完全予約制にして、ご対応している理由

深井 順一|パートナーズ補聴器

このお店では、完全予約制にして、ご対応をしているのですが、こちらでは、完全予約制にして、対応している理由について、お伝えしていきます。

結論からお話をさせていただくと、なるべく聞こえの改善状態を良くするために、完全予約制にして、ご相談をしている。というのが実情です。

私の課題

さて、どこから話すと良いのか。ここについては、自分の聞こえを自分で改善したことから学んだことをお話をさせてください。

私の場合、生まれつきの難聴者で補聴器を使用しているのですが(7歳ぐらいから)、子供の頃は、うまく補聴器のことを相談できず、3回ほど失敗し、補聴器による損失は、80万円を超えています。

様々なところに相談しに行ったのですが、それでも補聴器のことがわからず、かつ、どのようにしたら聞こえが良くなるのか。それすらもわかりませんでした。そこで、しょうがないので補聴器の会社に就職し、自分で自分の聞こえを改善しました。

その当時、私自身が抱えていた課題は、”補聴器はどこまで聞こえが改善できるものなのか”でした。

実際に補聴器を使っていただくとわかるのですが、補聴器を使うと、音が強く感じる、音が小さい、高く感じるなどの感覚はわかっても、その状態でどのぐらい聞こえが良くなっているのか、自分の聴力から補えると良いところまで補えているのかは、よくわかりません。

それがわからないと、そもそも今現在の聞こえの状態は良い状態なのか、それともまだ改善できる部分があり、より良くできるのか。それがわかりません。

さらに私の場合は、感音性難聴で、この感音性難聴は、補聴器では耳を直せないと聞いていました。そうなると、仮に聞きにくさがあった時に、それは耳の限界(補聴器の限界)で改善が難しいのか、それとも実はまだ改善する方法があるのか、それすらもわかりませんでした。

感音性難聴という部分と補聴器は耳につけてもよくわからない(補聴器の良し悪しを感覚では判断できない)という2つの部分が重なり、補聴器については、どのように考えたら良いのか、それが当時の私には良くわかりませんでした。

自分としては、なるべく自分の聞こえは良い状態にしたい。なぜなら、聞こえの改善はできればできるだけ生活をよくすることに繋がるからです。

補聴器で耳が治るというところまでは求めないにしても、せめて最善の状態にしたい。これが私の想いでした。

聞こえの改善状態を可視化する

補聴器の会社に入り、そこで学んで行ったことでわかったのは、「そうか、補聴器を使った状態を可視化できるようになれば良いのか」ということでした。

感覚だからわからないのであれば、可視化してわかるようにすればいい(数値にしてわかるようにすればいい)。ということです。

例えば、耳の聞こえを調べる際には、聴力検査を行って調べていきます。

聴力検査を通じてわかったグラフをオージオグラムと言います。音は低い音もあれば高い音もありますので、それぞれの音の高さでどれだけ聞こえているのかを調べるのが聴力検査です。

で、ここで冷静になって考えていただきたいのですが、なぜ聴力検査を行うのか。それは、感覚ではよくわからないからです。

感覚でわかるのは、聞こえにくいということだけで、どこがどのぐらい聞こえにくくなっているのか、特に音は低い音もあれば高い音もあります。感覚ではわからないからこそ、聴力検査なり、可視化できるツールを使って、現状がどのようになっているのかを調べることで、初めて自分の状況を理解することができます。

これは他の5感においても同じです。5感は(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)すべて程度がよくわかりません。視覚においても、自分自身が見えている感覚はわかっても、自分がどのぐらい見えているのか(視力がいくつなのか)は、感覚ではわかりません。

味覚も味は感じますが、果たして、他の人はどのぐらいの味覚を感じるのか?より強く甘みを感じるのか、それともそうじゃないのか。こういったことはわかりません。

嗅覚も同様ですね。匂いを感じるとしてもその強さ、また匂いの種類に応じて、どのぐらい感じるのか、自分はどの程度の感じ方をしているのかは、感覚では良くわかりません。

つまり、感覚というのは、自分ではどのような状態なのかよくわからないということです。

幸いにも私が補聴器の会社に入った頃には、補聴器版、聴力検査のようなもの(音場閾値測定、おんじょういきち測定)があったり、

補聴器の世界には、補聴器版、聴力検査のような音場閾値測定というものがあります。聴力検査のように低い音から高い音まで補聴器での聞こえを調べることができます。

補聴器の調整を行う際に使う補聴器の調整ソフトの中にも、今現在の聞こえの改善度と聴力からこのぐらい改善できると良いよ、という目標値を出してくれるようになりました。

補聴器の調整を行うソフトを調整ソフトと言ったりします。中には、このように聴力からどのぐらい改善できると良いかの目標値と今現在の改善値を出してくれるものがあります。(メーカーによって異なります)

そこから、なるべく自分の聞こえの改善状態を可視化し、そして、足りない部分を改善し……と地道に改善することで、私の場合は、自分の聞こえを改善するに至りました。

その過程で、色々と試行錯誤した部分はあるのですが、自分で自分の聞こえを改善した経験で言えるのは、きちんと可視化して、改善できるところを一つずつ改善すること、それが補聴器における改善で大事である。ということです。

これをどう提供するか

さて、どのように改善すると良いかわかった後に問題になったのは、それをどう提供するかでした。

というのもこれらのものは、測定を介して行うため、非常に時間がかかる、という欠点があります。一つ一つ可視化する、言い方を変えれば、現状を測定しながら明らかにしていく方法は、ただ調整するよりも”測定して現状を明らかにする”という工程を挟むため、時間がかかります。

そこで、このお店では、完全予約制にして、お一人、お一人、きちんと時間を取れるようにしました。測定を通じて調整するために時間がかかるのであれば、その時間がかかっても大丈夫な方法をとる、ということです。

このようにすることで、いろいろなことができるようになりました。

例えば、

▲が補聴器での改善値、が補聴器での改善目標値。このようにすると周波数別にどこが足りていて、どこが足りていないのかがわかりやすくなります。感覚では、どこ(どの周波数)が足りていて、どこが足りていないのかがわからないため、結構、大事になります。

補聴器を調整して、可視化した際、測定することによって、こういったことがわかったとします。この場合、重要になるのは、自分で補聴器を使っていて感じる感覚と客観的な数値を見比べることです。

例えば、補聴器をつけて感じる音量としては、ちょうど良いくらいに感じる。で、調べてみた結果、上記のような結果だった。とした場合、もしより聞こえの改善をしていきたい。とした場合は足りない部分を補ってより改善していこう。ということが可能になります。

逆に、調べてみた結果、客観的な数値は以下のような状態だったとします。

で、使ってみた感覚は、結構、音が大きく感じたり、一杯一杯まで改善されている感覚を感じる。とした場合は、まずは、今現在は、このぐらいの音量にしておき、補聴器の音に慣れてきた頃、あるいは、もう少し改善したいと感じた際に改めて、より良くしていく。ということが可能になります。

補聴器で大事になってくるのは、体感と数値を把握することになります。今、自分自身が感じている音量の感覚で、実際に数値としては、どのぐらいまで改善されているのか。

それらをみた時に、もう少し改善しても良さそうなら改善していき(改善度が足りていない部分をより補っていき)、体感として、結構、一杯一杯まで改善されている場合は、そのままにするということがお客様と相談できるようになります。

このようにすることで、現状を明らかにしながら、足りない部分を一つずつ補っていく。補聴器に関しては、これさえ行えばあっという間に改善できるという魔法の杖のような改善方法は、ありません。地道に一つ一つ改善できると良い部分を改善していく、それだけになります。

地味ではありますが、一つ一つ改善を積み重ねた先に聞こえの改善がある。というのも自分の聞こえを自分で改善した経験から感じていることです。

少しでもより良くするために

このお店では、少しでもより良い聞こえの改善のために完全予約制にして、ご相談をしています。

補聴器による聞こえの改善状態を可視化することで、どのぐらい今現在、改善されているのか。そして、自分の聴力から、どのぐらい改善されると良いのか。こういったことを明らかにしながら、一つ一つ、説明しながら、聞こえの改善をしています。

これらの方法は、私自身が自分で自分の聞こえを改善する際に役立ったことが非常に大きく、私の悩みの一つは、補聴器はどこまで聞こえが改善できるものなのか、でした。

可視化することにより、どこまでは改善できて、どこからは残念ながら改善できないのか。それを明らかにすることで、なるべく聞こえの改善状態に関しては、最善の状態を目指しています。

私が思うのは、補聴器は耳を治すことができないからこそ、できることと、できないことをわけ、できることに集中することが大切だ。ということです。

補聴器では耳を治せないから。と適当になったり、自暴自棄になるのではなく、補聴器で耳が治せないなら、どこまではできて、どこからはできないのか。それをなるべく明らかにすることで、できることに集中し、最善の状態にすることができるようになります。

私は、子供の頃、補聴器のことで3回も失敗し、20年間も聞こえにくい状態に悩み続けてきました。だからこそ、なるべく補聴器による聞こえの改善状態は、最善の状態にすること。そこを考えています。

今現在の私の技術でできることは、できることと、できないことをわけ、できることに集中し、なるべく聞こえの改善状態を良い状態にすること。こちらになります。

そのために完全予約制にして、ご相談をしています。

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