補聴器を調整する人に重要なのは、技術?コミュニケーション能力?

面白い事があったので、ふと記載したいと思うのですが、補聴器を調整する人に重要なのは、補聴器に関する知識、もしくは、補聴器を調整して、聞こえにくさを改善するために必要な知識、技能か、それとも、コミュニケーション能力か、そう言われたら、どちらが重要だと思いますか?
私は、コミュニケーション能力の方が大事だと、思っています。
補聴器で聞こえを改善するための知識、技術は、確かに大切ではあるのですが、最も大事か。と言われれば、そのようには思いません。
最も大事なのは、コミュニケーション能力で、お客さんや患者さんの希望や、耳の状況から、適切に案内できる事。適切にやりとりできる事、お互いにとって良い方法を模索するという人としてのあり方、考え方の方が、大事だと思っています。
その理由には、大きく分けて、2つあり、
- 補聴器での改善は、一人で行うものではない事
- お互いに協力し合う事でしか、良い結果は、生み出せない事
この2つがあります。
補聴器での改善は、一人で行うものではない事
基本的なスタンスではありますが、補聴器での聞こえの改善は、一人で行うものではない。というところがあります。
これは、補聴器を販売する側、聞こえにくさを改善する側が一人で行うものではないということでもありますし、お客さん側が一人で行うものでもない。という事です。
例えば、補聴器を調整して、聞こえを改善する。と考えた場合でも、補聴器を調整する人がわかることは、せいぜい、聴力の傾向から、どのように聞こえを改善したら良いか。どのような補聴器が合いやすいのか。ぐらいになります。
聴力や耳の状況、人によっては、身体の状況によっても、補聴器での聞こえの改善は、変わり、目の前の人が、本当にその知識で、改善できるのか。は、実際にやってみて、初めてわかる事になります。
実際にこれが良さそうだ。なので、それで改善してみる。その後、お客さんなり、患者さんなりにフィードバックをもらい、それが良かったのか。それとも、あまり良くなかったのか。その声を聞いて、修正をしていく訳ですね。
お客さん側からの視点で言えば、たくさんある補聴器の中で、どれが自分に合うのか。その点は、かなりわかりづらいのが、現状です。
ただ、実際に補聴器を使った感覚は、わかりますので、それにより、補聴器を評価する。という状況ですね。
この点も気をつけなければならない事があるのですが、補聴器を装用しても、聞こえている感覚は、わかるものの、どこまで聞こえが改善されているのか。さらに、自分自身の聴力に対して、改善できると良いところまで、改善できているのか。は、わからない事です。
この点は、実際に測定したり、補聴器の調整状況をみたりしないとわからない事になりますので、補聴器を調整している人に使用状況を聞いたり、改善状況を伺う必要があります。
この点をみても、自分だけで、聞こえにくさの改善というのは、できない。という事がわかると思います。
お互いに協力する事でしか、良い結果は、生み出せない事
7つの習慣という本を読んでから、大変、この本に感銘を受けているのですが、この本の中に人とのあり方、コミュニケーションのあり方、というのが、あります。
それは、主にWinーWinの関係を築く。というもので、聞いた事がある方も多いかと思います。その中で、この人間関係のあり方には、大きく分けて、4つの種類があるというものです。
- Win-Win(お互いが勝つ)
- Win-Lose(自分が勝って、相手が負ける)
- Lose-Win(自分が負けて、相手が勝つ)
- Lose-Lose(両方とも負ける)
それは、上記の4つになります。このままだと、どっちが相手でどっちが自分なのか、わからなくなってしまうため、
- WinーWin(対応者も使用者も勝つ)
- WinーLose(対応者が勝ち、使用者は負ける)
- LoseーWin(使用者が勝ち、対応者は、負ける)
- LoseーLose(対応者も使用者も負ける)
このようにみていきます。
こちらでお伝えしたいのは、WinーWinにしか活路はなく、むしろ、それ以外の方法で対応してしまうと、全ての状況において、LoseーLoseになる事です。
WinーWin(対応者も使用者も勝つ)
こちらは、一番わかりやすいですね。
お互いに「聞こえにくさの改善をする」もしくは「補聴器での使用状況を良くする」という目標に対し、お互いが相談できるようになっている状況です。
補聴器を調整する側は、お客さんの希望を伺いながら、それであれば、こんな方法がありますよ。と方法を提示し、お客さん側は、自分なりに聞こえの改善ができるようになる。というものです。
無理に補聴器を調整することもなく、お客さん側としては、自分で聞こえの改善を選べる。そのようなお互いにとっての良い状況を目指したり、お互いの目標である「聞こえにくさの改善をする」「補聴器での使用状況を良くする」という部分にコミットできている状況が、WinーWinになります。
WinーLose(対応者が勝ち、使用者は、負ける)
こちらは、お客さん側からしたら、最悪の結末ですね。
例えば、高い補聴器に関して、割引しますよ。と言われ、安くなるなら良いか。と思い、買ったと思ったら、全く、聞こえの改善については、してくれず、そのまま補聴器だけが残ったケースです。
確かに安く買えた事は、良いかもしれませんが、求めていたのは、補聴器ではなく、聞こえの改善。その聞こえの改善に関しては、できず、安くしてくれたとはいえ、元が高い事もあり、高いお金を支払った事には、変わりありません。
また、別のケースでは、補聴器の聞こえの改善。もしくは、補聴器での使用状況において、対応者(補聴器調整者)に現状を伝えるものの「その状態で使い続けて慣れてください」しか言われないケースなども、当てはまります。
この点は、その現状を伝えるものの、全く取り合ってくれないケースと言えば、わかりやすいかもしれません。
この点の評価は、耳の状況や補聴器の状況によって、判断が難しい点は、否めないのですが、全く取り合ってくれないところについては、お客さん側に負担がかかる、もしくは、明らかに負け。というような状況になります。
これが典型的なWinーLose(対応者が勝ち、使用者は、負ける)になります。
LoseーWin(使用者が勝ち、対応者は、負ける)
これは、先ほどのケースの真逆ですね。お客さん側が、全て仕切るような状態でしょうか。
例えば、補聴器のご相談で、何も耳の事を考えず、自分が気にいる物を購入する。もしくは、販売員が理由があって、お勧めできないものを、そのまま購入する。というようなケースが考えられます。
あとは、無理に理由なく、対応を求め続けたりするケースも一部、入る事があります。
例えば、ここをこういう風にして欲しい。というような対応のケースです。
この点は、非常に判断が難しいのですが、提案した内容が、状況を改善するのに役立つ、貢献できるのであれば、積極的に行うべきですが、それが逆効果になったり、あまり貢献できないのであれば、他の方法を考える事が必要になります。
お客さん側からするとなんでもやってくれる事は、良いことに思うかもしれません。
しかし、仮に販売側の人の方がもっと良い改善方法を知っていたり、もっとよくできる方法を知っていたとしたら、どうでしょうか。
その力を活用できないという事は、結局、お客さん側が最終的に得られる価値(聞こえの改善度)というのは、少なくなってしまうため、これも、LoseーWinになります。
このような状況が、LoseーWin(使用者が勝ち、対応者は、負ける)になります。
LoseーLose(対応者も使用者も負ける)
こんな状況、誰が希望するのか。というところがありますが、実は、先ほど、紹介したWinーLose(対応者が勝ち、使用者は、負ける)もLoseーWin(使用者が勝ち、対応者は、負ける)も、最終的には、このLoseーLose(対応者も使用者も負ける)になります。
WinーLose(対応者が勝ち、使用者は、負ける)に関しては、お客さん側が不満に思っている訳ですから、最終的に別のお店に行ったり、不評をばらまいたりする訳ですね。
この点は、それだけの事をしてしまっているのですから、仕方がない事になります。もし、そのような事をしてしまったのであれば、素直に反省する。これしか方法はありません。
これは、お互いの関係が長く続かない典型例とも言えます。
そして、LoseーWin(使用者が勝ち、対応者は、負ける)も、上記に記載した通り、お客さん側が全ての改善に対し、良い対処方法に関して知っている訳ではありません。
対応方法を間違うと、聞こえが変わらないどころか逆効果になり、聞こえにくさの方が強くなることがしょっちゅう起こるのは、補聴器を調整した事がある方であれば、肌感覚で感じている事だと思います。
ですので、しっかりとその点については、お話ししたり、わかりやすくして伝えたりしないと、お客さん側が得られる価値、聞こえの改善度というのは、下がる可能性が高くなります。
お客さん側は、勝っている。というように感じるかもしれませんが、得られる聞こえの改善度は、本来得られるもののところまで行っている訳ではありませんので、これもLose-Loseになります。
つまり、WinーLose(対応者が勝ち、使用者は、負ける)もLoseーWin(使用者が勝ち、対応者は、負ける)も最終的には、LoseーLoseにしかなりませんので、人とのあり方、コミュニケーションのあり方というのは、WinーWinしかない事になります。
どんなに良い知識、技術があっても、コミュニケーション能力がないとうまくいかない
で、本題ですね。
上記の通り、人とのあり方、コミュニケーション能力がないと、上記の通り、たちまちLose-Loseになります。
WinーLoseもLose-Winも、最終的には、Lose-Loseです。どちらも負けですね。
これは、どんなに良い知識や聞こえを改善する技術があっても、人とのコミュニケーション、もしくは、人との人間関係のあり方に関して、WinーWinを目指さない限り、その知識や技術は、活かす事ができない。という意味でもあります。
無駄になるくらいであれば、個人的には、まだ良いのですが、時として、対応方法を間違えると人を傷つけたり、その人にトラウマを植え付けることにもなりかねません。
もちろん、この点は、補聴器での聞こえの改善は、一人では、できない。ということも大きく影響しています。
このように改善したら良い。という事がわかっていても、実際に物事がその通りに動くことは、ほとんどありません。
実際には、耳の状況や身体の状況、人によっては、使用環境も入ってくるため、それぞれの状況に合わせて、修正していくことが必要になってきます。
修正していくには、必ず、使用者からのフィードバックが必要になりますので、頭の中だけで、聞こえの改善は、できないということですね。
なので、個人的には、補聴器で聞こえの改善をする知識、技術は、確かに大切ですが、それ以上に重要なのは、コミュニケーション能力だと思っています。
そして、そのコミュニケーション能力を鍵は、ちゃんとお客さんの状況を理解したいと思う気持ちが、あるのか。ないのか。だと思います。
ある方は、ちゃんとコミュニケーション取れている事が多いですし、ない方は、独りよがりになってしまう傾向を感じています。
何もこれは、補聴器に限りません。日常での生活や身近な人とのコミュニケーションも同様です。
些細な部分ではありますが、この理解したいと思う気持ち。それがあるかないかは、かなり大きな割合を占めます。
これが、私自身の意見ですね。
まとめ
ふと面白いお話があったので、補聴器を調整する人に重要なのは、技術?コミュニケーション能力?という内容で書いてみました。
どうでしょうか。少しは参考になりましたでしょうか。意外に知識、技術、と答える人の方が多かったのではないでしょうか。
どんなに良い知識や技術を得ても、当然ですが、人に還元したり、活かせなかったりすれば、それは、ないのと同じです。
ですので、実は、知識や技術以上にこのコミュニケーション能力、もしくは、人とのあり方、補聴器販売のあり方、そちらの方が大事になります。
ちなみに耳が痛い話ですが、数年前は、私も「コミュニケーション能力?技術や知識が大事に決まってるだろう」と思っていた一人でもあります。
今現在は、それが間違いである事は、身に染みて感じているのですが(大反省しました)、その誤りに気づけた人がいたのであれば、幸いです。
特にこのようなコミュニケーション能力より、知識や技術を評価するのは、専門職になるとなるほど、強い傾向を感じています。