2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

補聴器の調整を感覚だけでやるとうまくいかない理由


前回は、補聴器を調整するやり方として、感覚を重視する人、感覚、数値、両方とも見ながら調整する人、数字を重視する人、様々な人がいることを知りました。著者(深井)は、感覚だけでやっていた頃、全然うまくいくことはなく、両方とも見ることによって良くなってきたと言いました。

その際、クロブタが気になっていたのは、感覚だけではなぜうまくいかないのだろう?ということでした。深井に聞くと「正解はわからない」というので「どんなことが考えられるのか」と、状況に関して、聞いてみました。

深井
さて、前回質問してくれたのは「感覚だけで調整するとなぜおかしな方向へ向かうか」だったね。

クロブタ
そうですね。話を聞いていて、その点だけ、少し気になりました。

深井
了解。もちろん、前回書いた通り、正確な答えはわからないので「私は、こう感じている」という考えになるけど、いいかな。

クロブタ
はい。お願いします。

感覚だけではうまくいかない理由

深井
感覚だけでは、うまくいかない理由は、あげようと思えばいくらでもあげられそうだけど、まとめると

  • お客さん(難聴の方)は、正解がわからない
  • 感覚だけだと的を外す
  • どんなものにもメリット、デメリットがある

この3つがあり、大半を占めるのは、お客さん(難聴の方)は、正解がわからないだと思うかな。

クロブタ
この3つ……

深井
じゃあ、それぞれ詳細を書いていくよ。

お客さん(難聴の方)は、正解がわからない

深井
さて、初めは、これだね。正解がわからない。この正解というのは、

  • 補聴器を使用してどう感じるのが正解なのか
  • どこまで聞こえれば正解なのか

この2つだね。正解ではなく良いか(正解を良いかに置き換える)で理解するとよりわかりやすいかもね。

クロブタ
この点は、よくわかりますね。確かに感覚だけではわからないです。まさに深井さんがよく言っている「補聴器を装用しただけでは聞こえる感覚はわかってもどこまで聞こえているのかはわからない」というところですよね

深井
そうだね。どうしても感覚なので、それだけで判断するのは、かなり無理があるね。

これは、例えるなら、航海と全く同じなのだけど、目的は、A地点からB地点へ行くこと。Bは、Aから南西にあり、その方向へ進めばいいとわかっても、コンパス持たずに船に乗ったら、実際には、進んでいるのだろうけど、本当にその方向へ進んでいるのか、目標とする場所まで、近づいているのかがわからないのと全く同じだね。

感覚としては進んでいる、でも、実際は確認しようがない。見える景色は、少しずつ変わるかもしれないけど(変わらないことが多いとは思いますが)、それが良いのかどうかわからない。感覚で判断するといのは、このような状態だね。

クロブタ
補聴器で例えるなら、補聴器を装用して聞こえるようになってはいるものの、それがどこまで聞こえているのか、改善できるところまで来ているのかがわからない。感覚も今までと変わって聞こえるし、その変わって聞こえるのがいいのか、悪いのかもわからない。

そして、少し聞きにくいことがあって音量を大きくしたり、逆に音が大きいこともあるので、それを下げてもらったりもしているけれども、実際、自分がどのようになっているのかがわからない。というような状況でしょうか。

深井
そうだね。で、ここからが重要だけど、感覚だけで調整しようとすると、自分にとって心地よい状態を目指す傾向がある。

クロブタ
心地よい状態?

深井
そう。補聴器を使用すると少なからず、音が不快に感じたり、大きく感じることで「音デカッ!」と感じることもある。これは、少し考えればわかるのだけど、難聴の耳でも聞こえている音というのは、基本的に大きい音なんだ。聞こえにくくなっているのに関わらず、聞こえているわけだからある程度大きくないと聞こえないはずなんだよ。基本的には。

クロブタ
……

深井
そのような音の価値観を持った耳に補聴器をつけると、今まで聞こえなかった音は、聞こえるようになり、今まで小さく聞こえていた音は、より大きく聞こえるようになり、今まで普通くらいに感じていた音がより大きく感じるようになる。つまり、音の感覚が変化するわけだね。

クロブタ
なるほど……

深井
多くの方は、自分が聞きにくいところだけが大きくなるように考えているのだけど、世の中には、大きい音~小さい音まで様々だから、それを良くも悪くも感じるようにするのが補聴器だよ。人の耳の感覚を表そうとして作られているのが補聴器なので、この部分は当たり前といえば当たり前なんだけどね。一般の人でも周囲の音でうるさい音は多いしね。

クロブタ
確かに救急車の音ややたらと大きい音を出すバイク、地下鉄の騒音とか、かなり大きいですよね……。

深井
だから状況がわからないと音を下げようとする傾向が強くなる。感覚で判断できるのは、音が大きいか小さいかしかわからない。だから、大きく感じるものは下げようとするし、小さく感じるものは、上げようとする。もちろん、大きく感じすぎる場合は下げた方がいいけれど、感覚だけだと必要以上に下げてしまうことも多い。

補聴器は聞こえさせることを目標にしている機器なので、聞こえるようにするんだけど、状況がわからないと下げる、軽減させることの方が多いかな。

クロブタ
なるほど……そうなのですね。

深井
これがまず一つだね。まぁ目標がないからどういう状態がいいのかがわからない。というとわかりやすいかもね。正解がわからないに関しては。

クロブタ
確かにそうかもしれませんね。

感覚だけだと的を外す

深井
次は、耳の場合、感覚だけだと的を外す。これは、なんのことを言っているかというと、補聴器で音を聞く際に起こることで、特に問題になりやすいのは、

  • 自分の声の響き、こもり
  • 聞こえてくる音が響く

これらだね。それ以外にもあるのだけど、大半を占めるのが、この2つ。

クロブタ
声の響き?、音の響き?

深井
そう。まず補聴器は何らかの形で、耳を塞いで音を聞こえさせるので、一般の耳の感覚よりも自分の声が自分の中で響いて聞こえてくるようになる。イヤホンを耳の中に入れて話すようなものだね。耳を手のひらで覆って声を出せば、覆っていない状態より、覆った方が大きく聞こえる。

クロブタ
……

深井
そのような現象が起こるので、補聴器をつけると、少なからず、そのような感覚が出てくる。これは、補聴器を装用して、自分の声も大きくなっているけど、耳の感覚によって、それらを感じているというのもある。

クロブタ
なるほど……

深井
すると、少なからず始めは、違和感を感じるんだよ。自分の声が大きい、少しこもって聞こえる、声が響いて聞こえる。このように表現することが多いかな。

クロブタ
……

深井
これらのものは、軽減することもできるのだけど、軽減しようとするほど、音を弱くする、音を抜く行為をするので、やるとやるほど、聞こえにくくなる。

クロブタ
そうなのですか

深井
もちろん違和感を感じないのは、いいことだけど、それで聞こえを犠牲にしすぎてしまっても問題だよね?補聴器は何のために装用しているの?という状態になってしまうので。

クロブタ
そうですね。

深井
つまり感覚だけで判断するというのは、このような危険性もあるんだよ。実際には、聞きにくくなる可能性があるので、ちゃんと数値と感覚、両方を見るようにできると、よりいいということだね。落とし所を探せるというふうに言ってもいいかもね。

クロブタ
なるほど……

深井
音の響きに関しても同様で始めは、どうしても機械で聞いている感覚が強くある。まぁ実際に機械で音を大きくしているので、そうなるのだけど、わからないと、その感覚を下げようと高い音を下げたり、音量を下げるようにするケースがあるね。

クロブタ
……

深井
これも少し前に言ったことと同じだけど、違和感を感じないのは、とても良いのだけど、それをやりすぎてしまって聞こえにくくなってしまうのは、問題だよね?この部分も数値と感覚、両方を見れるようになると、どのように変化するのか、実際にどうなのかもわかるようになるから、より相談しやすくなるね。

クロブタ
そうだったのですか。

どんなものにもメリット、デメリットがある

深井
じゃ、最後、どんなものにもメリット、デメリットがある。だね。これは、主に調整に関するところになるんだけど、少し前に紹介したものと陸続きだね。

例えば、前にこもる感覚、自分の声に関しては、軽減することもできる、が、その代わり、音が聞きにくくなると説明したと思うんだけど、このようにどのようなものにもメリット、デメリットがある。というお話だね。

クロブタ
……

深井
それ以外には、例えばだけど、低い音、騒音がやはりうるさい、それらの音を下げたいという場合は、それらの部分の音を下げることにより、軽減はするのだけど、それと同時に低い声の人、主に男性の声が聞きにくくなったりする。

クロブタ
?それはなぜですか?

深井
それは、補聴器は、周波数しか調整できないからだね。人は、音を物で感じる(意識する)けど、機械は、周波数でしか感知できない。だから人は、この音(特定の音)を減らしたいという風に認識をするのだけど、機械は、周波数でしか調整できないから、調整した周波数に関係あるもの全てに影響するようになる。

簡単に言えば、今現在の技術では、”もの”だけを下げることはできない。ということだね。それが、メリット、デメリットの意味でもある。

クロブタ
では、どのようにすればいいのでしょう?

深井
この部分は、相談方法によって大きく変わるかな。例えばだけど、その部分を下げることにより、このようなデメリットがあります。それでもやりますか?やめますか?と言ってもいいし、先ほどの内容を伝えた上で、まずは、やってみましょうか。その後、元に戻したい場合は、言ってください。元に戻しますので。でもいい。

重要なのは、メリット、デメリットをお互いが理解した上で、どう改善していこうかを相談することなんだよ。私たちの仕事は、聞こえを改善させることなのでね。

まとめ

深井
さて、まとめていくね。これは、私なりの答えではあるけれど、感覚だけだとうまく行かない理由は、

  • お客さん(難聴の方)は、正解がわからない
  • 感覚だけだと的を外す
  • どんなものにもメリット、デメリットがある

の主に3つ。

これは、全て繋がっているのだけど、正解がわからないから、感覚だけでやると、どこを目指せばいいかわからない。わからないと自分にとって感覚的にいいもの、つまり、心地よいものを目指すようになる。すると、感覚だけなので、的を外す。その理由は、どんなものにもメリット、デメリットがあり、デメリットの部分を考慮できないからだね。

だから、変な方向へ行きやすい。感覚という一つのものだけを信じているのだから、仕方がないんだけどね。

もちろん、目標がないから、どこを目指しているのかもわからないし、どこまで行けばいいかわからないので、どういう状態になればいいのかもわからない。判断基準がないというのは、実は、とても厄介な問題なんだよ。

クロブタ
厄介?

深井
そう。だって考えてみなよ。補聴器はこれだけ高額なのに、使って確かに聞こえるけれど、それがいいのか悪いのか判断できなかったら、不安しかないでしょ。

クロブタ
確かに……、聞こえを改善したいけど、どれだけ改善できているのか、その状態は、いいのか悪いのかがわからなければ、どう判断したらいいかわからないですね……。

深井
そう。人は、判断基準があって初めて判断できるようになる。だから、どのようにしたら良いのか。そのくらいまで聞こえが改善できたら良いのか。それらの聞こえに関する判断基準というのは、とても重要なんだよ。

クロブタ
……

深井
感覚だけでは、それがわからないので、実は、判断のしようがない。すると自ずと自分にとって心地よいもの、いい感じに感じるものを選ぶ。もちろん、それで聞こえが補えているのであれば、いうことはない。でも、その状態が本当に補えているのかどうかは、調べてみないとわからない。

クロブタ
……

深井
私たちの目的を思い出して欲しい。それは、聞こえを改善させることだろう?心地よく聞こえる状態ではないはずだ。どんなものにもメリット、デメリットがあるであれば、どういう状態がいいのか。聞こえを数値化し、よりよくできる数値、現状の確認、そして、使い続けられるのかを確認しながらやって行った方がよっぽど使える補聴器になる。聞こえるという意味も含めてね。

もちろん初めは、少し機械っぽく感じたり、こもって聞こえていたとしても気がついたら慣れて、気にしなくなっていた……というケースもあるので、それらの部分も含めてではあるけれど。

クロブタ
確かにそうですね。

深井
感覚だけで調整するとなぜおかしな方向へ向かうかというお話だったけど、正しくいうのであれば、感覚だけでは適切な状態を目指すには、足りない。というのが正しい表現かな。

クロブタ
なるほど……足りない……ですか

深井
このように表現すればしっくりくるかな。

クロブタ
確かにそうですね。今回もすみません、色々と学ばせてもらいました。ありがとうございます。ただ、本当に理解できているかと言われれば、少し怪しいですが……

深井
この辺りは、実際に補聴器を装用したり、経験すればよくわかるよ。

クロブタ
そうですか……。

深井
まぁ補聴器に関する理解が少しでも進んだのであれば何よりですよ。


この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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