2つの視点を持つ人が書いている耳・補聴器ブログ

東京都墨田区で補聴器の販売をしている難聴者のブログ。補聴器や耳に関する事を書いています

補聴器販売者は実際にどのように補聴器を調整しているのか


前回より、補聴器のことや調整などに関して学んできました。補聴器の調整に関して学んでいく中、色々とクロブタには、思うところがあるようです。それは、この人は、どのように実際に調整しているのか?ということです。

色々とわかってくる補聴器のこと。でも、実際にわかったとしてもそれを提供するには、どのようにやっているのか。その点が気になるようです。理解していることとできることは、違うからでしょうか。

そしてクロブタは素直にまたお話を聞きにいくことにしました。

深井
おっ?また来たね。

クロブタ
こんにちは。早速ですが、また少し気になるところがありまして・・・

深井
どうぞ。(だんだん、聞いてくるスパンが早くなってきたな……)

クロブタ
前回は、補聴器を装用した状態の数値からわかることを教えてくれました。非常に勉強になりました。それによって、ちゃんと改善するには、聞こえさせることが重要ということもわかりましたし、聞こえが改善できる位置まで改善させるという考えもよくわかりました。

深井
……。

クロブタ
気になっているのは、実際にどのように改善しているか。という点です。補聴器は、よく調整することが大切だとも聞きますし、先ほどのお話の内容は、少し理想論的なものを感じました。何か引っかかるところを感じます。

それに内容を理解したとしてもそれをどう実行するかが重要になりますよね。そうすると、どのように実際に改善しているのかな・・・とふと思いまして。知っていることとできることは違いますから。

深井
そうだね(えらく踏み込んできたね……)

クロブタ
そこで、実際にどんな感じにやっているのか。簡単でもいいので、教えてくれませんか?

深井
まぁ別に構わないよ。ただ、あくまでも私のやり方になるけれどいいかい?さすがに皆(補聴器販売業者、医師、言語聴覚士を含む)、聞こえの改善のさせ方は、違うと思うのでね。あと、少し抽象的な内容が入るのは許してね。それらの部分は、実際に補聴器を使えばわかる。ということで。

クロブタ
はい。

深井さんがやっている改善

深井
まず、クロが思っていること、感じていることは、概ね正しい。いくら理想があっても実際にそこまでできるのか。達成できるのかの問題は、補聴器に限らず、どんなものにもあるし、実際には、理想論を理解することではなく、そこまで達成させる実行力が重要なのは、いうまでもない。この点は、君が感じている通りだよ。

おそらく不安を感じているいくつかの部分は、補聴器に対する不信感もあるだろう。日本補聴器販売店協会での補聴器フォーラム2015では、補聴器の満足度は、39%だったとも報告されている。

クロブタ
……

深井
そのような状況で、じゃあ私がやっていることについて載せてみようか。一応、初めて補聴器を使うケースを想定して記載していくから。私がしていることは、非常にシンプルで

  1. 音の感覚の調整
  2. 各数値で現状の比較
  3. 気になりやすい音は、耐えられる範囲内か

これらを確認し、補聴器で目指せる聞こえの目標値まで改善させる。ただ、それだけだよ。

①音の感覚の調整

深井
まず、音の感覚の調整だけど、こう書くと音が高く聞こえた場合は、低くする、もしくは、低く聞こえる場合は、高くするというように感じる方もいるけど、音の感覚の調整は、あくまでも音量調整がメインになる。

クロブタ
音量調整?

深井
要は、音が必要以上に大きく聞こえすぎないかを確認するということだね。様々な音を聞かせて、

  • ちょうどよく聞こえるか
  • 少しだけ大きく聞こえるか

のどちらかになるようにする。このようにしてまずは、長く使える状態を目指す。

クロブタ
ふむふむ・・・

深井
長く使えればそのうち補聴器の聞こえに関して徐々に慣れてくるので、そうなってくると音を大きくしても大丈夫だったり、少し大きくしてもあまり感覚的には、変わらなくなってくる。そこまで持ってくれば、目標値まで持っていくことは、楽になるかな。

クロブタ
なるほど・・・長期的に考えているのですね。ちょうどよく聞こえるか、それとも少しだけ大きく聞こえるかは、長く使える感覚の範囲がそのくらいだからでしょうか。

深井
その通りだね。明らかに音が大きすぎる場合は、だいたいほとんどの人は使わないのでね。

クロブタ
……

深井
なので、まずは、ここが一つ。

②各数値で現状の比較

深井
次は、補聴器を装用している状態の聞こえを測定し(音場域値測定)、現状の確認を行う。補聴器を装用して自分が今、どのような状況かを理解することと、目標となる部分は、どのくらいかを理解するためだね。

クロブタ
ここで前回、前々回の音場域値測定が出てくるのですね。

深井
そうだね。そして、ここからが重要なんだけど、これによって客観的に自分の状況を判断できるようになる。

クロブタ
自分の状況を判断?

深井
これは、実際に補聴器を使ってみるとよくわかるんだけど、補聴器を耳に装用しただけでは、音を大きく感じるという感覚は、わかるんだけど、いまいち今現在、どのような状況なのかがわからない。例えば、自分の聞こえは、どのくらい聞こえが改善できていて、どこまで改善できていれば良いか・・・などだね。

クロブタ
……

深井
でも、今現在の状態を数値化し、現状が理解できれば、今感じている音の感覚でどのくらい聞こえが改善できている状態なのか。そして、目標とするところまで音を大きくしたらどのくらい大きくなりそうなのかもわかるようになる。

クロブタ
……

深井
初めて補聴器を装用し、自分にとってちょうど良いくらいの音の大きさに調整してみたとしよう。

その結果、測定したら、上記のような状況だった。この場合、▲が補聴器を装用した状態、△が補聴器を装用していない状態。そして赤い▲が聴力的に補聴器を使って目指す改善の目標値だとしよう。

上記の場合、目標となる部分までは少し音量が足りない部分があるよね?それを理解した上で自分の音の感覚(大きく聞こえるか、そこまで大きく感じないかなど)と相談し、大きくしてもいいし、初めなのでそのままでまずはやってみるのも良い。

数値化することで、このように客観的にどのようにしたら良いかが理解しやすくなる。

クロブタ
なるほど……

深井
ここで行なっているのは、補聴器を装用している人にとって現状をわかるようにしてあげる。ただそれだけだね。そうすることで、どのようにしたらいいかもわかるし、現状も理解することができる。

私の場合、だいたい初めの状態からある程度、聞こえるように調整してあげることが多いね。上記のような聴力の場合は。概ね、上記のように高い音もちゃんと入れてあげる。理由は、入れてあげた方が音声の聞きやすさはもちろん、アラーム系も聞こえるようになるから。

前回の音場域値測定の数値を見ればその理由もよくわかるだろう。

クロブタ
ちなみに一つ質問してもいいですか?

深井
ん?どうぞ。

クロブタ
仮に上記のような状態の場合、そのままでやるんですか?それとも少し音量を下げるのですか?

深井
その状態でどのように音を感じるかだね。普通の音量くらいに聞こえるのであれば、そのまま貸出するよ。ただ、結構、大きい……となった場合は、少し下げるかな。ポイントは、長く使えるか(長時間使い続けられるか)だね。

それに対してYesであれば、そのままだし、Noであれば少し音量を下げる。それで判断しているね。

クロブタ
なるほど、わかりました。

おまけ・聞こえの数値を確認する意味

深井
あとは、聞こえの数値を確認するのは、実際にちゃんと狙い通りに音が入っているのか。というところを確認するためでもある。

クロブタ
狙い通りに音が入っている?

深井
そう。ところで質問だけど、補聴器の聞こえの要素はどのようにしてきまると思う?

クロブタ
それは、補聴器からどのくらい音を出すかではないでしょうか。低い音から高い音まで様々かと思いますが、それを目標となる数値まで改善できるような音量を出して、聞こえさせる。つまり、どう各音の音量を調整するかです。

深井
まぁ普通はそう考えるよね。その内容だと、半分正解で半分不正解だね。

クロブタ
半分……ですか。

深井
まず補聴器には、

  • 内部的要素
  • 外部的要素

の二つがある(※この2つは私が勝手に表現している内容で、実際に単語的に存在しているわけではありません)。内部的要素というのは、単純に言えば補聴器の音の設定だね。補聴器からこのくらいの音を出すというような・・・そう先ほど、クロが言ったような内容が、主にこれにあたる。

その次に外部的要素というのは、

  • 耳の中の容積
  • 耳の密閉具合
  • マイクの位置

の3つで、どんな人でも異なる要素のもの。補聴器の聞こえというのは、基本的にどのくらい音を出すかというところもそうだけど、耳の中の容積や耳の密閉具合、マイクの位置によっても変化するんだよ。

内部的要素は、一律になっているもの、例えば聴力が同じで、かつ補聴器が同じものであれば全く同じ音の出し方になる。それに比べて外部的要素は、皆違うものという特徴がある。耳の中の大きさは、人それぞれだし、耳の大きさが異なればマイクの位置だって全員違う。そのような部分を外部的要素と呼ぶ。少なくとも私はね。

クロブタ
……

深井
細かいところを言えば、マイクだって髪が長い女性と髪が短い男性では、聞こえ方が違う。髪が長いと髪が邪魔して若干音が小さくなったりするんだよね。だからたまに髪を短くした際にいつもより聞こえるようになっているという人もいるね。髪が厚いと厚いほどそうなる傾向があるよ。

耳の中の密閉具合も耳を塞ぐと塞ぐほど、こもり、食事の際の噛む音が大きくなる傾向はあるけれども音場域値測定は良くなる傾向がある。逆に耳をあまり塞がないようにすると音が漏れるため、音を大きくしていたとしても全然、音が伝わっていない(音が弱い、聞こえに変化がない)。ということもある。

クロブタ
結構多くの要素が入るんですね。

深井
その通り。だから補聴器を装用した状態を確認しないとなかなか実際のところはわからないケースが多い。ちゃんと補えていると思ったら、全然補えていないこともあるし、逆に想像以上に補えている状態であることもある。

クロブタ
……

深井
簡単に言えば、補えているつもりになるのではなく、実際に数値にしてみて補えているのかを確認する。現状を理解する。ということだね。

③気になりやすい音は耐えられる範囲内か

深井
さて、少し話がずれたけど、本題に戻そうか。最後に確認するのは、気になるやすい音は耐えられる範囲内か、だね。基本的には、

  • 日常生活上の音
  • 自分の声の感覚

の2つだね。

まず、日常生活上の音に関しては

  • 大きな機械の音
  • 紙の音
  • ビニール袋の音

の3つがある。大きな機械の音は、プリンターや会社によっては、ガチャガチャ操作しているものがあったりするんだけど、それらの音だね。多いのは、大きいプリンターで、閉める時に大きくガチャン!とするもの。これらの音は、一般の人でも大きく感じるんだけど、補聴器でより音を大きくしているためにより気になりやすくなる。

それ以外に多いのは、紙の音、ビニールの音かな。それらの音を聞いて、大きいけれども我慢できる範囲内。という方は、使い続けられる傾向があるかな。もし、大きく感じすぎて、音を小さくした方が良さそうなら、音量を下げるなどをする。

クロブタ
ふむふむ……

深井
次は、自分の声の感覚だね。これは、単純に声がこもって聞こえすぎないかどうかを確認する。耐えられる範囲なら大丈夫だし、かなりこもって聞こえるようなら、少し耳せんを加工してこもりを軽減してあげたり、少しゆるくしたりして改善させる。あくまでも使える範囲内か、そうじゃないかで判断しつつ、使いやすくする。この点は、やりすぎると補聴器の効果までなくなるので、やりすぎ注意な部分だね。

クロブタ
こもり……ですか?

深井
そう、補聴器を使う場合は、何らかの形で必ず耳を塞ぐので、耳を塞ぐ感覚やこもった感覚が出やすいんだよ。これは、補聴器を使えばよくわかるよ。初めは、特に異質に感じやすいのだけど、使っているうちに徐々に慣れてくるものでもあるんだけどね。

クロブタ
そうだったのですか。

深井
ということで、ここでもあくまでも使える範囲内を目指して調整する。ということだね。

その後は、繰り返し

クロブタ
ありがとうございます。なんか色々とわかってきました。

深井
そう。なら良かった。

クロブタ
ちなみに、このあとはどうするのですか?一度で全部が完了するわけではないですよね?

深井
そうだね。基本的には、

  1. 補聴器を使った現状をお伺い
  2. 補聴器の調整&測定
  3. 再度、その状態で使ってもらう

を繰り返し行い、目標となる部分まで改善させることをしているよ。

補聴器を長く使っていくとある程度、補聴器で音を大きくしても耐えられるようになってくるので、そうなったら目標となる部分まで改善させる。ただそれだけだね。

そのスパンに関しては、人によって様々で、早い人だと、2~3週間くらいで終わり、長い人だと2~3ヶ月くらいかかるケースもあるね。まぁ、途中で「いやこのくらい聞こえれば十分です!」と言われてしまうのも多いけど。

クロブタ
長くかかる方とそうでない方とで、違いはあるのですか?

深井
大きく違うのは、使った時間だね。早く慣れる人は、だいたい一日辺り10時間、まぁほぼ一日中つけているということだね。一日中ではなくても仕事の際だけつけているケースでも平気で平均7~9時間くらいの方がいるので、そのようなケースは、だいたい慣れるのも早い。話を聞いてみると初めは、異質に感じたけど、4~5日くらいであまりそう感じなくなってくるみたいだね。

クロブタ
みたいだね、と言いますと、深井さんはどうだったのですか?

深井
私の場合は、子供の頃からつけているからほとんど記憶がないんだよね。気がついたら補聴器をつけた感覚が聴覚そのものになっているので。

まぁ慣れる慣れない以前に、生まれつき難聴だから、一般の人の聞こえる状態がどのような状態なのかもわからないし、判断する感覚が補聴器を装用している状態しかなく比較する対象がないから、そのまま違和感なく使えているのかもね。

クロブタ
なるほど……これは、失礼しました。

深井
いえいえ。

話を戻すよ。補聴器の使用時間に関しては、逆に一日辺りの使用時間が1~4時間くらいの方は、馴染みにくい傾向を感じるかな。使った時間というのは、明らかに装用者にとっていい、悪いの関連性が強く出る部分だね。

クロブタ
なるほど……。

深井
と、まぁこんな感じに調整しているよ。前から言っていることは変わらないけど

クロブタ
「現状を確認して、目標となる部分まで聞こえを改善させる」ですね。

深井
その通り。それが本質的な考えだから、どの部分もその一言で表現できるね。(まぁぶっちゃけ補聴器以外でも当てはまる要素だしね……それが物事の真理なんだろう)

クロブタ
よく理解できました。ありがとうございます。

深井
いえいえ。(本当にそうかな?ある程度、実際にやってみないとわからない部分があったが……。まぁ実際にやってみれば「これってこういうことだったんだ!」とわかるようになるからいいか……)


この記事を書いた人:深井 順一
自己紹介
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者である事、補聴器の販売をしている事、この二つの視点で、ブログを書いています。お店では、耳の状態を理解した後、効果的な補い方を導き出し、聞こえの改善を行なっています。私に関する内容は、書いている人の詳細になります。当店の情報は、こちらにまとめています。場所は、東京都墨田区の本所吾妻橋駅(都営浅草線)より徒歩3分のところにあります。

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