両耳が聞こえにくい方を補聴器で補う方法と補う5つのパターン


補聴器で聞こえを改善させる際、はじめに考えることは、耳の補い方になります。「補い方?」と感じる方もいるかと思うのですが、補聴器には、様々な補い方が存在しています。

こちらでは、両耳とも聞こえにくい方のパターン別にどのような補い方があるのか。その点に関してまとめていきます。はじめに補聴器で補う耳の状況パターンを出した後、それぞれ、補聴器やバイクロスと言った補うものについても説明していきますので、参考にしてみてください。

なお、以下の内容は、基本的に耳の状況を調べた後、その状況をみながら行なっていくことになりますので、耳の状況(聴力検査、語音明瞭度測定)の見方がわからない方には、チンプンカンプンになります。わからない方は補聴器で聞こえを改善させるための2つの耳の検査方法をご覧になり、見方を理解した上で進んでいただくことをお勧めします。

両耳とも難聴の方を補う5つのパターン

さて、実際に両耳とも聞こえにくい場合、どのような補うパターンがあるのでしょうか。それは

  1. 両耳とも同じくらいの聴力で明瞭度が良好なケース
  2. 片耳が軽度~中等度難聴でもう片耳が重度難聴のケース
  3. 片耳のみ明瞭度が低いケース
  4. 両耳とも明瞭度が低いケース
  5. 両耳とも重度難聴(90dB以上)のケース

の5つです。ほとんどの方は、この5つの内、いずれかに該当します。

①両耳とも同じくらいの聴力で明瞭度が良好なケース

こちらは、両耳とも補聴器を装用し、改善することが一番良い改善方法となります。

ケースその1、両耳の聴力が同じくらいのケースの例。

ケースその1、両耳の聴力が同じくらいのケースの例。

例えば、このような聴力で

そして、明瞭度も両耳とも同じくらいのケース。

そして、明瞭度も両耳とも同じくらいのケース。

明瞭度もこのようなケースが当てはまります。※明瞭度とは、音声の聞き取りの力のことです。

このようなケースであれば、両耳に補聴器を装用することで、最大限、聞こえにくさを改善できます。明瞭度測定にて、音を入れることにより、両耳とも理解度が上がっている事が確認できているためです。

なお、厳密には、このようなケースでは

  • 片耳のみ補聴器を装用する
  • 両耳とも補聴器を装用する

の2つの選択肢があります。健聴の方は、両耳とも聞こえていますので、その状態を基準とし、片耳のみ補聴器を使用した場合を比較しますと、

  1. 装用していない側からは聞きにくくなる
  2. 人が多いところや騒がしいところではより聞きにくくなる
  3. 複数の人とお話しする際は、装用していない側が特に聞きにくくなる
  4. 音の方向がわからない(自転車や自動車の方向がわからず、身の危険があったりします)

の4つが出てしまいます。

片耳のみ装用した場合大きな変化は、騒がしいところでの聞き取りが非常に難しくなる事と聞こえない側(つけていない側)からの音がわかりづらくなる事です。

メーカーのカタログに記載されている片耳、両耳の違い。基本的に人は、両耳あるので、両耳で聞こえる状態がベースとなる。そこから考えると聞こえに関しては、マイナスしかない。

メーカーのカタログに記載されている片耳、両耳の違い。基本的に人は、両耳あり、両耳で聞こえる状態がベースとなる。そこから考えると聞こえに関しては、片耳のみでは残念ながらマイナスでしかない。

補聴器メーカーフォナックのカタログより引用

こちらは、両耳とも聞こえる場合と片耳のみ聞こえる場合の理解度を示した図です。私自身も子供の頃は、片耳のみ装用していた時期がありましたが、騒がしいところを含め、上記の4つの部分による不自由なところはありました。

そのため、今現在では、両耳装用にしています。日常生活を送る上で、騒がしいところがない状況などあり得ませんし、聞きにくさを感じていたため最良の方法を選びました。両耳装用することにより、より聞きにくさはなくなりました。

もちろん金額が大きくなる欠点はありますが、聞こえの改善を1番に考える場合は、両耳とも装用し、できる限り、改善させていくのが一番ベストとなります。

②片耳が軽度~中等度難聴でもう片耳が重度難聴のケース

このようなケースは、バイクロス補聴器がもっとも改善しやすくなります。

片耳のみ聴力低下が大きいケース。

片耳のみ聴力低下が大きいケース。このようなケースは、聴力低下している耳側は、補聴器で補えない事が多い。効果的な改善を行うならば、バイクロスという少し変わった機器で、改善させる。

このような聴力だった場合、聞こえにくい耳に補聴器を装用しても効果は薄くなります。特に聴力測定の際、測定時の音がほとんど聞こえず、ただ単に鼓膜がブルブル震えているだけ……という場合は、ほぼ補聴器の効果が見込めません。お医者さんからも補聴器の効果はないと言われるケースです。

そのため、まだ聞きやすい耳側は、補聴器で補い、音を入れてもほとんど効果が見込めない耳側は、クロスの送信機をのせ、まだ聞こえやすい耳側へ音を転送する、バイクロスという少し変わったやり方で改善させるのが、もっとも聞きにくくさせる補い方です。

厳密には、このようなケースは、

  • まだ聞きやすい側のみ補聴器を装用し、片側だけ聞きやすくする
  • バイクロス補聴器を装用して、両方とも聞きやすくする

の2つがあります。昔は、前者(まだ聞きやすい側のみ補聴器を装用し、片側だけ聞きやすくする)が多く、それでも一部は改善できていたのですが、このようなケースで困りやすいのは、

  • 聞こえない側から話された時に反応できない
  • 騒がしいところでのお話しがわかりづらい
  • 複数の方とのお話しで、聞こえない側からが特にわかりづらい

の3つの部分です。これらの部分は、片耳のみ補聴器をつけても改善は難しい状態になります。また、当たり前ではありますが、聴力低下が大きい方が聞こえにくさを感じやすい状態となります。

聞こえない側から転送できる機器をつけても耳が治る訳ではありませんが、片耳のみ装用するよりは、より聞きやすくなります。聞こえにくさの改善を第一に考える場合は、こちらの補い方がおすすめです。

③片耳のみ明瞭度が低いケース

こちらは、②と同じくバイクロスで補った方が聞こえにくさは改善できます。

例えばこのように同じような聴力でも

片耳のみ明瞭度が低いケースの例。こちらは、聴力関係なしに明瞭度が低いケースとなる。

片耳のみ明瞭度が低いケースの例。こちらは、聴力関係なしに明瞭度が低いケースとなる。

語音明瞭度測定をしてみると、片耳の明瞭度が低い事がわかった場合は、その片耳に補聴器を装用しても、あまり補聴器の効果を感じない状態となります。そのような場合は、バイクロス補聴器で補った方が、聞こえにくさは改善できます。

見分け方は、数値もそうですが、語音明瞭度測定を行った際に音声の聞き取りで感じた感覚はどうだったかです。

  • 声が歪んで聞こえた
  • 音声が音声じゃなく聞こえた
  • 音は聞こえるが、なんと言っているのかイマイチよくわからなかった

このような感覚が強い場合は、補聴器でその耳をよくしても同様の症状が出る傾向がかなり高くなります。そのため、聞こえる耳側で全てを聞けるバイクロスの方が聞こえにくさは、改善できます。

④両耳とも明瞭度が低いケース

このようなケースは、両耳とも補聴器を装用し、なるべく聞こえを改善できるようにしていきます。

両耳とも明瞭度が低いケース。

両耳とも明瞭度が低いケース。両耳とも測定しても思うように改善ができない場合は、このように出ることもある。

聞こえにくくなった方の中には、このように両耳とも明瞭度が低いケースがあります。このような場合、明瞭度が低いことを前提に両耳装用し、なるべく聞きにくさを改善させていきます。

ただ、こちらのケースは、仮に両耳に装用したとしても効果がかなり限定的になります。しかし、それでもつけた方が聞こえるようになることもありますので、装用し、なるべく改善できるようにしていきます。

⑤両耳とも重度難聴(90dB以上)のケース

両耳とも重度難聴のケースでは、効果を望むなら、補聴器ではなく人工内耳をお勧めします。

両耳ともかなり聴力が重いケース。

両耳ともかなり聴力が重いケース。このようなケースは、補聴器で改善させることもあるが、効果的に補っているケースとそうでないケースをみる。ただ、今現在は、人工内耳という改善方法もあるので、効果を求める場合は、そちらが良い。

このような聴力の場合、誠に申し訳ないのですが、補聴器の効果は薄くなります。補聴器は、聴力の低下が大きいと大きいほど、聞こえの効果は薄くなります。そして、ここまで聴力が低下した場合、補聴器を装用しても一般的な会話音を理解するのに必要な値まで聞こえさせることが困難であることが多いため、聞こえにくさの改善にフォーカスした場合は、人工内耳がお勧めです。

耳を手術することや補聴器以上にお金がかかる(保険がきけば補聴器1台分くらいかそれ以下(※初回のみ))のはありますが、聞こえの改善度は、補聴器の比ではありません(※人工内耳も耳が治るところまでは、改善できません)。

このようなケースに補聴器を装用するのは、人工内耳はリスクが高い方や片耳は人工内耳を使用されており、もう片耳を補聴器で補う場合です。そのようなケースに、補聴器を装用します。

補うパターンのまとめ

両耳とも聞こえにくい場合は、主にこれらのパターンに分かれます。難しいのは、聞こえにくい側が①と②の間にある聴力で、補聴器で補った方が良いのであれば、両耳とも補聴器、バイクロスの方が効果が見込めそうだと感じたら、バイクロスで補っていきます。

耳は、聴力低下した経緯が異なれば、みなさん異なる耳の状態になります。そのため、それぞれに適した補い方があります。

両耳とも聞こえにくい人の補う2つの方法

では、こちらでは、両耳とも聞こえにくいケースに置いて、補い方をまとめていきます。両耳とも聞こえにくいケースでは、基本的に

  • 両耳に補聴器を装用する
  • バイクロス補聴器を使用する

の2つがあります。中には、片方だけ補聴器を装用するケースもありますが、こちらに関しては、上記の2つがあまり良い結果に終わらなかった場合や或いは、金銭面で考えた場合になります。

こちらでは、あくまでも聞こえにくさを最大限に改善させる。という考えのもと、記載していきます。

両耳に補聴器を装用する

こちらでは、

  • 補聴器の概要
  • 補聴器で補う基本

の2つを記載していきます。

補聴器の概要

こちらで記載している補聴器とは、

このような耳にかけるタイプや

耳の中に入れて使用するタイプがあります。聞こえなくなってしまった耳に直接、補聴器を装用し、改善していくのが補聴器です。

補聴器で補う基本

補聴器で聞こえを補うケースは、基本的に補聴器の適合がある方になります。具体的には、

  • 聴力は、70〜80dBまで
  • 明瞭度は、60%、できれば80%以上が望ましい

となります。上記の例では、①、④、⑤の3つが対象になります。①は、一番良い形で、④と⑤は、それ以外の改善方法がないために選択されます。

聴力は重すぎると、効果的に補う事が難しくなり、音声の理解度のレベルが低い場合も、音は、聞こえるけれども、何を言っているのかわからない。という感覚が強くなってしまいます

両耳とも上記の2つを適していると効果的に補えるようになりますので、聞きにくさをそれなりに改善させる事ができます。

詳しくは、補聴器で聞こえを改善させるための2つの耳の検査方法に記載したのですが、耳の状況によっては、補聴器を装用しても、改善できない耳があります。

そのような耳に補聴器を装用しても、残念ながら効果的な改善はできません。補聴器は、音を大きくすることにより、聞こえが改善できる耳でないと、効果が薄くなってしまいます。

バイクロス補聴器を使用する

バイクロス補聴器とは、片側の耳は、補聴器の役割をして、聞こえを改善させ、もう片側の耳は、クロスという音の転送機を使い、まだ聞こえが良い方へ音を転送し、片側で全ての音を聞く機器になります。

イメージとしては、このようになります。

実際の補聴器は、このようになります。二つで一つの働きをし、形は、一般的な補聴器と同じです。しかし、片方(クロス)は、音を転送させるだけの能力しかありません。

形状は、耳にかけるもの以外にも耳の中に入れるものもあったりします。

このような機器があるのは、明瞭度が大きく低下していたり、聴力が大きく低下していると、一般的な補聴器では、効果が得られにくいためです。

そのため、まだ聞きやすい耳側へ音を転送して、聞こえを改善させる。という方法が考え出されました。実際に使用されている方は、何らかの形で、片耳が全く聞こえないケースや明瞭度が大きく低下してしまった方になります。

バイクロス補聴器で補う基本

基本的には

  • 片耳が大きく聴力低下しているケース(90dB以下、②)
  • 片耳の明瞭度がかなり低いケース(明瞭度50%以下、③)

の2つです。

片耳が大きく聴力低下しているケースは、その耳に補聴器をつけても、改善がほとんどできません。そして、それは、片耳の明瞭度が大きく低下しているケースも同様です。

このような聴力の方は、どうしても聞こえない耳側の方が聞きにくさを感じやすい状態です。そのため、バイクロスのような改善ができると、聞きにくさを感じている部分を効果的に改善させる事ができます。

補う方法のまとめ

両耳とも聞こえにくい場合における補う方法は、

  • 補聴器で補う
  • バイクロス補聴器で補う

の2つがあります。お察しだとは思いますが、補聴器は、どのような聴力、耳の状況でもたちまち補ってくれる訳ではありませんので、バイクロスという少し変わった方法で改善させる補聴器も出てきました。

補い方が重要というのは、耳の状況によっては、その耳に補聴器を装用しても効果が得られないためです。

たまに耳の状況を調べず、補聴器を装用していたり、両耳装用していたりするケースを見ます。効果が得られないとわかっている耳に補聴器を装用しても、その通りの答えしか返ってきませんので、耳の状況を把握した上で、補聴器を選ぶというのは、とても重要なことです。

最良の方法で補うことの重要性

さて、最後にですが、最良の方法で補うことの重要性について載せていきます。結論から言いますと、補聴器は、耳を治せる道具ではないため、最良の方法でやってあげないと、聞きにくさを感じやすくなってしまいます。

▲が補聴器を使った状態の聞こえ。補聴器の改善は、聴力ベースでみると、その実態がよくわかる。補聴器は、残念ながら正常の範囲内すら届いていないため、手を抜くと手を抜くほど、聞きにくさが強く出るようになる。

▲が補聴器を使った状態の聞こえ。補聴器の改善は、聴力ベースでみると、その実態がよくわかる。補聴器は、残念ながら正常の範囲内すら届いていないため、手を抜くと手を抜くほど、聞きにくさが強く出るようになる。

まず、今現在、補聴器で改善できる部分というのは、そこまで目指せる方で、おおよそ、30〜40dBの間で、35dBくらいを改善の目標にする事が多いです。

この聴力図は、補聴器の聞こえを耳ベースで見た場合の効果になるのですが、一般的な人が聞こえている数値は、0〜10dBで、かつ、正常の範囲内というのは、〜25dBまでになります。つまり、補聴器は、そもそもの部分として、一般の方どころか、正常の範囲内にすら改善が追いついていません。

実際には、上記の数値をあげようと思えばあげられるのですが、音量をあげすぎると、外の音や身の回りの音が大きすぎて、きつい感覚になってしまいます。日常生活で発生する音から、聞こえの部分を吟味すると、大体、30〜35dBくらいで落ち着くケースが多いです。

補聴器を装用する事で、簡単に改善したり、何も問題なく正常のラインまでいくのであれば、少し余裕を持たせても良いかもしれません。しかし、元々の部分が、そこまで達成できていないため、最良の方法で補ってあげないと聞きにくさの方が強く出てしまいます。

補聴器を装用したとしても、耳が治る訳ではないのですが、なるべく不便なところを改善させるには、最良の方法でやっていく事が、どうしても必要になります。

私自身は、補聴器を使っている人間(生まれつき聞こえにくいため補聴器を使って生活しています)で、実際に補聴器も扱っていますが、それを強く感じています。

両耳が聞こえにくい場合の改善、まとめ

両耳とも聞こえにくい場合、耳の状況により、補い方は様々です。それは、補聴器を単に耳に装用すれば聞こえるという単純なものではないためです。耳は、様々な理由により、聞きにくくなります。そして、その状態別に補い方を考えないと最大限、聞きにくさを軽減させることはできなくなってしまいます。

こちらで第一に伝えたかったのは、補聴器はどんな耳にも効果があり、何も考えなしに自動で改善してくれるものではないということです。そのため、自分の耳の状態を理解し、その耳をどのように補ってあげればよいかを初めに考えることが重要となります。その部分に関して、おわかりいただけたであれば、いいなと思います。

補い方を初めに考え、その補い方にそった補聴器を選択する。そのようにすることで、できる限り、聞こえにくさを改善させることができます。

 

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