高い音が聞きづらい難聴を補聴器で改善する

深井 順一|パートナーズ補聴器

こちらでは、両耳とも高い音が聞きづらい方の聞こえを補聴器で改善する内容について、簡単にまとめていきます。

高い音が聞きづらい難聴の方は、難聴の方の中でも多い系統になり、年齢による難聴、遺伝による難聴も、低い音より高い音の方が聞きづらくなっているケースが多くあります。

以下には、そのようなケースにおいて、改善しやすくするポイントをまとめていきますので、それを押さえた上で、より良くしていけると良いです。

高い音が聞きづらい難聴のレベル

さて、まずこちらが当てはまるケースですが、それは、このような聴力になります。

高い音が聞きづらいケースには、実は、色々とあり、実際には、高い音の部分がどれだけ低下しているのか。言い方を変えれば、どれだけ残存聴力が残っているのか、により、改善の難易度は、変わってきます。

高い音が低下しているけれどもまだ反応があるケース、上記のようなケースは、まだ補える部分があるので聞こえの改善に貢献しやすく、以下のように全く反応がないケースにおいては、聞こえの改善は、難しくなってくる傾向があります。

中には、こんな極端なケースも。2000Hz、4000Hzあたりに下の矢印がありますが、これは、スケールアウトの数式になります。

聴力のデータは、だいぶ大事な要素で、耳の場合、音を入れることで、反応する。言い方を変えれば、神経が反応する部分と、大きく音を入れても反応がないケースがあります。

↓のような矢印があるかと思いますが、これは、その機械が出せる最大の音を出したとしても反応がなかった。という数値です。

これをスケールアウトと言ったりしますが、スケール(調べられる範囲)をアウト(外れた)という意味ですね。

今回は、スケールアウトではなく、あくまでも残存聴力があり、補える範囲がある聴力に絞って記載していきます。

どう聞こえを改善していくと良い?

さて、補聴器で聞こえを改善していくにあたりですが、実を言いますと、どのような聞こえのケースにおいても押さえるポイントは、そこまで大きく変わりません。

それは、

  • 耳の補い方
  • 補聴器の形状
  • 補聴器の性能
  • 補聴器の調整(聞こえの改善度)

の4つになります。

のち、補聴器の性能は、金額が大きく関わる部分になり、選べる、選べないが出てきてしまいますので、それ以外の3つの部分をまとめていきます。

事前にお伝えさせていただきますと、聞こえの改善における影響度は、

  1. 耳の補い方:
  2. 補聴器の調整:
  3. 補聴器の性能:
  4. 補聴器の形状:

だいたいこのようになります。

ですので、聞こえの改善を本当の意味できちんと考えたい場合は、耳の補い方と補聴器の調整の2つは、押えておきましょう。

耳の補い方

耳の補い方とは、どの耳に補聴器をつけるのか。という部分になります。左側、右側、あるいは、両方の耳、一応、いくつか選択肢があります。

結論からお伝えさせていただきますと、両耳とも補聴器の適性があるのであれば、補聴器は両方の耳に装用できるといいです。

その理由は、耳は2つあって初めて機能するからです。

具体的には、

  • 片耳だと意外と聞こえていない
  • 騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるため

この二点が関係します。

片耳だと意外と聞こえていない

もしかしたら、人によっては、「片方の耳だけでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、片方の耳のみ装用した場合、その耳側からの音は、わかるようになるのですが、反対側(補聴器をつけていない側)からの音は、意外とわかりません。

実は、耳というのは、頭があることで、左側の音は左側で聞き、右側の音は、右側で聞く、ということをしています。

頭があることで、反対側へ音が移行する際に減衰することを頭部陰影効果(とうぶいんえい効果)と呼んだりします。難しいですね。

反対側に音が移行するまでに音の減衰が大きくあるため、実は、片方だけつけた場合は、つけていない側からの音、音声は、だいぶ分かりづらい状態になります。

特に高い音が低下しているケースは、周囲の物音は聞こえるかもしれませんが、音声の聞き取りが弱くなりがちです。

ですので、両方に装用して、なるべく両方から音を受け取れるようにし、最大限、音声の聞き取りをよくするためにもつけられると良いです。

騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるため

2つ目の理由は、騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるためです。

難聴の問題点の一つは、とにかくノイズに弱くなってしまうことです。これは高い音が聞こえづらい方にとっては、割と死活問題で、このような聞こえの方は、特に強く出やすい傾向があります。

補聴器をつける方の多くの難聴は、感音性難聴といい、音を感じる神経の部分が悪化してしまい、そのことにより、周波数分解能(しゅうはすうぶんかいのう)というものが低下してしまいます。

これが低下すると、音声の聞き取りがうまくできなかったり、騒がしい中での聞き取りが難しくなり、補聴器をつけることで静かなところではよく聞こえるけれども騒がしくなると聞きにくくなる、というようなことが出やすくなります。

これは耳だけの問題ではなく補聴器側にもある程度の問題はあるのですが、聞こえを改善する上での一つの課題は、騒がしい環境下での聞こえの改善度をいかに上げるか、があります。それは、上記の通り、耳の機能的に低下しやすいからです。

両方の耳に補聴器をつけた場合と片方の耳のみにつけた場合の聞こえの改善効果を比較したものがあるのですが、その結果は、以下の通りです。

灰色が健聴の方、オレンジが量耳とも補聴器を使っている方、水色?が片耳のみ使っている方になります。

静かなところは、そこまで変わらないのですが、騒がしい環境下になると、差が大きくなってきます。

また、円卓を囲んでの会話も大きく下がっています。これは、つけていない側からの音、音声は、聞こえづらく、さらにノイズがある状況下だと、より聞きにくくなるからです。

仮に聞こえの改善について最善の状態にしていく、と考えた場合、両方とも適性があれば、両耳に補聴器をつけ、どの方向からもわかるようにし、かつ、騒がしい中での聞き取りもなるべく改善できるようにしていけると良いです。

補聴器の形状

次は、補聴器の形状になります。補聴器の形状とは、そのままの意味で、形そのものを意味します。

補聴器の種類には、いくつかあり、耳かけ形補聴器には、耳かけ形補聴器の中でいくつか種類があり、耳あな形補聴器の中には、いくつか耳あな形補聴器があります。

主な補聴器の形状には、これらのものがあります。

高い音が聞こえづらい難聴の場合、補聴器の形としておすすめになるのは、

  • 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
  • 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器

の2つになります。

まず、このような聞こえの方を補う際にネックになるのは、低い音は聞こえていて、高い音が聞こえづらい状態であるということです。

125Hz〜500Hzが60dBの範囲内であり、かつ聞こえが良いと良いほど、補聴器をつけた時に自声の響き、閉塞感などの違和感を感じやすくなります。

この際、低い音、125〜500Hzの聞こえが60dBの範囲内の場合、補聴器をつけると自分の声が低く唸るような感覚で聞こえたり、自声の響き、閉塞感などの違和感を感じやすくなります。

ですので、できれば補聴器をつけることのデメリットの部分を軽減しつつ、聞こえを補える補聴器を使えると良いのですが、それが先ほどの

  • 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
  • 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器

になります。

なお、それぞれ形状における特徴は、以下の通りです。

耳あな形補聴器は、耳の中に入れて使う補聴器ですので、メガネやマスクの邪魔にならず、電話もそのまま使うことができます。そういった部分における良さがあります。

一方、耳の中に入れて使うものですでの、先ほどの欠点となる閉塞感、自分の声の響き、低く唸るような感覚で聞こえる違和感が耳かけ形より強く出やすいです。

ですので、ここがそこまで気にならない方には、おすすめです。

耳かけ形補聴器は、耳にかけて使う補聴器ですので、閉塞感、自分の声の響き、低く唸るような感覚で聞こえる違和感が一番少なく、そこによる快適さがある補聴器になります。

その代わり、耳にかけて使いますので、メガネやマスクの邪魔に感じる方がいたりします。慣れてしまえば問題はないのですが、ここに関して気になる方がいるのも事実です。

どちらにも良い点があり、欠点がありますので、ここについては、実際に試聴やお店などで実物を体験してみることで、決められると良いです。

例えば、使ってみたら、思いの外、デメリットの部分が気にならなかった、などもありますので、頭で考えてもわからない場合は、ご自身で体験し、そこから補聴器を選べると良いです。

補聴器の調整(聞こえの改善)

さて、最後は、補聴器の調整になります。補聴器は、今現在、低下した聴力に合わせて、聞こえを補い、なるべく聞きやすくなるよう音を調整していきます。

聞こえの改善においては、耳の補い方と補聴器の調整の2つで8割ぐらいが決まるようになりますので、この2つの部分は、大事な部分になります。

高い音が聞こえづらい方に関しては、今現在、このような聴力だと思うのですが、

ここについて、簡単に言いますと、聞こえているところは、そのまま活用し、聞きにくくなっているところを補う、というような考えで改善することが多いです。

ですので、先ほどの補聴器の選択も低い音はそのまま残しつつ、高い音を最大限補えるような補聴器の形を選んでいるのですが、それは、聴力的にそういった状態だからです。

で、ここからは、表現が少し難しくなるのですが、補聴器で大事になるのは、聴力ごとに補えるとよい音のレベル、目標値を目指して聞こえを改善していくことです。

聴力レベルごとに実をいうと、改善できると良い目標値というのがあり、それは例えば、補聴器の調整画面で確認できたり、

補聴器を調整する画面。補聴器には、このように今現在の改善値と目標となる数値をおおよそですが、出してくれます。

補聴器をつけた状態で、どのぐらい聞こえが改善されているかを見る測定があるのですが(音場閾値測定(おんじょういきち測定)といいます)こういったもので確認できたりします。

各周波数ごとに、どのように改善されているのかを見るものもあります。

補聴器を耳につけても聞こえるようになった感覚はわかるのですが、どこまで改善されているのかは、なかなか分かりづらかったりします。

ですので、こう言ったもので可視化しつつ、どちらも目標値と現在値を出してくれますので、その部分で比較しながら、ご自身の聴力から補えると良い部分まで聞こえを補えると、その分、聞こえの改善は、しやすくなります。

このようなケースは、どこまで改善できるのか

ここからは、完全に私の感覚になり、高い音が聞こえづらくなっている方の場合、聞こえの状況が千差万別すぎて正直なことを言いますと、非常に表現が難しい状態です。

が、何もわからない状態だと、それはそれで判断しづらいかと思いますので、私の分かる範囲内で表現していきます。

まず、低下しているレベルが、70dB、80dBぐらいまでの場合は、以下のような状態にまで改善できるケースがあります。

だいたい、25dB前後でしょうか。聴力低下が大きい部分ほど、上がってくる数値は低くなるのですが、良いところは、25dB前後、さらに人によっては、大きく下がっているところも35dB前後まで上がるケースは、拝見しています。

この数値についてお伝えしますと、これは、聴力検査の際に使われるデータと同じものになります。ですので、0〜10dBが主に一般の方の聞こえ、0〜25dBの範囲が正常の範囲内になります。

あくまでも体感ですが、改善値が30dBぐらいまでくると、だいぶ聞こえやすさは変わってくることが多いです。

まだまだ正常の範囲にギリギリ届くぐらいになりますので、聞きづらさは出てきてしまうのですが、そこに近い状態にまでは、徐々に改善度が高くなってきています。

なお、改善の要所についてお伝えしますと、音声については、500〜2000Hzあたりが影響しやすいため、ここについては、目標のラインあたりまでは改善できると良いです。

また、高い音の部分についても言葉の子音、言葉の聞き分けに影響しやすいため、音を入れても大丈夫なのであれば、入れられると良いです。が、入れすぎると機械的な音の感覚が強くなるため、改善できる方だけ、入れられると良いです。

最後は、低い音ですね。ここは、聞こえていることが多いため、補聴器を使って余計に下がらないようにできると良いです。上記の補聴器の形を使っていれば、よほどのことがない限り、補聴器がない状態より下がるということは、ないかと思います。

すると結局、全体的に改善することになるのですが、そのようにできると聞こえの改善には、貢献しやすくなります。

お客様の声

こちらでは、実際に高い音が低下している方の改善について行った方のお客様の声について載せていきます。ご参考にどうぞ。

生まれつきの感音性難聴の方

  • 改善:CIC補聴器
  • 機器:耳あな形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

原因不明の感音性難聴の方

  • 改善:RIC補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

生まれつきの感音性難聴の方

  • 改善:CIC補聴器
  • 機器:耳あな形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善、障がい者自立支援法使用

この他のお客様の声(総合)

まとめ

こちらでは、簡単にではありますが、高い音が聞こえにくくなっている方の聞こえの改善について、載せてみました。

高い音が聞こえづらくなっているケースは、正直なことを言いますと、ケースバイケースな部分が多くあります。主な考え方は、上記の通りにはなるのですが、高い音の低下の量が千差万別なため、実際には、それぞれのケースにおいて、考えることは変化します。

ただ、どれも考え方としては、聞こえている低い音は残しつつ(良いところは、そのまま生かしつつ)どう低下している高い音を補うか。ここがカギになります。

その点について、簡単にではありますが、記載してみました。何か参考になったのであれば幸いです。

なお、お店の方でもこのような聞こえの方のご相談、補聴器に関するご相談については承っておりますので、ご希望の方は、お気軽にご相談ください。

よろしくお願い致します。

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