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東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

補聴器の機能の歴史から見る価格帯別特徴

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先日は、補聴器選択で迷った際にお勧めする補聴器価格帯という内容を記載しました。こちらは、補聴器の選択で迷った場合においてお勧めする価格帯に関して記載した内容であり、コストパフォーマンスの面で、10〜20万円をお勧めしました。

今回は、少し思考を変えて補聴器の価格帯別特徴に関して切り込んでいきます。補聴器の金額は、ピンからキリまであり、何がどう違うのかが、非常にわかりにくくなっています。さらに、どのような補聴器を購入すれば良いのか、最低限必要な機能は、何なのかもわかりにくいように感じます。

補聴器の理解を深めるには、機能の歴史を見てみると非常によくわかります。という事で、補聴器の歴史を見て行きましょう。細かな性能に関する内容、補聴器の調整の歴史や昔過ぎる内容ははしょりますが、どのような方法で、補聴器を難聴者の耳に合わせようとしているのか、なぜそのような機能があるのかがわかると、機能に関する意味合い、価格の意味も全てわかります。

個人的に感じるのは、補聴器の機能の歴史を知れば、補聴器の全てがわかるという事です。

初めに結論を

さて、機能の歴史を……と言いたいところですが、初めに結論を記載させていただきます。それは、先日と同様ですが、

  • 40〜50万:最も良い聞こえを得たい人向け(聞こえ+快適性)
  • 26〜39万:快適性を上げたい人向け
  • 10〜20万:耳に合わせる機能のみ欲しい人向け
  • 〜9万:できればもっと補聴器に投資して欲しい……

となります。これだけでは、わかりにくいため、少し追加しますと

  • 40〜50万:聞こえ、快適性を+αしたい人向け
  • 26〜39万:快適性を+αしたい人向け
  • 10〜20万:耳に合わせる機能のみ欲しい人向け
  • 〜9万:最低限聞こえる状態で良い人向け

になります。

今現在の内容では、わかりにくいかもしれませんが、この内容を頭に入れておくと読み進めて行く内に、補聴器の機能とは、どのような位置づけなのかがわかるようになってきます。さて、早速見て行きましょう。

補聴器のアナログ時代

少し前のお話しになりますが、補聴器には、アナログの時代がありました。今現在は、デジタル補聴器が主流ですが、その前は、補聴器そのものに搭載されている調整機器をネジを締める際に使われるマイナスドライバーを使って調整していました。

アナログの頃の調整は、非常に簡単で、

  • 全体の音量を調整するボリューム
  • 音の波形を調整する調整機器

この二つしかありませんでした。

アナログ補聴器の基本調整は、音の波形を調整機器で合わせた後、聞きやすいボリュームの位置で使用するという単純な事をしていました。耳には、皆さんご存知の通り、周波数と音量の二つの軸が存在しています。視力の場合、どれだけ見えるかの視力という一つの軸しかありませんが、聴力は、音の周波数別に聞こえ(聴力)が異なるため、二つの軸が存在しています。

仮に視力のみ(一つの軸)しか存在していない場合は、全体の音量を調整するボリュームのみで事足りたかもしれません。しかし、聴力の場合、音の周波数別に聞こえる音の大きさが異なるため、二つの軸が存在します。そのために、それぞれの周波数別に音量を調整するという方法をする必要がありました。

アナログの頃は、そこまで細かく調整する事ができませんでした。ある程度、決められた型(聴力型)があり、それになるべく合う型を選定して聴力を合わせ、あとは、難聴者の聞きやすいボリュームの位置に配置して、音を聞いていただく……という方法を行い、何とか聴力を合わせていました。

そのような合わせ方をしていましたので、実に多くの補聴器がありました。高い音が出やすい補聴器、高い音を調整しやすい補聴器、低い音を強調しやすい補聴器、補聴器そのもので調整できる幅が少ないため、補聴器の種類を増やし、様々な聞こえの方に対応できるようにしていきました。

もっとも技術が進んでくると、聞こえにくい人の傾向がわかる事により、補聴器そのものの数も徐々に減ってきたり、アナログ補聴器でも様々な調整ができるようになり、数も減るようになりました。

アナログ補聴器には、騒音抑制やハウリング抑制、指向性といったデジタル補聴器にあるものは、当然ありません。この頃は、単純に耳に音を合わせる事のみを行っていました。そう、初めの頃は、ただ単に補聴器の音のみを耳に合わせる事しかしていなかったのです。

アナログ補聴器の問題点

アナログ補聴器では、三つの問題点がありました。それは

  • 音の調整がしづらかった
  • 騒がしいところでは聞き取りが難しかった
  • 音の焦点が合わせづらかった

この三つです。

アナログの補聴器も進化するにつれ、耳に合わせられる事も増えてくるのですが、相変わらず、難聴者の聴力の波形に近い波形を作り、後は、ボリュームで音量調整という事を行っていました。この方法で合わせられる人もいましたが、残念ながらそうでない方もいらっしゃいます。そのため、このような大雑把なやり方ではなく、もっと耳に合わせられるような方法は、ないか。そのような技術を模索する必要がありました。

そして、補聴器装用者の現在の悩みでもある「騒がしいところでの聞こえ」に関しては、昔からありました。アナログ補聴器では、単に耳に補聴器の音のみを合わせる事しかしていません。それだけではなく、何か別の方法で+αをしないと聞こえにくい人達をより良くできない事に気が付きます。

また、アナログ補聴器では、一定の増幅量で、音を大きくしますので、聞こえにくい小さい音にフォーカスすると全体的に大きく感じ、大きい音にフォーカスすると小さい音を感じない……という焦点の問題もありました。ここから見えてくるのは、大きい音は、増幅を少なくし、小さい音は、より増幅を大きくするという事です。難聴とは、言い換えれば本人からしたら小さいと感じる音のみが聞こえない状態であり、その小さいと思う音をバランス良く増幅してあげる事が理想でした。

アナログ補聴器では、耳の聞こえのみ補っている状態であり、それ以外の事はしていません。さらにその増幅方法に関しても考え直す必要がありました。そこで登場するのが、デジタル補聴器です。この補聴器は、上記の問題点を可能な限り、改善させる事になります。

※厳密には、この前にプログラマブル補聴器がありますが、この機器の説明ははしょります。あまり詳しくないもので……。

デジタル補聴器の特徴

アナログ補聴器では改善しにくい事もデジタルという0と1で統合された世界で作り出される音は、様々な事を可能にしました。主には

  • 様々な調整ができるようになった
  • 音を分析できるようになった

この二つです。厳密には、上記の二つにプラスして、調整ができるようになった事+音を分析できるようになった事で、様々な抑制機能も搭載されるようになりました。

様々な調整ができるようになった

デジタル補聴器には、チャンネル(バンド)という名前で、音の調整できるレベルが記載されています。カタログなどで書かれている○○チャンネル、あるいは、○○バンドというのがそれに当たります。

このチャンネルは、デジタル補聴器になると大きく進化しました。元々音の大きさのベクトルは、ボリュームで調整していたものですので、細かく調整できていたのですが、周波数のベクトルでは、アナログ補聴器は、非常に調整が難しい状況でした。それがチャンネルの数だけ、オージオグラムを細分化して、細かく調整できるようになりました。

補聴器の調整機能はデジタルになってから、大きく飛躍しました。デジタル補聴器になると基本的に耳に合わせる事ができるようになってきましたので、ボリュームという概念がなくなってきました。上記の通り、ボリュームは、アナログ時代に聴力の波形を合わせるためにあったものです。聴力そのものに直接合わせられるとボリューム自体も使用する方も少なくなり、動かす事も減りました。

様々な調整ができるようになる事で、

  • 耳に合わせられる事が増えた
  • ボリュームを活用するのも少なくなった

という事が起こるようになりました。耳に合っていれば当然ですが、ボリュームを活用するのも(音量を変化させる事が)少なくなります。

音を分析できるようになった

少しお話しが脱線しますが、騒がしい中での聞き取りを良くするには、どのような事が必要でしょうか。この答えがわかる方は、音を分析できるようになった事の意味が既にわかっている方だと思います。

その答えを言いますとSN比を改善する事です。SN比とは、SシグナルとNノイズの比率を指し、騒がしいところでの改善には、聞きたい音(S)をノイズより大きくする事で、聞き取りを改善させる事ができます。今現在の補聴器の機能は、この部分に関し、大きく力を入れており、この機能が優れていると優れているほど、金額が上がってきます。

では、このSN比を実際に改善させるには、どのようにしたら良いのでしょうか。それは、騒音ではないかと考えられる音を抑制する事になります。ここで初めて音を分析できる事の価値が出てきます。「この音は騒音ではないか」「聞かなくても良いのではないか」という分析が音のみでできるようになる事で、この部分の音を感知すると、その部分の音を抑制するという事ができるようになります。

音が分析できるようになる事は、抑制機能を行ううえで必ず必要になる事であり、分析できるからこそ、抑制機能も働かせる事ができるようになります。

実際には、SN比が改善できる事以外にも、音を抑制する機能全般に音を分析できるようになった事は関連します。風の音を抑制したり、大きな音のみ(衝撃が大きい音のみ)抑制する機能も、その波形の傾向を読み取り「これは、○○だから、こうしよう」とプログラムが働く事でできるようになっています。まさに、デジタル補聴器の根幹は、この部分になります。

二つができるようになると

二つの事ができるようになると入力音ごとに音の大きさを調整できるようになります。今現在のデジタル補聴器は、大きい音は、元々聞こえているため、音の増幅を少なく、中くらいで聞こえる音は、それなりに増幅し、聞こえない音は、大きく増幅するようにしています(実際には、これプラス周波数別に増幅値を細かく変化させています)。それは、言い換えれば、マイクの音に入った音の大きさを分析し「このくらいの音なら○○dB大きくしよう」「この音は○○dB大きくしよう」と細かに調整しているという事です。

なぜ、このような事が必要になるかと言いますと、感音性難聴というのは、小さい音は聞こえなく、大きい音も反って聞きにくくなるという変わった症状が起こります。そのため、アナログ補聴器では、焦点が合わせづらいという問題点がありました。それを改善するには、人それぞれの持つ聞こえる範囲に合わせてあげる事が大切になります。

それを実現しようとすると「音の大きさ別に調整する」必要があり、その人の持つ聞こえの範囲内に収めるために、様々な音の大きさ別に調整できるように補聴器は変化してきました。ある意味ここまでしなければならないのかと思うと、本当に耳は複雑だなと感じてしまうのですが、補聴器は「役立たない」「聞こえない」「雑音ばっか」「はっきり言ってクソ」とか散々言われながらも、このように進化してきました。

補聴器は

  • 様々な調整ができるようになった
  • 音を分析できるようになった

この二つにより、大きく進化してきました。

アナログとデジタルから見る機能性

補聴器の機能に関して見る場合は、アナログの補聴器がしていた事とデジタルになってできるようになった事を分離すると見えやすくなります。ここからが大切ですが、アナログ補聴器でしていた事は、元々耳にとって必要な事をしていました。そして、デジタル補聴器では、アナログだけでは改善できなかった部分の機能を+αしてきました。

このように、アナログ補聴器がしてきた事は、補聴器の機能の基礎に当たる事であり、デジタル補聴器でできるようになった新しい事は、全て+αの部分になります。

まとめてみますと

  • 補聴器の基礎は耳に合わせる機能である
  • 補聴器の抑制機能は、+α機能である

この二つの事がわかります。そして、その+αの部分の機能が各種抑制機能であり

  • 騒音を抑制する機能
  • 風切り音を抑制する機能
  • 突発的な衝撃音を抑制する機能
  • 反響する音を抑制する機能

などがあります。これ以外にも抑制する機能の一種には、指向性機能も含まれます。

アナログの頃は、ただ単に耳に補聴器の音を合わせる機能しかありませんでした。それでは、騒がし所での聞き取りが難しいという事で、抑制機能、指向性という機能が追加されてきました。それらに追従するように、今現在の補聴器は「この音は抑制した方が快適性があがるのではないか」という音も抑制するようになりました。

そして、これらの機能が優れているほど、搭載されているほど、補聴器の金額は上がってきます。

  • 騒音抑制
  • 指向性

この二つは、ランク別に分かれており、搭載されている補聴器は多くありますが、性能の差が大きくあります。

一方、

  • 風切り音を抑制する機能
  • 突発的な衝撃音を抑制する機能
  • 反響する音を抑制する機能

に関しては、搭載されているか、搭載されていないかで、金額が上がります。機能の分別をさらに進めると

指向性機能は、音声の聞き取りの向上のために使われ、その他の

  • 騒音を抑制する機能
  • 風切り音を抑制する機能
  • 突発的な衝撃音を抑制する機能
  • 反響する音を抑制する機能

に関しては、快適性を上げるために使われる機能です。もちろん、抑制する事により、音を遮られにくくなり音声が聞きやすくなるという事はありますが、どちらかと言いますと、快適性を上げる機能という印象があります。

改めて内容をまとめてみますと、これらの機能は、基本的な耳に補聴器の音を合わせる機能とは別に補聴器の聞き取り、あるいは、快適性を+αする機能になります。

  • 補聴器の基礎機能
  • 補聴器に+αする機能

この二つを分けて考えると補聴器の理解は、ぐっとしやすくなります。

補聴器の根幹とそれぞれの価格帯別印象

補聴器の機能で重要な根幹的部分は、補聴器を耳に合わせる機能となります。これは、デジタル補聴器でいうチャンネル数が該当します。今現在では、20chや30ch近くあるものも存在していますが、個人的には、よほど凹凸が激しい、聴力の変動が大きくない限りは、8〜12chほどで十分だと思っています。もちろん、これよりもあるに越した事はありませんが、なくても支障がないというのが本音の部分です。

それ以外の抑制機能に関しては、補聴器に+αする機能です。このように考えると補聴器の価格帯別印象は

  • 40〜50万:聞こえ、快適性を+αしたい人向け
  • 26〜39万:快適性を+αしたい人向け
  • 10〜20万:耳に合わせる機能のみ欲しい人向け
  • 〜9万:最低限聞こえる状態で良い人向け

となります。

メーカーによって詳細は異なりますので、おおよそのイメージになりますが、数万円の補聴器は、調整できる機能のもののみである事が多く、10〜20万くらいのものですと、騒音抑制、音を抑える機能は、申し訳程度ですが、耳に合わせる調節(チャンネル数)に関しては、6〜8chと多くなってきます。

そして、26〜39万辺りから、明らかに快適性があがる機能の搭載が始まり、補聴器の基礎の充実+快適性を上げるようになります。そして、最高ランクの補聴器は、さらに聞き取りを最大限改善するように、なるべく音声を軽減させないような機能を搭載したり、抑制機能にさらに磨きがかかります。

個人的に感じている補聴器の金額別ランク、あるいは、金額別特徴は、このようになります。アナログの頃から、補聴器は使用し続けられてきました。アナログの頃は、単に音を耳に合わせるだけでした。これが、補聴器の基礎であり、根幹の部分です。

しかし、それでもなかなか改善できないところに関しては、次に補聴器は、音を分析して、SN比を改善させるという手段をとり、より良くさせようとしてきました。今日では、それらの機能が増えすぎてしまったために、何が大切なのかがわかりにくくなってしまいました。

補聴器で大切な根幹の部分は、耳に合わせる機能であり、それに関しては、どの補聴器にも搭載されています。ですので、この点に関して心配する事はありません。補聴器は、この基礎の部分と補聴器の機能を+αしている部分を意識するとわかりやすくなります。これらの内容で、価格別の特徴と補聴器に関する理解が進めば幸いです。

 

この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:補聴器の両耳装用、片耳装用の違いは、ココ。

リンク:補聴器のボリュームを上げても聞きやすくならない理由

リンク:補聴器の機能の一つ、自動プログラムはお勧めできる機能

リンク:補聴器の性能の一つ、抑制機能を理解する三つの事

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、お客様の聞こえを改善しています。私に関する内容は、書いている人の詳細をご覧下さい。当店の特徴は、こちらです。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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