【改善事例】両耳とも中等度難聴の方、補聴器にて改善

今回、ご紹介するのは、このお店の元々のお客様になります。
ずっと補聴器を使用されており、年数が経過したことから今現在、使っている補聴器が使えるうちに買い替えをし、今の補聴器は予備として、そして聞こえをより改善していきたい。とのことで、承りました。
両耳とも中等度の難聴なのですが、片方は、突発性難聴により、失聴し、もう片方は、原因不明の難聴になります。
少し複雑な聴力ではあるのですが、このような方の場合、どう改善していくと良いのか。その点に関して、今回はまとめていきます。
お客様の状況
まず初めにお客様の状況に関してまとめていきますと、
- お名前:M・Kさん
- 年齢:40代
- 性別:女性
- 聴力:両耳とも中等度難聴ほど
- 症状:左側、突発性難聴、右側、原因不明
- 使用:耳あな形補聴器(カナル形の補聴器)
- 備考:耳鳴りは両耳ともあり
このようになります。

聴力は、こちらの通りです。左右の耳の症状は異なるのですが、聴力としては、似たような形になりつつあります。

初めての方にわかるように出すとこのような状態でしょうか。一般の方は、0〜10dBでほとんど聴こえているのですが、0〜25dBまでは、正常の範囲になります。
M・Kさんの場合、中等度ほどの難聴の時にこのお店で補聴器を購入され、それ以来、ずっと補聴器に関しては、使い続けています。ありがたい限りですね。

その際購入したのは、このような耳あな形の補聴器、カナル形と呼ばれるサイズの補聴器になります。このような補聴器をずっと使用されていました。
特に補聴器に関しては、不満はなく、ただ、ほぼ一日中、補聴器を使用されていますので、この補聴器が聞きづらくなったり、故障して使えなくなると、とても困ることになります。
ですので、この補聴器が使えるうちに新しい補聴器を考え、今の補聴器を予備として使えるようにし、新しい補聴器を購入したい。ということでした。
ということで、この要望に応えていくことになります。
聞こえの改善案
さて、改めて、このような方の聞こえの改善案について、まとめていきます。
- 聴力から見る聞こえの状況
- このような聞こえの方の改善の要点
- 合う補聴器の形状
の三つに分けて記載していきます。
聴力から見る聞こえの状況
初めての方の場合、なかなか耳の状況からどのようなことになっているのかは分かりづらいと思います。ですので、そういった方に向けて、簡単に補聴器がない状態の聞こえの状況について、記載していきます。

こちらの方の場合、両耳とも中等度難聴ぐらいの聞こえにな流のですが、その場合、このような場面での聞き取りが難しくなってきます。
中等度の難聴の場合、全体的に聞きにくくなり、まず、対面でのお話に関しては、よほどはっきり話してくれる人でないと、聞きにくさが強くなります。
中等度というと、まだ聴力の低下が並のようなイメージがありますが、この辺りまで下がると会話そのものと言いますか、会話全般でかなり聞きにくさが出てきます。
この四つの中で一番聞きやすい環境は、対面でのお話になりますので、ここが聞き取りにくいと、騒がしい環境下でのお話も、囲んでお話しする際のお話も、距離が離れたところから話された場合、あるいは、呼ばれた場合もだいぶわかりづらさが出てきます。
囲んでお話しする場合は、距離が近かったりすると、わかるケースもあるのですが、距離が離れると、一気に何を言っているのかわからない、あるいは、もう音を感知しない状態になります。
音は聞こえていないと、その音に反応することができません。音は目に見えるものでも匂いがするわけでもありませんので、聞こえないと、その音が存在していることに気づきません。
ですので、このぐらいの聴力になってくると、呼ばれても、呼ばれていることに気が付かなかったり、音が鳴ってることに気が付かず、周囲のとのコミュニケーションに難が出てくることになります。
そのことから、このぐらいの聴力の方から補聴器を考えることが多くなります。聞こえにくさに関して、自分で工夫したとしても、どうにもならないことが多くなってくるためです。
聞こえにくくなる事の特徴は、音声がわかりにくくなることもあるのですが、特に距離に弱くなります。
距離が離れると音というのは急激に弱くなりますので、その弱くなった音を捉えることができないため、聞こえない、音に気がつかない。ということが増えます。
このような機会が一気に高まるのが、中等度難聴の特徴ですね。
このような聞こえの方の改善の要点
さて、ここからは聞こえの改善になります。中等度の難聴の方の場合、良くも悪くも、補聴器による聞こえの改善で、まだ効果を出しやすい部類に入ります。
ですので、改善の要点を押さえておいて、なるべく聞こえの改善に繋げていけると良いです。
難しい話になってしまうのですが、補聴器による聞こえの改善効果は、どこまで聞こえを改善させるか。それによって決まることが多いです。

こちらは、補聴器をつけた状態とつけていない状態を可視化したものになります。△が補聴器なし、▲が補聴器をつけて、目指せると良い聞こえの改善の数値です。
このグラフは、聴力検査の際に使われるグラフと意味合いは同じになります。
聴力検査の場合は、下に下がると下がるほど、聞きにくさを表すのですが、補聴器の場合は、聞こえを改善していくことになるので、上にくるとくるほど、良い聞こえになります。

今現在、中等度難聴ほどの方でしたら、おおよそ改善できる数値は、35dBから30dBぐらいです。
正常の範囲の聞こえが、0〜25dBになりますので、あと一歩、足りない。という状態ではあるのですが、逆にいうとすぐそこまで改善できるような状況になります。
ですので、なるべくそこまでどの周波数も改善できるようになると良いですね。

そして、音声の方でお話をさせていただくと、先ほどの数値まで改善できるようになると、50〜70dBまでの音声を改善しやすくなります。
- 40dB:小さい声の方
- 50dB:ちょっと小さい声の方
- 60dB:普通の声の大きさの方
- 70dB:ちょっと声が大きい方
音声の大きさを数値にすると、大体このぐらいの音の大きさになるのですが、先ほどの部分まで改善できるようになると、小さい声は、ちょっとまだ難しいものの、それ以外の部分は、改善しやすくなります。
小さい声まで改善しようとすると、25dBまで改善しないといけないのですが、そこまで大きくすると、今度は周囲の音などが大きくなりすぎるので、今現在は、あまり現実的ではありません。
正常の範囲というのは、小さい声までしっかり聴こえる範囲が正常の範囲になりますので、それが25dBまでなので、0〜25dBは正常の範囲。ということになります。
このぐらいまで改善できるようになると、だいぶ変化が出てきます。
合う補聴器の形状

今現在、補聴器の形状に関しては、主に耳にかけるタイプと耳の中に入れて使うタイプの二つがあります。
中等度難聴の方の場合は、良くも悪くもどの補聴器も使える状態になりますので、ここはご自身が使ってみたいと思うもの、使いやすそうだと思うもの。それを選べばOKです。

そして、M・Kさんの場合は、あえてあげるとすれば、この2つになります。
- 耳かけ形ならRIC補聴器
- 耳あな形ならCIC補聴器
の2つです。

実は、M・Kさんの場合は、低い音の聞こえがかなり良いので、補聴器を装用すると、自分の声が内側で大きく響いたり、不快感を感じやすくなります。
この感覚は、125〜500Hzに関して60dBの範囲内の方が感じやすく、この部分の聞こえが良いと良いほど、不快感は感じやすくなります。
ですので、そういった補聴器が使いにくくなるような不快感を軽減できる補聴器が良いのですが、それが先ほどの耳かけ形ならRIC補聴器、耳あな形ならCIC補聴器になります。

耳の穴の中に入れて使う耳あな形補聴器は、耳の中に補聴器が入りますので、メガネやマスク、さらに帽子やヘルメットなど、頭につけるもの、耳にかけるものがあったとしても自然に使うことができます。
ただその一方、耳を強く塞ぎますので、自分の声が内側で大きく響いたり、食べたりする時に起こる咀嚼音などが結構強く入ります。ですので、この感覚が嫌な方は、向きません。

耳かけ形補聴器は、耳を塞ぐ感覚が薄いので、自分の声が内側で大きく響いたり、あるいは、食べる際の咀嚼音などは、かなり軽減されます。その結果、楽に使いやすいのが特徴です。ですので、初めての方などには、こちらが良かったりします。
欠点は、耳の上に乗せて使うものになりますので、メガネやマスクなどが慣れないと引っかかったり使いづらいことがあります。
あと気をつけたいのは、電話ですね。耳かけ形補聴器は耳の上に補聴器がありますので、電話がしづらい傾向があります。そこをどう考えるかが、形状選択に影響します。
どちらにしても、大事なのは、ご自身にとって使いやすい形を選ぶことです。形による聞こえやすさの優劣はそこまでありませんので、使いやすい形を選ぶことが大事になります。
実際の改善
さて、実際の改善になります。ここは、もう結論を先に書いてしまうのですが、

- 金額:396,000円
- 機種:CIC補聴器(耳あな形補聴器)
- 備考:両耳に補聴器をつけて改善
結果は、こうなりました。
元々、耳あな形補聴器を使用されており、その際は、カナル形のちょっと大きめの補聴器でした。
こちらにした理由は、自由に音量の調節や音の切り替えをできるようにするためだったのですが、実際に補聴器を使うようになると、そこまで使わなかったな。ということで、より小さいタイプのCIC補聴器になりました。
形状が小さくなり、耳にはまる感覚も楽になったので、補聴器としては、より使いやすくなりました。

聞こえの改善状況としては、このような結果になりました。全体的に、改善し、よりよくした状態になります。
先ほど、改善目標の部分では全体的に改善する。としか記載しなかったのですが、よりポイントに関して、記載していきますと

音声に関しては、500〜2000Hzあたりが強く影響しますので、なるべくこの辺りは改善目標となる35〜30dBぐらいまで改善できると良いです。
この部分は、大きくなると今度、紙の音が大きくなったりする傾向もあるのですが、そういった音がキツいなどなければ、目標の部分まで改善できると良いですね。

さらに高い音の部分です。この部分は、音声の明瞭性に影響する傾向がありますので、できるのであればあげられると良いです。
また、この部分が上がると、離れていても、チャイムの音やアラーム系の音、こう言ったものに全般的に気づきやすくなりますので、日常生活上でさまざまなことに気づきやすくなります。
音は聞こえないと感知することができません。ですので、気づきやすくなるだけでも、日常生活上での過ごしやすさは、大きく変化します。(初めての人は色々な音がして、ちょっと大変かもしれませんけども)

まとめると全体的に改善するとなるのですが、こういったこともあり、M・Kさんに関しては、全体的に改善しました。
その結果、より良くでき、こちらとしては、本当に何よりです。
まとめ
さて、まとめになります。
今回は、元々のお客様の内容について記載してみました。
両耳とも中等度難聴ほどの方でしたら、聞こえの改善に大きく貢献するのは、きっちりと改善できると良い部分まで聞こえを改善することです。
それができるようになるとだいぶ聞きにくさは減らしやすくなります。補聴器の種類とか、どんな補聴器を買えば良いか、という目に見える部分に意識が向きがちですが、それ以上に中身の方が大事になります。
M・Kさんに関しても、その中身の方をしっかりと行うようにしました。その結果、より良くでき、こちらとしては、本当に何よりです。
今現在は、元々使っていた補聴器を予備にしていただき、新しい補聴器を主体で使っていただいています。
私自身も補聴器を使っている人ですので感じるのですが、やはり補聴器は難聴の方の生活を支える道具。だと思っています。
ですので、聞こえの改善にプラスして、さらに今ままで使っていた補聴器を予備にして、何かあった時でも対応できるようにしておく。
まさに生活を支える仕事ができて、こちらとしても、本当に何よりでした。
こちらこそ、いつもご利用いただき、本当にありがとうございます。
以上、このような方の聞こえの改善事例でした。