片耳のみ聞こえにくい方を補聴器で補う時に理解したい2つの補い方


補聴器で聞こえを改善させる場合は、はじめにどのように補ったら良いかを考える必要があります。「補い方?」という方が多いかと思いますが、片耳のみ難聴の場合、特殊な耳である事が多く、この点をしっかり考えないとうまく改善ができません。

基本的に片耳のみ難聴の場合、補聴器で聞こえにくくなった耳側を補うケースとクロス補聴器という少し変わった機器で改善させるケースの2つに分かれます。

こちらでは、耳の状況別にどのように補ったら良いのか。その点をはじめに記載し、補聴器とクロス補聴器に関してもまとめていきます。

なお、以下の内容は、耳の状況を調べた後に考えるもので、耳の状況の見方がわからないと、記載している内容を理解する事ができません。もしわからない場合は、補聴器で聞こえを改善させるための2つの耳の検査方法をご覧になり、理解できるようにしておくことをお勧めします。

片耳のみ聞こえにくい症例の改善パターン

では、早速、改善パターンに関して見ていきましょう。片耳のみ聞こえにくい症例には、大きく分けて

  1. 片耳が全く聞こえないケース
  2. 中等度難聴くらいまでで明瞭度が良いケース
  3. 明瞭度が低いケース
  4. 音が歪んで聞こえてしまうケース

の4つのパターンに分かれます。まずは、それぞれの改善パターンに関してまとめていきます。

①片耳が全く聞こえないケース

こちらは、クロス補聴器という聞こえない耳側にくる音を聞こえる耳側へ転送する機器で改善を行うケースです。

こちらは、左耳が正常。右耳のみがほとんど何も聞こえない状態。

こちらは、左耳が正常で右耳のみがほとんど何も聞こえない状態の聴力。全く片耳が聞こえないケースは、このような極端な聞こえであることが多い。

片耳の聴力低下が大きい場合、聞こえにくい耳側に補聴器を装用しても、残念ながら聞こえを補えない事が多くなります。こちらは、その典型的な例です。よく医師から補聴器は、意味がないと言われてしまうケースで、このような場合は、クロス補聴器で補っていきます。

このようなケースに当てはまるのは、

  • 生まれつき片耳のみ難聴のケース
  • ムンプス難聴になり、片耳のみ聞こえないケース
  • 突発性難聴になり、聴力低下が非常に大きいケース
  • 聴神経腫瘍摘出手術により、聴力低下したケース
  • 外リンパ瘻により、聴力低下したケース

になります。

聴力低下が大きすぎる場合は、補聴器を装用したとしてもほぼ効果がありませんので、聞こえる耳側で全てを聞くクロス補聴器でなるべく聞きにくさを改善していきます。

②片耳が中等度難聴くらいまでで明瞭度が良いケース

このようなケースでは、聞こえにくい耳に補聴器を装用して改善していきます。

こちらは、左耳が正常。右耳が効きにくい状態になる。

こちらは、左耳が正常。右耳が聞きにくい状態になる。中等度難聴の場合、補聴器で補えるケースになる。ただし、音声の理解度がある程度、ある事が条件。片耳のみ難聴になるケースは、特殊なケースが多く、明瞭度が低いケースも多い。

聴力が中等度難聴くらいまでで

音を入れることによって理解できる耳の場合は、必ず縦軸が高くなる。

音を入れることによって理解できる耳の場合は、必ず縦軸が高くなるのがポイント。ここを見て判断する。

かつ、明瞭度が良いケースは、補聴器を聞こえない耳側へ装用した方が、全体的な聞こえの効果は高くなります。

クロス補聴器は、あくまでも聴力が重いために補聴器の効果が得られない方のためにあるものですので、このようなケースにも使えますが、どちらかというと補聴器の方が最終的な聞こえの効果は高くなる傾向があります。

片耳が聞こえる状態と両耳で聞こえる状態だと、両耳で音を理解できる方が聞こえの効果が高くなるため、聞こえの改善度を優先する場合は、聞こえない耳側へ補聴器を装用することをお勧めします。

このようなケースになるのは、

  • 生まれつき片耳のみ難聴の方(軽度〜中等度)
  • 中耳炎により片耳が難聴になった方
  • 突発性難聴により片耳が聞こえにくくなった方

このような場合になります。もちろん、これ以外にもあったりするのですが、よく見られるのは、この3つになります。

③片耳の明瞭度が低いケース

このようなケースは、クロス補聴器で改善していきます。

音を入れたとしても、それが音声の理解につながらないケースもある。こちらがその例。音量を大きくしても思うように数値が伸びていないことがわかる。

音を入れたとしても、それが音声の理解につながらないケースもある。こちらがその例。音量を大きくしても低い数値でとどまっている場合は、音を入れても理解に繋がらないため、補聴器の効果はほとんど得られないことが多い。

片耳の明瞭度が低いケースは、聴力関係なしにクロス補聴器となります。明瞭度が低いため、聞こえにくい耳に補聴器を装用しても残念ながら聞こえをよくさせることができないためです。

耳の状態を確認するポイントとしては、明瞭度が低いこと以外に、語音明瞭度測定をして、その時の音声の聞こえがどうかを確認します。音の大きさは十分なのに関わらず

  • 音は聞こえるけれど、全然はっきり聞こえない
  • 言葉が歪んで聞こえる
  • 異質に聞こえる

このような場合は、大抵、明瞭度が低下しているケースが多いです。そして、基本的にこちらの測定の音声以上に補聴器の方が音声が聞きやすくなることは難しくなります。

そのような場合は、聞こえにくい耳に補聴器を装用するのではなく、クロス補聴器で補った方が、聞こえにくさは改善できます。

このようなケースは

  • 生まれつき片耳のみ難聴の方
  • 突発性難聴により片耳難聴になった方
  • 原因不明の聴力低下があった方

に見られます。

④音が歪んで聞こえてしまうケース

一部の難聴では、聴力低下した側の耳が、異質に感じたり、音が歪んで聞こえる。という状態になる事があります。

そのような場合は、補聴器で聞こえをよくさせると、歪んだ感覚、異質な感覚を強めてしまう事が多くなりますので、クロス補聴器で改善させた方が、聞こえの改善は、よくなります。

このような事が起こりやすいのは、

  • 突発性難聴により、聴力低下した方

に一部、見られます。

症例のまとめ

片耳のみ聞こえにくいケースは、概ね4つの内、いずれかになります。多いのは、①、③で、片耳のみ難聴の場合、特殊な耳の状況である事が多いです。

まさに聴力測定、語音明瞭度測定を行い、耳の状態を確認した後、どのように補ったら良いか。補い方の方針を決め、そのあとに補聴器を選定していく事が重要になるケースです。

なお、①と②の間にある聴力だった場合(明瞭度も良いと仮定)、悩むケースではあるのですが、その場合は、どちらの方が聞こえを改善できるのか、どちらの方が楽なのか、それらを試しに試聴しながら選定していきます。こちらに当てはまるケースですと、補聴器の選定に少々時間がかかります。

片耳難聴の場合に考えられる2つの補い方

片耳難聴の場合、基本的に

  • 補聴器で聞こえにくい側を補う
  • クロス補聴器で聞こえる側で補う

の2つの方法があります。補聴器で聞こえを補えるのであれば、補聴器。補えないのであれば、クロス補聴器。と分けていきます。

補聴器で改善

こちらでは、補聴器の理解をしていくために

  • 補聴器の基本
  • 片耳難聴の方に必要な補聴器の知識

の2つに分けて記載していきます。

補聴器の基本

こちらでいう補聴器とは、主に聞こえなくなった耳側に補聴器を装用する事です。

こちらが主な形状で

使用している感覚は、このようになります。このような耳にかけるタイプから

耳の中に入れて使用するタイプまであります。

耳の中に入れた感覚は、このようになります。

一般的に補聴器といえば、このような聞こえない耳に音を入れ、聞こえるようにするものを指します。

片耳難聴の方に必要な補聴器の知識

片耳難聴の方の場合、知識として入れていただきたいのは、どのような方も補聴器をつければ、たちまちよくできる訳ではない事です。補聴器で補える聴力というのは、基本的に、70〜80dBくらいになります。※表現が難しいのですが、片耳のみ難聴の場合、重いと重いほど、クロス補聴器の方が改善できるため、このように記載しています。

▲は、補聴器を装用した時の聞こえ。補聴器の世界には、補聴器の聞こえを可視化するものがある。

▲は、補聴器を装用した時の聞こえ。補聴器の世界には、補聴器の聞こえを可視化するものがある。

まず、今現在、補聴器でそれなりに聞こえを改善しようと思うと、上記のような数値(30〜40dB)まで改善させる必要があります。ここまで改善できるのは、せいぜい70dBくらいの聴力の方で、それよりも重い場合は、そこまで改善させる事ができません。

右側の聴力が下がっていると仮定。▲が補聴器を装用した効果。赤い△は、補聴器で効果を望むのに必要な数値。補聴器は、聴力が低下するとするほど、効果が薄くなる。

右側の聴力が下がっていると仮定。▲が補聴器を装用した効果。赤い△は、補聴器で効果を望むのに必要な数値。補聴器は、聴力が低下するとするほど、効果が薄くなる。

例えば、上記のような聴力の方がいた場合、考えられる改善値は、▲の部分です。補聴器は、聴力が低下すると低下するほど、聞こえの効果が薄くなってしまうため、一定以上の聴力低下がある場合は、補聴器での効果がかなり薄くなります。

そのため、補聴器で仮に補うとした場合、

  • 片耳の聴力が、70dB以内で、60dBまでが望ましい
  • 明瞭度が、60%以内 でできれば、70〜80%欲しい

となります。こちらは、実際に片耳難聴の方を改善させていて、そう感じます。

クロス補聴器で改善

こちらでは、クロス補聴器を理解していくために

  • クロス補聴器の基本
  • クロス補聴器が合う人

の2つに分けて記載していきます。

クロス補聴器の基本

クロス補聴器とは、聞こえる耳側へ聞こえない耳側にきた音を転送する機器です。

なかなかイメージが難しいのですが、表現すると、このようになります。

実際の機器は、このようになります。聞こえる耳側には、補聴器をかけ、聞こえない耳側へはクロス機器をかけます。すると、クロス側につけた機器に入った音が補聴器側へ転送されます。それが、クロス補聴器になります。

聞こえる耳側は、塞いでしまうと聞きにくくなってしまうため、このように穴があいた耳せんを使用します。聞きにくくならないようにする事で、双方からくる音を、聞こえる耳側で理解する事ができます。

一つの耳で全ての音を聞くのが、クロス補聴器の特徴です。このような機器が出てきたのは、お察しかと思いますが、補聴器は、どのような聴力でも補える万能な機器ではないためです。

聞こえなくなった耳側を補う方法がダメなら、聞こえる耳側で理解したらどうか。という考えで作り出されたのが、クロス補聴器になります。幸いにも、今現在は、通信系がよくなり、無線の技術が上がってきました。それにより、クロス補聴器の性能も徐々に上がってきました。

クロス補聴器が合う方

クロス補聴器が合う方は、上記でお分かりの通り、

  • 片耳の聴力低下が大きいケース(90dB以上)
  • 聴力低下した耳の明瞭度が低いケース(50%以下)
  • 音が歪んで聞こえるケース

になります。片耳のみ難聴の場合、①と②が多く、これらのどれか一つでも当てはまる場合は、クロス補聴器の方が改善できます。

クロス補聴器の方が改善できるというよりも、補聴器だとまず改善ができないため、自然とクロス補聴器での改善になっていきます。

片耳のみ聞こえにく方の補い方、まとめ

補聴器を初めに考える際、どの補聴器にしようか、どの形状にしようかと考えることから始めがちですが、初めに考えるのは、どのように補うかになります。その理由は、ここまで読んでくださればご理解されたかと思います。

そして、片耳のみ難聴のケースは、特殊なケースが多く、耳の状況をしっかり確認した上で、どのように補ったら改善できるのか。というところを考えていく必要があります。

補聴器で改善できるのであれば補聴器で改善させ、残念ながら補聴器では無理な場合は、クロス補聴器で改善させます。もっとも実際に対応している身からすれば、片耳のみ難聴の方は、特殊なケースが非常に多いため、クロス補聴器で改善させる事が多いです。

こちらの内容で、聞きにくさを改善させるヒントを掴めたのであれば幸いです。