お客さんから教えてもらった乖離する音の感覚に向き合う方法


つい先日、お客様とこんなお話しになった。それは、音の感覚の乖離だ。聞こえにくくなると、聞こえにくくなる程、基本的には、一般的な人が感じる音の感覚と聞こえにくい人が感じる音の感覚には、ズレが生じてくる。このお話しもそのズレに関する話しである。

「補聴器をつけると、本当にいろいろな音が聞こえますね、正直やかましいです、これはすごいですね」

「そうですね。聞こえるようになるぶん、どうしても周囲の音や物音は、入りますね。その点は、申し訳ございません」

「いやいや、責めているわけではないんです。まぁこれならこれで、イライラする気持ちがよくわかるなと思って」

「イライラする気持ち?」

私は、言っている意味がわからなかった。

自分の音の世界と他人の音の世界

「それは、どういう事でしょう?すみません、お話しの内容が理解できなくて……」

「いや私、周りに結構言われてしまう事があるのですが、実は、それを引き起こしていたのは、自分だったんだなと……。補聴器をつけて一番びっくりしたのは、自分が出す音でした。足音だとか、物を置いた音だとか、水の音ですかね。コップの音をガラス机の上に置くときとかは、特に大きい。私も大きいな、きついなと思っていたんですが、ある日、コップを置く音がうるさい!と妻に言われまして……」

「そうなんですか」

「いや、今まで自分が感じる感覚がおかしい、補聴器で音を大きく聞きすぎているんだなと思ったんですけど、大きく感じている音は、周りの方も大きく感じているんだなと、それがわかったんです。」

「なるほど」

「実はお恥ずかしい話しですが、音をちょっと聞くだけで怒ったり、騒音で人を殺すとかはっきりいってよくわからなかったんですよ。たまにありますよね。騒音問題で人が殺されたって。近所に居る人が相当おっかない人だったんだなと思っていたのですが、補聴器をつけてその理由がわかった気がします」

「……」

「もし、これだけ聞こえる世界にずっといれば、細かい音や物音は聞こえますよね。それが気になったり、イライラするのも仕方がないのかなと。これは、聞こえるようになってわかりました。特に細かい音って嫌ですね。本当にイライラします(笑)大きくもなく小さくもない音量で、規則的に続く音がね」

「で、家の中って結構うるさいんですよね。家の中にいても隣でなにかしていると、ゴソゴソ、ガタガタ聞こえるんですよ。これは、鬱陶しいと感じた。で、妻にうるさいと言ったらケンカになりました(笑)あんたはいつもゴソゴソやっているだろって、こっちだっていつもうるさいよと。補聴器をつけるまでは、想像もしていませんでした。」

「そんな事があったんですね」

「それ以外にも夜寝る際も気が付いた事がありますね。私は、夜寝る際補聴器を外すので、ほとんどぐっすり寝れます。でも妻は、雨の音がうるさい、風の音がうるさいといって眠れない事もあるようで。私は、いつもそんなのおかまいなしに寝てます。そしてたまに皮肉を言われます「いいわね、そんなにぐっすり寝れて」と(笑」

「あぁそれはよく聞きますね。私も雨の音が補聴器を外すと聞こえないので、おかまいなしに寝ています。どうも聞こえる人は、雨の音は相当うるさいようで、中には、かなりストレスを溜めてしまう方もいるようです。」

「ああ、そうなんですか。やはり、聞こえにくい場合は、聞こえにくいなりに不自由があり、聞こえる側にも聞こえるなりの悩みがあるって事なんですね。初めて音に関して理解できたように思います」

「……」

「実は、今まで聞こえにくい状態だったのが、聞こえるようになって正直、ストレスもありました。結構、音聞こえてきますので。でも、ちょっと気になる事を聞いてみると、みんなそれを感じていたんですよ。これは、考えさせられました」

「素晴らしい観察力ですね。そこまでお考えになる方は、ほとんどいらっしゃいません」

「いつからかわかりませんが、どうも私は自分の感覚こそが全部だと思っていたようです。感覚って難しいですね」

感覚は、主観評価、どちらにも転ぶ

音の感覚は、何と理解していいか難しい。音を大きく感じる事で「よく聞こえる」と良い評価をする方もいれば「音が大きい」とマイナス評価をする方もいるためだ。主観評価なため、どちらにも転ぶ可能性がある。

そして何よりも重要なのは、発生している音の強さについて「大きい」「小さい」を感じる事はできるが、それが元々「大きい」「小さい」がわからない事だ。それでは、自分の感覚だけで理解してしまうのも無理はない。これは、私自身も補聴器を使っているのでよくわかる。

この方とお話ししていて理解したのは、どのように音は感じたら良いのかだった。そして課題は、どうそれを理解したら良いかだ。この方の場合は、周囲の人の感覚を参考にしていた。それは、一種の客観的に音を理解する事の一つの指針になるのではないだろうか。

なお、この後、私はこう言った「すみません、音に関しては、大きい、苦痛であれば音の調整をしますが、いかが致しましょう?」

彼は言った

「あぁこのままでいいですよ。みんながどう音を感じているのかがわかったので、むしろその感覚を大切にしたいです」

なかなかこのような人物は見ないが、参考になるのではないだろうか。

 

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