補聴器の調整は、聞こえの改善の8割ほど占める重要な部分になります。これは、バイクロス補聴器でも変わりはありません。
バイクロス補聴器でしっかり改善していくには、
- 聴力別の補えると良い数値(改善目標値)を知る
- 自分の状況を把握する方法を知る
- 使った感覚と補聴器使用時の測定結果を見比べて、良い状態を目指す
この3つが重要になってきます。
補聴器には、聴力別、どのくらい補えると良いかがおおよそ決まっており、その聞こえまで補えると、補聴器の効果を引き出しやすくなります。
また、その場合に重要になってくるのは、実際にそこまで改善できているのか。現状、どのくらい聞こえているのかを調べる事です。一言で言うと、現状を把握する方法になります。
そして、補聴器を使用した感覚と実際の補聴器の効果について見比べ、良い状態にしていけると、補聴器の調整は、良くしやすくなります。
こちらでは、補聴器の効果を出すために、なるべく聞こえを補えるようにしていくための内容をまとめていきます。
目次
バイクロス補聴器の調整の基本
冒頭の通り、補聴器には、聴力別に改善できると良い改善目標値、というものがあります。
聴力が低下した際、その低下した聴力分を補うのが補聴器です。そして、その低下した聴力別の改善目標まで、改善できると、聞きにくさの改善はしやすくなってきます。
ここで重要になってくるのは、聞こえの確認です。その確認には、大きく分けて
- 主観評価
- 客観評価
の2つがあります。
主観評価は、補聴器を使ってみて感じた耳の体感評価です。補聴器を使ってみた際に音が大きく聞こえすぎないか、使っていて辛くなることはないか。などの体感を主に評価する方法です。
客観評価は、補聴器を使用した状態を測定を通じて、どのくらい聞こえているのかを評価する方法です。
この方法には、音場閾値測定(おんじょういきち測定)、音場語音明瞭度測定(おんじょうごおんめいりょうど測定)などがあります。※詳細は以下に記載します。
今現在は、この2つを合わせて、補聴器を耳に合わせていきます。この2つを合わせる理由ですが、それぞれの利点と欠点を補いつつ、よりベターな状態へ近づけることができるためです。
まず、補聴器は、装用することによって聞こえやすくはなるのですが、感音性難聴の方が使用するため、どうしてもどこかしらで聞きにくさが出てきます。そして、自分がどのくらい聞こえているのか、適正の位置まで聞こえているのか、というのは、体感では、かなりわかりづらくなります。
そのため、どのくらい補えているのか、聴力に対して、ちゃんと補えているのか、という部分は、客観評価である補聴器を使用した状態を調べて判断していきます。
調べた後、その聴力で改善できると良い部分(改善目標値)と今現在、聞こえている数値を比較することで、現状を把握することができます。
しかし、それだけになってしまうと、数値だけで調整するようになってしまい、その人の感覚(音の体感)を無視しやすくなります。実際には、人によって、改善目標値まで入れられる方もいれば、そこまで入れようとすると、音が大きく聞こえすぎてしまい、辛くなってしまう方など、います。
それらの状況から、客観評価で補聴器の状態を把握しつつ、主観評価でその状態でも使えるのか、使っていてうるさすぎることはないか。音の感覚などは、どうなのか。など確認ができると、効果を引き出しつつ、使える補聴器にすることができます。
主観評価は、使った感覚こそわかるのですが、実際にどのくらいききやすくなっているのか、現状の改善値を知ることはできません。そのため、体感だけでは、その状態がいいのか悪いのかを判断する事が非常に困難になります。
客観評価は、実際の改善値を知ることはできますが、体感を知ることができず、その状態で使ってみてどうなのか、うるさすぎることはないのかなどを知ることはできません。
この2つを合わせることによって、お互いに足りない部分を補うことができ、ベターな調整を行うことができるようになります。
客観評価で使用する測定とそれぞれの改善値
次は、自分の状況を知るための客観評価について記載していきます。
補聴器の効果を知るための測定は
- 音場閾値測定
- 音場語音明瞭度測定(語音弁別能検査)
主にこの2つがあります。こちらは、補聴器屋さんでも病院さんでも行なっている測定です。
音場閾値測定
こちらは、補聴器の効果測定でよく行われる測定です。
補聴器版の聴力検査のようなもので、いくつかの周波数で、補聴器装用時、どのくらい聞こえているのかを調べることができます。
比較的、時間がかからず、簡単に調べられ、かつ、補聴器の状態を知る上で、欠かせない測定になります。
初めの方に出したものは、この測定結果です。この測定で補聴器で改善できると良い部分まで改善できると、補聴器の効果は出やすくなります。
基本的に音声は、この辺りが関係し、
この辺りは、アラーム系になります。4000Hzは、体温計の音で、ものにもよりますが、体温計の音に気がつくには、だいたい45dbか、それ以上で聞こえていると聞こえるようになります。
基本的には、満遍なく改善した方が音のバランスや音声の聞こえに関しても良い傾向があり、仮にそれが難しいケースがあった場合は、音声の部分を中心に改善していけると、状況の改善は、しやすくなります。
そして、こちらの改善目標値ですが、聴力によって、少し改善できる数値が変化します。
聴力が70dBよりも軽い場合は、上記のように35dbほどになるように改善できるとベストです。
しかし、それよりも聴力が重い場合は、上記のように聴力の約半分(80dBだったら、40dBなど、85dBであれば、40dBか45dbか、目指せる方にします)ほど、改善できると良いです。※聴力が低下するとするほど、補いにくくなる傾向があるため、あくまでもこちらは、目標になります。
補聴器を調整した後にどのくらい改善できているのか。という部分がわかると、この改善目標の数値と現状の数値を比較する事で、実際の耳の状況を理解する事ができるようになります。
このようにできると自分の状況というのは、グッと理解しやすくなり、かつ、どの部分を補ったらよくなりそうなのか、そして、どの部分をより改善したら良さそうなのかもわかるようになります。
重い方の補聴器の改善目標値に関する補足ですが、基本的に聴力は低下すると低下するほど、補いにくくなります。特に高い音(2000Hzを含む、それ以上の音の高さ)は、かなり補いづらくなり、改善目標値まで改善できれば、相当いい状態になります。この点に関しては、改善を考えすぎて、きつい状態にしないように注意が必要です。
音場語音明瞭度測定(語音弁別能検査)
こちらは、補聴器を装用した状態で言葉の聞こえ方を調べる測定です。補聴器の効果測定には、聴力検査のような音の部分を確認する音場閾値測定と、言葉の聞こえを調べられる語音明瞭度測定の2つがあります。
70dB(少し声の大きい方の声の大きさ)、60dB(一般的な声の大きさ)、50dB(少し声の小さい方の大きさ&少し距離があるところでのお話の大きさ)など、広い範囲の音の大きさで調べることで、補聴器を使用した状態で、どのくらい理解ができるのか。を調べられる測定です。
先ほどの音場閾値測定で、聴力別、補えると良い数値まできていると、この音場での語音明瞭度測定の結果もよくなることが多くなります。
そのため、はじめに音場閾値測定でしっかり改善した後にこちらを測定し、最終確認を行う。というやり方をすることが多いです。
数値の適正値に関しては、概ね、補聴器がない状態での測定結果(補聴器がない状態の音場語音明瞭度測定)の一番良い数値(正解が高い数値)が、補聴器使用時の50dB、60dB、70dBの広い範囲で、同等かもしくは、低下が10%以内であれば、良い状態です。
補聴器の場合は、このように、音声の部分がどれほど理解できるようになっているのかを調べる測定もあります。
語音明瞭度測定の結果に関しては、元々の耳の語音明瞭度測定の結果により、大きく変化します。基本的に元々の耳の結果が良い場合、音場閾値測定でしっかり音を補えている(聴力別の改善目標値まで改善できている)場合は、それなりによくなることが多いです。しかし、元々の耳が低い場合は、補っても低いままである事が多くなります。音場閾値でしっかり改善することによってよくなるのは確かなのですが、明瞭度が低い場合は、あまり改善に繋がらないことになる事が多々あります。
実際の改善での流れ(例)
主観評価、客観評価と出てきましたが、これだけだとなかなかわかりづらいかと思いますので、実際の改善の流れについて簡単に記載してみます。
基本的に補聴器の調整でポイントとなるのは、冒頭の通り
- ご自身の聴力で改善できると良い改善値を知る
- 実際に今現在、聞こえている数値を知る
- 改善値まで改善すると共に音の体感で使える範囲を目指していく
の3つになります。
補聴器を使っている状況に関し、主観評価と客観評価の2つを把握し、良い状態にしていくのが調整の基本となります。
例えば、このような聴力の方がバイクロス補聴器を使用して、改善していくことになりました。
そして、実際にバイクロス補聴器を調整してみた結果、上記のような数値が取れました。補聴器の音の感覚について伺ってみますと、大きすぎることはなく、音量もちょうど良い状態でした。
次に改善目標値と比較してみますと、このような状態でした。
このような場合は、数値としても、よく、かつ、補聴器も使用できる範囲内とのことで、主観評価も良い状態です。このような状態になると、ベストになります。
次は、先ほどと聴力は、同じで補聴器について調整してみた結果、このような状態になったとします。
まず、現状として、測定した結果、目標よりも低い数値で出ました。使ってみた感覚を聞いてみると、そこまで大きいことはなく、全然使える範囲内とのことでした。
このような場合は、もう少し音を大きくしてみても良さそうなら、大きくしてみて、使用できる範囲内なのか、そして、聞こえに関して、改善する傾向が出てくるのかを見てみます。
そして、大きくした結果、このように改善目標値まで改善できたり、さらに近づけられ、かつ、補聴器を日常生活で使用していて、うるさすぎる、音が辛い。などなければベストです。
しかし、そこまで大きくすると、周囲の音が大きく感じ過ぎてしまったり、逆に音が大きいことで疲れやすくなってしまう。補聴器をつける事がきつくなってしまう。などあれば、元の音量に戻す。または、大きくした音量の半分だけ改善する、など行なってきます。
このように主観評価(使った感覚)と客観評価(自分が今、改善できている数値)を比較できると、どのようにしたら、補聴器の音のバランスを取ろうか。という部分が相談しやすくなり、結果的に使いやすい補聴器にする事ができます。
また、仮に調整した後、先ほどと同じ音の状況で、かつ、これ以上、音を大きくするのは、きつそうだ。となった場合は、無理に大きくすることはありません。ひとまず、補聴器を使用できる状態で活用し、使っていく内に耳が慣れてより改善できそうなら、音を大きくしてもいいですし、それも厳しそうなら、抑えた状態の音量で使う。というように考えていきます。
なお、ある程度、補えてきた時に音場語音明瞭度測定を行えるとより現状を把握する事ができます。
調整する人や改善を行う方によって少し判断の基準などは異なる場合はありますが、基本的に、測定したデータや補聴器で聞いてみた感覚などを参考により良い状態へ調整していくのが、調整の基本です。
音場での語音明瞭度測定は、あくまでも現状の確認のために行う事がほとんどです。その理由ですが、測定を行ない、仮に結果が悪かったとしても、どこを修正すれば理解しやすくなるのか(改善できるのか)。という部分が非常にわかりにくいためです。音場閾値測定を行うのは、実際の聞こえを把握するのももちろんですが、聴力別の改善目標値という【ここまで改善できると結果(聞こえ)が良くなりやすい】という部分があるためです。音場閾値測定は、現状の把握ももちろんですが、改善のための測定。という意味合いが強く、こちらで測定する事が多くなります。
上記には、調整している様子のデータを記載しましたが、実際には、一度でピタッと理想の数値になることは、稀になります。ですので、補聴器の調整→改善目標値まで近づけて日常生活でも使えるのかを確認(貸出、試聴)→補聴器の調整→改善目標値まで近づけて日常生活でも使えるのかを確認(貸出、試聴)をいくつか繰り返し、改善目標値に近づけると共に使用できる状態にしていきます。
補聴器の調整は、主観評価と客観評価を混ぜて改善していきます
さて、まとめていきます。 バイクロス補聴器で聞こえを改善していく際、基本的には、一般的な補聴器と同じになります。補聴器を使用した感覚(主観評価)と補聴器を使用した状態の聞こえの測定(客観評価)の2つを合わせながら、改善していきます。
重要なのは、
- 聴力別の補えると良い数値(改善目標値)を知る
- 自分の状況を把握する方法を知る
- 使った感覚と補聴器使用時の測定結果を見比べて、良い状態を目指す
を行なっていくことです。
今現在は、補聴器を装用して、改善できると良い数値というのは、概ね、ある状態ですので、その改善値を目指しつつ、低下した周波数を補っていきましょう。
しかし、耳の状況や聴力低下した原因によっては、そこまで補うと音が辛くなってしまったり、歪んで聞こえてしまう。なども起こる事があります。
その場合は、聞こえを補うと共に、なるべく使用できる範囲内に抑えて調整できるとベストです。
どうしても耳の感覚は、人によって異なるため、このように確認を繰り返しながら、その人の状態を合わせていくのが補聴器になります。
このようにして、合わせられると、使用でき、かつなるべく聞こえを補える状態になります。
各、難聴改善方法まとめ
バイクロス補聴器について
聞こえにくい事でお悩みだったり、使用されている補聴器が不調。など、聞こえづらくてお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
安心してご相談できるよう、補聴器の貸出や試聴も行なっています。
当店でご相談を希望される場合は、まずは、お問い合わせフォームより、ご連絡ください。
当店の内容や聞こえの改善に関しては、以下にまとめています。