軽度〜中等度難聴の聞こえを補聴器で改善する

深井 順一|パートナーズ補聴器

こちらでは、両耳とも軽度の難聴から中等度の難聴の方の聞こえを補聴器で改善するための内容について、簡単にまとめていきます。

軽度難聴から中等度難聴の聞こえについては、補聴器で改善できる部分としては、最もオーソドックスで、やり方さえ間違えなければ、最も聞こえを改善できる分類になります。

以下で紹介する部分は、主なポイントになりますので、それを押えた上で、ご自身の状況をより良くしていけると良いです。

軽度〜中等度の難聴のレベル

まず、主にこちらの内容が該当する聴力は、このような聞こえになります。

実際の聴力は、軽度にも中等度にも該当する部分がある、など、複雑なケースが多いです。

軽度の難聴の範囲は、25〜40dB、中等度の難聴の範囲は、41〜69dBまでになります。

基本的に聞こえにくさに困るレベルは、人により異なるのですが、平均的に50dBぐらいまで低下するようになると、聞きにくさに困ることが増えてきます。

難聴になると困るようになってくるのは、だいたいこの辺りですね。

対面でのお話は、まだわかることもあるかもしれないのですが、小さい声の方、離れたところからの呼びかけ、騒がしい中での会話、さらには、複数の人との会話、こういったところで、聞きにくさを感じるようになります。

音は聞こえないと、目に見えるわけでも匂いがするわけでもありませんので、それ以外の方法で感知することができません。ですので、呼ばれても気が付かず、無視してしまったような感覚になったり、天然扱いされるなどが起こりやすくなります。

音の厄介なところは、自分自身がどのぐらい聞こえづらく、周りの方は、どのぐらい聞こえているのかの感覚が非常にわかりづらいことです。ですので思いの外、自分が聞こえていないということに気がつくのが遅れることがあります。

ということで、以下では、なるべくこれらの部分をより良くしていくためのポイントについて、まとめていきます。

補聴器で聞こえを改善するには?

軽度難聴、中等度難聴に限らず、補聴器で聞こえを改善する要所というのは、だいたい決まっています。それは、

  • 耳の補い方
  • 補聴器の形状
  • 補聴器の性能
  • 補聴器の調整(聞こえの改善度)

の4つになります。

のち、補聴器の性能は、金額が大きく関わる部分になり、選べる、選べないが出てきてしまいますので、それ以外の3つの部分をまとめていきます。

事前にお伝えさせていただきますと、聞こえの改善における影響度は、

  1. 耳の補い方:
  2. 補聴器の調整:
  3. 補聴器の性能:
  4. 補聴器の形状:

になります。ですので、聞こえの改善を本当の意味できちんと考えたい場合は、耳の補い方と補聴器の調整の2つは、押えておきましょう。

耳の補い方

耳の補い方とは、どの耳に補聴器をつけるのか。という部分になります。左側、右側、あるいは、両方の耳、一応、いくつか、選択肢があります。

結論からお伝えさせていただきますと、両耳とも補聴器の適性があるのであれば、補聴器は両方の耳に装用できるといいです。

その理由は、耳は、2つあって初めて機能するからです。具体的には、

  • 片耳だと意外と聞こえていない
  • 騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるため

この二点が関係します。

片耳だと意外と聞こえていない

もしかしたら、人によっては、「片方の耳だけでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、片方の耳のみ装用した場合、その耳側からの音は、わかるようになるのですが、反対側(補聴器をつけていない側)からの音は、意外とわかりません。

実は、耳というのは、頭があることで、左側の音は左側で聞き、右側の音は、右側で聞く、ということをしています。

頭があることで、反対側へ音が移行する際に減衰することを頭部陰影効果(とうぶいんえい効果)と呼んだりします。難しいですね。

反対側に音が移行するまでに音の減衰が大きくあるため、実は、片方だけつけた場合は、つけていない側からの音、音声は、だいぶ分かりづらい状態になります。

ですので、本当の意味でよくする場合は、両方とも装用し、左からの音、右からの音、それぞれ聞こえるようにすることが大事になります。

騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるため

2つ目の理由は、騒がしい中での聞き取りをなるべく上げるためです。

難聴の問題の一つは、とにかくノイズに弱くなってしまうことです。補聴器をつける方の多くの難聴は、感音性難聴といい、音を感じる神経の部分が悪化してしまい、そのことにより、周波数分解能(しゅうはすうぶんかいのう)というものが低下します。

これが低下すると、音声の聞き取りがうまくできなかったり、騒がしい中での聞き取りが難しくなり、補聴器をつけることで静かなところではよく聞こえるけれども騒がしくなると聞きにくくなる、というようなことが出やすくなります。

これは耳だけの問題ではなく補聴器側にもある程度の問題はあるのですが、聞こえを改善する上での一つの課題は、騒がしい環境下での聞こえの改善度をいかに上げるか、があります。それは、上記の通り、耳の機能的に低下しやすいからです。

両方の耳に補聴器をつけた場合と片方の耳のみにつけた場合の聞こえの改善効果を比較したものがあるのですが、その結果は、以下の通りです。

灰色が健聴の方、オレンジが量耳とも補聴器を使っている方、水色?が片耳のみ使っている方になります。

静かなところは、そこまで変わらないのですが、騒がしい環境下になると、差が大きくなってきます。

また、円卓を囲んでの会話も大きく下がっています。これは、つけていない側からの音、音声は、聞こえづらく、さらにノイズがある状況下だとより聞きにくくなるからですね。

仮に聞こえの改善について最善の状態にしていく、と考えた場合、両方とも適性があれば、両耳に補聴器をつけ、どの方向からもわかるようにし、かつ、騒がしい中での聞き取りもなるべく改善できるようにしていけると良いです。

補聴器の形状

次は、補聴器の形状です。補聴器の形状とは、そのままの意味で、補聴器の形という意味になります。

補聴器の種類には、いくつかあり、耳かけ形補聴器には、耳かけ形補聴器の中でいくつか種類があり、耳あな形補聴器の中には、いくつか耳あな形補聴器があります。

主な補聴器の形状には、これらのものがあります。

軽度〜中等度の難聴の方の場合、基本的にどの補聴器の形も対象になります。が、あえて絞るとしますと、

  • 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
  • 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器

がそれぞれおすすめになります。

軽度から中等度難聴の方の場合、低い音の部分の聞こえが良いことが多く、ここの部分の聞こえが良い方は、補聴器をつけると自分の声が低く唸るような感覚で聞こえやすくなります。

軽度、中等度の難聴の方は、125〜500Hzの聞こえが良いことが多く、この部分は良ければ良いほど、閉塞感や自分の声の不快感を感じやすくなります。

ここの部分の聞こえは、よければ良いほど、自分の声の不快感、違和感を補聴器をつけた時に感じやすくなります。そして、それを比較的軽減しやすいのが、

  • 耳かけ形補聴器なら、RIC(リック)補聴器
  • 耳あな形補聴器なら、CIC(シーアイシー)補聴器

になります。

ですので、どの形状でも使える状態ではあるのですが、そういった部分の使いやすさを考えたい場合は、上記の形状で選べると良いです。

なお、耳あな形補聴器、耳かけ形補聴器の違いは、扱いやすさになります。

耳あな形補聴器は、耳の中に入れて使用するため、メガネやマスクの邪魔になりません。

また、電話もそのまま今まで通り行うことができます。ここが大きなメリットですね。

その代わり耳の穴の中に作りますので、耳を密閉することになり、上記で紹介した自声の響き、閉塞感、耳が塞がった感覚を感じやすくなります。

ですので、耳あな形補聴器の場合は、実際に作ってみて、この感覚が気にならない方にとっては良い補聴器です。

一方、耳かけ形補聴器は、耳にかけて使用する補聴器です。

ですので、耳を塞ぎにくく、上記の耳あな形補聴器よりも自声の響き、閉塞感、耳が塞がった感が少ないのが大きなメリットです。

逆に欠点は、人によって、メガネやマスクの邪魔に感じることがある。ということです。

使い方さえ覚えれば、メガネやマスクの邪魔に感じることは少なくなるのですが、人によっては、ここが気になる方もいます。

耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器は、どっちが性能が良いか、ではなく、違いになりますので、どちらの方が使いやすいか、向いているか、の向き不向きの話になります。

実際には、実物に触れてみたり、試聴したりして、決められると良いです。

補聴器の調整(聞こえの改善)

さて、最後は、補聴器の調整になります。補聴器は、今現在、低下した聴力に合わせて、聞こえを補い、なるべく聞きやすくなるよう音を調整していきます。

聞こえの改善においては、耳の補い方と補聴器の調整の2つで8割ぐらいが決まるようになりますので、この2つの部分は、大事な部分になります。

表現が少し難しいのですが、補聴器で大事になってくるのは、聴力ごとに補えるとよい音のレベルというものがありますので、その目標値を目指して、聞こえを改善していくことです。

それに関しては、例えば、補聴器の調整画面で確認できたり、

補聴器を調整する画面。補聴器には、このように今現在の改善値と目標となる数値をおおよそですが、出してくれます。

補聴器をつけた状態で、どのぐらい聞こえが改善されているかを見る測定があるのですが(音場閾値測定(おんじょういきち測定)といいます)こういったものでも確認ができます。

どちらも目標と現在聞こえている数値の部分がありますので、その部分で、比較しながら、ご自身の聴力から補えると良い部分まで聞こえを補えると、その分、聞こえの改善は、しやすくなります。

おまけ・どのぐらいまで改善できる?

ここからは、完全に私の感覚なのですが、今現在、軽度〜中等度難聴の方の場合、上記の音場閾値測定で言いますと、改善値が良い方は、以下のような状態にまで改善されるケースがあります。

今現在、良いかたは、25dB前後ぐらいまで改善されることがあります。ここまで改善されると、補聴器あり、なしで、だいぶ聞こえ方に違いが出ます。

この数値は、聴力検査の際のデータと同じものになり、補聴器がない状態での数値というのは、(△のこと)だいたい聴力検査と同じような位置にくることが多いです。

ですので、単純に補聴器を使って、どの周波数がどこまで改善されたか、を示している。ということになります。

数値について補足をしますと、オージオグラムと呼ばれる聴力図に関しては、0〜10dBが一般の人が聞こえている範囲、0〜25dBが正常の範囲になります。

ですので、その部分に関して、ギリギリ達しているような状態にまで、良い方の場合は、入ってきている。ということです。

で、効果についてお話しさせていただきますと、まず、500〜2000Hzあたりが、音声としては、影響度が高い部分になります。

ですので、この部分に関しては、30dBぐらいまで改善されるようになると、だいぶ聞こえやすさは変わってくることが多いです。

良い方だと、25dBぐらいまでいくのですが、ここまでくると、小さい声の方などが分かりやすくなり、補聴器有り無しで聞こえの改善効果はだいぶ変化します。

そして、高い音に関してもあげられると良い部分ではあります。

これらの部分は、音の明瞭性に関わるもので、言葉の聞き分け、”さ”と”か”などの聞き分けがしやすくなります。(限度はあります)ただ、あげすぎると、機械的な感覚も強くなる傾向がありますので、あげられる範囲で上げていけると良いです。

ですので、結局は、全体的に上げていくことになるのですが、数値としては、30dB前後ぐらいにまでなると、補聴器有り無しの変化、ここについては、だいぶ大きくなります。

聞こえの改善を重視してあげすぎるのは、避けた方が良いのですが、改善できる部分まで上げていくというのも大事なところです。匙加減や人により、異なる部分はあるのですが、改善できると良いところまでは、改善していけると良いですね。

お客様の声

実際に軽度難聴、中等度難聴の方の聞こえの改善を行なったケースにおいて、お客様の声について、載せていきます。参考にどうぞ。

突発性難聴、原因不明の感音性難聴の方

  • 改善:CIC補聴器
  • 機器:耳あな形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

生まれつきの感音性難聴の方

  • 改善:ITC補聴器
  • 機器:耳あな形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

原因不明の感音性難聴の方

  • 改善:RIC補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

この他のお客様の声(総合)

まとめ

こちらでは、両耳とも軽度の難聴から中等度の難聴の方の聞こえを補聴器で改善するための内容について、まとめさせていただきました。

軽度から中等度難聴の方の場合、しかるべきことをすれば、最も聞こえの改善ができる聴力になりますので、できればしっかりと補えるようにできると良いです。それができればできるだけ、聞こえの改善度は、高くなります。

今現在、実は、まだ補聴器は耳が治るというレベルまで改善することはできていません。ですので、きちんとできればできるだけ、聞こえの改善度を良い状態にしやすくなります。

これを書いている私、深井も中等度難聴の人間です。ですので、同じような聴力の方には、なるべく良くなって欲しいですね。

なるべく簡単に記載してみたのですが、補聴器のこととあり、専門的すぎてかなり難しかったかもしれません。その点は、すみません。

こちらの内容が何か参考になったのであれば幸いです。

なお、お店の方でもこのような聞こえの方のご相談、補聴器に関するご相談については承っておりますので、ご希望の方は、お気軽にご相談ください。

よろしくお願い致します。

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