2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

ある人に教えてもらった音が聞こえるという事の意味


昔、お客さんに音という事について教えていただいた事があります。今では、この考えは確かにそうだなぁと身にしみていますが、当時は、そのような事はありませんでした。ふと思い出す事がありましたので、当時教えていただいた音について載せてみたいと思います。

さて、私はどのような事を教えてもらったのでしょうか。この出来事は、私自身の価値観を大きく揺さぶるものでした。

ある人から教えてもらった音の価値観

そのお客さんは、補聴器を装用し、音が聞こえる事に関して「ただ聞こえる事が嬉しい」と言っていた方でした。この方は、重い難聴の方であり、身体障害者手帳も2級の方でした。しかし、対面であれば、普通に会話できてしまうような方であり、恐らくではありますが、音だけでなく唇の動き(口話)でお話しを理解しているのだと思います。

この方がおっしゃっていたのは「音は聞こえる方が良い、確かに時には邪魔されてしまう事もあるけれど、音が聞こえる事で、色々な事がわかるから、聞こえないより、聞こえる方が良い」という事でした。初め、身の危険から守れる、あるいは、周囲の音が聞こえるようになり状況がわかる事を意味しているのだと思っていたのですが、そうではありませんでした。

私は「そうですね、周囲の状況がわかるというのは、重要ですね。聞こえにくいと危険な事もわからないですから」と言い、その後に言われた言葉があります。

「いえ、そうではないんです。音というのは、意味がなく発生する事はありません。何かがあるから音がするのです。だから、その変化を感じられ、その存在を認識できるようになったのが嬉しいんですよ」

「変化が感じられ、存在を認識……?」思わず私の頭の中は「?」となってしまいました。その後「それは、どういった意味でしょうか?よろしければ教えてくれませんか?」と言いました。以下、会話をAさんと私で、載せてみます。

Aさん「音は意味なく発生する事はありません。そこに何かがあるから音がします。つまり、音がするというのは、何かあるからであり、何かしらの事が起こっているから音が聞こえるという事です」

Aさん「例えば、茶碗が落ちてしまい、ガチャン!と鳴って大きな音がするのは、茶碗が落ちたからであり、大きな音がしたら茶碗が落ちたという事ではありませんよね。ここまでは良いですか?」

私「……はい」

Aさん「ということは、音が聞こえるというのは=何かしらの変化があるから、という事ですよね?例えば、子どもが公園で元気良く遊んでいれば当然子どもの大きい声が聞こえてきます。時にはうるさく感じるかもしれません。今まで静かだった公園から、このような声が聞こえてきたとすれば”公園に子どもが来た”という変化が訪れた事になります」

私「……」

Aさん「さらに話しを進めてみましょう。仮に聞こえなかったら、この変化は感じ取れたでしょうか?」

私は「……いいえ、わかりません。気付く事すらなかったと思います」

Aさん「そうですよね。つまり音が聞こえるというのは、周囲の変化に気付く一歩になるのです。その変化に気付けるようになったのが嬉しいという事です。聞こえないと、そのような変化に気付く事はありませんから」

Aさん「そして、聞こえないというのは、そのような変化に気付く事もできず、さらに”子どもが公園に来た”事もわかりません。という事は、子どもの存在にも気付けません。だからでしょうか、聞こえる事で、周囲で何が起こって、どんな状態なのかがわかる”音が聞こえる”というのは、とても大事だと思っています。」

私「なるほど……」

Aさん「私の場合は、音が聞こえるだけで”何かの音”というところまで、わかる事もあれば、わからない事もあります。しかし、音を感じる事で確認するという事を行えばわかるようにはなります。もっとも、友人のお話しでは、補聴器を装用していても気がついていない場合もあるようですが」

私「……」

Aさん「音は確かに聞こえる事でこのような事がわかる反面、聞こえる事で反って遮られてしまう事もあります。それは、事実です。私も聞きにくい事があります。」

私「申し訳ございません、私の力不足で……」

Aさん「いえ、そういう事を言いたいのではありません。音というのは、音そのものにしっかりとした意味があるという事です。ここで、初めの言葉通り、”音は意味なく発生する事はありません”という事ですよ」

私「なるほど……」

会話から見える価値の感じ方

人の価値観というのは、本当に様々です。この方とお話ししていた時に感じたのは、恐らくこの方だからこそ、このように考えているのだという事です。私自身も感じる事ですが、音がない世界というのは、実に無機質で、変化というものを感じにくい世界です。目に見える範囲は、実に限られており、音が聞こえないと目の見える範囲内で変化がないと、まるで周囲も全く変化がないように感じてしまいます。だからでしょうか、この方が「変化」という言葉を使った理由が、私には、わかるような気がします。

このお話しをしていた際、私自身、実を言いますとかなりの未熟者で、音が聞こえる事は、身の危険を感じるために必要なものという絵に描いた教科書男のような状態でした。教科書に書いてあるような事をそのまま言うような状態です。この時は、音がなぜ存在しているのか、そして音が聞こえるという事は、どのような意味を持つのかまで考えた事がありませんでした。そのような感覚から、上記のようなお話しをされたので、非常に戸惑った事を覚えています。

今では、この方のお話しは良く理解できます。この方がおっしゃる通り、音は意味も無く発生する事はありません。という事は、本来、音というのは、雑音など、存在しないという事にもなりますね。中には、何かしらノイズがする事があるじゃないか、という方もいらっしゃいます。しかし、このノイズも本来発生してはいけないノイズであれば、聞こえる事で、何かしらマズい状況になっている事がわかりますね。

音とは一種の合図であり、聞こえる事に意味があるという事を、私は、この方から学びました。

あとがき

少々昔話をしてみました。あるお客さんから、音に関して教えてもらった時のお話しです。今となっては、お恥ずかしい内容です。補聴器を販売する人間が、補聴器を装用している方に”音というもの”を教えてもらうのですから、それは、ある意味恥でもありました。今となっては、良い思い出です。

なお、この内容を本当に理解したのは、この方とお会いしてから2〜3年後であったのは、言うまでもありません。

 

この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:補聴器を初めて装用した時の周囲の反応

リンク:補聴器で行える2つの操作と使う上で必要な3つの操作

リンク:世の中には、こんな補聴器がある?マイナーな特殊補聴器

リンク:「片耳補聴器は聞き取りにくい方につける」は、間違い


この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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