補聴器の形状による特徴と選定時に知りたい3つのポイント


補聴器には、いくつか形状がありますが、では、これらの形状は、具体的にどのように異なるのでしょうか。こちらでは、補聴器の選定の中でよく出てくる耳あな形補聴器、耳かけ形補聴器の形状別の特徴をまとめていきます。どのような補聴器が良いのか、自分は、どのような補聴器を求めているのか、その選定にお役立てください。

なお、こちらでは、主によく出る耳あな形補聴器、耳かけ形補聴器の二つについてまとめていきます。厳密には、ポケット形補聴器というものもあるのですが、あいにく私のところにくる方の90%以上は、70歳以下ですので、その方々が使用される主なものをまとめていきます。

補聴器の形状の全体像

まず補聴器の形状の全体像をまとめていきますと、補聴器には、

  • 耳かけ形補聴器
  • 耳あな形補聴器

の二つがあります。※厳密にはポケット形もありますが、こちらでは取り扱いません。

耳かけ形補聴器の概要

耳かけ形補聴器とは、耳にかけて使用する補聴器のことで、

主にこのような形状をしています。

耳に装用した感覚は、このようになります。このように耳にかけて使用する形状ですので、耳かけ形と呼ばれています。

種類としては

このようにいくつかあります。

大きさは、主に補聴器からの出力、音の大きさにより、使用するタイプが変化します。聴力が重い人ほど、大きい形状のものを使い、聞こえにくさを改善していきます。

補聴器には、いくつかボタンがあり、音量を操作したり、プログラムと呼ばれる音の切り替えスイッチがついていたりします。それらが基本的についているのが、耳かけ形の特徴で、様々な操作をしたい、自分なりに操作して使いたい方が、耳かけ補聴器をよく使っています。

耳あな形補聴器の概要

そして、耳あな形補聴器とは、耳の中に入れて使用するタイプの補聴器で

このような形状をしています。耳の型を採取して作るのが一般的で、耳にフィットする形状になります。

耳につけた感覚は、このようになります。

形状の種類としては、このようにいくつか種類があります。どの形状もそうですが、

  • 耳垢がかなり多い
  • 耳を手術し、耳の中が変形している
  • 耳だれがでる

などある場合は、耳あな形をお勧めしない、あるいは、製作できないことがあります。そして、補聴器の形状ですが、耳かけ形と同じく、聴力が重いと重いほど、大きい形のものを使用し、聞きにくさを補っていきます。

耳あな形でも音を切り替えるプログラムのスイッチがあったり

音量を調整する部分もついています。厳密には、これらは、製作時につけたり、つけなかったりできるようになっており、形や製品によって、つけられる、つけられないがあります。

小さいものですと、このように耳の穴だけに入るものもあるのですが、こちらは、主に目立ちにくさを求める方や耳に何かをつけている。例えば、マスクやメガネを常時つけている事があるケースによく使われます。

聴力と形状、そしてまとめ

これらの形状ですが、主に聴力別に対応できる形状が異なります。その内容に関しては、

フォナックジャパンより引用(カタログ)

こちらの通りです。聴力が重いと重いほど、補聴器から出る音の強さ(出力)が必要になりますので、それに合わせて形状も大きくなりがちです。逆に軽度~中等度難聴くらいであれば、ほとんどのものが対応できることとなります。

こちらで言いたいことをまとめますと、補聴器には、耳にかけるタイプの補聴器と耳の中に入れるタイプの補聴器があり、かつ、それぞれの形状の補聴器は、聴力により、使えるもの、使えないものがあるということです。

耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器の違い

では、違いを見ていきましょう。これらの違いに関してですが、シンプルにまとめますと

補聴器の形状による特徴。それぞれ一長一短だが、耳かけ形は、無難な特徴があり、耳あな形は、欠点も大きいが利点も大きい形状と言える。

補聴器の形状による特徴。それぞれ一長一短だが、耳かけ形は、無難な特徴(平均的)があり、耳あな形は、欠点も大きいが利点も大きい形状(いい面と悪い面が極端)と言える。

この通りとなります。

では、

  • 聞こえの効果
  • 耳の装用感覚
  • 邪魔になるか、ならないか

の三つに関して詳細を記載していきます。

聞こえの効果

聞こえの効果に関しては、どちらも改善できるものとなりますので、◯。ただし、耳あな形の方は、それにプラスして、いくつか良い部分があります。

こちらに関して

  • 基本の聞こえ
  • 耳あなのプラスの意味

の二つについて記載していきます。

基本的な聞こえ

まず、聞こえの効果に関する全体像からお話ししたいのですが、そもそも聞こえの効果はどこで決まるのか。という部分があります。そして、それは【聴力から改善目標となる部分まで音をどれだけ入れられたか】により、決まります。

補聴器の効果を聴力ベースで調べられる音場閾値測定という測定があるのですが、

音場域値測定の例。△が補聴器なし、▲が補聴器を装用した時の聞こえ。そして、赤い△が補聴器を使用した時の改善目標値。改善目標値は、調整する人、各々が決める数値になる。

音場域値測定の例。△が補聴器なし、▲が補聴器を装用した時の聞こえ。そして、赤い△が補聴器を使用した時の改善目標値。改善目標値は、調整する人、各々が決める数値になる。

こちらを行うと、実際に補聴器を調整した際、どのように聞こえているのかを調べられます。この際、改善させる目標値と実際の改善値を比較して、現状を見るのですが、この目標値まで改善できればできるほど、聞こえの効果は、上がりやすくなります。逆に目標より、下に行くといくほど、効果もそれに伴い下がってきます。

では、この数値に関して、耳あな形、耳かけ形で異なるかと言いますと、目指せる数値(聴力別、改善目標値)は、変わりませんが、数値の出やすさ、改善のしやすさ(上がりやすさ)は、耳あな形の方が少しいい傾向があります。※あくまでも適合聴力範囲内の場合に限ります。

補聴器の場合、耳の中への音の伝わりやすさがあるのですが、

  • 耳を塞ぐと塞ぐほど音が耳の中へ伝わりやすい
  • 耳の中から音を出すとより伝わりやすい

という特徴があります。耳あな形補聴器は、どちらも行っていますので、耳への音の伝わりがよく、そのせいか、数値の改善度は、よくなりやすい傾向があります。

しかし、耳かけ形補聴器も数値に関しては、ちゃんと改善できるように設計されていますので、その点は、ご安心ください。また、耳あな形のような耳の型を採取した耳せん(イヤモールドと言います)を作れば、改善のしやすさは上がるようになります。

ですので、改善に関しては、両方とも◯になります。

耳あな形のプラスの意味

補聴器の場合、音響機器ということもあり、マイクの位置により聞こえ方が変化します。人間の耳は、元々耳の部分で音を拾っているため、音の拾い方についてより自然なのは、耳あな形補聴器です。

丸が付いている位置が音を拾う部分。耳かけ形は、本体が耳の上に乗るため、それにより、音を拾うのも一般的な耳の状態と異なるようになる。

丸が付いている位置が音を拾う部分。耳かけ形は、本体が耳の上に乗るため、それにより、音を拾うのも一般的な耳の状態と異なるようになる。

実際につけているところを見てみますと、耳かけ形補聴器は、実際の耳の部分ではなく、その上の部分で拾っているのに対し

赤い丸の部分が音を拾うマイクの位置。耳あな形は、耳そのものの拾い方で行なっているため、感覚としては、自然になる。

赤い丸の部分が音を拾うマイクの位置。耳あな形は、耳そのものの拾い方で行なっているため、感覚としては、自然になる。

耳あな形補聴器は、元々の耳の部分で音を拾っています。

これが何に影響するのか。というところになってくるのですが、音を拾う範囲が変化します。

かなり大雑把だが、このようにマイクの位置が異なると、音の拾い方も結構、異なる。耳あな形は、人の耳の形を利用できるせいか、耳かけより、少し邪魔されやすい騒がしいところでの会話が周囲の音によって、まだ邪魔されにくい傾向がある。

かなり大雑把だが、このようにマイクの位置が異なると、音の拾い方も異なる。耳あな形は、人の耳の形を利用できるせいか、耳かけより、少し邪魔されやすい騒がしいところでの会話が周囲の音によって、まだ邪魔されにくい傾向がある。

かなり大雑把ではありますが、耳かけ形と耳あな形の聞こえの範囲は、このように異なります。

耳かけ形補聴器は、耳の上に乗せて使うものですので、マイクが通常の位置ではなく、耳の上にあります。すると、全体的に、広範囲に音が入る状態になります。

一方、耳あな形補聴器は、耳の中に入れて使用するため、前方を中心に聞くような音の拾い方をします。人の耳は、前方を中心に聞くようにできており、前方から入る音と後方から入る音、それぞれ異なる音量で入るようになります。

では、これがどのように影響するかと言いますと、あくまでも傾向ですが、耳かけ形は、後方の音も拾いやすく、かつ全体的に音が入るという利点があります。ただ、少し騒がしくなると、逆に音を拾いすぎるせいか、却って騒がしい中では、耳あなと比較すると聞きにくくなりやすい傾向があります。

補聴器には、抑制機能がいくつかあり(騒音抑制、指向性という機能です)、それらの機能があれば、耳かけ形も耳あな形も変わらないのでは?という方もいるのですが、実際にこれらの機能が高いもので、かつ同じランクで、耳あな、耳かけの形状だけ違うものを実際に耳につけて比較していただくケースもあるのですが、騒がしい中での聞き取りは、耳あなの方が良いというケースの方が多いです。

この点は、私自身が様々なお客様に実際に補聴器を耳につけて、試聴や効果に関して聞いて感じることであり、エビデンスがあるわけではありません。ただ、経験上からは、このような感触を得ています。

まとめ

これらのことにより、聞こえの効果に関しては、耳かけ形補聴器が◯、耳あな形補聴器は、◯+αとしています。耳あな形の方が少しよりよくしやすい。というような状態ですね。

耳の装用感覚

耳の装用感覚に関しては、耳かけ形補聴器が◯、耳あな形補聴器は、△となります。

まず、装用感覚というのは、何か。ということから始まるのですが、補聴器を耳に装用すると、耳に入れていることにより、

  • 自分の声がこもって聞こえる
  • 耳の中の閉塞感を感じる(耳が詰まった感覚)
  • 噛む音が大きい(ものを噛んだ時の音が大きい)

の三つを感じるようになります。これは、どちらも耳にものを詰めているからこそ感じるのですが、耳あな形補聴器の方が感じやすい状態になります。

この感覚は、耳にものが入っていると入っているほど感じやすくなります。耳あな形補聴器は、耳に合わせて製作するため、この感覚を特に感じやすくなります。

耳かけ形補聴器は、耳せんだけしか、耳に入らないため、そこまで強く感じることは少ないのですが、耳あな形は、入る面積(量といえばいいのでしょうか)が多くなりますので、それに伴い、感じやすくなります。

この感覚は、軽減することもできるのですが、やりすぎると別の問題が起こったり(ハウリング、音漏れ)、補聴器の聞こえの効果が薄くなることもあり、加工をしすぎると、聞こえの効果まで失ってしまいます。かつ、そのような加工をしても耳あな形は軽減されにくい傾向があります。

補聴器は耳に装用した感覚が一番のデメリットで、特に耳あな形補聴器はそれを感じやすい傾向があります。ただ、この感覚は、慣れることもあり、なかなか判断が難しい状態です。慣れるというのは、その感覚がなくなるのではなく、その感覚があっても当たり前に感じ、気にしなくなることを意味します。

慣れてしまえばどうってことはないのですが、慣れる前が気になりやすい状態です。

ということで、耳かけ形補聴器は、◯(耳あなに比べて感じにくく、かつ対策しやすい)、耳あな形補聴器は、△(耳かけに比べ起こりやすく、かつ対策までしにくい)となります。

邪魔になるか、ならないか

邪魔になるか、ならないかに関しては、ダントツで耳あな形が優秀で、耳の中に補聴器が入ってしまえば邪魔になることはほとんどありません。一方、耳かけ形は、耳からで出ていることもあり、邪魔に感じやすい傾向があります。

多いのは、マスク、ヘルメット、帽子、メガネ、これらのものは、補聴器とブッキングするため、使用する頻度が多いと多いほど、耳かけ形は邪魔に感じる傾向があります。

これらのものがある場合、扱いやすいのは、耳あな形になります。

よくいただく質問

形状によるよくいただく質問には、

  • 耳あな形補聴器は無くしやすい?
  • 壊れにくいのは、どれ?

の二点です。

耳あな形補聴器は無くしやすい?

耳あな形補聴器は、ポロっと落ちてしまいそう、無くしやすそう、というようなお話を伺いますが、無くすというものの種類によって異なります。

一番多い紛失は、どこかに置いたまま、どこに置いたか忘れてしまい、わからなくなってしまうケースです。これは、形状により異なることはありません。どのような形状でも起こり得ます。

次に耳の中に入れて落ちてしまうのではないかと心配になる方もいるのですが、耳あな形はむしろ耳の型を採取して作る製品ですので、しっかり装用できているのであれば、よほどのことがない限り、そのようなことは起こり得ません。

むしろ耳の型を採取しているため、外れにくくなっていますので、安心でもあります。

紛失に関しては、基本的に

  • しっかり耳に装用すること
  • しまう場所を決めておくこと

この二つをしていただければほとんどなくなることはありません。多いのは、どこかに置いたまま、それを忘れてしまい、なくなるケースです。

壊れにくいのは、どれ?

耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器、壊れにくいはどちら?というお話も伺いますが、どちらかというとまだ、耳あな形の方が壊れにくい状態にはなります。

補聴器の故障原因の多くは、湿気と汗で、汗による故障が大半です。耳かけ形補聴器の場合は、耳の裏という汗の通り道に補聴器本体を載せているため、どうしても汗の影響を直に受けやすく、故障率が上がります。

一応、いま現在、防水(実際は、防滴程度のものが多い)が出てきましたが、それでも壊れる時は、壊れますので、耳あな形の方がまだ壊れにくい。という印象があります。

ただ、この部分につきましては、正直、補聴器をちゃんとケアしてきたかにより変化します。補聴器には、ケア用品として、乾燥ケースや乾燥剤を使用し、汗や湿気の影響をなるべく補聴器に与えないようにする製品があるのですが、こちらでしっかりとケアしている方は、どちらかというと故障せず、長く使用できているのですが、あまりそれをやってこなかった方は、故障しやすい傾向を感じます。

ですので、どちらの方が壊れにくいか。というところよりもしっかりとケアをして、なるべく壊れないようにする方が大事になります。

補聴器の形状のまとめ

さて、補聴器の形状に関してまとめていきます。補聴器の形状には、主に

  • 耳かけ形補聴器
  • 耳あな形補聴器

の二つがあります。

そして、それぞれ補聴器を使用する立場で気になりやすいポイントを三つあげ、それぞれの比較をしたのが、上記になります。

ただ、どの形状にしても補聴器で聞こえを補う基本の部分さえちゃんとして入れば、どれも使える補聴器になります。

そして、一番重要なのは、上記のことを理解しつつ、実際は、どうなのか。を理解することです。実際に耳に試聴してみたり、模型でも良いので、触れてみることで、様々なことがわかります。

例えば、聞こえの効果に関しても一番よくしたいと考える方が普通ですが、では、実際に耳かけ形を使ってみてどう感じるのか。使ってみることで「このくらい聞こえるなら、これでも良いな」と思い、それ以外の部分も評価した上で、耳かけ形になる方もいますし、形状の方を重視して、耳あな形にされる方もいます。

耳あな形にしても実際に声がこもると言われるけれどもどうなのか。耳かけ形できつく耳を閉めることで、ある程度は再現できますので、その感覚がどうなのかも確かめた後、どちらが良さそうか考えられると、実際の体感値で考えることができます。

形状別の傾向はわかっても、人により、それをどう感じるか、そして、それをどう評価するかまでは、異なります。実際にやってみてどうか。それを相談できるところで行えば、補聴器の理解も進みますし、どの補聴器が良いのか。それに関してもしっかり考えられるようになります。

こちらの内容で、自分が求めているものがわかったり、自分が欲しいと思っているものと自分が考えているものに関して、整理がつけば幸いです。

 

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