自分の耳の感覚と耳の測定データはどちらが正しい?


さて、先日自分の耳を疑ったお話しから、疑う事で得られるものという事で、耳の感覚を疑い、データを重視するようになった旨、記載しました。こちらをご覧になった方は「では、耳の感覚とデータはどちらが正しい?」と疑問を持ったかもしれません。

今回は、こちらの問いに関する答えを私なりの回答として、記載していきます。なお、結論から書きますと、どちらも正しい、となります。

データはあくまでも補助

前回のエントリーでは、データを重視する旨記載しましたが、データはあくまでも補助になります。主体は、耳ですので、その耳の状況を理解するツールとして有効なのが、目に見える化であり、データとして状況を確認する事となります。

補聴器を装用している側の視点からすると、補聴器を装用すれば音は聞こえますが、どのくらい聞こえているのか、どのくらい聞こえるようになったのか、どのくらい聞こえるのがベストなのか、これらの事は、補聴器を装用するだけではわかりません。補聴器を装用した時に目指す聞こえの感覚を知っていればわかるかもしれませんが、初めて補聴器を装用した時に、その感覚を理解している事は、まずありえません。そのため、補聴器を装用するだけでは、どのくらい聞こえれば良いのかは、わからないという事になります。

補聴器を調整する側の視点からすると、実際に補聴器から、どのくらい音が出ているのかはわかるものの、その音を出して、こちらの考えている通りに難聴者の方が聞こえるようになっているのかは、わかりません。補聴器を調整するうえで重要なのは、補聴器の調整ではありますが、最も注目すべき点は、補聴器を装用して聞こえるようになった状態です。言い換えればインプット(補聴器の調整、どのくらい音を入れるか)より、アウトプット(補聴器を装用してどのくらい聞こえるようになったか)の方が重要です。少なくとも私は、そのように考えています。

このように考えるのは、インプットは、アウトプットのためにあるからに他なりません。いくら、優れたインプットでも、アウトプットが散々であれば、考え直す必要があります。そのアウトプットをしっかり見るツールがデータになります。

感覚に囚われると

私が感じている事に感覚に囚われると、何が良いのか、よくわからなくなるという事があります。これは、過去の私もそうでしたし、感覚を重視するお客さんもそのような傾向がありました。

補聴器を装用するうえで、感覚は確かに大切です。聴力に合わしていない補聴器を装用するのは、非常に苦痛でもありますし、違和感しか感じない補聴器を装用した時の感覚は、非常に苦しいものです。しかし、感覚はあくまでも感覚で、その音を感じた時に感じる感覚でしかありません。特に難聴の耳で感じる感覚は、補聴器が使用できる、できない、違和感を感じる、感じないの判断に使用するのは良いのですが、聞こえが良い、悪いの判断はできません。補聴器を装用する方は、自分自身でどのくらい聞こえるようになったかの判断ができないからです。

感覚が悪いという事ではなく、感覚で判断できる事とできない事がある、ただそれだけになります。

データと感覚

個人的には、データと感覚は、6:4くらいの割合で、データを重視しています。データはあくまでも補助ではあるのですが、データを重視した方が、個人的には、うまく調整できます。どのような状況なのかを理解した後に取る行動と理解しないでやみくもに調整を行うのとでは、明らかに前者の方が、現状の改善に役立てますし、適切な状態にしやすくなります。

そのような事もあり、私の場合は、6:4の割合で、データを重視しています。特に、補聴器に関しては「こうなるはずだ」と思い、音の調整をしたとしても、その通りにならない事もあります。私は、自分自身の経験を通じて、インプットだけを見るのではなく、アウトプットを見るようにしています。もちろん、重要度は、アウトプットの方が高くなります。

データで調整

データ重視で調整している私が言うのも何ですが、データで調整すると、意外にも感覚を完全に度外視した調整にはなりにくいと感じています。むしろ、感覚のみに頼り「こうではないか」というような一種のカンに頼ると、どんどん変な調整になる事の方が、個人的には、多くありました。

よく考えてみれば、オージオグラムは、人の聴力の平均からどのくらい下がっているかを見るものです。測定したデータをオージオグラムに記載し、その傾向を見るとどのような状況かが一目瞭然です。バランスが悪ければ、オージオグラム上にも変に出てきますし、バランスが良ければ、オージオグラム上も比較的キレイに出ます。

オージオグラムの仕組みからもデータで見ると、調整の善し悪しが浮かび上がってきます。

感覚とデータの役割

感覚で理解できる事は、音を感じた感覚のみです。そのため、その音を聞き続ける事ができるのか、その音は、違和感が強くて使用できない事はないのか、これらの確認のために使用されます。一方、データは、現状を理解し、どのようにしていけば、より良くなるのか、それとももう限界値まで来ているのか、それらがわかるようになります。

データの役割は、現状から方針を打ち立てる事に使われ、感覚は、その調整をした時にどう感じるのか、使用できる感覚なのかを確認する事に使われます。ですので、個人的には、データは重視するものの、感覚もデータもどちらも正しいと考えています。

ですので、感覚で理解するべきポイントは、感覚で理解し、それ以外は、データで理解するという方法が最もベストだと考えています。これは、状況に応じた使い分けとも言えますね。

 

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