2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

感音性難聴という聞こえにくさに向き合うために

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感音性難聴の方に補聴器を装用する。これは、難しい事だ。私自身も感音性難聴であり、補聴器を装用しているが、自分自身では効果はわからないし、聞こえにくいところがあったとしてもそれが改善できるかと言われれば、状況次第になる。状況を把握し、改善できるポイントがあれば、改善する可能性もあるし、もう補聴器で補える限界値まで来ていれば、残念ながら難しい。多くの人は医師に、治らない、補聴器を装用しても聞きにくいところがあると言われた事だろう、私も言われた。

私が補聴器販売時にしているのは、できる限り改善させる。ただそれだけだ。そういえばいつだったか、この事についてお客さんから質問があり、お話しをした事があった。それは、主に以下のような話しだった。

測定をたくさんする理由

「耳って、こんなに調べるんですね」

初めて来るお客さんに私は、耳の状態を把握するため、様々な測定をしていた。耳の状況確認は、初めに行うものだ。どんなものもどのような状況かがわからなければ適切補う事ができない。

「そうですね。私の場合は、特にしているのかもしれません。何か気になる事がありましたか?」

「いえいえ、耳鼻咽喉科では聴力検査しかやらなかったので……」

「そうでしたか。そうですね……私が測定をたくさんしているのは、耳の状況を調べるのもそうですが、耳をしっかりと補うためでもあります」

「しっかり補う……」

お客さんは少し戸惑っていた。

「はい、私自身もそうですが、補聴器を装用する人はほぼ感音性難聴ですので、どこまで効果が望めて、どこまで補聴器で改善できるのかを知る事が難しいんです」

「?そうなんですか?先生に言われた事は、補聴器をつけても治らないという事でしたね……」

「その理由については、○○さんの場合、音を理解する部分が何らかの形で損傷してしまい、音が小さく聞こえるようになって、かつ音声の理解度まで低下してしまっている状態です。このような症状があるのが感音性難聴ですね。治らないのも事実ですが、だからといって全く状況を改善できないかと言いますとそのような事もないのも事実です」

「……」

「そして、ここからが重要ですが、感音性難聴で問題になるのは、音が小さく聞こえるようになる事ではなく、音声が理解しにくくなる事です。それが原因で、補聴器の効果を理解しにくくなります。極端な言い方をすれば、どんなに悪くなったとしても、仮に補聴器で簡単に改善できるのなら、何も問題はありません。しかし、感音性難聴の場合は、ひとによって症状は変わりますし、補聴器の効果も変わってしまいます。」

「音声が理解しにくい……?それであの「あ「き」とかいうテストがあったんですね。そういえば調べる前に言っていましたね。これは、どこまで補聴器で改善できるかを見る疑似テストのようなものだと」

「おっしゃる通りです」

「でも、そこまで真剣にやらなくても、補聴器を使えば聞こえるようになるので、良いのではないのですか?使えば聞こえるようになりそうですけどね」

「それは補聴器を使えば全てがわかります」

「?そうなのですか?」

お客さんは、戸惑っている。無理も無い。体験した後にしかわからないものというのもあるからだ。そして、この意味を今後、ゆっくり体験していく事となる

使う事ででわかる事、わからない事

このようなお話しの後、補聴器の試聴に移った。補聴器を装用した状態は概ねよく、効果も出ていた。お客さんは、測定する事が本当に意味があるのか。その点に関しては、疑問を抱いている様子だった。補聴器について日常生活上でも使っていただくため、貸出をする事となる。

そして幾度か試聴、貸出を繰り返したある日の事……

「どうもこんにちは、補聴器をお使いになっていかがでしょうか。」

「そうですね……」

お客さんは少し考えている

「いかがなさいましたか?」

「いえ……補聴器を使う事で確かに聞こえるようになっているのですが、その一方わからない事もありまして……」

「どうぞ」

「聞こえるようになって良いのはわかります。初めは、全体的に高く響く感じと言いますか……それを感じました。徐々に聞こえてくる感覚に慣れてきたのもありますし……、あと様々な音も聞こえて、人の声も聞きやすくなりました。補聴器に関しては、効果を感じています。まぁちょっと周囲の音は鬱陶しく大きくかんじますが……」

お客さんは、自分自身が体験した事を話しだした。要領は得ないが自分が体験した事を自分なりに整理しながらお話しをしている。

「はい」

「ただ、どこまで聞こえれば良いのか、それがよくわかりません。音は聞こえるけれども、それをどう評価したら良いかわからないといいますか……」

「はい」

「音が聞こえて音声が理解できる事もありますし、できない事もあります。何かこう、音は聞こえているけれどもはっきりしない感覚といいますか、何かちょっと不思議な感じです。音が潰れた感じなんでしょうかね……」

「……」

お客さんは、補聴器を使ったときの感覚に関して戸惑っている。音がはっきりとしない感覚。何とも不思議な感覚がして、音が理解できない事。これは、補聴器を装用している人なら誰もが感じている事だ。

「そうですね……○○さん、私が初めにいった言葉は覚えていますか?」

「え〜っと、何でしたか?」

「どこまで効果が望めて、どこまで補聴器で改善できるのかを知る事が難しいと言った事です。今ならこの言葉の意味がわかるのではないでしょうか。今現在、何度か調整していますね。その事実からお考えになっていかがでしょうか」

「ああ……」

「この意味は、二つあります。まず一つは、音を聞く事でわかるのは自分がどのように音を感じるかであり、どのくらい聞こえるようになったのかはわからない事です。私の場合は、これを体感値しかわからないと表現しています」

「……」

「一つは、感音性難聴である点です。治らないのはともかく、治らないならどこまで改善できるのか?それが掴みにくいです。先ほど、おっしゃっていたのは、まさにこの部分になります。聞こえるようになったところもあれば、聞こえにくいところもある。では、その聞こえにくいところは、限界なのか。そうでないく改善できるのか、この点に関しては理解しにくい傾向があります」

「まさに今、その感覚です。これはどうにかなるものなのでしょうか」

「今現在の状態を見る限り、目標とする音量に近づければより良くできる可能性はあります。しかし、大変恐れ入ります、限度はあります。それが先生がおっしゃっていた補聴器で耳は治らないの真実です」

「そうですか……」

「では、どこまで改善できるのか。そのポイントを見極めるのが測定です。補聴器を装用している状態がどうなのか、耳の状態はどうなのか、この二つの観点から状況を把握し、改善させていきます」

「……」

「○○さんは、そこまでやらなくても?とお考えでしたが、事実はむしろ逆です。そこまでやらないとよくわからないのです。これは、補聴器を装用しただけでは、どう判断したら良いかわからない事、そして、どこまで改善できるのかを理解しにくい事が原因です」

「そうだったのですね」

「補聴器は耳につけるだけではわからないからこそ、測定する必要があるんです。もっとも中には、行えない状況下の方もいますので、全ての人にしているかといえば、そのような事はないですが、ほとんどの販売店はやっています。うちに限らずですが」

実際に聞こえを改善させるプロセス

「では、改めて状況に関して見てみましょうか。前回測定したものも含めてですが」

「はい、お願いします」

「まず、○○さんの耳の状態は、音を大きく入れる事によって、音声が理解しやすくなる耳である事がわかります。この測定、覚えていますか」

「ああ、あの「あ」「き」という言葉の単音を流したものですね」

「そうです。これはヘッドホンをつけて測定したものですが、これをみると、両方とも最良値は85%ですね。この数値は、良い数値ですので、補聴器を装用する事でもそれなりに効果がでます。この測定は、音を大きくした状態で単音を聞かせ、どのくらい音声が理解できる耳なのかを知る測定です。主に語音明瞭度測定と呼ばれています」

「語音……?」

「ああ、単語は覚えなくても構いません。こんなものがあるというものだけで……。これは、補聴器を装用した時にどれだけ効果がでるかを可視化する測定なんですね。仮にこの数値が低いと残念ながら効果そのものは見込みにくくなります。この点は、申し訳ございません」

「なるほど」

「○○さんの場合は、最良値、これは、測定したもののなかで一番良い数値の事ですね。それが両耳とも85%ですので、それなりに効果がでるという事です。この数値は、補聴器を装用した状態で、語音明瞭度を測定する際の目標値にも使われます」

「補聴器をつけた状態でも調べるんですか?」

「ええ、調べます。防音室の中に、四角いスピーカーがあったかと思うのですが、あちらから音を出して調べます。この測定は、最終的な補聴器の効果チェックで行います。もちろん、その前にも私の方では行っていますね。チェックの対象としてですが」

「調べる際は、各音声レベルの音量で調べたりします。そうする事で補聴器の効果が出ているのか、どのくらい理解できているのかを可視化する事もできます」

「色々あるんですね……」

「そうですね。この他には、補聴器を装用した状態でどれほど音が聞きやすくなったかを調べる測定もあります」

「……」

「安心してください。補聴器を装用した状態で調べるのは、おもに二つしかありません。補聴器を装用した状態で音の聞こえを調べるのと音声の理解度を調べるのの二つです。つまり上記にあるので全部です」

「安心しました……。まだまだたくさんあるのかと思いました……」

「すみません、全体からお話しすべきでしたね。その点は、申し訳ありません」

「基本的に補聴器の場合は、目標値を設定して、そこを目指して調整をしていきます。もっとも評価する対象は、音を聞いた感覚と聞こえるようになった効果の二つですね」

「……」

「これらは測定と使った感覚、この二つで判断していきます。とまぁこんな風に補聴器は聞こえを改善させていきます」

「色々ありますね……」

「すみません、説明に関してわかりにくいところがあったのは申し訳ございません」

「いえいえ、ありがとうございます。まだ消化できていない部分がありますので、また質問するかもしれませんが……」

「もちろん、どんどんご質問ください」

「しかし、色々とやっているんですね。正直まだ飲み込めない部分はありますが、色々考えて行ってくれているんだなというところだけはわかりました」

「ありがとうございます」

その後、調整を繰り返し、彼は聞こえを改善させて行った。もちろん、調整には限界もある。聞こえにくいところも出てしまう。しかし、できる限り補えるところは補った。どのように補ったらよいかを初めに説明させていただいたせいか、非常に協力的だった。

感音性難聴は治療できないし、補聴器を装用しても治らない。であれば、せめてできるところは改善させるべきではないだろうか。もちろん、評価の対象は必ずしも音がしっかり聞こえる事ではない事もある。

しかし、できる限りの事を行う。これは、どのような物事にも共通するスタンスではないだろうか。私の場合は、上記の事をして、できる限りの改善をしている。どうしても限界がある点に関しては、申し訳ない。

耳を治す事はできないが、状況を改善する事はできる。それが補聴器だ。これらは、感音性難聴という症状にしっかり向き合うために行っている。

 

この内容をご覧になった方はこちらもお勧めです。

リンク:補聴器を使う覚悟を決めた方に伝える3つの事

リンク:補聴器を使用する気がない人に、補聴器は難しい

リンク:生まれつき聞こえにくい私は、自分の聴力をどう改善させたか

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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