2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

【騒がしい中でより聞きやすく】クロス補聴器をお持ちの方へ行った聞こえの改善

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元々、耳かけ形のクロスをお持ちの方から、今現在の状態をより改善できないかという相談をいただきました。当店で対応させていただいた結果、「騒がしいところでも今まで以上に聞きやすくなった」「飲食店でお話しても聞き取りに問題なくなるくらいまで良くなった」「会議でも聞こえにくい側にいる人も聞きやすくなった」との声をいただきました。

では、どんな風に改善したのでしょうか。こちらに関して載せる許可をお客様よりいただきましたので、記載していきます。聞こえにくさを感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

お客様の状況

お客さまの状況としては

  • 名前:K・T
  • 年齢:40代
  • 性別:男性
  • 症状:生まれつき左側が聞きにくい
  • 改善:耳かけのクロスのみ、耳あなのクロスへ変更
  • 備考:補聴器は、元々使用中で、更なる聞こえの改善のため、ご相談に。

と、なります。

元々、左側が聞きにくく、聴力に関しては、概ね、以下のような状態でした。

お客様の聴力、片耳が聞こえており、もう片耳は、ほとんど聞こえない状態。

お客様の聴力、片耳が聞こえており、もう片耳は、ほとんど聞こえない状態。

初めてクロス補聴器を購入したのは、ご相談になる4年程前で、それまでは、ずっと聞こえにくい状態で過ごされていました。購入したクロス補聴器のイメージとしては

あくまでもイメージ。実際には、この補聴器の2〜3世代前のもの。

あくまでもイメージ。実際には、この補聴器の2〜3世代前のもの。

このような耳かけ形となります。

聞こえにくい状態をなんとか改善させようと、クロス補聴器を自力で見つけ、試した後に耳かけ形のクロス補聴器を購入。いくらか聞きにくさを改善できたものの、改善したいところで、あまり改善できず、こちらにご相談になられました。

主に困っていたところは、

  • 車の中の会話
  • 騒がしいところでの会話

の二つとなります。左側が聞きにくいため、ご自身が運転する場合は、聞きにくい側に強制的に人が来てしまいますので、聞きにくさを感じやすく、この点は、耳かけのクロス補聴器でも聞きにくさを感じている状態でした。

また、仕事上、騒がしいところでお話する機会もあり、そのような場所ですと、聞きにくい側のすぐ隣でも、かなり聞きにくくなるとのことでした。その点も耳かけ形のクロスでは、改善しにくい部分でした。

突き詰めると、聞こえにくさに困っていた点は、全て騒がしいところでの会話になり、その点をいかに改善させるか。となりました。

状況改善の考え

さて、状況改善の考えですが、基本的に補聴器に限らず、騒がしいところでの聞こえ改善には、あるものが重要になります。それは、SN比と呼ばれる概念です。こちらの案件に関しては、いかにこのSN比をよくさせるか、それが課題になりました。私が考えたのは、

  1. 周波数別に大きくする音量に差をつけ、SN比を改善させる
  2. 耳あな形にして入る音を制限し、SN比を改善させる
  3. 音量の上限をあげ、SN比を改善させる

の3つになります。

騒がしい中で聞きやすくするために必要なもの

騒がしい中で聞き取りをよくするには、SN比をよくすることが不可欠です。SN比とは、S(シグナル)とN(ノイズ)の対比のことで、Sは、聞きたい音、Nは、邪魔する音になります。基本的にSは、Nより大きくないと聞き取ることができません。これは、健聴の耳でも同様です。

人が音声を聞き取れる理由は、単純でSがNより大きいためです。静かなところでも基本的にNは、40dBほどあり、人の音声は、通常の音量だと60〜65dB、つまり、Nより人の声の方が大きいため、聞きやすい状態となります。騒がしいところですと、例えば、交通量が多い道路だと70dBほど、居酒屋や人が多い飲食店ですと80dBくらいで、ここまでくると、聞こえる人でも聞きにくくなります。それは、SとNの音量差が小さくなるためです。

一般の耳では、SN比が0の状態(Sの音量とNの音量が同じ)で、明瞭度(音声の理解力です)は、50%。そして、Sが1dB上がるごとに10%ずつあがり、Sが5dB上がることで約100%になります。この点は、周囲の音よりSが5dB大きくなれば概ね聞こえるようになると覚えておけばOKですね。

なお、難聴の方は、健聴の人以上にSN比の改善が必要になります。逆に言えば、片耳難聴の方は、聞こえる耳に補聴器を装用するため、一般の難聴よりも騒がしいところでは、改善しやすいとも読み取れます。必要になるSN比が難聴の耳に比べ低いためです。

ここからが重要ですが、ではそれを補聴器でどう再現するのか、それが上記の三つとなります。

周波数別に大きくする音量に差をつける

こちらは昔から行われていた方法で、周囲の騒音と人の音声の部分の周波数の違いを利用し、周囲の騒音となる部分は、あまりあげないようにし、人の音声を聞く上で重要な周波数帯を上げることで、意図的にSN比に差をつける方法となります。これは、今でもやられている方法の一つです。

耳あな形にして入る音を抑制する

こちらは、耳あな形と耳かけ形の音を拾う範囲が異なる点を利用したやり方です。耳かけ形と耳あな形の違いは、簡単に言えばマイクの位置の違いです。しかし、音響機器である補聴器は、マイクの位置が異なるだけで聞こえ方も大きく異なります。

補聴器は音響機器であり、音響機器は、音の広い方により、大きく聞こえが変化する。音をどう出すかもそうだが、どう音を拾うかも重要な要素である。

補聴器は音響機器であり、音響機器は、音の拾い方により、大きく聞こえが変化する。音をどう出すかもそうだが、どう音を拾うかも重要な要素である。

耳かけ形は、全方向から音を入れる傾向があるのに対し、耳あな形は、前方をより拾うようになります。一番感度が上がるのは、45度の位置であり、そこからの音は、気がつきやすくなります。そして、後方からの音は、耳の遮蔽効果により、-5dBされます。

お気付きの方は、お気付きかと思いますが、人の耳は、前方と後方で同じ音量を出した場合、前方の音の方が入りやすくなります。そして、遮蔽効果により、-5dBされているので、前方からSを流し、後方からNを流した場合、仮に同じ音量を流したとしても、ちゃんとSが聞こえるようになっています。人の耳は、騒がしい中でも聞こえるような仕組みになっているという事ですね。

音量の上限を上げる

こちらは、音量の上限を下げすぎていると、すぐに上限に達してしまい、人の音声と周囲の騒音の大きさが同じになってしまうためです。SN比は、Sを大きくしなければならないため、必要以上に出力の制限をかけると聞きにくくなる原因になります。そのため、上限に関しては、解放し、聞きにくくならないようにする……というのが方法の一つです。

そして、その3つを行うために、耳あな形のクロスを製作し、試聴、貸出することとなります。

実際の対応

実際の対応としては、上記に関して説明させていただき、耳の型を採取し、実際に試した。ただそれだけになります。こちらでは、

  • 初回の試聴の結果
  • 貸出し、実際に試した感想

の2つに関して記載していきます。

初回の試聴の結果

さて、実際にお作りしたのは、耳あな形のクロスとなります。形状としては

お客様に提供した形状は、補聴器:耳かけ、クロス:耳あな、となる。

お客様に提供した形状は、補聴器:耳かけ、クロス:耳あな、となる。

このようになります。耳かけ形の補聴器は、持っているもので代用し、クロス側の機器を耳かけ形→耳あな形に変更しました。

実際に耳あなのクロスをお店で試した限りでは、

  • 音量が変わっている様子がわかる
  • 上からの音が小さいのがわかる

の2つがありました。音量が変わっているというのは、耳かけ形と異なり、耳に入れた時にしっかり音が入っている、聞こえる感覚があるとのことでした。耳かけ形は、聞こえているのか、聞こえていないのかがわかりにくい傾向があるのですが、耳あな形のクロスは、首を動かしたり、耳の向きを変えると明らかに聞こえる音量が変化するとのことでした。

その他は、上からの音が小さくなっているのがわかるとのこともありました。耳かけ形は、頭の上の音も良い意味でしっかり集音するので、その部分の音が入りやすいということになります。これは、例えばショッピングモールやヨドバシカメラみたいなBGMがガンガン流れるとこでは、その音に邪魔されて、聞きにくくなることにもつながります。音量が大きければそれだけ邪魔される可能性は高くなります。

補聴器で重要なのは、全方向から音を入れるのではなく、必要なところからしか音を入れないことです。そうしないと特に騒がしいところでは、周囲の音が多く入り、それらの音に邪魔され、聞きにくさを感じやすくなってしまいます。

お店で試した状態で、これらのことが確認でき、実際に貸出することとなります。

貸出し、実際に試した感想

貸出した結果、実際にお客様から伺ったのは

  • 使いたかった仕事上の騒がしいところでは実際に聞きやすくなった
  • 居酒屋レベルで騒がしいところで、会話に困らなかった
  • 会議などの席では、聞こえやすくなった

とのことでした。お客様から伺ったなかで最も印象深かったのは、耳かけ形のクロスは、左の音が少し聞きやすくなる程度ですが、耳あな形のクロスは、左耳が聞こえるようになったと錯覚するほど、聞こえる様になったとのことでした。

そして、今まで居酒屋レベルで騒がしいところでは、会話がわからなかったのですが、そのようなところでも会話ができるようになったとの事でした。また、会議などの席では、あった方が聞きやすくなるとの評価でした。

実際に困っていた騒がしい環境下でも聞こえるようになり、効果に関しては、非常に感じていただけました。

実は、いろいろと改善策を考えてはいたのですが、実際には、①〜③の内、②しか実行しておらず、①と③については、調整を見る限り、すでにしている状態でした。

その結果ではありますが、耳かけ形と耳あな形で聞こえが大きく変わり、かつご自身が感じていた騒がしいところでの会話は、概ね改善できました。耳が治るわけではありませんので、いくらか聞きにくいところはあったかと思いますが、試聴されたお客様からは「十分です」と返答いただき、そのままご購入となりました。

お客様の声

実際にご購入になられたお客様より、改めて相談されてどうだったのか。こちらについて、お伺いしてみました。その結果

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と、ご返答いただけました。相談前の状態は、あまり聞こえにくさが改善できていませんんでしたので、補聴器を使用する機会も少なかったのですが、聞こえるようになってどんどん使用するようになり、何よりです。

なお、当店でご購入いただけた理由に関してお伺いしてみますと

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とのことでした。補聴器は体験してみないと本当に改善できるのかがわからないため、このような方式を取っているのですが、それが、お客様の安心に繋がっていましたら、良かったです。

担当者:深井からコメント

この度は、ご相談いただきまして、誠にありがとうございました。見事に難しいところのみの改善希望でしたので、できるかどうかが不明だったのですが、人がどのように騒がしい中で聞き取っているのか。その原理から考え、クロス補聴器で実行した結果、より良くなり本当に良かったです。私にとっても貴重な経験になりました。

耳かけ、耳あなは、単に形状が異なるだけではなく、聞こえの効果も変わります。その点を含めた相談が重要である事を実感させられた対応でした。どんな人も聞こえにくいより、聞こえた方がいいですから、今回の経験は、大変な意味を持ちます。本当に聞こえやすくなり、何よりです。

これからは、聞こえにくい事で悩むこともより少なくなりそうですね。お仕事や趣味、なんでもどんどん挑戦してもらえればと思います。

さて、当店では、このように聞こえにくさの改善を行なっております。もし聞こえにくい事でお悩みな方や今の聞こえをより改善させたいとお考えの方は、ご相談ください。私の方で、聞こえにくさを改善させるお手伝いをいたします。聞こえにくさの軽減に貢献できれば幸いです。

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この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、お客様の聞こえを改善しています。私に関する内容は、書いている人の詳細をご覧下さい。当店の特徴は、こちらです。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

補聴器で耳を改善させる手引き書、作りました

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  • 自分の症状に合う補聴器は何か
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