障害者自立支援調査研究プロジェクト. (厚生労働省助成事業).要約筆記者養成等調査検討事業. 報告書より引用

筆談、要約筆記を必要とする方が聴覚障害を抱えた方の3割とされる中、要約筆記派遣の実登録者数は約1万人という事でした。先日、募集をかけていた事を考えると、恐らく、この数値は、少ないと考えられるのですが、逆に考えれば、少ない報酬で、生活できない事業を募集している事から少ないのではないかと考える事もできます。

この課題を解決しない限り、いくら募集をかけても現実を知った瞬間、人が離れていくように感じるのは、私だけでしょうか。皆が皆、余裕のある生活をしているのでしたら、別ですが、募集を見ていく方は、少なくとも仕事を探している方のように思います。そのような方が、仕事に定着するとは私には思えません。

ここは、大きな課題となりそうです。

あとがき

要約筆記を調べてみてわかった事、パート二を記載してみました。要約筆記の事を調べていくうちに、色々と現状が見えてきました。なかなか厳しいのが現状ですが、だからと言い、このまま知らないふりをしていてもなぁ……という事で記載してみました。もっと詳しい方がいらっしゃれば、現状をお伺いしてみたいとも思っています。

気になるのは、団体系の給料、そして普及率ですね。こちらはあくまでも各自治体ベースに考えている事ですので、全体の総数としてどうなのかという部分がわかりませんでした。仮に、実は、要約筆記というのは、各自治体にお願いするのではなく、要約筆記団体に依頼するのが一般的……という事であれば、また結果は異なってきます。その点には、ご注意ください。

そしてこのような状況下であるからこそ「あのようなサービスが出てきたのか……」と思う事もあります。それは、遠隔操作型の要約筆記です。明日については、こちらの可能性についても載せてみようと思います。

なお、この内容に興味を持った方は、冒頭に記載しています厚生労働省の報告書をご覧になる事をお勧めします。色々書いてあって勉強になります。

 

この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:将来のコミュニケーションツール?手話翻訳ディバイスの登場

リンク:音を振動やライトで教えてくれるアプリOtoSense

リンク:リアナ・ウェン氏 医師が開示しないことに学ぶ情報公開の重要性

リンク:富士通の音声認識ソフトウェアはコケると予想

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、お客様の聞こえを改善しています。私に関する内容は、書いている人の詳細をご覧下さい。当店の特徴は、こちらです。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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