クロス補聴器の欠点と調整する上で注意したい1つのこと


そういえばサマーフォーラム2017でお話しした際に、このブログをみている方から一つ質問がありまして、それは、クロス補聴器については、どう調整すればいいのか、どう調整しているのか。というものです。

このブログ経由で、クロスのことを知る方も多いかと思いますので、今回は、クロス補聴器の問題点から、調整に関することを記載していきます。クロス補聴器は、ちゃんと補聴器そのものに関して理解すればよりよくすることはできるようになります。

以下の内容は、専門外の人にもわかるよう記載していきますので、片耳難聴の方もしっかり理解しておきましょう。そうするとより改善できるかもしれません。( ´∀`)/ 

クロス補聴器の問題点を整理しよう

私は、こんな風にやってます!といきなり書いても良いのですが、そもそもなぜそのようにしているのかを理解しないと意味がありませんので、まずは、どのような問題点がクロス補聴器にはあるのか。それを整理していきましょう。

で、早速記載していきますと、それは

  • オープンドームを使用する事の欠点
  • 客観的な数値での確認がしづらい

の二つがあります。

①オープンドームを使用することの欠点

クロス補聴器といえば

イメージ的には、このように補うものです。

実際の機器は、このような形状をしており、その際、聞こえる耳側は塞いでしまうと、聞きにくくなってしまうため、

オープンドームと呼ばれる穴が空いた耳せんを使用します。

様々な耳せん。補聴器には、いくつか耳せんがあり、左からオープンドーム、クローズドドーム、パワードームになる。

様々な耳せん。補聴器には、いくつか耳せんがあり、左からオープンドーム、クローズドドーム、パワードームになる。

この部分は、いくつかの耳せんがありますが、耳を塞ぐタイプを使うと聞こえる側が聞きにくくなるため、オープンドームを使用せざるを得ません。

では、オープンドームを使用するとどのような問題が起こるのか、補聴器認定技能者や補聴器に詳しい人ならすぐに思いつくかと思いますが、ベントの問題が起こります。ベントというのは、いわば空気の通り道で、これを意図的に作ることにより、音を抜き、伝える音を調整するのに使われます。

各耳せんによるベント効果。注目すべきは、オープンドームのベント効果。マイナスが大きいと大きいほど、実際に音を伝えても、マイナスされて伝わる。補聴器ハンドブック、原書第二版、145Pより。

各耳せんによるベント効果。注目すべきは、オープンドームのベント効果。マイナスが大きいと大きいほど、実際に音を伝えても、マイナスされて伝わる。補聴器ハンドブック、原書第二版、145Pより。

上記のものは、補聴器ハンドブックという分厚い本(エビデンスベースで書かれた補聴器の本で貴重な一冊です)に載っているベント効果になり、このオープンドームの部分を見てみますと、かなりのベント効果があるのがわかります。

まさか……?とお気づきになる方もいると思うのですが、まさにその通りで、そのまま音を転送しても聞こえる耳側でも聞こえるように穴を開けているため、ベント効果で音が抜けてしまうわけですね。各社おそらくそれを考慮して、調整しているのかもしれませんが、実際に調整している身としては、その点を考慮して考えないと全然改善できない。ということが多いです。

つまり、クロス補聴器を調整する場合、このベント効果を考慮して、そのマイナス分を加味して行わないと改善に繋がりにくい状態となります。

②客観的な数値での確認がしづらい

一般的な補聴器には、補聴器を装用した時にどのくらい聞こえているのか。それを調べるものがあります。音場域値測定や音場での語音測定というもので、どのように改善されているのか。これを数値化できます。

しかし、クロス補聴器の場合、有効な測定方法がなく、一般的に行われているものを同じように行なったとしても、聞こえる耳側で聞こえてくるため、あまり有効活用できません。

どのようなものもそうなのですが、調べて改善に繋げる。いわゆるPDCAができるサイクルを作ることが重要なのですが、それがやりづらい状況です。私の場合は、主観とその他の測定値で代用していますが、もう少しよくしたいなと思うところがあります。

ではどうするか

で、私も色々とやっていまして、①については、わかりました。②については、まだ色々と検証中です。かなりの失敗を重ねましたが、①について一番わかりやすかったのは、普通に調整画面をSPL-2cc→SPL-実耳に表示することです。

右上に出力-SPL-2ccと書かれているところがあり、この部分は、変えられる。

右上に出力-SPL-2ccと書かれているところがあり、この部分は、変えられる。

補聴器の調整画面には、SPL-2ccと表示されるものとSPL-実耳と記載されたものがあります(それ以外にもありますが、割愛します)。SPL-2ccというのは、単に補聴器から出ている音の強さになります。それが、低い音125Hz〜8000Hzまでの高い音まであります。

一方、SPL-実耳というのは、耳の鼓膜面までに届く音の強さです。音は、耳の中の容積や形、どこにイヤホンを置くか、どのような機器を使うのか(耳かけ、耳あななど)で簡単に伝わり方が変化します。つまり、同じSPL表示でも耳への伝わり方(実耳)は、全部異なるということです。

上記のグラフは、同じ調整にしているもので、かつ、自分がよくする方法でやっています。数値の大きさが全然違うのがわかりますね。

SPLの表示は大きいけれども実耳は、それよりは、小さいですね。その理由は、先ほどのベントで音が抜けているためです。その部分を全部数値上ではありますが、計算してくれるので、私は、こちらでやっています。

なお、数値だけ見ると、SPL-2ccでものすごく音を強く出しているように見えますが、数値でみて見ると、65dBスピーチで、73dB(1000Hz)となります。

そしてさらにSPL-実耳にすると65dBスピーチで66dB(1000Hz)になります。つまり、必要以上に下げないように、フォナックの場合は、特にそうですが、音を大きくしている状態です。調整していると感じるのは、目標値の設定数値が結構、小さい……というのが個人的な感想ですね。

補聴器の場合、特性をとってやったりすることも多いのですが(特性とは、補聴器からどのように音が出ているのかをみるもの)、正直、クロスの場合は、オープンドームを使っているということ(※オープンドームを使っている場合は、特性とってもそのまま耳には伝わらないので、どう伝わっているのかが非常にわかりにくい。ベント効果が強すぎるためですね)、特性が取りにくいこと、それらの理由により、私は、画面上でやっています。

まとめ

結論から言いますと、オープンドームを使うのでベント効果に気をつけましょう。というお話でした。そして、まだ②については、有益な改善方法は思いついていません。色々とやっているのですが、現状確認→改善のサイクルを回せるものがなかなか見つからない状態です。この点は、すみません。

実は最近、他のところで相談したけれどよくなかった。みたいな話を聞くこともあり、書いてみました。もちろんこれをしても、聞きにくいところは出てしまうのですが、今現在できる限りの改善はできるようになってきました。

まだまだクロスに関しては、問題点だらけですので、よりよく改善できるものがあれば、随時紹介していきます。d( ̄  ̄)

まだ解決策が思いついていないものが多いので、ちょっと後になるかもしれませんが・・・( ;∀;)

おっと、もしかしたら少々悲観している方もいるかもしれませんが、上記の問題点があるということは、まだまだクロスで改善できるところはあるということです。問題点がないものは、それ以上よくすることはできませんが、問題点があれば、それをよりよくしていけば良いのですから。本田圭佑氏流にいれば「伸び代がある」ということです。

そして、今購入してもクロス補聴器は、調整できるものですから、わかり次第よりよくさせれば、個人的には、問題ないとも思ってます。

ということで、もし、②に関する改善方法をお持ちの方がいれば、素直に教えてください。m(_ _)m とお願いしてみます(笑)。

私の方でわかっていることは、以上です。