耳が聞こえにくくなり、補聴器を考えるようになった方に多いのは、どの補聴器がどう良いのか。それがわからないことかと思います。
金額が金額なだけに良いものを購入したいと思う反面、できるなら安くしたいと考えるのが一般的です。しかし、価格が低いものを購入する際に心配なのは「それでちゃんと聞こえにくさは改善できるのだろうか?」という不安です。
そこで、こちらでは、聞こえにくさを改善する際に影響する基本の部分と性能と形状の部分に関して触れていきます。
補聴器には、聞こえを改善させるベースの部分があり、そのサブとして、性能があります。性能に関しては、サブというよりもアシストしてくれるものと考えた方がわかりやすいかもしれません。そして、形状は、扱いやすさ、使いやすさに関わってきます。
目次
補聴器の基本
補聴器で聞こえを改善させる場合、関連する要素としては
- 聞こえ改善のベースとなる基本要素
- その他、アシストする要素
の2つに分かれます。この2つにより、補聴器での聞こえの改善度が決まります。
聞こえ改善の基本要素
補聴器で聞こえを改善させる際の基本要素は、
- 自分の聴力を補えるものを選択する
- 聞こえを改善させる目標値まで音を入れる
この2つだけしかありません。
自分の聴力を補えるものを選択する
補聴器には、予めある程度、音の出力が定められており、その出力が自分の耳を補えるものであれば大丈夫です。どの補聴器がどれだけ出力があるのか。そして、自分は、どの補聴器なら耳を補えるのか。それは、補聴器のカタログを見ればわかります。
補聴器メーカーフォナックジャパンより引用
まず、補聴器には、大きく分けて耳にかけるタイプ、そして、耳の穴の中に入れて使用するタイプの二つがあります。それぞれの耳の補える範囲は、上記の通りです。

補聴器には、必ず対応できる聴力が記載されている。それに合うものであれば、ほとんどの聴力で活用できる。
そして、こちらは、私が扱っているフォナックの補聴器のカタログになるのですが、補聴器には軽度~中等度用、高度~重度用など、どの聴力に合う補聴器かが記載されています。自分の聴力(難聴度)に合うものを選択すれば、耳に対して音を補うことができます。
軽度の難聴であれば、軽度~中等度難聴対応と表記されているものを選べば良いですし、中等度も同様です。高度難聴の場合は、高度~重度難聴と表記されているものであれば、間違いはありません。
逆に言えば、重度難聴の方が、軽度難聴~中等度難聴のものを選択しても聞こえを補えませんので、そのような選択をしなければ大丈夫ということになります。
聞こえを改善させる目標値まで音を入れる
耳を補うことができる補聴器を選択したら、次は、聞こえを改善できる目標値まで音を入れます。こちらは、いわゆる補聴器の調整と呼ばれる内容になります。

補聴器調整の例。補聴器は、基本的にパソコンで調整し、聴力に合わせ、周波数別に音量を大きくしていく。そのため、細かく周波数が分かれている。
補聴器は、音を大きく聞こえさせる道具ですが、聞こえにくさが改善できる目標値まで音を入れなければ、聞こえにくさを最大限、軽減させることはできません。この部分は、補聴器が自動で調整してくれるものでもなく、自動で決められているのでもありません。半分自動、半分手動で調整していきます。

補聴器には、補聴器を装用してどのくらい聞こえているのか。それを調べるものがある(音場域値測定と言います)。それを基準としてみるとこのようになる。
聴力により、目標とする聞こえの改善値は、変化しますが、聞こえにくさがなるべくなくなるよう改善目標値を設定し、補聴器を調整する人が、音を調整して聞きやすくしていきます。
この部分で補聴器の聞こえは、ほとんど決まります。補聴器を装用した聞こえのベースは、主にこの点になります。簡単に言えば、どこまで聞こえさせるか。それにより、補聴器の聞こえが決まる。ということです。
ベースとなる聞こえのポイント
ここでいくつか疑問が出てくるかと思います。疑問点としては
- 出力は、金額によって変わるの?
- 調整は、金額によって変わるの?
の2つです。
出力は、金額によって変わるの?
こちらに関しては、他のメーカーさんはわかりませんが、当店が扱っているフォナックというメーカーは、金額は変わりません。軽度~中等度用の補聴器も高度、重度難聴用の補聴器も一律、同価格です。ただし、同じ形状、同じ性能で比較した場合になります。
昔は、聴力が重い方ほど、より音の出力が出る補聴器が必要だったため、高度~重度難聴の方は、軽度難聴~中等度難聴より、高いお金を払わなければならなかったのですが、それは、差別になると考えたのか、同社は、全て同じ金額にしています。
そのため、特に出力、言い換えれば難聴別に必要な出力により、金額が変化することはありません。
調整は、金額によって変わるの?
この点は、あまり変わりません。補聴器で聞こえを改善させる場合、聞こえを改善させる目標値を決め、そこまで改善させることになります。それが聞こえのベース(補聴器の聞こえの効果のベース)となることは、上記に記載しました。
しかし、この点は、
- 聴力を補える出力が補聴器にあること
- 聴力から販売員が目標値を定められること
の2つができれば(あれば)、この目標値まで聞こえを改善させることができます。
あまり変わらないと記載したのは、目標値や音を大きくするのは、どの補聴器でもできることだからです。ただ厳密には、金額が上がるとch(チャンネル)という性能が良くなります。

こちらは、20chのもの。どの周波数も細かく分かれており、足りないところだけ補う、大きく感じるところだけ下げるというのがやりやすい。
チャンネルというのは、補聴器の調整の際に、どれだけ細かく調整できるかを表すもので、上記のものは、20chのものです。

こちらは、8chのもの。調整できる幅が少し制限されるため、少々、大雑把に調整することになる。
そして、上記のものが、8chのものです。どの補聴器にも、どれだけ細かく調整できるかが記載されており、これをch(チャンネル)もしくは、バンドと呼びます。
これが優れることで、調整の際、足りていない周波数の部分があれば、その部分だけ調整できたり、逆に大きすぎれば、その部分だけ小さくできるため、より細かな音の調整ができるようになります。
そのため、音の細かな設定に関しては、少々金額により変化します。ただし、聞こえを改善できる目標値が金額によって変わることはありません。少々、補いやすさ(改善目標への達成のしやすさ)が変化します。
聞こえのベースのまとめ
補聴器で聞こえのベースとなる部分は、金額により、大きく変化する訳ではありません。自分の耳を補える機器を選べば、単に音を聞かせる、耳の改善ができる部分まで改善させることは、どの補聴器でもできます。
その他、アシストする機能
さて、補聴器を選ぶ場合、形状と性能という部分があります。この2つに関しては、簡単に言いますと聞きやすさ、使いやすさをアシストする機能と考えるとわかりやすいです。
聞こえ改善のベースにアシストしたり、使いやすさ、状況別に使いやすくしてくれたりなど、主にアシストする機能が性能、形状です。
性能で、聞こえをアシスト
補聴器の性能には、基本的には
- 音を調整する機能
- 騒がしい中でなるべく聞き取りを低下させない機能
- 聞こえてくる音の快適性をあげる機能
の3つが含まれます。
音を調整する機能は、音をより細かく調整できるようにすることで、上記の調整をアシストしたり、何かきになる音があった場合は、音量を下げ、アシストしやすくしてくれます。
騒がしい中でなるべく聞き取りを低下させない機能は、騒がしい中で聞き取りにくくなりやすい難聴の方の聞こえをなるべく可能な限り、下がらないようにアシストする機能です。騒がしい中での聞こえは、難しい部類に入りますので、この機能があっても難しい時は、難しいのですが、可能な範囲内で聞きにくくならないようにアシストしてくれます。
聞こえてくる音の快適性をあげる機能は、簡単に言いますと、音響機器的に発生しやすいノイズ、あるいは、音の特徴を軽減してくれる機能です。補聴器は、音響機器ですので、音響機器独特の「サー、ザー」といった音や風がマイクに当たると大きな音が聞こえます。このような音を抑制し、快適性を高める機能です。
補聴器の機能には、大きく分けるとこの3つになります。これらの機能があると目標とする部分まで改善させた補聴器の聞こえをさらにアシストしていくことができます。
形状によるアシスト
形状による特徴は、使いやすさになります。
補聴器の形状には、主に
- 耳あな形
- 耳かけ形
の2つがあります。

耳あな形の特徴は、耳の中に入れられること。それにより、ものに邪魔されにくい。
耳の中に入れて使うタイプは、耳あな形と呼ばれるものです。耳あな形の場合は、耳の中に入れてしまえるため、メガネやマスク、ヘルメットなどの邪魔になることはありません。
耳かけ形だと、邪魔になることがあるのですが、そのようなものを使う場合は、耳あな形の方がより使いやすくなります。

耳にかける補聴器が耳かけ形。形状は少し大きくなるが、操作性は、良い傾向がある。
耳かけ形は、少々、形状が大きくなります。その代わり、操作性に優れており、音を変化させたり、スイッチで変化させるということが簡単になります。

補聴器にはいくつか操作できるものがある。
少し形状が大きくなる代わりに様々な操作がしやすいため、操作性に優れる傾向があります。耳あな形も操作ができますが、形状により、制限させるケースもあります。
このように形状により、少々特徴も変わります。
補聴器で聞こえを改善させるベースのまとめ
基本的に補聴器は、聴力さえ補える出力があるものであれば、耳を補うことができます。聴力より改善目標を定め、そこまで聞こえを改善させられれば、聞こえの改善ができます。
そして、その効果は、補聴器の金額によって大きく変化するわけではありません。金額の変化は、性能の部分と形状の部分で変わり、この2つによって大きく変化します。特に性能による変化が非常に大きいです。
性能の違いは、音を聞こえさせる部分まで持ってくると当然ですが、周囲の音もよく入りますし、騒がしいところでは、たとえ音を聞こえるようにさせたとしても、却って様々な音が入ることにより、聞きにくさを感じることがあります。
それらの部分を性能で補うため、性能の部分の金額差が大きくなります。昔の補聴器は、調整する部分だけしかありませんでしたが、それだけでは、ある音が気になったり、騒がしいところでは、ほとんど効果がなかったため、その部分に今は力を入れています。
しかし、聞こえを改善させるベースに関しては、金額により、大きく変化するわけではありません。どこまで聞こえを改善させることができたのか。それにより、変化します。ですので、聞こえの効果を可視化し、今どのくらい補えていて、どこまで改善できれば良いのか。それをしっかりと見ることが重要です。
性能や形状は、基本の聞こえのベースにアシストするものです。基本の部分(聞こえの改善の部分)は、ほとんどのもので改善できますので、その点は、ご安心ください。基本の部分にどれだけプラスαするか、それが補聴器の金額ごとに変化します。