低い音が聞こえにくい難聴を補聴器で改善する

こちらでは、両耳とも低い音が聞こえにくい難聴を補聴器で改善するための内容について、簡単にまとめて行きます。
低い音が聞こえにくい難聴のことを総称して、低音障害と言ったりするのですが、今現在、補聴器において、最も貢献しづらい難聴の一つになります。その理由は、以下に記載していくのですが、依然として、改善が難しいことには、今現在も変わりがありません。
が、改善が難しい。と、そこで諦めてしまったら、先がありませんので、そのような聴力でもなるべく良くしていくポイントについて、簡単にではありますが、まとめて行きます。
それを押えた上で、ご自身の状況をより良くしていきましょう。
低い音が聞こえにくい難聴のレベル
まず、主にこちらの内容が該当する聴力は、このような聞こえになります。

低い音が聞こえづらくなっており、音が高くなるにつれ聞きやすくなる聴力です。低い音が中心に聞きづらいため、低音障害、あるいは、低音障害型感音難聴など、いろいろな呼び方をされています。
どの内容も言っていることは同じなのですが、低い音から聞きづらくなり、高い音になるにつれて聞きやすくなる。ということです。
このような聞こえの方の場合、以下のような状態になることが多いです。

低い音が聞こえづらいせいか、主に男性の声や低い女性の声が聞きづらく、そのような人によって聞きづさらが非常に分かれやすい状態になります。
人によっては聞きやすく、人によっては聞きにくいため、周囲からも少々誤解を受けやすい傾向があります。相手からしたら、何は聞こえていて、何は聞こえていないのかがわからないためですね。
全体的に聞きにくさが出てくる状態なのですが、それ以上に人による聞きにくさが分かれやすい状態になります。
ということで、以下では、なるべくこれらの部分をより良くしていくためのポイントについて、まとめていきます。
補聴器で聞こえを改善するには?
低音障害の方の場合、冒頭に記載した通り、補聴器で改善していく上では難易度は高い状態にはなります。が、どのような聴力であっても聞こえを改善する要所はそう変わらず、基本的には、
- 耳の補い方
- 補聴器の形状
- 補聴器の性能
- 補聴器の調整(聞こえの改善度)
この4つを押さえて行くことになります。
のち、補聴器の性能は、金額が大きく関わる部分になり、選べる、選べないが出てきてしまいますので、それ以外の3つの部分をまとめていきます。
事前にお伝えさせていただきますと、聞こえの改善における影響度は、
- 耳の補い方:
- 補聴器の調整:
- 補聴器の性能:
- 補聴器の形状:
になります。ですので、聞こえの改善を本当の意味できちんと考えたい場合は、耳の補い方と補聴器の調整の2つは、押えておきましょう。
耳の補い方

耳の補い方とは、どの耳に補聴器をつけるのか。という部分になります。左側、右側、あるいは、両方の耳、一応、いくつか選択肢があります。
結論からお伝えさせていただきますと、両耳とも補聴器の適性があるのであれば、補聴器は両方の耳に装用できるといいです。低音障害の方の場合は、両方とも適性があるケースが多いですね。
で、その理由は、耳は、2つあって初めて機能するからです。具体的には、
- 片耳だと意外と聞こえていない
- 騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるため
この二点が関係します。
片耳だと意外と聞こえていない
もしかしたら、人によっては、「片方の耳だけでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、片方の耳のみ装用した場合、その耳側からの音は、わかるようになるのですが、反対側(補聴器をつけていない側)からの音は、意外とわかりません。
実は、耳というのは、頭があることで、左側の音は左側で聞き、右側の音は、右側で聞く、ということをしています。

反対側に音が移行するまでに音の減衰が大きくあるため、実は、片方だけつけた場合は、つけていない側からの音、音声は、だいぶ分かりづらい状態になります。
ですので、本当の意味でよくする場合は、両方とも装用し、左からの音、右からの音、それぞれ聞こえるようにすることが大事になります。
騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるため
2つ目の理由は、騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるためです。
難聴の問題の一つは、とにかくノイズに弱くなってしまうことです。特に低音障害の方の場合、騒がしい中での聞き取りが聴力的に弱くなりやすく、いかにこの部分において、聞こえの改善度をあげるか、という課題が耳の状態的に常に付き纏います。
補聴器をつける方の多くの難聴は、感音性難聴といい、音を感じる神経の部分が悪化してしまい、そのことにより、周波数分解能(しゅうはすうぶんかいのう)というものが低下します。
これが低下すると、音声の聞き取りがうまくできなかったり、騒がしい中での聞き取りが難しくなり、補聴器をつけることで静かなところではよく聞こえるけれども騒がしくなると聞きにくくなる、というようなことが出やすくなります。
これは耳だけの問題ではなく補聴器側にもある程度の問題はあるのですが、聞こえを改善する上での一つの課題は、騒がしい環境下での聞こえの改善度をいかに上げるか、があります。それは、上記の通り、耳の機能的に低下しやすいからです。
両方の耳に補聴器をつけた場合と片方の耳のみにつけた場合の聞こえの改善効果を比較したものがあるのですが、その結果は、以下の通りです。

静かなところは、そこまで変わらないのですが、騒がしい環境下になると、差が大きくなってきます。
また、円卓を囲んでの会話も大きく下がっています。これは、つけていない側からの音、音声は、聞こえづらく、さらにノイズがある状況下だとより聞きにくくなるからですね。
仮に聞こえの改善について最善の状態にしていく、と考えた場合、両方とも適性があれば、両耳に補聴器をつけ、どの方向からもわかるようにし、かつ、騒がしい中での聞き取りもなるべく改善できるようにしていけると良いです。
補聴器の形状
次は、補聴器の形状です。補聴器の形状とは、そのままの意味で、補聴器の形という意味になります。


補聴器の種類には、いくつかあり、耳かけ形補聴器には、耳かけ形補聴器の中でいくつか種類があり、耳あな形補聴器の中には、いくつか耳あな形補聴器があります。

結論から記載しますと、低音障害の方の場合、聞こえの改善をしていく上でおすすめになるのは、
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
になります。
まず、このような聞こえの方の改善の基本方針は、低下している低い音の聞こえを良くしつつ、聞こえている高い音の部分は、そのまま聞こえるようにすることです。

で、問題は、補聴器の中には、耳を塞ぐもの、塞ぐ量が大きいものは、高い音が下がってしまうことです。実は、補聴器で補える量というのは、今現在、限りがあり、健聴(正常)のレベルまで、補えるわけではありません。

ですので、高い音の部分の聞こえが良い方は、補聴器をつけることで、聞こえの良いところが、より聞きにくくなることがでやすくなります。

その事から、なるべく低い音は補え、かつ、高い音への減少量を減らせる(補聴器をつけた時に聞きにくくならないようにできる)ものがいいのですが、それが上記の
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
になります。
耳を塞ぐタイプのものは、逆に聞こえている高い音の部分が聞きづらくなりますので、その点に注意しましょう。
なお、耳あな形補聴器、耳かけ形補聴器の違いは、扱いやすさになります。

耳あな形補聴器は、耳の中に入れて使用するため、メガネやマスクの邪魔になりません。

また、電話もそのまま今まで通り行うことができます。ここが大きなメリットですね。
その代わり耳の穴の中に作りますので、耳を密閉することになり、上記で紹介した自声の響き、閉塞感、耳が塞がった感覚を感じやすくなります。
ですので、耳あな形補聴器の場合は、実際に作ってみて、この感覚が気にならない方にとっては良い補聴器です。
一方、耳かけ形補聴器は、耳にかけて使用する補聴器です。

ですので、耳を塞ぎにくく、上記の耳あな形補聴器よりも自声の響き、閉塞感、耳が塞がった感が少ないのが大きなメリットです。
逆に欠点は、人によって、メガネやマスクの邪魔に感じることがある。ということです。
使い方さえ覚えれば、メガネやマスクの邪魔に感じることは少なくなるのですが、人によっては、ここが気になる方もいます。
耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器は、どっちが性能が良いか、ではなく、違いになりますので、どちらの方が使いやすいか、向いているか、の向き不向きの話になります。
実際には、実物に触れてみたり、試聴したりして、決められると良いです。
補聴器の調整(聞こえの改善)
さて、最後は、補聴器の調整になります。補聴器は、今現在、低下した聴力に合わせて、聞こえを補い、なるべく聞きやすくなるよう音を調整していきます。
聞こえの改善においては、耳の補い方と補聴器の調整の2つで8割ぐらいが決まるようになりますので、この2つの部分は、大事な部分になります。
このような聞こえの方でしていきたいのは、低い音を補いつつ、補聴器を使うと高い音が聞きづらくなりやすいので、その部分でなるべく下がらないようにする事です。
そして、それぞれどのように聞こえが改善されているのかは、なかなか感覚ではわからない部分がありますので、可能であれば、聞こえの改善状況は可視化しながら改善していけると良いです。
それに関しては、例えば、補聴器の調整画面で確認できたり、

補聴器をつけた状態で、どのぐらい聞こえが改善されているかを見る測定があるのですが(音場閾値測定(おんじょういきち測定)といいます)こういったものでも確認ができます。

どちらも目標と現在聞こえている数値の部分がありますので、その部分で、比較しながら、ご自身の聴力から補えると良い部分まで聞こえを補えると、その分、聞こえの改善は、しやすくなります。
今現在、聴力ごとにどれだけ改善できると良いかはある程度、わかってきており、そういった目標の部分、そして、今現在、実際にどのぐらい改善されているのか、そういったものをみれると改善はわかりやすくなりますね。
おまけ・どのぐらいまで改善できる?
ここからは、完全に私の感覚なのですが、今現在、低音障害の方の場合、どこまで改善ができるものなのか。上記の音場閾値測定で言いますと、改善値が良い方は、以下のような状態にまで改善されるケースがあります。

良い方だと、25dBぐらいまで改善され、平均30dBぐらいから補聴器あり、なしで、だいぶ差を感じるようになってきます。
こちらの数値について、少し補足しますと、このグラフは、聴力検査の際に使われるグラフと同じものになります。ですので、0〜10dBが一般の人の聞こえ、0〜25dBが正常の範囲内になります。

ですので、そこにギリギリ届くか、届かないかぐらいまで改善される。という事です。
ただ、良い方とそうでない方の差は、低音障害の方の場合は、結構、大きいです。良い方は、スムーズに上がってくるのですが、そうでない方は、なかなか改善値が上がらないというのも経験しています。
聞こえの改善について、少し補足しますと、音声は、500〜2000Hzあたりが影響しやすいため、できれば、この辺りは、目標値ぐらいまで改善できると良いです。

高い音に関しては、散々書いていますが、補聴器をつけることにより、低下しやすいため、なるべく下がらないようにできると良いです。
-5dBぐらいは、許容範囲で、-15dBとか、大きくなる場合は、修正した方がいいです。ここまでくると、明らかに補聴器がある方が聞きづらくなってしまいます。

低い音に関しては、特に気をつけたいのは、500Hzでしょうか。500Hzは、男性の声で大事な部分になりますので、その部分を補えるようにできると良いです。

そうすると結局、全体的に補うことが大事になるのですが、そのようにできると、聞こえの改善に貢献しやすくなります。
一応、補聴器で改善する上では、聞こえの改善において、難しい分類にはなるのですが、改善できるところがあるのも事実です。
お客様の声
実際に低音障害の方の聞こえの改善を行なったケースがありますので、お客様の声として、載せていきます。ご参考にどうぞ。
原因不明の感音性難聴の方

- 改善:RIC補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善

難病による聴力低下(感音性難聴)の方

- 改善:RIC補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善

原因不明の感音性難聴の方

- 改善:RIC補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善

この他のお客様の声(総合)
まとめ
こちらでは、低音障害の方の聞こえの改善について、簡単にではありますが、まとめてみました。
今現在、依然として低音障害の方の聞こえの改善は、他の難聴に比べ、難易度が高い状態になります。補聴器で聞こえを改善するにあたり、マイナスになってしまう部分が多いためです。
しかし、きちんとやっていくことで改善できる部分があるのも事実です。ですので、その点についてまとめてみました。
私自身も生まれつきの難聴者で補聴器を使っている人間です。ですので、同じように聴力の方には、なるべく良くなって欲しいですね。
そのため、なるべく簡単に記載してみたのですが、補聴器のこととあり、専門的すぎてかなり難しかったかもしれません。その点は、すみません。
こちらの内容が何か参考になったのであれば幸いです。
なお、お店の方でもこのような聞こえの方のご相談、補聴器に関するご相談については承っておりますので、ご希望の方は、お気軽にご相談ください。
よろしくお願い致します。