耳・補聴器のこと

キーネーシス的な生き方とエネルゲイア的な生き方

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

こんにちは、パートナーズ補聴器の深井です。ご覧いただき、ありがとうございます。

前回は、仕事に関して、アドラー心理学 嫌われる勇気の内容で私自身が仕事のヒントになるような内容を記載してみました。

今回は、キーネーシス的な生き方とエネルゲイア的な生き方という聞いたこともないような内容を記載していきます。

個人的にこの部分もとても大事なところで、難聴の方にも(もちろん、生まれつきの難聴者である自分にも)とても有益な考えになると感じています。

難聴の体であることの課題

さて、前回は、私自身の働くという経験の部分。アルバイトに関して、記載してみました。

実は、このお話は、割と大事な部分をぼかしたまま記載しています。前回は、そこがメインではなかったためです。

今回は、そこがメインになるのですが、難聴の体であることの課題は、とにかく状況の変化に弱い。ということです。

ここについては、私が実際に経験したことで記載していきます。

それは、またアルバイトの話になるのですが、私は、高校生の時、遊ぶ金欲しさに飲食店でアルバイトをするようになります。

当時は、耳のことなんて考えもせず、片っ端から、募集しているところへ行き、「聞こえにくいので補聴器をつけています。ただ、このように会話はきちんとできます」と伝えていたせいか、難聴でも割とあっさり採用されました。

この際、実は、そこの店長の方がかなり理解がある方で、かなり助かりました(なぜ理解がある方だったのかは不明)。聞こえにくいことを理解してくださり、私に話す際は、割と聞きやすく話してくれました。

店長がそのようにしているものだから、周りの方もその方に付随する形で、補助してくれたので、その時は、かなり働きやすさを感じました。

しかし、その状況はあまり長くは続きませんでした。

その店長が他のお店に移動になり(チェーン店でしたので、店長の変更が割とある)、さらに元々、仲が良かった人も辞めるようになり、次々と別の方に変わった瞬間、そういった配慮などが一切なくなり、騒がしい環境とそういった配慮のなさで、急に働きづらくなりました。

ここで経験したのが、環境の変化に弱いということです。耳のことについて理解してくださる方、ありがたいことに協力してくださる方がいればいるほど、楽になるのですが、そういった方がいなければいないほど、働きやすさは変化します。

初め私は、耳のことを伝えて入った点は、良かったのですが、まさか中の状況(働く環境)が変化するとは思わず、その変化に対応することができませんでした。

これが、初めのアルバイトの時の失敗です。

キーネーシスとエネルゲイア

このような課題があったため、どのようにしたら、より良く生活できるようになるのか。こういった周りの状況の変化により、あっさり良くなったり、急に苦しくなる状況下でどのように考えていければ良いか。その点に私は興味がありました。

そこでまたアドラー心理学 嫌われる勇気の中に出てくる考え、キーネーシス的な生き方、エネルゲイア的な生き方にたどり着きます。

哲人 アリストテレスによる説明を引きましょう。一般的な運動ーこれをキーネーシスと言いますーには、始点と終点がある。その始点から終点までの運動は、できるだけ効率的かつ速やかに達成されることが望ましい。特急列車に乗れるなら、わざわざ各駅停車の普通列車に乗る必要はないわけです。

青年 すなわち、弁護士になるという目的があったとしたら、なるべく早く、なるべく効率的にそこに到達したほうがいい。

哲人 そう。そして目的地にたどり着くまでの道のりは、目的に到達していないという意味において不完全である。それがキーネーシス的な人生です。

青年 道半ば、というわけですね。

哲人 そうなります。一方、エネルゲイアとは、「いまなしつつある」ことが、そのまま「なしてしまった」ことであるような動きです。

青年 なしつつあることが、なしてしまった?

哲人 別の言葉で言うなら「過程そのものを、結果とみなすような動き」と考えてもいいでしょう。ダンスを踊ることもそうですし、旅などもそうです。

青年 ああ、混乱してきましたよ。……旅とはいったいなんの話です?

哲人 旅という行為の目的はなんでしょう?例えばあなたがエジプトに旅をする。このときのあなたは、なるべく効率的に、なるべく早くクフ王のピラミッドに到着し、そのまま最短距離で帰ってこようとしますか?

そんなものは旅とは呼べません。家から一歩出た瞬間、それはすでに「旅」であり、目的地に向かう道中もすべての瞬間が「旅」であるはずです。もちろん、なんらかの事情でピラミッドにたどり着けなかったとしても、「旅」をしなかったことにはならない。それがエネルゲイア的な人生です。

青年 うむむ、よくわからないな。先ほどは山頂を目指すような価値観を否定されていましたよね?そのエネルゲイア的な人生を登山にたとえるとどうなります?

哲人 登山の目的が「登頂すること」にあるのなら、それはキーネーシス的な行為でしょう。極端な話をするなら、ヘリコプターで山頂に向かい、5分ほど滞在し、再び、ヘリコプターで帰ってもかまわない。もちろん山頂にたどりつけなかった場合、その登山は失敗だったということになります。

しかし、目的が登頂ではなく登山そのものであれば、エネルゲイア的ということができます。結果として、山頂にたどり着くかどうかは関係ないわけです。

アドラー心理学 嫌われる勇気より引用

ここまでが引用になります。

なかなかわかりづらいですよね。キーネーシスは、何となくわかるかもしれませんが、エネルゲイアは、特にわかりづらいと思います。

簡単にお伝えすると、スタートとゴールがある状態で、最終的なゴールに向かって生きるのが、キーネーシス。スタートもゴールもなく、行為そのものが目的になるのが、エネルゲイアです。

キーネーシスは、ゴールを達成することが目的になり、エネルゲイアは、その行為そのものを行うことが目的になる。と言い換えればわかりやすいかもしれません。

上記では、登頂が例に出てきましたが、キーネーシス的に考える場合は、登頂、つまり山の麓から山頂にたどり着くことです、そして、それができなければ失敗。エネルゲイア的に考えると、山を登ること、行為そのものを行うことが目的になりますので、それだけで成功です。

山に登ることを目的にするか、登頂を目的にするかでかなり変化します。当然ですが、山というのは、厳しい自然が待っていますので、必ずしも、登頂が成功する訳ではありません。

途中で「あれ?これ引き返さなきゃ死ぬやつじゃない?」と思うことだって出てくるはずです。実際、毎年、遭難者や死亡者が出てますしね。

ここを登頂にこだわると道を誤ってしまう訳です。エネルゲイア的に考えれば、山を登ることだけで成功。そもそも山を登れば、何かしらの気づきを得られるわけで、仮に登頂しなくても「なるほど、こういった時は、こういうことが起こるんだな。次はここの対策をしよう」とか、色々な気づきを得られるはずです。

これのどこが難聴の人に役に立つんだ?と思われる方もいるかもしれません。ただ、個人的にここは、ものすごく大事な部分だと思っています。

この内容を課題に当てはめると?

さて、ここで初めの課題です。私は、高校生の時、アルバイトをしていました。

その時、初めは良かったものの環境が変わった時に急にダメになってしまいました。では、この場合、どうしたら良かったのでしょうか。

もう簡単ですね。一度、リセットして、また新しく考えれば良かったのです。それは例えば、そのアルバイト先でその問題、課題はなんとかできそうなのか。それとも、どうもそれは難しそうだ。と感じるのか。

もし、難しそうだ。と感じたら、さっさと辞めて別のことをする。それで良かったのです。理由は、単純で、もう以前の状況、環境と変わっているからです。

それを昔の私は、うまくいっていたものが急にうまくいかなくなり、そうなってから逃げ出すことは、なんかよくわからないけどよくなさそうだ。という訳のわからない理由で、苦しいまま続けていました。

つまり、人の目を気にしていたわけです。学校の友達、アルバイト先の人、両親、そういった人達の目です。

実際には、その苦しさは改善できず、結局、辞めることになるのですが、持っているものに執着する感情、人から嫌われたくない、節操のない人間だと思われたくないといった感情は、さっさと捨てるに限る。今の私から言えるのは、そこですね。

キーネーシス的な考え方をすると、「このまま無事、ある期間までアルバイトをして無事成功」、そして、それができない自分は、能がない。失敗者。とみなすかもしれません。

エネルゲイア的な考え方をすると上記の通り「初めはうまくいっていたけど、うまくいかなくなったから、辞めて別のことをする」でも良かったですし「いい機会だから、辞めて、勉強に集中するか」でも良かったはずです。学生の仕事は勉強することですしね。

そして、目的を働くことを学ぶこと。こちらにすればよかったなと今現在は思います。なぜなら、難聴の体では、どのようなところだったら、よく働けて、どのようなところだったら、働きづらいのかがわからないからです。

キーネーシス的に考えたら、お金を貰うこと、働くこと。これが目的になるのですが、エネルゲイア的に考えると、働くということを学ぶこと、これを目的にできます。

それができれば、「ああなるほど、初めは良くても、こういうことが起こるんだな」とか「飲食店は騒がしすぎて、正直、自分(難聴の人)が働くような場所じゃないな(合わないな)。さっさと別のところで働くか」とか、さまざまな学びを得て、次に行くこともできます。

このように上手くいく事、失敗しない事にこだわるのを捨て、その行為そのものを見ること、行為そのものに注目すること。それをこの本は教えてくれました。

まとめ

さて、今回は、キーネーシス的な考え、エネルゲイア的考え、ということで、こちらについて記載してみました。

この内容は、難聴の方にとっても非常に大事なことだと個人的には思っています。どうしても周りの方の協力の度合いなど、影響を受ける部分、個人ではどうにもならない部分があるため、キーネーシス的な考え、ここからスタートして、このゴールを目指す。みたいな生き方をしてしまうと詰む可能性が高いからです。

その場合に有効なのは、エネルゲイア的に考えること。私は、そこだと考えています。その行為そのものを行うことを目的にする。ですね。

例えば、今現在、このような内容を記載しているのもエネルゲイア的な考えになります。私は、難聴の体でも、どのようにしたら幸せに生きていけるようになるのか。それを学んでいる最中です。

その気づきをこのようにブログにする。も、行為そのものを行うことを目的にするエネルゲイアそのものですね。

キーネーシス的な生き方をするのではなく、エネルゲイア的な生き方をする。それでいいんじゃないかと思います。

大事なのは、ゴールを見据えて行うのではなく、行為そのものを行うことを目的にすることですね。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、このお店では、実際に補聴器を使っている私自身がご相談を承っています。

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初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

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