感音性難聴の事例

【こもりを軽減】生まれつき中等度の感音性難聴の方、補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

20代、後半の女性。生まれつきの感音性難聴であり、以前は、別のお店で相談していたのですが、なかなかご自身が思うようなことを伝えられず、補聴器を買い換えるタイミングで、当店へご相談に来られました。

ご来店の際にお客様よりお伺いした内容は、

  • 自分の聞こえがどのような状態なのかわからない
  • 騒がしいところでは、聞きにくさを感じる
  • 右側だけこもった感覚を感じる

との事でした。そのため、各種測定類を行い、現状把握をした上で、改善を行なったところ

  • こもった感覚が改善され、より快適に補聴器を使用できるように
  • 聞こえの状態を可視化してくれた事で、状況が理解できるようになった

との評価でした。

元々補聴器の状態は、それなりに良い状態でしたので、その補聴器で気になる部分を解消し、さらに良くしました。

その結果、より良い相談、補聴器の状況にすることができ、こちらとしては、何よりです。

では、具体的にどのようにしていったのか。こちらに関して記載していきます。

お客様の状況

まず、お客様の状況ですが

  • お名前:H・Hさん
  • 年齢:20代後半
  • 性別:女性
  • 聴力:両耳とも中等度難聴
  • 症状:生まれつきの感音性難聴
  • 備考:他店で補聴器は購入(使い始めたのは、10年程前から)

このようになります。

聴力図に関しては、典型的な中等度難聴。このくらいの聴力になると、対面でのお話もしづらくなるので、補聴器なしでは、かなり聞きにくい感覚を感じやすい。
聴力図に関しては、典型的な中等度難聴。このくらいの聴力になると、対面でのお話もしづらくなるので、補聴器なしでは、かなり聞きにくい感覚を感じやすい。

聴力は、このようになり、典型的な中等度難聴になります。

聞こえにくさは、元々あり、補聴器をつけ始めたのは、かれこれ10年程前からになります。両耳に耳あな形補聴器を使用され、それなりに聞こえている感覚はあるようでした。

補聴器販売店でご相談を重ねていたようですが、ご自身の聞こえや状況に関して説明しづらく、他の販売店に関して探していたところ、このお店を見つけたとのことでした。

お使いの補聴器は、右側だけ自分の声がこもった感覚を感じていた事、ちょうど買い替え時期にきたこともあり、ご相談に来られました。

という事で、現状を確認しつつ、できる限りの改善を行なっていくことになります。

現状の把握と改善案

さて、改善する場合ですが、まずは、現状を把握していきます。

  • 現状の把握
  • 現状を改善させる案

の2つに関して載せていきます。

現状の把握

補聴器で聞こえを改善させる場合、現状の把握が一番重要です。H・Hさんも自分の状況がわからないと言っていましたが、測定をしないとなかなか自分の状況を把握することは、できません。

ということで、耳の状況及び、補聴器の状況を確認し、まずは、補聴器の効果がどこまで出ているのかを確認していきます。

補聴器には、音声の理解度というものもある。○が右側を表し、×は、左側を表す。左右とも、それなりに上なので、両耳の適性ありとみなせる。
補聴器には、音声の理解度というものもある。○が右側を表し、×は、左側を表す。左右とも、それなりに上なので、両耳の適性ありとみなせる。

補聴器を装用する方は、感音性難聴ということもあり、言葉の聞こえ、言葉の理解力なるものを調べることができます。こちらを行なった結果は、上記の通りで、それなりに良好でした。

基本的にその測定の最良値の値と%を比較する。H・Hさんの場合は、最良値が、80%なので、良好になる。
基本的にその測定の最良値の値と%を比較する。H・Hさんの場合は、最良値が、80%なので、良好になる。

数値の意味は、上記の通りで50%以上(できれば60%以上)あれば、補聴器の適性があることになります。測定してみた結果、両耳ともあることがわかります。であれば、両耳に補聴器をつけるのは、適性となり、聞こえを改善させる上で、良いやり方になります。

補聴器の世界には、補聴器を使ってどのように聞こえているのかを調べられるものがある。
補聴器の世界には、補聴器を使ってどのように聞こえているのかを調べられるものがある。

次に補聴器を装用した状態を調べていきます。音場閾値測定というものがあるのですが、簡単に言えば、補聴器を装用した状態を調べられる測定で、聴力検査の補聴器版のようなものです。

補聴器を両耳ともつけた状態が、▲。青い▲は、左のみつけた状態。赤い▲は、右側だけつけた状態。△は、補聴器なし。補聴器を使った状態では、何もわからないため、現状をみるには、このように各周波数の聞こえを数値化すると、状況を掴みやすい。
補聴器を両耳ともつけた状態が、黒い▲。青い▲は、左のみつけた状態。赤い▲は、右側だけつけた状態。△は、補聴器なし。補聴器を使った状態では、何もわからないため、現状をみるには、このように各周波数の聞こえを数値化すると、状況を掴みやすい。

その結果は、こちらの通りです。まず、補聴器には、聴力ごとに改善できると良い数値というのがあります。

黄色の▲は、H・Hさんが補聴器をつかう場合に置ける改善目標値。その数値と比較すると、概ね良い状態だが、一部下がっているところもある。
黄色の▲は、H・Hさんが補聴器をつかう場合に置ける改善目標値。その数値と比較する事で現状を把握できる。みてみると、概ね良い状態だが、一部下がっているところもある。

H・Hさんの場合は、このようになります。その数値に関しては、両耳ともほぼクリアしており、良い状態です。

次に、詳細をみてみますと、左側の聞こえと右側の聞こえが少々異なることがわかります。両耳の数値と右側の数値は、ほぼ同じですので、ほとんど右側で聞いている可能性があり、左側が少し聞きにくい傾向が出ていますね。

ただ、右側に関しては、一部、聞こえが下がっている部分もみられます。

2000Hzのところだけ、右側がやたらと下がっていた。画面だとわかりづらいが、10dBほど違いがある。10dBは、結構、大きい数値。
2000Hzのところだけ、右側がやたらと下がっていた。画面だとわかりづらいが、10dBほど違いがある。10dBは、結構、大きい数値。

ここですね。高い音の一部が低下していることによって、こもって聞こえる。というのは、十分に考えられることですので、右側だけこもって聞こえるのは、ここが原因である可能性があります。

特に2000Hzは、自分の声の大きさを抑える上で、有効な周波数ですので、下がっていればこもって聞こえるのも頷ける状態です。なお、この段階では、まだ仮説の段階になります。実際には、こもるに関しても様々な要因が考えられますので、一つ一つ原因として考えられるものを潰していきます。

また、両耳とも聴力が同じようなケースは、補聴器を装用した状態も同じような状態にするのがベストです。そうすることで、よりバランスよく聞こえも改善できますし、かつ、左右から聞こえる音の違い、差というのも無くなります。

補聴器装用時の聞こえの効果は、良好。個人的には、ここまで良いケースは、数えるほどしかみたことがない。
両耳での測定値。補聴器には、補聴器を使用した状態でどのくらい音声が理解できるのか。それを調べる測定もある。この聞こえの効果は、良好。個人的には、ここまで良いケースは、数えるほどしかみたことがない。

次に補聴器を装用した状態での音声の理解度は、どのくらいだろうか。と調べてみたところ、びっくりするぐらい良い状態でした。70dB〜50dBまで100%で、本来なら理解が難しい40dBも85%。これは、非常に良い状態です。

あくまでも防音室内での測定の数値ですので、全ての環境でそのように聞こえている訳ではないのですが、補聴器の適性を調べた状態では、良い状況になっている事がわかりました。

現状を改善させる案

測定をしてみて感じたことは、

  • 左右の聞こえが少々異なるので、バランスよく改善すること
  • 右側の高域を補ってあげること(こもりの改善)

になります。左右の聞こえをバランスよくできれば、聞こえる感覚としては、快適になりますし、右側の高域を補ってあげられれば、こもりの改善は、できるかもしれない。と考え、実際に改善していくことになります。

今現在の聞こえは、それなりに良い状態なため、その良い状態をキープしつつ、他の気になる部分を良くして、全体的に改善していく事が望ましいですね。

実際の改善について

こちらでは実際にしたことをまとめていきます。

初回の対応

初めの対応ですが、訴えにもありました通り、現状がわからないという事でしたので、まずは、現状を調べ、上記の測定結果をお伝えしました。そして、気になっている部分についてお伺いすると、

  • 騒がしい中での聞こえの部分
  • 右側だけこもった感覚がすること

ということでした。

騒がしい中での聞こえの部分は、測定結果としては、良い数値が出ていたため、これ以上の改善がどうしても難しい部分があったりするのですが、右側のこもった感覚に関しては、改善できるかもしれない。と、実際に改善できるのか。試していくことになります。

耳あな形補聴器は、耳の型を採取して作る機器なため、まずは、耳かけ形補聴器で、聞こえの改善をしていきます。

補聴器については、このようなRICタイプの補聴器を使い、聞こえの改善に関して行いました。

左右の状態は、ほとんど同じようにした。聴力がほぼ似たような状態なため、なるべく左右両方で、調整するようにし、バランスを良くすることを考え、調整。
左右の状態は、ほとんど同じようにした。聴力がほぼ似たような状態なため、なるべく左右両方で、調整するようにし、バランスを良くすることを考え、調整。

バランスよく入れるように意識し、ご本人様に、聞こえの感覚を伺いながらやっていくと、左だけよく聞こえるなどの偏りはなく、左右の聞こえのバランスは良いようでした。この段階で、左右の聞こえのバランスは、よくでき、かつ、こもった部分は、軽減していました。

こちらは、試聴機の両耳の測定結果。この際、両耳に装用した聞こえに関して、体感的に確認した結果、バランスは良いようだったので、そのまま貸出に。この段階で、右側のこもりに関しても解消していた。
こちらは、試聴機の両耳の測定結果。この際、両耳に装用した聞こえに関して、体感的に確認した結果、バランスは良好だった。

補聴器を使用した状態の測定は、このような状態です。お使いの補聴器もそれなりに聞こえていましたので、補う部分は、しっかりと入れた状態です。

使用するメーカーが異なるため、そのまま貸出を行い、日常生活上での聞こえ、職場での聞こえに関して、みていくことになります。

そして、幾日かの貸出の結果ですが

  • 聞こえに関しては、あまり変わりなし
  • こもった感覚などは、軽減し、良好に

という状況でした。

元々の聞こえは、ある程度、良好で、メーカーを変えたことによる音質の違いなどが懸念材料でしたが、その点は、貸出してみると、気にならないとの評価でした。

そのため、希望する形のもので、実際に改善させていくことになります。

補聴器の選定

補聴器の選定ですが、結論から言いますと、耳あな形に決まりました。理由としては

  • 今まで耳あな形補聴器を使っていた事
  • 職業柄、電話をよく使う事

の2つからです。特に電話の部分は、耳かけ形と耳あな形を比較しますと、耳あな形の方が自然にでき、使いやすい状態になります。

耳あな形と耳かけ形の特徴。耳あな形は、耳に入れる分、メリットとデメリットがそれぞれ大きい。デメリットが気にならなければ、耳あな形は、使いやすさに優れた補聴器になる。
耳あな形と耳かけ形の特徴。耳あな形は、耳に入れる分、メリットとデメリットがそれぞれ大きい。デメリットが気にならなければ、耳あな形は、使いやすさに優れた補聴器になる。

耳かけ形と耳あな形の違いは、このようになりますが、基本的に以前の状態が良好なため、それを踏まえた上で考えていきました。そして、実際に製作して、補聴器をさらに耳に合わせていきます。

最終調整と状況確認

最終的に聞こえの部分は、

左右のバランスに関してだが、概ね良いのだが、250Hz、500Hzの2つだけ、少し差がある状態になった。そのため、その部分に関して、聞いてみたが、体感として、右左で、聞こえ方の違いは、感じないとのことなので、良しとした。
左右のバランスに関しては、概ね良いのだが、250Hz、500Hzの2つだけ、少し気になる状態。そのため、その部分に関して、聞いてみたが、体感として、右左で、聞こえ方の違いは、感じないとのことなので、良しとした。

このようになりました。左右ともバランスよく入れるようにし、

  • こもりの部分をなくす
  • 音の感覚に関して自然にする(左右の聞こえのバランスを整える)

ということを意識し、改善していきました。

この際、数値だけではなく、H・Hさんの体感も伺いながら、音は、合わせていきました。数値を合わせることは大切ですが、そもそもの問題として、どのように聞こえているかわからないので、現状を調べているだけですので、一番重要なのは、左右の偏りを無くし、より良く使用できるようにすることです。その最終確認は、体感で決めていきます。

また、正直なことを言いますと、こもりの感覚は、耳かけのRIC補聴器の方が少ないため、実際に耳あな形補聴器でもよりよくすることができるのか。それを調べる必要がありました。実際にやってみたところ、左右の聞こえをバランスよく調整することにより、その感覚は、なくなりました。

こちらに関しても測定。良い状態になった。しかし、50〜70dBまで、100%を出す人は、そういないので、すごい結果である。
こちらに関しても測定。良い状態になった。それにしても中等度難聴で50〜70dBまで、100%を出す人は、そうはいないので、すごい結果だなぁ。

音声の理解の部分は、このようになります。お持ちの補聴器と比較すると、わずかに40dBの部分だけ5%足りませんが、一問間違えている程度で、体感としては、ほとんど差がないとのこと。

そのため、このまま決定になります。

実際には、耳あな形補聴器を使用していますので、

  • 耳の中がきつい感覚はないか(痛い感覚、当たる感覚はないか)
  • ふさがった感覚が強くないか(使える範囲内か)
  • ハウリングはないか

など、使えなくなる要素に関しても確認していきましたが、それらの部分はなく、良好でした。

これで補聴器での改善は、終了になります。

ご相談いただいたお客様の評価

当店で実際にご相談されたH・Hさんに、相談いただいた時の感想をお伺いしてみました。

どのようなことでお悩みでしたか?

補聴器を実際につけてみていかがでしょうか

このお店で相談(購入)したのは、なぜでしょうか?

実際のアンケート

ご協力いただきまして、ありがとうございます。

また、現状をより良くでき、こちらとしても何よりです。

今回のケースの改善のまとめ

さて、まとめていきます。H・Hさんに関する改善についてまとめていきますと

  • 左右のバランスは、なるべく良くする事
  • 改善目標値までしっかりと改善させる事
  • 状況をお互いに確認できるようにしながら調整した事

の3つになります。

今回のこもった感覚は、補聴器の調整によるものでした。実際には、耳あな形補聴器を使いますと、耳が塞がれるため、少なからず、こもった感覚が出てしまいます。

今回は、一部、足りない音量の部分があり、かつ、その部分が自分の声のところに関係ある部分でしたので、その部分を改善させることにより、より改善させることができました。

それ以外の改善ポイントは、聴力における改善目標値から、現状を比較し、なるべく全体的に改善させること、そして、左右の聞こえのバランスは、なるべく取れるようにすることです。

元々の補聴器も改善目標値までは、それなりに改善していましたので、初期の状況でも、補聴器の状況は良い状態でした。

そのため、その良いところは引き継ぎつつ、良くできそうなところは改善させていく。そのような方針で聞こえを改善させました。より良くなり、こちらとしても何よりです。

あとは、訴えにもありました通り、補聴器を使用した状態は、なかなか自分自身では把握しづらいため、ちゃんと数値にしてみて、改善目標値と現状を比較することです。

そのようにすると、自分が感じていることは、大体数値にも出てきます。それらを把握できると、改善は、しやすくなります。(以前のお店は、あまりやっていなかったようですね……)

この点は、あまり記載はしていないのですが、上記に紹介した測定値はもちろん、それ以外に測定した数値も全てH・Hさんには、お伝えしながら、調整に関しては、行なっていきました。

これは、補聴器を使った感覚だけしかわからないと、自分なりに判断すことができないためです。

数値と自分の感覚、その2つを確認しながら、改善していくことで、自分なりに良くできる部分まで改善させることができます。

今回、騒がしい中での聞こえに関しては、あまり変わらずでした。その部分は、申し訳なかったのですが、それ以外のところは、より良くでき、こちらとしては、何よりです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。このお店では、お客様が抱えているお悩みごと、お困りごとの解決に貢献できるよう、完全予約制にして、ご相談を承っています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

お客様が抱えているお悩みごと、お困りごとの解決に貢献できるよう、完全予約制にして、ご相談を承っています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

記事URLをコピーしました