耳が聞こえにくい状況の一つには、片耳難聴という、片耳のみ何らかの原因により、聞きにくい方がいます。
今現在、片耳のみ全く聞こえない耳の方は、クロス補聴器。という少し変わった機器を使うことで、聞きにくさをある程度、改善させることができます。
こちらでは、片耳難聴で全く聞こえなくなってしまった耳を補聴器で改善させるために
- どのように補うと、最大限、改善しやすくなるのか
- 片耳難聴の場合の補聴器の形状選定
- 補聴器の性能による違い
- 聞こえをより改善させるためのポイント
についてまとめていきます。
実際に聞こえを改善した実例も載せていきますので、聞きにくさにお悩みの方は、参考にしてみてください。
なお、片耳のみ軽度〜中等度難聴の方の場合は、上記にまとめています。
目次
①全く片耳が聞こえない片耳難聴を補聴器で改善するための補い方
補聴器で聞こえにくさを改善していく際、はじめに考えるのは、改善の方針です。
結論から記載しますと、片耳のみ難聴の場合、改善方法としては
- 聞こえない耳に補聴器を装用して、改善する
- クロス補聴器で聞こえを改善する
の2つがあります。
そして、仮に上記のような全く片耳が聞こえない片耳難聴の場合は、クロス補聴器の方が聞こえの改善度がよく、クロス補聴器で改善していくことが、多くなります。
聞こえを補う方法と耳の測定
まず、補聴器で聞こえを改善していく際、はじめに行うのは、耳の状況確認です。
主には、
- 聴力検査:どのくらい聞こえを補ったら良いかの確認
- 語音明瞭度測定:補聴器を装用して、効果が出るかの確認
の2つを行います。

難聴になり、治らないために、補聴器で聞こえを改善していく人は、ほとんどが感音性難聴になります。
感音性難聴の特徴は、
- 音が聞こえにくくなる(聴力検査で調べられます)
- 言葉がわかりづらくなる(語音明瞭度測定で調べられます)
の2つがあります。
それぞれの障害のレベルを見るのが、先ほど紹介した検査(測定)2つになります。

耳の世界には、語音明瞭度測定、というものがあり、こちらを行うと、補聴器を装用する事で、効果が出せる耳なのか。を調べる事ができます。

仮に上記のような聴力で調べてみるとこのようになることが多いです。結果の見方は、最良の数値を判断材料にし、50%以上であれば、補聴器の効果が見込める。と、なります。
上記の場合は、聞こえている耳側は、非常に良いのですが、もう片耳は、大きく低下しているため、あまり補聴器の適性は、ありません。
これは、片耳のみ非常に大きく低下しているケースによく見られます。このような場合は、その耳に補聴器を装用しても、うまく改善ができない事が多くなります。

そのような場合は、クロス補聴器。と呼ばれるもので、聞こえる耳側に全ての音を転送して、聞こえを改善させる補聴器の方が、聞きにくさを改善しやすくなります。

仕組みとしては、単純で、聞こえている耳側に聞こえない耳側の音がくるようにした補聴器になります。

聞こえている耳側には、補聴器を装用し、聞こえが補聴器では、改善できない耳側には、音の転送機器(クロスと呼びます)をつけ、クロスに音が入ったものを補聴器側に転送して、聞こえない耳側からくる音を聞こえるようにします。
そうすることで、聞こえない耳側からきた音を聞こえやすくしたのが、クロス補聴器になります。
聴力が補える範囲内なら、補聴器で改善

上記のような聴力で、かつ

このような耳の場合は、クロス補聴器。と記載しました。その理由は、聞こえなくなった耳側に一般的な補聴器を装用しても、聞こえが改善できないためです。

しかし、耳の状況によっては、このように完全に聞きにくくなっていなかったり

調べてみると、補聴器の適性があるケースもあります。※聴力低下がそこまで大きくないケースが多いです。
そのような方の場合は、聞こえない耳側に補聴器を装用して、聞こえを改善できると、よりよくしやすくなります。
クロス補聴器は、あくまでも、聞こえない耳側が補聴器では、補えないような方が対象です。
そのケースには、
- 片耳側の聴力低下が非常に大きく、補聴器では、効果が見込めない
- 聞こえなくなった耳側に補聴器を装用しても、響きや違和感が強すぎて、使えない
という方が対象となります。
そのような耳の状況になる方は、
- 生まれつきの片耳のみ感音性難聴
- 突発性難聴
- ムンプス難聴
- 原因不明の難聴により、片耳が聞こえなくなった方
- 聴神経腫瘍摘出手術による難聴
- 外リンパ瘻
- 事故により、片耳のみ難聴の方
などにみられます。

逆にある程度、聴力があり、仮に聞こえなくなった耳側が補聴器で効果を出せそうなのであれば、その耳側に補聴器を使用して聞こえを改善できると、ベストです。

クロス補聴器では、音の方向感を改善できませんが、補聴器を装用して、改善できるケースでは、音の方向感も、改善しやすくなります。※厳密には、聴力によります。
補う方針のまとめ
聞こえにくさを改善させる際、はじめに考えるのは、聞こえを改善させる方針です。
片耳のみ聞こえにくいケースは、特殊なケースが多いため、はじめにどのように補ったら聞きにくさが最大限、改善できるのか。を考えながら、聞こえの改善をしていく事が大切です。
上記のように片耳が全く聞こえないケースは、クロス補聴器で改善させる事が多いのですが、補聴器で補えるケースでは、補聴器の方が、最終的な聞こえの改善度は、高くなります。


②全く片耳が聞こえない片耳難聴の方の補聴器の形状選定
こちらでは、クロス補聴器で聞こえを改善していく事を前提に進めていきます。
クロス補聴器の種類には、いくつかあるのですが、結論から記載しますと、今現在、耳にかける耳かけ形補聴器しか、聞こえを改善させることができません。
クロス補聴器の全体像として、選択肢としては、
- 耳にかけて使用する耳かけ形補聴器
- 耳の中に入れて使用する耳あな形補聴器
の2つがあります。

それぞれの特徴は、こちらの通りです。
耳あな形のクロス補聴器をオススメしない理由
耳あな形のクロス補聴器は、種類(形状)としてあるものの、実際には、聞こえを改善できないため、オススメしていません。

まず、クロス補聴器の仕組みとして、聞こえる耳側に補聴器を装用し、聞こえない耳側にクロスを装用して、聞こえを改善します。

その際、聞こえる耳側は、耳を塞いでしまうと、聞こえている耳側の音が聞きにくくなってしまいます。
そのため、オーソドックスで使われる耳かけ形のクロス補聴器は、穴が空いた耳せんを使用し、

クロス側からも、聞こえる耳側からも、音が入るように工夫しています。

問題は、耳あな形のクロス補聴器ですが、聞こえる耳側をこのように塞いでしまいます。

すると、聞こえる耳側が塞がれる事で、特に聞こえる耳側の方の音が入りづらくなり、聞きにくさを感じやすくなります。
実際に私の方では、このタイプのクロス補聴器を試作し、何名かのお客様に試したこともあるのですが、小さい声が、かなりわかりづらくなる、離れたところからの呼びかけに気がつかなくなるなど、弊害の方が大きいことがわかり、それがわかった頃から、扱っておりません。
対象となる耳かけ形のクロス補聴器の選択肢
以上のことから、今現在、クロス補聴器で聞こえを改善させる場合は、耳かけ形のクロス補聴器で改善して行くことになります。

その選択肢としては、このようになります。違いは、目立ちにくく、扱うのが楽な小型のタイプか、少し形状が大きくなる代わりに電池の保ちが良いタイプの2つがあります。
小型タイプのメリット、デメリット

小型のタイプは、主に小さいことから、耳に乗るのが軽く、長く使用しても、疲れにくい。という特徴があります。
それらのことから、目立ちにくいものが良い、扱うのが楽なものが良い、初めてクロス補聴器を使用する方にオススメです。
欠点は、電池の短さで、小型にしている分、使用できる電池が小さく、少し保ちが悪くなります。
そのため、使いやすさを重視したり、目立ちにくさを重視する方にオススメです。
標準タイプのメリット、デメリット

標準タイプは、全ての機能を兼ね備え、形状が大きい代わりに電池の容量も多くなっているタイプです。
ご自身で色々と補聴器を操作したい方や電池の保ちが良いものが良いという方にオススメです。

欠点は、形状が少し大きいことにより、人によっては、少し目立ちやすくなったり、

一部の人は、耳の上の部分が痛くなる方がいます。仮に痛みが出る方は、小型タイプの方が、負担(重さやかかりのきつさ)がないため、こちらの方が使いやすくなります。
仮にこちらのタイプにする場合は、実際に少し試聴なり、貸出など行い、耳が痛くならないか、問題なく使えるかを確認できると、ベストです。
形状のまとめ
クロス補聴器の場合、実質、対象となるのは、耳かけ形のクロス補聴器のみとなります。
耳あな形のクロス補聴器は、過去に色々と加工もしてみましたが、一向に改善できなかったため、今現在、オススメしません。
クロス補聴器は、いくつか種類がありますので、実際に改善できるものには、限りがありますので、実際に改善する場合は、お店の人に伺いながら、聞こえの改善をご相談できると良いです。
なお、形状や補聴器の選定ですが、上記には、あくまでも傾向を記載したものになりますので、もしできるのであれば、実物に触れたり、実物を試聴なり、貸出なりさせてもらい、どのくらい改善されるものなのか、扱う上で問題ないものなのか。というのを確認できるとベストです。
上記のものは、あくまでも傾向であり、ご自身が使用した際に確実に感じるものでもありません。
実際に使用してみた感覚で、使いやすいクロス補聴器を選べると、それだけ、良い補聴器を選べることに繋がります。

③クロス補聴器の性能の理解
クロス補聴器の性能は、金額に大きく影響する部分です。
こちらに関して、ご理解しておきたいのは、
- どの補聴器でも基本的な改善は、できる
- 金額で大きく変わるのは、聞こえを改善した後の問題を改善する機能
の2つです。
どの補聴器でも基本的な改善は、できる
まず、補聴器の性能でご理解いただきたいのは、どの補聴器でも基本的な改善は、できることです。
高額な補聴器でないと、聞きにくさは、改善できない。ということは、ありません。

補聴器の機能には、
- 聞こえを改善させるための機能
- 聞こえを改善した後の問題を改善する機能
の2つがあります。

聞こえを改善させるための機能は、どの補聴器にも搭載されています。
上記にうつっているのが、ch(チャンネル)と呼ばれるもので、聞こえを改善させるために使われる機能の代表格になります。
これは、どれだけ周波数別に細かく調整できるのか、を表すもので、多いと多いほど、細かく調整することができます。
金額が高くなるとなるほど、この機能は、優れてきます。多く細かく調整できるようになり、微修正がしやすくなるのが、特徴です。
ただ、クロス補聴器の場合、基本的に10〜12chもあれば、十分です。
それ以上の性能(金額差)は、抑制機能の性能差が大きくなります。
金額で大きく変わるのは、聞こえを改善した後の問題を改善する機能
クロス補聴器で聞こえを改善させると、良くも悪くも、色々な音が入ってくるようになります。

風の音、周囲の音、人の声、これらは、聞こえるようになって良い部分もあれば、多すぎると、逆に邪魔になったり、鬱陶しく感じたりします。

そのため、クロス補聴器(補聴器全般)では、抑制してもあまり問題にならないであろう音は、抑制したり(邪魔に感じやすい音)、騒がしい中では、周りの音に邪魔されて聞きにくくなってしまう問題をなるべく改善できるように、特定の方向から音を入れるようにしたりして、なるべく改善できるようにしました。
その機能が、聞こえを改善させた後の問題を改善する機能です。これらの機能の有無、そして、性能の良さによって、金額が大きく変わります。
どのクロス補聴器にも車のようなグレードがあり、Aという補聴器の300、500、700、みたいに数値が大きくなると良いグレード。と、補聴器の場合は、なっていく事が多いです。
性能のまとめ
こちらに関しては、どのクロス補聴器でも基本的な改善は、できることを忘れずに、ご自身が出せる範囲内の物であれば、大丈夫です。
良いものは、良いのですが、基本的な改善は、どれもあまり大きく変わらない状態になります。
高額になってくると変わるのは、騒がしい中での聞こえの改善度や補聴器によって、大きく感じやすい特定の音、周囲の音が抑制され、長く使っていても、疲れにくい。騒がしく感じていた部分が、和らぎやすい。というところです。

④聞こえの効果をしっかり出すためのポイント
クロス補聴器の場合、しっかりと効果を出すポイントは、
- 音の調整で改善すべきポイントを知る
- しっかりとクロス補聴器を装用する
この2つになります。
音の調整で改善すべきポイントを知る

まず、クロス補聴器の場合、聞こえに影響しやすいのは、この部分になります。だいたい750Hz〜あたりで、少し高めの音の部分が影響しやすくなります。

そのため、この部分を補聴器の調整ソフトで出てくる改善目標値付近まで、改善できると、聞きにくさは、改善しやすくなります。

初めて補聴器を使用する場合、音が少々高く感じ、きつい感覚を感じることがあります。
その場合は、少し、その部分を下げて使用し、1〜2週間使用し、聞こえてくる音の感覚に慣れてきた頃に、その部分も、改善してあげられると、聞きにくさは、改善しやすくなります。
基本的に音を転送することがメインには、なるのですが、調整部分も聞こえの改善に影響します。
聞こえていると良い部分まで、こちらもなるべく改善できるようになると、聞きにくさの改善は、しやすくなります。
しっかりとクロス補聴器を装用する
次に大事になってくるのは(ある意味、一番大事なのは)、しっかりと装用できる状態にすることです。

クロス補聴器の場合、こういった補聴器を使用するのですが、この耳せんの部分がしっかりと装用される事で、聞こえにくさの改善がしやすくなります。
この先端の部分から音が出ているため、これがうまく装用できていなかったり、装用が浅かったりすると、それだけ、聞きにくくなってしまいます。

しっかりと装用する場合、できれば、上記のスポーツロックというものも使い、耳からなるべく抜けにくくするのが、ベストです。
耳は、口が動くと、それに伴い、耳の中も動きますので、はじめにしっかり装用できていても、そのうち、耳から徐々に抜けてきてしまう。ということも起こります。
ですので、しっかりと耳に装用する、そして、スポーツロックをつけて、耳から抜けにくくする。そのような部分まで、しっかりできると、クロス補聴器の効果は、上げやすくなります。


全く片耳が聞こえない片耳難聴の方の改善実例
こちらでは、実際に片耳のみ全く聞こえない方を改善した症例に関して、ご紹介します。
リンク先には、実際にどう考えて改善したのか。その手法、行なった事も記載していますので、ご参考にどうぞ。
突発性難聴により、聞きにくくなってしまった方

ご相談前は、どのような事でお悩みでしたか

実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか

このお店でご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか

実際のアンケート


低音障害型感音難聴により、片耳が聞こえなくなってしまった方

ご相談前は、どのような事でお悩みでしたか

実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか

このお店でご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか

実際のアンケート


ムンプス難聴により、片耳が全く聞こえなくなった方

ご相談される前は、どのような事でお悩みでしたか?

実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか?

このお店でご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか

実際のアンケート


他の症例は?
このほか、改善症例については、
にもまとめています。
全く片耳が聞こえない片耳難聴の改善まとめ
片耳のみ全く聞こえない方の場合、重要になってくるのは、
- どのように補うと、最大限、改善しやすくなるのか
- 片耳難聴の場合の補聴器の形状選定
- 補聴器の性能による違い
- 聞こえをより改善させるための調整ポイント
の4つです。特にどのように聞こえを補うと、最大限、改善しやすくなるのか。は、非常に重要な部分となります。
上記に記載した通り、片耳のみ全く聞こえない場合、一般的な補聴器では、聞こえを改善できないケースが、多く、そのような場合は、クロス補聴器で改善していけると、聞きにくさの改善は、しやすくなります。
上記のことをしたとしても、耳が治るというところまでは、残念ながらいきません。
しかし、聞こえにくさを改善させ、今までより、楽に生活できたり、聞きにくさを感じている部分で、聞きやすくなることで、できることが増えたり、心の負担を楽にすることはできます。
生まれつき難聴で私自身も補聴器を装用しているのですが、その経験から感じるのは、耳を治すことは、確かにできないのですが、日々の生活をよりよくすることは、できる。それが補聴器なんだと思います。
もし、聞きにくさにお困りであれば早めに行動する事をお勧めします。それにより、早々に改善できれば、お悩みの部分を早めに改善することができます。

当店では、聞き取りづらさにお困りの方へ補聴器による聞こえの改善相談を行なっています。
このお店では、安心してご相談いただくために生まれつき難聴で補聴器を使っている当事者が実際に対応させていただき、
- 聞こえにくい事によるお困り事
- 聞こえの改善
- 補聴器に関するご相談(ご質問)
これらについて、誠実にご対応しています。
完全予約制の一対一で対応しておりますので、聞いてみたい事、ご相談したい事がありましたら、お気軽にご相談ください。
相談を希望される方は、まずは、お問い合わせフォームより、ご連絡願います。
なお、当店の内容や場所、聞こえの改善に関しては、以下にまとめています。