補聴器の効果を調べる

補聴器は、効果がない?に関する大きな誤解

補聴器の装用を迷っている層には「補聴器は、聞こえない」「補聴器は、効果がない」と思っている方々が少なからず、いるのではないか、そんな風に思っています。補聴器を装用しても全ての事が理解できるわけではないのは、確かですが、それがイコール効果がないわけでもありません。少なくとも難聴者である私は、そのように考えています。

では、なぜそのような事が言えるのでしょうか。そして、なぜそのように感じやすいのでしょうか。

難聴者だからこそ、わかる視点から、補聴器について記載していきます。その答えは、難聴独自の症状と感覚である事が要因です。こちらの内容で、少しでも補聴器や耳について、理解いただければ、幸いです。

補聴器は効果があると言える理由

補聴器を装用している私から言える事は、「補聴器は効果はあるけれど、完全ではない」というひと言に尽きます。補聴器を装用した場合の聞こえと、補聴器を装用しない場合の聞こえを考えてみると以下のようになります。

考えられる分岐、実は、聞こえを改善する要素しかない考えられる分岐、実は、聞こえを改善する要素しかない

難聴というものがあり、補聴器を装用すると聞こえが改善する例もあれば、残念ながら改善しない例もあります。そして、補聴器を装用して聞こえを改善できなかった例は、補聴器を装用しない方が、改善するか……といえば、そのような事はありません。

これは、補聴器は「効果はあるけれど完全ではない」という事を表しています。仮に補聴器を装用したら、今以上に聞こえが下がってしまった、聞こえにくくなってしまったのなら、補聴器の効果は、確かにありません。そして、そのようなケースであれば、補聴器は、使用しない方が良くなります。

しかし、補聴器を装用している私自身、装用して思う事は、上記の図の通り、装用すれば聞こえが改善するところと改善できないところがあるという事です。そして改善できないところは、補聴器を装用しない方が改善するかといわれれば、そんな事はありません。

補聴器を装用した状態と補聴器を装用しない状態、そして、それぞれの効果を考えてみると補聴器は、効果があるといえます。ただし、聞きにくい所もあれば、聞こえるようになる……というのが実際のところです。

これが補聴器だと、私は考えています。

なぜこんな事が起こるのか

では、なぜこのような事が起こるのでしょうか。それには、音を判断する事の難しさと聞き取りが難しい事、この二つが関係しています。この二つは、まさに感覚器官である事、そして難聴独自の特徴とも言えます。

自分では判断できない

補聴器を装用している私から言える事は「自分自身で音を判断する事はできない」という事です。これは、感覚器官ならではの特徴です。難聴になると誰もが聞きにくい事は、わかっても、どれほど聞きにくくなっているかを理解している人は、いません。難聴に限らず、目も同様であり、見えにくい事はわかっても「この見え方は、0.3やな」なんてことは、誰にもわかりません。これらは、機械を使って、どのくらいなのかを調べないとわからない事です。そして、これは、補聴器を装用した時にも言えます。

補聴器を初めて装用すると補聴器を装用した事によって音が大きく聞こえる事になります。しかし、その大きく聞こえる事がわかってもどのくらい聞こえていれば良いのか、自分は今、どのくらい聞こえているのか、そして補聴器を装用した状態で、どのくらい聞こえているのがベストなのかがわからなければ、補聴器を装用してもどう判断すれば良いのかがわかりません。そのため、補聴器を装用した状態でも、補聴器装用時の聞こえを測り、状況を確認する必要があります。

補聴器は、自分自身では聞こえの善し悪しを判断できません。これは、自分自身では判断できない事を意味します。

感音性難聴の症状

補聴器を装用する人は、ほぼ感音性難聴になります。感音性難聴の症状には、音が小さく聞こえるようになる他、言葉が聞き取りにくいという事があげられます。言葉の聞き取りにくさは、音が小さい事が原因ではなく、自分自身の言葉の聞き取る力が低下してしまう事で、そのような現象が起こります。

人が音を理解する仕組み

人が音を理解するには、聞いた事がある音である事、その音が聞こえる事、この二つが必要です。耳は、あくまでも音を聞く器官にすぎず、音は、脳で理解しています。耳が音を感じると内耳(ないじ)と呼ばれる部分が感じた音を電気信号に変換して、脳に情報を伝えます。そして脳に情報が伝わると脳の中の記憶(データベース)と照合して、音を理解します。

音を理解する例を出してみますと近くで犬がワンワン鳴いていたとします。犬の鳴き声を知っている方であれば、ワンワン聞こえれば「犬が近くにいる」や「犬が鳴いているな」と気が付きます。しかし、犬の鳴き声を知らない場合は「何の音?や「騒々しいな……」と感じるだけになります。

これは、言葉も同様です。知らない言葉や聞き慣れない言葉を聞くと音が聞き返す事があります。これは、聞こえていないのではなく、聞いた事がないため、脳の中にデータベースがなく、聞き取れなかったものが大半です。特に名前、英語表記の社名、専門用語などに多くあります。これらも知らないと音が聞こえたとしても理解できません。

音が聞こえ、脳の中にデータベースがあるからこそ、人は音を理解できます。その証拠に、2〜3回聞いた後は、すぐに理解できるようになっているのが大半です。言葉も知っている言葉はすぐに理解できますが、知らない言葉は、理解できません。

感音性難聴が引き起こす事

感音性難聴とは、耳の中を通ってきた音をキャッチする部分である内耳の働きが悪くなっている難聴です。

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内耳とは、感音難聴とかかれている部分にある器官であり、その一部が青色のぐるぐる回っている蝸牛(かぎゅう)です。この部分が何らかの原因で損傷すると感音性難聴になります。内耳が音をキャッチしにくくなると耳の中を通ってきた音がしっかり脳に送れなくなります。耳の中を通ってきた音と脳に送られたデータが異なると音を正しく判断する事ができなくなります。脳は、送られてきたデータと脳に保管してあるデータが一致させる事で理解しています。適切に音が送られないと音は理解できなくなってしまいます。

理解できなくなると感音性難聴の特徴である聞き間違えから、言葉が全く理解できないといった事が起こります。私自身、感音性難聴だからこそ、わかるのですが、この聞き間違えや言葉が全く理解できないという状態は、実に不思議な感覚です。言葉によっては、違和感なく聞き間違えてしまいますし、全くわからない時は、本当に何を言っているのかわかりません。

このような事が起こるのが感音性難聴です。感音性難聴は、人が音を理解する過程で起こる難聴です。そのため、音が聞こえたとしても何と言っているかわからなかったり、言葉を理解するのが難しい事があります。それは、音をどのようにして理解するかを知るとわかりやすくなります。

まとめ

感覚器官である事、そして難聴独特の症状のため、自分自身で、補聴器の効果を知るのは、非常に難しくなります(と言いますか、無理です)。このような特徴がある事を理解しておきましょう。

適切に評価するために

これらの内容をご覧になるといかに自分自身で評価する事の難しさがおわかりいただけたと思います。では、補聴器を適切に評価する方法には、どのようにしたら良いのでしょうか。こちらでは、その評価についてまとめていきます。それぞれ見ていきましょう。

自分がする評価

自分自身ができる評価は、音を聞いてどのように感じたかになります。補聴器に関しては、自分自身ができる評価の範囲は、そう多いものではありません。私自身が思うのは、評価できてもせいぜい大きく聞こえすぎる事はないか、うるさく感じすぎないか、聞こえてくる音は、違和感が強すぎないか、これくらいだと考えています。

これは、視力が低下してしまい、メガネをかける際も同様です。どのくらい見えているのかは、視力検査しないとわかりませんので、それを除くと後は、気持ち悪くならないか、強すぎて頭が痛くならないかくらいしか、評価するところがありません。視力もそうですが、自分が評価するところは、少なくなります。

耳の場合、上記の事がなければ、良いと言えます。ただし、補聴器を装用するという事は、今までの聞こえより、聞こえるようにするという事です。すると当然聞こえてくる音は、大きく聞こえてきます。大きく聞こえる程度であれば、問題ありません。音が大きすぎる場合のみ、問題となります。

客観評価

補聴器の評価の中で最も重要なのが、この客観評価です。主に補聴器を装用した状態で、どのくらい聞こえるかを測定したり、補聴器を装用した状態で、どのくらい言葉が聞き取れるかを測ります。今まで記載してきた通り、難聴者は、自分自身で聞こえの善し悪しを判断できません。聞こえるようになっているのは、わかるものの、どのくらい聞こえているのかも、どのくらい聞こえたら良いのかも、補聴器を装用するだけではわかりません。そのため、数値にして、聞こえを把握していきます。

補聴器を装用した状態で、どのくらい聞こえるかを調べる事を音場閾値測定(おんじょういきちそくてい)と呼びます。こちらの判断基準は、以下のリンク先に記載しています。これは、視力でいうメガネを装用した時に目指す視力です(視力は、0.8あれば良いとされています)。

リンク:音場閾値測定で目指す補聴器を装用した聞こえの目安

こちらは、主に耳鼻咽喉科さん、補聴器屋さんが補聴器選定時に行うものです。当然ですが、補聴器を販売する際、これらの物を使用しないと医師も補聴器屋も本当に聞こえているのかの確認が取れません。メガネについても同様で、視力がわかったとしてもメガネをかけ、どのくらい視力が改善できたかを検査して、初めて認められます。聞こえるようになったのと聞こえがしっかり補えるようになっているのは、全く異なります。この確認は、非常に重要です。

第三者の評価

できるなら、第三の人から、補聴器装用前と補聴器装用後の自分を評価してもらうと適切な評価を得られます。物事の評価は、使用前と使用後、どのように変わったかで行うのが一般的です。しかし、自分自身の場合、使用前と後で評価したとしても適切に評価ができません。

これは、音の性質にあります。難聴になると音が聞こえていない事に気が付きません。目に見えない音は、聞こえていないと存在してる事に気が付きません。ですので、自分自身がどれだけ聞きやすくなったのかの評価は、難聴者自身は、できないのです。聞こえていない音がどれだけあったのかは、難聴者自身はわからないですし、どのくらい聞こえていないのかも体感的に理解する事は、不可能です。これでは、適切に使用前と使用後の効果に関する評価は、できません。

一方、第三者であれば、聞こえにくい状態の自分と補聴器を装用した自分の比較ができます。呼びかけに応じやすくなったのか、お話しが通じやすくなったのか、外にいて、身近なものに気が付く事が増えたのか、これらの事を判断してもらうと補聴器の効果をより適切に見やすくなります。

聞こえないと聞こえていない事が自分自身では、わかりません。しかし、他の人なら、聞こえていない自分と補聴器を装用した自分の反応を比較できます。そのようにすると、より適切に評価できるようになります。

まとめ

補聴器の評価に関しては、この三つがあります。どれも重要な内容です。ただ、自分がする評価は、少々難しい傾向があります。仮に音が大きく聞こえるとしても、初めは、皆大きく聞こえます。聞こえない世界が長いと長い程、補聴器を装用して聞こえる世界に行った時のインパクトは、大きくなります。苦痛を感じる事もあるでしょうし、頭が痛くなる事もあるかもしれません。

しかし、個人的には、感覚を変えるというのは、そのぐらい難しいものだと考えています。私自身、メガネを装用していますが、初めて装用した時は、頭が痛くなりましたし、気持ち悪くもなりました。それでも装用し続けて、今があります。このように、初めて装用する時は、必ず違和感があるものだと考えています。

あとがき

補聴器の効果に関する誤解について記載してみました。補聴器の効果は、確実にあります。ただ、その効果をすごく感じる方もいれば、残念ながら少ししか感じない方がいる……ただ、それだけだと考えています。補聴器を装用すれば、聞こえるようになりますし、補聴器を装用しても聞こえないものは、存在しますが、では、補聴器を外せば、聞こえるようになるかといえば、そんな事はありません。補聴器を装用しても聞こえないものがあれば、聞こえるものがある。単純にそれだけなのだと考えています。

こちらの内容は、補聴器のありのままの姿が伝われば良いなと思い、記載しました。補聴器は、耳の治療ができない人が装用する機器です。言い換えれば、最後の受け皿であり、これを逃すともう聞こえを補う事ができません。どんな場合でも、耳の場合、まず耳の治療から初めます。その後、治療できれば、治療しますし、治療できなかった場合で、さらに聞きにくさが残るケースにのみ、補聴器を装用します。つまり、補聴器を勧められるケースは、もう治療しようがないケースになります。

では、そこで補聴器が使用できなければ、どのようになるか……といえば、もう結論は、出ていますね。そう、どうしようもなくなります。それでは、患者さんが最も浮かばれません。

補聴器は、確かに全てを聞こえるようにしてくれるものではありません。しかし、少なからず、聞こえるようにしてくれるものもあります。その効果をどのように見るかは、人それぞれですが、そこで得られるものもあります。

補聴器は、正しく判断してこそ、本当の価値が見えてきます。

これらの内容が補聴器の理解に役立てば、幸いです。

 

この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:中等度の感音性難聴の私が自分に合った補聴器を選んだ方法

リンク:補聴器を初めて装用する方に伝えたい装用後の世界

リンク:補聴器の性能の一つ、抑制機能を理解する三つの事

ABOUT ME
深井 順一
聞こえにくい人を支援するお店、パートナーズ補聴器、代表。生まれつきの難聴者で補聴器を使っている事、補聴器の販売を行っている事、この二つの視点で、ブログを書いたり、補聴器のご相談をしています。書いている人の詳細は、こちら。お店に関しては、こちらに詳細を書いています。お店の場所は、東京都墨田区、都営浅草線本所吾妻橋駅より徒歩2分のところに、あります。
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書いてある内容は?
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  • 補聴器の基本から、種類の特徴、金額による違い
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聞きにくさにお悩みの方は、参考にしてみてください。また、お客様の改善事例には、実際の耳の状態から、実際に改善させた方法を中心に記載しています。

補聴器の改善まとめお客様の改善事例

なお、お店に関する内容は、以下にまとめています。そして、ご来店いただいた方の当店の評価もまとめてみました。

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