なぜ音場閾値測定と音場語音明瞭度測定の関係性を調べたのか?

前回は、自分自身が感じている音場閾値測定と語音明瞭度測定の関係性について、記載してみました。
こちらを書いた時は、あくまでも関係性のみしか書いていなかったのですが、この2つの関係性を調べていたのは、ある理由があります。
それは、補聴器をつけた時の目的(改善すべき目標とも言いますね)は、語音明瞭度測定の結果の向上とすべきですが、この測定は、PDCAに必要な計測可能な数値を目標にする事、そして、計測時にどこを改善すると良いのか。という部分が非常にわかりづらいためですね。
これは、簡単に言えば、音場の語音明瞭度測定を基準として、PDCAを回す。というのは、非常に難しい。という事です。
その理由には、大きく分けて、
- 語音明瞭度は、どこまで良くなればいいかわからない
- 語音明瞭度では、どこをどう調整すればいいかわからない
の2つがあります。
そのため、別のPDCAがしやすいものを見つけ、さらにその測定の数値が良くなった時、連動して、語音明瞭度測定の結果(補聴器を装用した人の聞こえ)が良くなる。という風にできれば、聞こえを改善するシステム。聞こえを改善する調整のプロセスそのものの確立がしやすくなるのではないか。と考え、色々とやっていました。
これが大きな理由です。
こちらに関して、いくつか記載していきます。
語音明瞭度測定は、どこまで良くなれば良い?
音場語音明瞭度の欠点は、その数値の評価の難しさにあります。
一つは、語音明瞭度自体、どこまで良くなれば、良いかわかりづらい点です。
その理由は、補聴器をつける人のほとんどは感音性難聴であり、音が聞こえにくい他に音声そのものが理解できない部分が出てきてしまいます。
そして、その理解できる部分の限度がどこまでなのかは、厳密には、知る事は、できません。
知る事ができない。というよりも測定した数値が最高値。限界値である。という証明ができない。というのが、ポイントですね。
数値を測った時の最良値(その計測上、最もよかった数値)は、わかるものの、その中で、最もよかった数値が本当に最高値なのか。は、証明する事が、かなり難しいです。
そのことから、最高の部分。目指すべき部分。というのがわからないと、どこまで改善すると良いのかがわからず、目標としては、かなり達成しづらくなります。
この点は、目標が曖昧になりやすい。といえばわかりやすいかもしれません。
もちろん、この曖昧になりやすい。というのは、語音明瞭度じたいブレやすい数値である事も関係します。
語音明瞭度測定では、どこを調整すれば良い?
もう一つは、語音明瞭度測定の結果では、どこをどう調整すれば良いか非常にわかりづらい。という特徴があります。
音を調整する。と考えた場合、必要になるのは、
- どの周波数を(周波数)
- どれだけ調整するのか(音量)
の2つです。
簡単に言いますと、2000〜3000Hzを4dB下げる。というのも、どの周波数(2000〜3000Hz)をどれだけ調整(4dB下げる)するのか。という事になります。
語音明瞭度の場合は、間違えた単語の周波数分布から、おおよその周波数を推測する事ができても、それが、どのくらい足りていないのか。音量の事ですね。それが非常にわかりづらいです。
ちょっと足りていないのか。それも、全然足りていないのか。が、さっぱりわかりませんので、この測定は、次の改善に非常に調整に活かしづらい。という特徴があります。
音場語音明瞭度測定に関しては、各音声に模した音量で調べる事で、全体的に音声が聞こえるようになっているのか。の確認には、非常に適しているのですが、どの部分をどう改善して、聞こえをより良くしていこうか。の思考には、かなり活用しづらくなります。
これは、現状の把握には使えるけれども、補聴器を使っている人の課題を見つける。どこをより良くするとよいのかのポイントを見つける。というのには、向かない。という事ですね。
理想と現実を考える
私も一番初めは、目標として、語音明瞭度の向上を掲げていました。
補聴器を使用する目的は、あくまでも、聞こえの改善(音声をより聞きやすくする事)であり、それが良くなれば、良くなるほど、聞こえにくさの改善に繋がるためです。
補聴器を使用した状態の測定。語音明瞭度測定で、50dB、60dB、70dBの全体的に良く使われる音声のところが、満遍なく良くなるようになれば、音声が全体的に聞きやすくなり、その結果、良い状態になる。というように考えていました。
ただ、上記の通り、音場語音明瞭度測定は、その測定をしたとしても、改善に活かしづらく、ただ、結果だけわかる。という事になり、もう少し改善する部分がわかりやすくならないか。もう少し改善の課題が見える測定は、ないか。というのを探していました。
理想なのは、ある測定を行い、その測定上、数値が良くなれば、語音明瞭度測定の結果もつられて上がってくる。という状態ですね。
PDCAを行う上で重要になってくるのは、計測可能な目標であり、かつ、それを達成する上で、どこを改善したら良いかがわかるもの。になります。
計測可能ではない目標の場合、そもそも現状と目標の把握ができないので、実際に目標に向かっているのか。この場合は、ちゃんと聞こえの改善に向かっているのかですね。それがわからなくなってしまいます。
そして、それを達成する上でどこを改善したら良いかがわからないと、現状だけ、わかることになり、その先、どうすれば良いのかがわかりません。まさにこの点は、語音明瞭度測定がそのような状況ですね。
そこで白羽の矢が立ったのが、音場閾値測定です。
調べてみて?の結果が前回の内容
音場閾値測定に関しては、PDCAを行う上で大切な
- 計測可能な目標であること
- 目標を達成する上でどこを改善すると良いかがわかるもの
の2つを達成しています。
実際に目標の部分は、はじめに補聴器の効果が比較的良く出ていると考えられた人の音場閾値及び音場語音明瞭度を片っ端から調べて、その傾向を調べた。という経緯はありますが、目標が計測可能で、そこまで、どのくらい達成しているのか。それが、わかりやすいです。

わかりやすい。って大事ですね。
こんな風にすると、どこが達成できていて、どこが達成できていないのか。さらに補聴器の調整で必要な、どの音(周波数)をどのくらい(音量)調整したら良いのか。もわかりやすくなります。
このようにできると、どこに課題があり、どこを次に調整していったら良いか。が非常にわかりやすくなりますので、そこの部分を理解することに務めた訳ですね。
音場閾値測定と音場語音明瞭度測定の関係性を調べていた理由は、ここにあります。
全ては、良い流れ。良い改善のプロセスを可視化し、より良くする流れを作るために調べていました。
この改善のプロセスがわかると、聞こえの改善は、しやすくなりますので、技術。というより、改善のプロセスそのものに関して、知る事が、何よりも、聞こえを改善する上で、大事な事になります。
ということで、これらのために、私の場合は、調べていました。ただ、目標に関しては、補聴器が良くなってくるにつれて変わりますし、音場閾値測定には、欠点もありますので、その点は、注意も必要です。