伝音性難聴とは、耳のある部分が悪化する事によって起こる症状です。身近な病気である中耳炎や鼓膜が破れてしまう事によって、音が聞きにくくなる事があるのですが、この二つは、耳のある部分が悪化しているために聞こえにくくなります。
では、悪化している場所は、どこなのでしょうか。そして、伝音性難聴とは、どのようなものなのでしょうか。こちらでは、その概要から引き起こす症状、改善方法までまとめていきます。
もし、伝音性難聴であった場合は、理解と改善にお役立てください。
目次
伝音性難聴の概要
こちらでは、伝音性難聴の概要についてまとめていきます。主に
- 伝音性難聴の基本
- 伝音性難聴になると?
- 伝音性難聴の聴力図
- 難聴レベル
この四つにわけて記載していきます。どの内容も伝音性難聴を理解するうえで、必要な内容となります。
伝音性難聴の基本
伝音性難聴とは、難聴の基礎である感音性難聴(かんおんせいなんちょう)と対なす難聴です。難聴には、主に感音性難聴と伝音性難聴があり、この二つは、耳のどこに障害が発生したかで決まります。伝音性難聴は、外耳と呼ばれる部分、中耳と呼ばれる部分、どちらかが何らかの原因により、悪化すると発生する難聴です。※どちらも悪化する事でもなります。
中耳炎になってしまったり、鼓膜が破れてしまう事によって聞きにくくなるのは、中耳と呼ばれる部分に障害が発生するためです。それにより、音が聞きにくくなります。
普段、私達が耳と呼んでいる部分が外耳になります。その耳から、耳の穴の中、鼓膜の手前までが外耳です。鼓膜の先から内耳と呼ばれる部分の手前までが中耳になります。この二つの器官のどちらかに何らかの障害が起こると発症するのが、伝音性難聴です。
伝音性難聴になると?
伝音性難聴になった場合、単に音が聞こえにくくなるだけになります。この難聴と対なす感音性難聴は、音が聞こえにくくなるほか、言葉を理解しにくくなったり、うまく言葉を捉えられなくなる事があるのですが、伝音性難聴は、そのような事はないとされています。
伝音性難聴の聴力図
伝音性難聴になった場合、聴力を検査すると、ある特徴が現れます。それは、以下のような特徴です。
この図は、オージオグラムと呼ばれる病院で耳の検査をしていただくと見せてもらえる(貰える)聴力図です。オージオグラムの詳細については、こちらをご覧下さい。
リンク:オージオグラムの見方と検査数値から見る耳の聞こえにくさ
さて、このオージオグラムを見てわかるのは、音を耳から聞いた場合と骨を通して聞いた場合で、聞こえが異なる点です。○の赤い図は、耳に音を流して聞いた時の反応値です。一方、逆コの字は、骨を振動させて音を感じ取る神経に直接音を送った場合の反応値です。
この二つの数値に大きな差がでのが、伝音性難聴の特徴です。感音性難聴の場合は、二つの測定をしても、ほとんど同じ位置に出ますので、変化がありません。このような傾向が出ている場合は、伝音性難聴となります。
難聴のレベル
難聴のレベルに関しては、以下の通りです。
※画像はよくわかる補聴器選びより作成
こちらは、気導閾値(閾値とは数値の事です)(○や×のマーク)で見ます。伝音性難聴の場合、気導閾値と骨導閾値が出てきますが、普段の耳の聞こえに関しては、気導閾値で見ます。気導は、耳にそのまま音を流した時の聞こえとなりますので、聞こえにくさを見る場合は、気導閾値が基準となります。
平均聴力については、(500Hzの数値+(1000Hzの数値×2)+2000Hzの数値)÷4=4分法平均聴力となります。4分法とは、今現在、多く使われている平均聴力を出す方法の一つです。主に、このような計算式で、平均聴力を求めています。平均聴力は、骨導閾値も調べられます。
伝音性難聴になるレベルは、約60dBくらいまでと言われています。※伝音性難聴のみの場合となります。
伝音性難聴になる症状
上記には、伝音性難聴の概要について記載してみました。そこでは、一部の症状、中耳炎、鼓膜が破れる事によって、伝音性難聴になる事も記載しました。では、この内容以外には、どのようなものが含まれるのでしょうか。こちらについても見てみましょう。
これには
- 耳垢詰まり
- 耳硬化症
があります。こちらに加え、さらに
- 中耳炎
- 鼓膜が破れる
この二つについても、どのような症状が起こるのかについて記載していきます。これらは、ほとんどが中耳に起こる病気になります。
耳垢詰まりによる難聴
そのままの意味で、耳垢が耳に詰まる事によって起こる難聴です。病名は耳垢栓塞(じこうせんそく)といいます。耳垢が詰まる事によっても音は聞きにくくなります。この場合、症状としては
- 急に聞こえなくなる(片耳)
- 耳が塞がった感覚
- 音が急に聞こえなくなる感覚
- 自分の声が響く
これらがあります。私も一度なった事がありますが、少し自分の声が響く感覚がありました。この症状は、音がだいぶ聞こえなくなりますので、すぐわかります。
中耳炎による難聴
中耳炎は、よく子どもがかかるものとして有名ですが、成人もかかる病気です。中耳炎は、細菌による感染症であり、いくつか種類もあります。
- 急性中耳炎
- 滲出性中耳炎
- 慢性中耳炎
- 真珠腫性中耳炎
いずれの中耳炎も伝音性難聴になります。耳の中(厳密には、鼓膜と内耳の手前にある鼓室という部分(耳小骨がある部屋みたいな空間))に膿みが溜まったり、分泌物、組織液が溜まると、鼓膜の動きが悪くなるため、音が聞こえにくくなります。
症状としては
- 耳が痛くなる
- 耳垂れが出る
- 急に聞こえなくなる(片耳)
- 発熱
があります。こちらは、主に急性中耳炎の症状です。耳に痛みが出るのが、特徴となります。また、一部の中耳炎は、鼓膜に穴が空いてしまいますので、それによっても音が聞きづらくなります。
耳硬化症による難聴
耳硬化症とは、耳小骨の動きが悪くなる事により、音が聞きにくくなる症状を指します。耳小骨は、鼓膜で受けた音を内耳に伝える働きがあります。硬化する事により、動きが鈍くなると上手く、音を内耳に伝えられなくなるため、音が小さく感じるようになります。
症状としては
- 両耳が聞こえにくくなる
- 耳が詰まった感覚
- 耳鳴り
があります。難聴には、聞こえなくなるだけでなく耳が詰まった感覚や耳鳴りがするケースがあります。耳硬化症もその一つです。
鼓膜が破れる事による難聴
何らかの事故により、鼓膜が破れたり、慢性中耳炎のような鼓膜に穴が空いてしまうと聞きづらさを感じるようになります。鼓膜は、耳に入ってきた音を大きくする役割がありますので、鼓膜に穴が空くと聞きにくくなってしまいます。病名は、鼓膜穿孔(こまくせんこう)といいます。こちらは、原因に気が付くケースが多い難聴です。症状としては、
- 一時的な耳鳴り
- 音が聞きにくくなる
の二つがあります。鼓膜の機能を失い、音が増幅できなくなる事によって、音が聞きにくくなります。
なお、鼓膜が破れると全く聞こえないような印象がありますが、鼓膜が破れても音は聞こえます。鼓膜は、音を大きくしてくれる器官の一つですが、音を感じ取る神経ではありません。鼓膜が破れたとしても小さいながらに音は聞こえます。
まとめ
どの症状も外耳や中耳の一部が病気によって機能しなくなることで、音が聞こえにくくなります。意外に身近な病気、あるいは、ちょっとした事故で起こりやすい特徴があります。
伝音性難聴の改善
伝音性難聴を改善するには、耳鼻咽喉科を受診する事が重要です。伝音性難聴は、感音性難聴と異なり、治療方法があるものが大半です。耳鼻咽喉科を受診すれば、適切な処置をしてくださるでしょう。中耳炎であれば、耳を手術したり、薬を処方してくれますし、鼓膜が破れていた場合は、手術して治すという方法もあります。※手術して治すまでもないケースもあります。
伝音性難聴の場合
- 手術で治るケース
- 補聴器を装用するケース
この二つの方法で、聞こえを改善させていきます。耳を治療する事によって聞こえを改善させたり、治せるところまで治療を行い、あとは補聴器を装用して聞こえを補う手法もあります。こちらは、耳の状況により異なります。
補聴器を装用するケースでは、
- 手術では思ったより効果が見込めないケース
- 手術をするには負担がかかるケース
に適応します。
耳の聞こえに違和感を覚えたら、耳鼻咽喉科に行くのがお勧めです。耳鼻咽喉科を受診することにより、治療できるのでしたら、それが最もよい改善方法となります。
伝音性難聴を補聴器で改善する
耳、身体の状況によっては、補聴器を装用して改善させる事もあります。こちらでは、補聴器による改善に必要なものをまとめていきます。改善方法の概要、補聴器の限界、そこから考える難聴者に必要な事、これらについて記載していきます。
補聴器の改善方法
補聴器には大きく分けて以下の選択肢があります。
- 一般的な補聴器を装用する
- 骨伝導補聴器を装用する
- 手術が必要なBAHA補聴器を装用する
伝音性難聴の場合、伝音性難聴の方専用の補聴器があります。それが骨伝導補聴器(あるいは骨導補聴器)と呼ばれる補聴器です。この補聴器にも
- 一般的な骨伝導補聴器
- 骨伝導BAHA補聴器
の二種類があります。骨伝導補聴器はそのまま装用できる補聴器ですが、BAHA補聴器は手術をして、埋め込むタイプの特殊な補聴器です。どちらも一長一短になります。
こちらは耳鼻咽喉科さんに聞いてみるとよいでしょう。恐らく一般的な補聴器か、骨伝導補聴器のどちらかになると思います。純粋な伝音性難聴の場合は(特に若い方は)骨伝導補聴器、それ以外の場合は、補聴器になる確率が高いように思います。こちらはあくまでも私の感覚ですので、話し半分程度に聞いてください。
なお、ご高齢の場合は、高確率で、一般的な補聴器になります。伝音性難聴だったとしても感音性難聴も発症している可能性がありますので、骨伝導補聴器で補うのではなく、伝音性難聴も感音性難聴も補える一般的な補聴器になる可能性があります。あくまでも一般論ですので、状況によって異なる可能性がある事は、ご了承ください。
骨伝導補聴器について詳しく知りたいという方には、こちらの二種類のエントリーをお勧めします。
リンク:骨伝導補聴器の対象者と主な概要
補聴器の限界
伝音性難聴は、感音性難聴に比べると補聴器の効果を感じやすい傾向がありますが、それでも一般的な健聴の方より、聞きづらくなります。
- 反響しやすい部屋では、非常に聞きにくくなる
- 音を拾える距離にも限りがある
このような欠点があります。耳の器官に異常がないとしても、補聴器ができる事には限りがありますので、この点にご注意ください。この二点は、通常の補聴器、骨伝導補聴器、手術型の骨伝導補聴器BAHA、いずれも当てはまります。
実は私も本で勉強した頃は、補聴器を装用すれば、伝音性難聴はほぼ治ったも同然だと思っていました。しかし、実際に使用している方々のお話を聞くとそうでもない事がわかりました。
補聴器で音量を大きくしている事の弊害や補聴器だからこそ起こる限界、それらにより、100%聞こえる事はないようです。音が大きく聞こえすぎる事もあるようですし、部屋によっては反響しすぎて何を言っているかわからないことがあると聞きました。そして、あまりにも離れすぎると気付かないといった事もあるようです。
経験している方のお話は、本よりも貴重ですね。実に多くの事を教えてくれます。この内容は、経験者のお話しを元に、記載しています。やはり経験に勝る物はありません。
伝音性難聴の改善まとめ
どんな難聴も耳の治療ができれば、治療してしまい、できなくなった段階で、補聴器を装用します。補聴器は、耳の治療ができなかった際に装用する最終手段です。
耳の聞こえを改善させる場合は、まず初めに耳鼻咽喉科に受診し、耳の聞こえが改善するかを見ていただく事が大切です。その後、治療ができなかったり、治療しても期待するところまで改善しない場合は、補聴器を装用して補っていきます。
これは、伝音性難聴も同様です。耳を治す場合は、どんな時もまずは、耳鼻咽喉科を受診してからとなります。
あとがき
伝音性難聴について記載してみました。
伝音性難聴については、多くのサイトが記載していましたので、自分自身の経験も入れて記載してみました。ただ、私は医師ではありませんので、伝音性難聴になった際、対処する方法として補聴器を選択するケースと補聴器ではなく、治療や手術で治ってしまうケースの割合がわかりません。恐らく、ここは、このページを見てくださってる方も知りたいところだったと思いますが、申し訳ありません。
伝音性難聴は、感音性難聴と比較すると軽視されやすい傾向があるように思います。どちらも難聴ですので、聞こえに差はあるものの感じている感情は同じです。
伝音性難聴の方には、耳の聞こえが治る事をお祈りします。どんなものも補うより治るのが一番です。そして、耳に関して違和感を感じる事があれば、早々に耳鼻咽喉科を受診してください。それが耳を治す上で最も重要な事です。
この内容に関連するエントリーはこちらです。
リンク:BAHA骨導補聴器の論文から見るBAHA補聴器の効果
この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。
リンク:【どのくらい聞きにくい?】難聴レベル別聞きにくさのまとめ
リンク:【実例】中等度難聴者が補聴器を装用するとどう改善されるのか
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なお、当店の内容や場所、聞こえの改善に関しては、以下にまとめています。