クロス補聴器を理解する基本と聞こえを改善させるためのポイント


補聴器の一種には、変わった方法で、聞こえを改善させるクロス補聴器というものがあります。主に、片方のみ何らかの原因で、全く聞こえなかったり、補聴器を使っても効果が見込めない方に使用され、聞こえる耳側で、聞こえない側の音を拾う補聴器です。

こちらの

  • クロス補聴器の基本となる部分
  • どのような方に適応するのか
  • クロス補聴器の改善度
  • クロス補聴器をつけた時の聞こえ
  • クロス補聴器の効果優先度

このクロス補聴器に関する基本の部分をまとめていきます。

クロス補聴器の基本

クロス補聴器とは、聞こえる耳側に補聴器、聞こえない耳側にクロスという音の送信機を載せて、聞こえを改善させる機器です。

クロス補聴器は、聞こえる耳側へ補聴器。聞こえない耳側へクロスを載せる。そのようにすると、聞こえない耳側に乗っているクロスが音を拾い、補聴器側へ音を転送してくれる。

クロス補聴器は、聞こえる耳側へ補聴器。聞こえない耳側へクロスを載せる。そのようにすると、聞こえない耳側に乗っているクロスが音を拾い、補聴器側へ音を転送してくれる。

現物は、この様になります。聞こえる耳に補聴器をつけることで、聞こえない側につけている音の送信機に入った音を常時、聞こえる耳側へ送ってくれます。

イメージとしては、この様な状態です。聞こえる耳側は、そのまま音を聞くことができ、聞こえない耳側からの音は、補聴器を通して、聞くことができます。

補聴器側もクロス側にも、スイッチがついており、音量を調整したりもできるようになっている。

補聴器側もクロス側にも、スイッチがついており、音量を調整したりもできるようになっている。

聞こえることの他、音量を調整するボリュームなどがあり、自分で音量を変えられたり、プログラムというものを組んで、別の聞こえに変更したりすることができます。

クロス補聴器が合う人(対象者)

クロス補聴器は、主に一般的な補聴器で聞こえを改善できない方に合います。一般的な補聴器で聞こえを改善できない人は、

  • 片耳の聴力が重すぎて聞こえを補えない人
  • 補聴器を装用しても、音声の理解ができない人
  • 聴力低下により、音が異質に感じてしまう人

主にこれらの方々が対象です。

病名(状況)で言いますと

  1. 生まれつき片耳のみ難聴の方(重度)
  2. 突発性難聴の方
  3. ムンプス難聴の方
  4. 外リンパ瘻になり、大きく聴力低下した方
  5. 聴神経腫瘍摘出手術により聴力低下した方
  6. 事故で、聴力低下した方(重度失聴)

が対象になります。

聴力図の見方と、聴力に関して。聴力レベルが大きいと大きいほど、聞こえない状態になる。特に、90dB以下くらいになると、補聴器で補える量が少なくなるため、効果が薄くなりやすい。

片耳が正常でもう片耳が全く聞こえないケース。聴力レベルが大きいと大きいほど、聞こえない状態になる。特に、90dB以下くらいになると、補聴器で補える量が少なくなるため、効果が薄くなりやすい。

少し難しくなるのですが、このような聴力の方だと、補聴器では、聞こえない耳側を補うのが困難なため、補聴器の効果が望めません。このようなケースになるのは、①〜⑥全てに該当します。ただ、①と②だけ、これよりも軽いケースがあります。そのような場合は、補聴器の方が良かったりすることもあります。

補聴器の世界には、音を理解する力。というものがある。それを調べて、最良値が50%を下回る場合は、一般的な補聴器を装用しても、聞きにくさが強く残りやすい。そのようなケースもクロス補聴器では、有効になる。

補聴器の世界には、音を理解する力。というものがある。それを調べて、最良値が50%を下回る場合は、一般的な補聴器を装用しても、聞きにくさが強く残りやすい。そのようなケースもクロス補聴器では、有効になる。

また、耳には、音声を理解する力というものがあり、その測定(語音明瞭度測定と言います)を行なった際、数値があまりにも低い場合も、補聴器では、うまく改善できないケースです。これは、①と②に見られます。一応、③〜⑥も見られるのですが、聴力低下が大きすぎることが要因であることが大半なため、どちらかというと対象になるのは、①と②のケースです。

これらのケースの場合、クロス補聴器が合うというよりも、それでしか聞こえの改善ができない。といった方がわかりやすいかもしれません。

クロス補聴器は、基本的に、補聴器で改善できない方々をどの様に改善させたら良いのか。という部分を考えた上で、作られた補聴器です。片耳のみ難聴の方は、片耳が全く聞こえないなど、特殊なケースが多く、今まで、聞こえなくなった耳側に補聴器を装用しても、聞こえの改善ができませんでした。

その際に、考え出されたのが、聞こえる耳側で音を受け取れる補聴器。ということで、クロス補聴器が考え出されました。聞こえない耳側を改善させるのではなく、聞こえる耳側で、聞こえない側の音を聞こえる様にすれば、改善できるのではないかと考えた訳ですね。

その結果、完全に治るというところまではいかないものの、聞きにくさを感じているいくつかの部分で、聞こえを改善できる様になってきました。クロス補聴器は、補聴器で補えない耳があることから、生まれた機器になります。

クロス補聴器での改善は

クロス補聴器を使用して、改善できるところに関しては、

この通りになります。基本的に、片耳のみ難聴の方の場合、

  1. 聞こえない耳側からの音や呼びかけに気がつきにくい
  2. 騒がしい中でのお話がわかりづらい
  3. 複数の人とのお話がわかりにくい
  4. 音の方向感覚がわからない

の4つがあります。これらは、主に片耳のみ聞こえない方をヒアリングしてわかったことですが、聞こえにくくなる部分を分類すると、大抵、この4つが当てはまります。

そして、クロス補聴器の効果ですが、この内の①〜③までは、現状より改善でき、④の方向感覚に関しては、残念ながら改善できません。

聞こえない耳側からの音や呼びかけに気がつきにくい

片耳のみ聞こえにくいと、聞こえない耳側からの音や呼びかけに気がつきにくくなったり、いつの間にか呼ばれていたりします。特にオフィスの中で仕事をしていたり、少し騒ついたところだと、特に感じやすいかもしれません。

聞こえる耳側だと、あまりその様なことはないのですが、聞こえない耳側の場合は、状況により、その様なことが起こりやすくなってしまいますので、考えものです。

クロス補聴器を使用すると、この様な部分は、結構、解消される様です。クロス補聴器を使用している方の意見を聞きますと、オフィスの中や少し騒がしい程度の場所だと、聞こえるようになることが多く、呼びかけや聞き漏らすことが明らかに減ったと返答している方が多いです。

騒がしい中でのお話がわかりづらい

こちらは、飲み会や飲食店でのお話など、どうしても周囲が騒がしい環境下になるケースになります。

周囲が騒がしいと騒がしいほど、聞きにくさが増してしまい、聞きやすい耳側に人がいれば、聞こえることもありますが、聞こえない耳側に人がいると、途端に聞きにくくなってしまいます。そのため、聞こえる耳側に人が来るよう、角(端)をとる方が多く、聞きにくくならない様に工夫している人が多いです。

この部分は、クロス補聴器によって、改善できる部分もあれば、改善が難しいところもあります。実際にクロス補聴器を使用している方にお話を伺いますと、少し騒がしい場所、例えば、そこまで人が多くないオフィスの中やファミレスクラスの騒がしさなら、改善することも多い様ですが、居酒屋さんレベルまで騒がしいと、なかなか改善は、難しい様です。

騒がしい場所は、他にも電車の中、自動車の中、交通量の多い道路がありますが、自動車の中は、比較的改善されることが多く、電車の中や交通量の多い道路でのお話は、聞こえるという方もいれば、少し難しいと答える方がいます。この点は、お話する人の声の質や大きさなどにも影響しているのかもしれません。

複数の人とのお話

複数の人とのお話の場合は、会議や打ち合わせ、飲みの席や飲食店での会話が当てはまります。どうしても聞こえない側に座られると、聞きにくさを感じる傾向が出てきます。この部分は、騒がしい環境から、そうでもないところまで様々で、騒がしい環境に入るものは、上記の「騒がしい中でのお話がわかりずらい」にいれ、こちらは、主に会議や打ち合わせといった部分になります。

こちらは、クロス補聴器の種類によっても異なるのですが、効果的なものだと、会議や打ち合わせでも、それなりに聞こえることが増える様です。クロス補聴器を使っている方にお話を聞きますと、つけることで、明らかに聞こえやすくなっている。と聞くことが多いです。

音の方向感覚

こちらに関しては、残念ながら、改善ができません。音の方向は、2つの耳で、音を感じることで、どの方向からきているのかを理解していたりするのですが、残念ながら一つの耳では、それをすることが事実上、できません。

一部の方からお話を伺いますと、クロス補聴器から聞こえる音が肉声と異なることを利用し、なんとなく方向がわかるという方もいますが、その点は、よくわかりません。合っていない可能性もありますので、こちらでは、その部分は「わからない」と、しています。

クロス補聴器をつけた時の聞こえの変化と改善

クロス補聴器を装用した時の変化をまとめますと

基本的に全体的に聞こえる様になります。補聴器は、音響機器ということもありいくつか、ポイントを載せますと、

  • より遠くの音が聞こえやすくなる
  • 小さな細かい音が聞こえる様になる

が大きく変化するところです。

それ以外には、

  • 音の数が多いとサーっという音が聞こえる
  • 高い音が耳につきやすい
  • 風がマイクに当たると、ザーザーいう

というものもあります。

これらは、音響機器上、感じやすく、補聴器以外でも感じることがあります。騒がしいところや、つけ始めの頃は、ザーッという音が常になっている様な、ザワザワ……と常になっている様な感覚を感じたり、高い音、よくあるのは、紙の音、レジ袋の音、水道の音が、大きく感じやすかったりします。

そして、風がマイクに当たったりすると、ザーッ!と大きな音が聞こえることもあります。スマホでも会話中、マイクに息を吹きかけたり、風が強い日に電話すると、ザーッと大きな音がするのと同様で、その様な現状も起こります。

全体的に聞こえやすくなるのですが、一部、音響機器的な影響も受け、この様な音も聞こえる様になります。

なお、クロス補聴器の聞こえる範囲ですが、

左側が聞こえており、右側が聞こえない場合を想定したケース。クロス補聴器は、聞こえない耳側の音を聞こえるようにしてくれるが、聞こえる耳ほどではない。少し範囲は、狭めている。

左側が聞こえており、右側が聞こえない場合を想定したケース。クロス補聴器は、聞こえない耳側の音を聞こえるようにしてくれるが、聞こえる耳ほどではない。少し範囲は、狭めている。

概ね、この様なイメージになります。これは、左側が聞こえており、右側が聞こえない場合を想定して、作っているのですが、聞こえない側は、聞こえる耳側ほど、大きくはしていません。こちら側を大きくしすぎると、今度は、聞こえる耳側の音がわかりづらくなってしまうため、あくまでも聞こえる耳の補助機器として、聞こえる耳側を邪魔しない範囲で補っています。

この様にして、なるべく聞こえる様にしているのが、クロス補聴器です。

クロス補聴器で改善するにあたり、重要な部分

ここからは、私自身が実際に扱っている、改善している感覚を重点に記載していきます。クロス補聴器で聞こえを改善させる場合、重要な部分としては

  • 聞こえの優先度は、どうも形状≧調整>性能
  • 調整に関しては、実際に補聴器を使いながら調節

の2つがあります。

数々の方を対応してわかったのは、どうもクロス補聴器の場合、形状が最も聞こえ方、改善度を左右し、その次に音の調整、その後、性能になるような印象があります。

まず、クロス補聴器には、選ぶ要素として、

  • クロス補聴器の形状(組み合わせ)
  • 補聴器の性能

の2つがあります。その内、聞こえの要素を決めるのは、クロス補聴器の形状と音の調整の2つが影響が強いと感じています。※形状による組み合わせの特徴は、詳しくは、別に記載します。ご覧になりたい場合は、クロス補聴器の形状(組み合わせ)の種類と形状別、聞こえの違いをどうぞ。

音の調整というのは、補聴器で聞こえを改善させる際にどのくらい音量を入れるか、という部分になります。クロス補聴器は、少し特殊で、聞こえる耳側へ音を入れるのですが、その際、メーカー設定のままだと、どうも改善値が低いようです。

そのため、こちらでかれこれ何回やったかどうかわからないのですが、結構な数の試行錯誤を行い、ようやくそれなりに改善できる調整というのがわかってきました。幸いにも、クロス補聴器を使っている方は、聞こえる耳側がほぼ同じですので、各々少し微調整が必要なものの、おおよその部分は、適用できます。

で、その状態で、形状や性能、この2つも含めてお客さんに協力いただきながら、実際にどう聞こえの変化があるのか。その点を調べていきますと、はじめに記載した通り、形状≧調整>性能のように感じています。

ですので、聞こえの改善に関しては、クロス補聴器の形状(組み合わせ別)の特徴を理解し、そこをポイントに選んでいただくと、望んだ状態になりやすくなります。補聴器の調整は、補聴器販売店で行うことですので、ここは省いています。

そして、音の調整に関しては、自分の感覚で、大きすぎない程度に聞こえるようになると良しです。それを探るポイントは、はじめに音量調整を自分でできるようにしておき、操作してみて、どのくらい大きくするとよくなるのか。逆にうるさすぎてしまうのか。その点を各場所で実験できるようにした上で、クロス補聴器の音量を決めることです。

誠に申し訳ないのですが、クロス補聴器は、聞こえる耳側で音を聞く機器で、残念ながらどのくらい音を大きくすると、聞こえやすくなるのかの測定ができない状態です。状況を数値化することが困難なため、感覚を頼りに少しずつ調整していきます。

これらを行えれば、それなりに聞こえは、改善できるようになります。それでも聞きにくさが出てしまうことはあるのですが、今現在できる限りの改善というのは、できるようになります。

クロス補聴器における基本のまとめ

クロス補聴器の基本ということで、こちらにまとめてみました。クロス補聴器は、主に補聴器で補えないような、片耳の聞こえが重い方、補聴器で補っても効果が得られなかった方が対象です。

そして効果に関しては、耳が治るまではいかないものの、聞きにくさを感じている幾らかの部分で改善してくれます。それが、クロス補聴器です。

実際に改善をする際は、上記に記載した通り、形状別の特徴をよく理解しておきましょう。そこが改善における効果を左右しますので、ご自身の状況をより良くすることに繋がります。