補聴器は、なぜこんなに高いのか?

聞こえにくさを抱えており、補聴器について、調べてみて、はじめにびっくりするのは、補聴器って、なんでこんなに高いんだ?という事だと思います。
はじめに結論からいいますと、聞こえを改善するのに、コストがかかりすぎている事から、このような高額な状態になっています。
こちらでは、補聴器の問題点をわかりやすくするため、補聴器は、どのように聞こえを改善しているのか。そして、それに起因するコストがどこにかかっているのかを記載していきます。
補聴器は、どう聞こえを改善している?
さて、補聴器は、なぜ高いのか。を知るには、そもそも、補聴器は、どのようにして、聞こえを改善しているのか。というところを知る必要があります。
というのも、補聴器が高い理由は、聞こえを改善するために必要な機能、システムを組み込んだ事で、こんなに高くなってしまった。が、主な理由だからです。
補聴器は、どう改善しようとしている?
補聴器は、聞こえを改善する道具ではありますが、では、どのようにして、聞こえを改善しようとしているのでしょうか。

今現在の補聴器は、パソコンに繋げて、一人一人違う聴力に対して、補聴器で聞こえを改善するようにしています。

聞こえを改善するとした場合、多くの方は、聴力が低下したところに対して、音を補って、聞こえを改善する。という風にお考えになるかと思いますが、これは、半分正解で、半分不正解になります。
補聴器は、聴力に対して、音を調整しているのではなく、ラウドネス(聞こえている音の範囲)に対して、調整しています。
ラウドネスに対して、調整しているとは?
さて、いきなり訳がわからなくなってしまったと思うのですが、これは、どういうことかと言いますと、ここを理解するには、難聴の状態とは、どういう聞こえの状況かを知る必要があります。

まず、難聴の状態というのは、その人にとって、小さい音は、聞こえづらくなっているのですが、大きい音は、結構、そのまま聞こえている事が多いです。(重度の難聴の方は、別です)
図に出すと、こんな感じですね。左側に出ているのは、正常な人の聞こえで、右側に出ているのが、難聴の人(60dB)の聞こえです。

小さい音、聞こえ始める音は、正常の人の聴力の場合、0dBから始まり、大きくてきつい!となるのが、だいたい95dB〜100dBぐらいになります。
一方、難聴の人の耳というのは、聞こえ始めが、50dBで、きつい!となるのが、105dB〜110dBです。(60dBの方の場合)

この2つをみてみると、難聴の方の耳というのは、小さい音の反応値は、大きく変わっているのに対し、大きい音の反応値は、あまり変わっていませんよね。
正常の方の小さい音の反応値は、0dB、難聴の方の場合は、60dB。こうみると、60dBもの差があります。

一方、大きな音の反応値は、正常の方の場合は、95〜100dBに対し、難聴の方の場合は、105dB〜110dBです。だいたい10dBしか変わっていません。
難聴の状態というのは、この聞こえの範囲が大きく変わっている。というのが、大きなポイントです。
補聴器がしている改善

よく見てみると、赤い線で3本、青い線で、3本あります。それ以外には、黒い線もありますね。
この状況を改善するために、補聴器の調整画面では、音の大きさ、音の高さ、以外にも、入力音の強さ別に、音の増幅を変えられるようになっています。
上記のものをみてみると、3本の線があります。
これは、
- 一番下は、小さい音(50dB)の入力音
- 中央は、普通の音(65dB)の入力音
- 一番上は、大きい音(80dB)の入力音
をそれぞれ変えられるようになっています。
上記の通り、難聴の耳というのは、小さい音は、聞こえないのですが、大きい音は、意外に聞こえているため、全ての音を一律に大きくすると、大きい音が、大きくなりすぎてしまうんですね。
ですので、それぞれの足りない音の大きさの部分を適量に補うようにしたのが、補聴器です。
例えば、
- 一番下は、聞こえづらいので大きくあげる
- 中央は、ちょっと聞こえづらいので、ほどほどにあげる
- 一番上は、そもそも聞こえているので、そんなに大きくしない
というような具合に変えています。
難聴というのは、聴力ごとに聞こえる音の範囲が異なるため、その範囲に合わせて、適切な聞こえの改善をするようにしています。
小さい音、普通くらいの音、そして、大きい音、それぞれの音の大きさをなるべく音の大きさ別に適量に改善しようとしているのが、補聴器です。
他のプラス要素は、2つ
上記の事の他に補聴器がしているのは、
- 大きい音の出力制限
- 抑制機能をつけて、なるべく阻害されにくく
の2つですね。
大きい音の出力制限
上記に記載したのは、あくまでも、基本となる聞こえの改善部分になります。

それ以外には、大きい音の出力の制限もしています。
上記の黒い線がその制限で、補聴器がすることには、聞こえは、改善するけれども、大きい音を出しすぎないように制限することも必要です。
この出力の制限がないと、そのまま、大きい音が大きいまま入ってしまうため、耳を守るためにも、必要な部分になるんですね。
抑制機能をつけて、なるべく阻害されにくく
上記に記載したのは、あくまでも、基本的な聞こえの改善に関するないようになります。
それ以外には、補聴器には、抑制機能をつけて、なるべく周りの音に阻害されないようにしたり、不快に感じやすい音を抑制する機能があります。
そもそもの問題として、なぜこのような機能があるのか。と言いますと、単純に聴力を改善するだけでは、聞こえの改善が、できなかったためです。
そのまま聴力に関して、改善していくと、今度は、騒がしい中でのお話が、周りの音に阻害されて、聞きづらくなってしまったり、かつ、一部の音が不快に感じるということが出てきてしまいました。
その事から、抑制機能をつけて、なるべく阻害されないように、かつ、補聴器を使いやすくして、より改善していくことになります。
補聴器は、このようにして、なるべく聞こえを改善できるようにしていきました。
聞こえを改善するのに起因するコスト
さて、上記では、おおよそ、補聴器は、どう聞こえを改善しているのか。を掴めたと思いますので、実際にそれをどう実現していったか。というところに話を移していきます。
補聴器も、別に補聴器として何となく作っている訳ではなく、耳の事を研究し、難聴の耳というのは、このようになっているので、それをなるべく改善するために、このような機能が必要だ、こう聞こえを改善すると良いだろう。という事を考えて、補聴器の設計をしています。
では、そのために何が必要だったのか、それは、大きく分けると
- 補聴器を製造するコスト
- 補聴器を提供するコスト
の2つに分けられます。
補聴器のコストは、基本的にこの2つで構成されています。
補聴器を製造するコスト
補聴器を製造するコストとは、そのままの意味ですが、補聴器を作る際にかかるコストです。
これには、主に
- 補聴器の材料費
- ソフトウェア開発費
- 耳の研究費や補聴器の開発費
の3つがあります。
補聴器の材料費
補聴器の材料費とは、補聴器を作る際に必要な材料の費用ですね。
木製の椅子を作る際に、木が必要なように補聴器も、いくつかの部品を組み合わせて作っています。
上記の通り、今現在は、パソコンに繋げて、一人一人違う聴力に対し、音を合わせて、聞こえを改善しています。
補聴器は、聴力に合わせて聞こえを改善する必要があるため、単純に音を出すレシーバーという部品、そして、音を拾うマイク以外にICチップと呼ばれる小さなCPUのようなものを入れています。
これがあることによって、聴力別に聞こえを改善しようとしたり、音の大きさ別にどのぐらい音を大きくするのか。
そして、出力の制限にきたら、そこまでしか出さないようにする。あとは、ノイズを抑える機能を発動するなど、様々な事ができるようになっています。
この部品が一番高く、かつ、このようなCPUのようなものを入れているため、補聴器は、かなり高額になっています。
ソフトウェア開発費
今現在の補聴器は、パソコンで補聴器の音を調整しています。

ソフトウェアを立ち上げ、そのソフトに聴力を入力し、それに合わせて、おおよその改善値をソフトウェア側が出してくれます。
このようになっているのは、聴力は、実に様々だからですね。
ですので、できる限り、自由に調整できるよう、その入力値から、おおよそあう改善値を出すようにして、その後、細かな音の調整を補聴器を販売する人や対応する人がして、改善値を高めていくようにしています。
ということは、当然ですが、このソフトウェア、もしくは、このような聞こえの改善のシステムそのものを開発する費用もかかります。
聴力は、人によって異なりますので、一人一人、なるべく合わせられるよう考えた結果、このような大掛かりなものになっています。
そのための開発費、システム費もかかります。
耳の研究費や補聴器の開発費
最後は、こちら、耳の研究費と補聴器の開発費です。
上記の補聴器の材料費。そして、ソフトウェアの開発費も、さながら、この研究費及び、開発費も、非常に大きな要素です。
補聴器は、どのようにして、聞こえの改善をしているのか。という点は、上記にまとめさせていただきましたが、実は、補聴器での聞こえの改善は、まだまだ発展途中です。
簡単にいうと、耳が治る。というレベルには、到底及んでおらず、どのようにしたら、より改善ができるのか。は、まだまだ研究途中で、かつ、補聴器の開発費も、どんどんかかっている状況です。
ある意味、ここが一番かかっていると言っても、過言ではなく、研究費及び、開発費に関しては、かかりすぎていて、全然、回収できていない部分もあります。
補聴器を提供するコスト
次は、補聴器を提供するコストです。この点は、補聴器で聞こえを改善するコスト。といえば、わかりやすいかもしれません。
このコストには、
- それぞれ違う耳の状況(聴力)に対応し、改善するコスト
- 繰り返し、補聴器の調整を行い、聞こえを改善するコスト
の2つがあります。
この点は簡単に言えば、補聴器は、そのまま手に入れれば、そのまま使えるものではなく、耳の状況を調べたり、聞こえを改善するまでに何度か通いながら、聞こえを改善していくため、その際の人件費がかかりやすい構造になっていますよ。という事です。
それぞれ違う耳の状況(聴力)に対し、改善するコスト
補聴器は、聞こえいくい方の聞こえを改善する機器ではありますが、その聞こえにくい状況というのは、人によって変化します。
ですので、補聴器に予め音を設定しておくのではなく、どのような聴力の方でも、対応できるよう、ソフトウェアを使って、聞こえを改善するようにしています。
そのことから、例えば、耳の状況を調べたり、あるいは、補聴器を装用した状態での聞こえの改善状況を調べたりするのですが、それは、耳の状況が人によって、異なるためです。
聞こえにくい人、全ての状況が同じであれば、あまり人を介さなくても良いかもしれないのですが、人によって、違う。ということは、個別に合わせていく必要があるため、今現在は、まだ人を介して、調べたり、調整したりする事が多いです。
これが一つですね。
繰り返し、補聴器の調整を行い、聞こえを改善するコスト
次は、こちら。繰り返し、補聴器の調整を行い、聞こえを改善するコストです。
補聴器での聞こえの改善は、一度の対応で全てが終わる訳ではありません。
聞こえを改善したり、補聴器の相談をして、補聴器を購入するまでには、平均3〜5回ほど、相談している場所に通っていただく必要があります。
そうなると、その分の対応費、人件費になるのですが、それも発生してしまいます。
ですので、一部の販売店さんでは、「補聴器の代金の中には、調整費も入っていますよ」という風に言うケースもあるのですが、そのコストが、こちらです。
実際には、調整費なんてものはなく、補聴器屋さんの好意でやっている事が大半なのですが、聞こえを改善するには、ある程度、通っていただく必要がありますので、その分のコストは、どうしても発生します。
これが2つ目です。
補聴器は、聞こえを改善する際のコストの塊
上記の通り、補聴器は、聞こえを改善するためのコストの塊。といっていいほど、非常にコストまみれになっています。
しっかりと聞こえを改善するには、耳の状況を把握する必要もありますし、その人ごとに聞こえの感覚は、異なりますので、仮に同じ聴力だったとしても、最終的な聞こえの改善は、変化する事もあります。
さらに、補聴器で聞こえを改善していく場合、単に聴力低下した部分を改善していくのではなく、音の大きさごとに音の調整もかえ、かつ、大きい音は、必要以上に出ないように設計し、聞こえを改善しつつ、耳を守る。という事もしなければなりません。
そして、補聴器の製造コストに関しては、これらの事をするために補聴器の材料費そのものが高くなってしまい、さらにソフトウェアの開発、耳や補聴器の研究もしなければなりません。
こういったコストが一つ一つ積み重なって、今現在の金額になっています。
補聴器が高いのは、事実です。
ただ、その点に関しては、なるべく聞こえにくさを改善できるようにしようと考えている所から、きているのも事実です。
これが、補聴器が高くなってきてしまっている理由になります。