耳・補聴器のこと

もしかして補聴器が高い本当の理由は、コレか?

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

年末年始、少し時間があったので、溜めていた本を読んでいたのですが、その中の一つに、山口周さんの「ビジネスの未来」という本を読みました。

その内容は、物質的貧困を社会からなくすというビジネスの使命は、終わった。というところから、新しい時代に関する内容が書かれていました。

その中で、面白い内容があり、もしかしたら、コレが、補聴器が高い本当の理由では?と思う部分がありましたので、一つ、共有していきたいと思います。

経済合理性限界曲線で見る解決しやすいものとしにくいもの

今現在の社会は、資本主義社会で、世の中にある社会的課題は、それに投資をして、回収の見込みがあるものは、どんどん投資されたり、課題解決に向かって、製品が作られたりする一方で、

それに投資しても、あまり回収の見込みがないケースにおいては、その社会的課題というのは、放置されたままになりやすくなります。

これは、その問題を解決するのにかかる費用と、その問題を解決する事で得られる利益、で分けていただければ、よりわかりやすく、費用<利益。であれば、どんどん利益を上げるために進んで投資され、費用>利益。であれば、その問題は、誰も手をつけない状態になりやすくなります。

コレを著者は、経済合理性限界曲線で表現しており、問題の難易度と問題の普遍性の軸で、見事に表現されています。

普遍性が高いものは、多くの人が抱えている問題であり、市場の広さを表し、問題の難易度は、それを解決するのに、どれだけ、費用がかかるのか。を示しているとも言えます。

ここで大事な点は、資本主義、言い方を変えれば物質的貧困を社会からなくすというビジネスで考えた場合、この内側のものしか解決できない事です。

こちらの外側は、費用がかかり、さらに対象者が少なくなるため、問題解決をしても、投資した分が回収できない、あるいは、非常にしづらいため、継続したり、より良い製品を開発する。という営みをしづらくなってしまう。という特徴があります。

市場は、「経済合理性限界曲線」の内側の問題しか解決できない

ミルトン・フリードマンに代表される市場原理主義者は、政府は余計なことをせずに市場に任せておけばあらゆる問題は解決していくと主張したわけですが、それは、市場合理性限界曲線の内側にある社会課題だけで、ラインの外側にある課題は原理的に解決できません。なぜなら市場とは「利益がでる限りなんでも行うが、利益が出ない限り何も行わない」からです。

たしかにフリードマンらが指摘するように「市場が解決できる問題」について、市場は、もっとも効率的にその問題を解くでしょう。実際に「長い近代」を通じて、私たちの社会が向かい合ってきた「普遍性の高い問題」のほとんどは市場の働きによって解決してきました。

ところが先述した通り、そのような営みを続けて行けば、どこかで「経済合理性限界曲線」の崖に突き当たり、「課題の探索空間」はそこで終焉してしまい、崖の向こう側にある「普遍性の低い問題」あるいは「難易度の高い問題」については未着手のままに放置されることになります。ここに市場原理主義の限界があります。

ビジネスの未来 著者:山口 周 P117

この本には、このように記載されています。

この本の中にある普遍性が低い問題、あるいは、難易度が高い問題というのは、希少性が高い病気が一番わかりやすいです。

あるいは、「希少疾病」という問題もまた「経済合理性限界曲線の外側にある問題」と考える事ができます。「希少疾病」とは羅患する人が希少な病気」の事です。我が国の場合、具体的にその定義は「5万人未満」となっています。ガンの罹患者数はだいたい年間でほぼ100万人ですから、希少疾病の罹患者数というのはその20分の1以下ということになります。1億人人口がいる国での5万人未満ですから、これを出現率で表せば0.05%未満ということになり、先ほどの枠組みでいう「普遍性の低い問題」に該当します。これはつまり、このような問題に取り組んでも株主が喜ぶような大きな売り上げや利益は期待できない可能性が高い、ということを意味します。

一方、難病に対する治療法・特効薬の開発は、つねに「極めて難易度の高い問題」となりますから、投資額は大きくなる上、そもそも開発に成功するかどうかも確かではありません。つまり「期待できる売り上げは小さいのに、必要な投資は巨大であり、かつ不確実性も高い」という営みだという事です。

ビジネスの未来 著者:山口 周 P119

この続きには、とても良い事が書いてあり、それは、本筋と離れるので、省かせていただきますが、この経済合理性限界曲線という考えは、私の中で非常に強く刺さりました。

なぜなら、補聴器の金額が高いままである理由というのが、もしかして、これによるものではないか。という部分が見えてきたからです。

金額の推移と今までの高い理由の考え

ここで、少し整理させていただきたいのですが、補聴器の金額に関しては、年々、上がり続けています。

経済的にどんどん物が少しずつ安くなってくる今現在の状況からすると、非常に不思議な状況ですが、実は、どんどん高くなってきている実情があります。

だいたい10年ぐらい前は、こんな感じでした。同じフォナックというメーカーで比べています。

10年前ぐらい前は、こんな感じの金額だったのですが、

今現在の価格は、こんな感じです。

今現在の主流の金額は、このようになっています。

10年前と比較すると、性能は、非常によくなっており、金額の最低価格は、上がったものの、どちらかというと、一番上が追加された。というようなイメージですね。

とはいえ、価格が上がってきているのは事実で、このままだと一番高いものは、1台、60万円を超えそうな勢いです。

さて、この状況をずっと私自身は、見ていた訳ですが、正直、これだけ、金額の上昇が続く理由は、よくわかっていません。

一つ確かなのは、耳を改善させる。ということには、莫大なコストがかかっている。という事で、そのための費用が補聴器が高い理由になっている。という事です。

元々、補聴器は、儲からない業種、職業とも言われており、聞こえを改善させるという難しい課題に対し、改善するための時間、お金、開発費それがかかるため、コストの部分が大きく、研究費も含め、未だに回収できていない。という話も聞きます。

費用の回収ができていないのであれば、企業は、売上から賄うしか方法はありませんので、製品の価格は、自ずと上がることになります。

そのことによる金額の上昇。という風に考えると、個人的には、一番しっくりくる状況です。

ただ、どこまでが本当で、どこが誇張されているのか、が、私には、わかっていません。

しかし、先程の経済合理性限界曲線で考えると、よくわかります。

それは、耳を改善させるという課題は、難易度が高い課題であり、投資額、解決するのにかかる費用が非常にかかる。なので、解決策は、一応、出ているけれども、今現在は、高い状態に止まっている。という事です。

解決するために今現在は、補聴器の材料費も高いですし、開発や耳の研究。それも結構かかっています。

さらに補聴器は必要としている人にただ渡せば良い訳ではなく、販売員が使用者の状況に合わせて、改善しているため、人件費もかかります。

このようなコストまみれの状況ですので、それを考えると、今現在の状況からすると、まだまだ難易度が高い課題である事が考えられます。

幸い普遍性の少なさによる問題ではなく、問題の難易度が高い事による問題ですので、使用される人の数が増えたり、より気軽に使われることが増えれば、費用の回収に繋がり、より安くなる可能性は、否定できません。

ちょっとこの部分は、数が多くなることによって、本当にそうなるのかの自信は、ないのですが、費用の回収。という観点からいうと、その可能性が否定できないのも事実です。

補聴器の金額が高い理由は、恐らく色々

正直な事をいいますと、補聴器の金額が高い理由は、色々な要素が混じり合って、こんな金額になっているのだと、思います。

その根本の原因が、問題解決が難しく、それを解決しようとすると、非常に大きな投資が必要になり、それを回収しづらいので、高いままに止まってしまっている。という事だと思います。

高い理由については、いくつかあるのですが、どれも、難聴や耳の問題を解決するのには、莫大なコストがかかる。という点は、共通しており、それによるものの可能性は、高いです。

今回は、なぜ高くなるのか。それを一番わかりやすく表現されていたこちらの本の内容を記載してみました。

このビジネスの未来。という本は、非常に面白い本で、個人的には、オススメです。

山口さんの本は、わかりやすく、ちょっと哲学的というか、癖がある本ではありますが、だいぶ本質的な部分をついて記載されているので、私は、好きですね。

以上、役に立ちそうな内容だったので、こちらに共有してみました。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、このお店では、実際に補聴器を使っている私自身がご相談を承っています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、実際に補聴器を使っている当事者がご相談を承っています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

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