補聴器の性能って何?聞こえを良くするには、どうしたらいいの?

こちらに関しては、補聴器の性能に関して、簡単にではありますが、まとめていきます。
補聴器の性能といえば、上がれば上がるだけ良いように感じるかもしれませんが、これは半分正解で、半分不正解になります。実際には補聴器の性能には活かし方があります。
特に補聴器の場合、性能以上に聞こえの改善に影響する部分がありますので、こちらでは、その点も含めて、記載していきます。
なお、この内容は、【聴力別、補聴器による改善の補足】の陸続きになります。こちらでは、補聴器の性能を載せなかったのですが、載せると非常に長くなるため、こちらで、別に記載していきます。
まだ、ご覧になっていない方は、以下のものをご覧いただいた上で読んでいただくとより理解を深められるかと思います。
聴力別、補聴器による改善の補足

補聴器の性能とは?
今現在、補聴器を選ぶ要素には、補聴器の形状と補聴器の性能の2つがあります。補聴器を買う際に選ぶ要素というのは、簡単に言えば、この2つ(厳密には、メーカーも含めると3つ)になるということです。

で、こちらは、性能に関する事ですね。補聴器のカタログを見ていただくと、以下のように補聴器そのものの下にいくつか、クラスが分かれていることが多いです。

だいたいどのメーカーも3つ4つあります。ですので、補聴器を買う際は、補聴器の形状と、このいくつか分かれているクラスを選び、聞こえを改善していくことになります。
どれがどう違うのか?
さて、このように見ていただくと、疑問が浮かんでくるのは、「どれがどう違うのか?」ということかと思います。
ここについては、そもそも補聴器は、どのようにして難聴を改善しようとしているのか。そこから理解する必要があります。補聴器がしていることは、簡単に言いますと、
- 聴力が低下したところに音を入れて、聞こえを改善する
- ノイズ下で聞き取りが悪くなるので、聞きづらくならないようサポートする
- 音響機器で聞こえを改善するにあたり、不快に感じやすい音を軽減する
の3つになるのですが、なぜこんなことをしているのか、ということですね。
まず、補聴器をつける方は、感音性難聴という内耳と呼ばれる音を感じる神経が何らかの理由で損傷してしまい、音そのものが認識しづらい状態になります。

この内耳が悪化すると起こることの一つは、周波数分解能(しゅうはすうぶんかいのう)というものが低下することです。ここが低下すると、
- 音が聞きにくくなる
- 音の聞き分け、区別が難しくなる
この2つが起こり、単純に音そのものが感じづらくなることに加え、音の聞き分け、区別が難しくなります。
すると単純に音が聞こえづらくなることのほか、音声が認識しづらくなったり、ノイズ下になるとうまくノイズと音声を切り分けることができなくなり、理解がしづらくなったりします。
この理解できるレベルというのは、どれだけ聴力低下しているのか、周波数分解能が低下しているのかにより変化するのですが、難聴とは、まさに音を聴くのが難しくなることを意味します。(音が聞きにくくなるのではなく、音を聴くのが難しくなることがポイント)
ですので、補聴器は、聴力低下した分を補うということと同時に騒音抑制を追加して、なるべくノイズに邪魔されないようにしたり、指向性機能というものを追加して、聞きづらくならないようにしたりと、ノイズ下に弱くなることから、そういった部分をカバーするようにしました。
そして、音響機器で聞こえを補う際、いくつか問題も出てきました。それは、特定の音が大きく聞こえたり、人の耳だとそこまで感じないものが機械で録音すると、妙に耳障りに感じる音が入ることです。
例えば、ボイスレコーダーでも動画撮影の際でも、現実の世界を録音すると、常にザワザワした空気の音が入ったり、コップを置く際の細かな音が強く入ったり、さらに場所によっては、反響してしまって、聞きづらくなるなど様々な現象が起こるようになります。
ここで思い出していただきたいのは、難聴になるとノイズに弱くなることです、ノイズがある状態だと、音声の聞き取りが難しくなりやすく、これらのノイズは、できる限りない方が聞きやすくなり、かつ、なければないだけ快適に補聴器を使えるようになります。
そのことから、補聴器は、単純に聴力低下した分を補うということのほかに、
- ノイズ下で聞き取りが悪くなるので、聞きづらくならないようサポートする
- 音響機器で聞こえを改善するにあたり、不快に感じやすい音を軽減する
これらの機能を入れるようになりました。この部分の性能の有無、効力の差がそのままクラスの違い、金額の違いに反映されていきます。
それぞれの性能
では、性能に関しては、分類していくと、どのようになっていくのか。それについては、先ほどの通り、
- 聴力が低下したところに音を入れて、聞こえを改善する
- ノイズ下で聞き取りが悪くなるので、聞きづらくならないようサポートする
- 音響機器で聞こえを改善するにあたり、不快に感じやすい音を軽減する
の3つがあります。それぞれ、3つの観点でクラスごとに違いがどう出るのか。そこについて、簡単にではありますが、まとめていきます。
聞こえを補う部分(補聴器の調整)

補聴器がしていることの一つは、ここの部分になります。そして、聞こえを改善する根幹の部分でもあります。
結論から記載しますと、ここに関しては、実は、クラスごとには、そこまで変わりません。
表現が非常に難しいのですが、補聴器には、今現在、聴力別にどのぐらい聞こえを補えると良いのかという改善目標値があります。そこに関しては、どのクラスでも目標値はさほど変わりません。

実際には、以下に紹介する機能の良さにより、そこまでの上げやすさは、変わります。
実際に補聴器を調整し、聞こえを改善していく際に壁になるのは、周囲の物音の大きさや一部の物音の大きさが気になって音をあげられないということです。
しかし、そういったものを抑えられる機能があれば、快適になり、その分、音量を上げやすくなりますので、結果、目標値まで上げやすくなるというのはあります。
騒がしい中での聞き取りを改善する
補聴器のクラス別による違いは、ほぼここによって決まります。騒がしい中での聞き取りを改善するものです。
具体的には、指向性と呼ばれる機能です。

難聴の方の1番の問題は(書いている私も感音性難聴なのでそうなのですが)騒がしい中での聞き取りが悪くなることです。これは、耳の機能的にも下がるうえ、音響機器で音を拾うという部分も入り、より下がります。
ですので、補聴器の性能の大半は、ここに集約されているといっても過言ではありません。
指向性機能とは、前方の音のみきき、周りの音を抑えるなど、聞く方向や音声のみを抽出し、なるべくノイズや騒音と思われるものを抑えることで、なるべく聞き取りを阻害されないようにする機能です。
主に騒がしい環境や少し騒々しい中に入った時に機能するもので、こういったものがあると、そういった環境でサポートしてくれます。ここの機能の差は、クラスごとに非常に大きくあります。
音響機器による不快感、欠点を解消する
補聴器で聞こえを改善する上で問題になってくるのは、騒がしい環境だけではありません。
音響機器で音を拾い、増幅したりすると、その過程で気になる音というのが、いくつか出てきます。代表格なものが、以下のものです。

よくあるのは、常にざわざわした音が聞こえたり(補聴器用語だと定常音、撮影や映像(動画)の世界だと背景ノイズと言います)、細かな音が大きく聞こえること、
さらには、マイクに風が当たったりすると非常に大きな音がしたり、反響する部屋などでは、音の輪郭が広がりすぎてしまい、何を言っているのかよくわからない、など、音響機器で聞こえを改善する過程では、実にいろいろな問題が起こります。
それを軽減してくれるのが、これらの機能になります。こちらもクラスごとに差があります。ただ、その差は、最近は少なくなってきており、昔に比べるとだいぶクラスごとの差は、緩和されつつあります。(メーカーによるかも)
聞こえを良くするには?
さて、なんとなくでも補聴器の性能に関して理解が進んだのであれば幸いです。ここからは、実際に聞こえを良くしていくための考え方について、お伝えしていきます。
というのも補聴器の性能の本質は、聞こえの改善度を上げる要素ではなく、聞こえの改善度を下げない要素だからです。(←ここすごい需要)
上記に紹介したものをよくご覧いただくと、補聴器の性能の主な違いは、抑制機能の有無、能力の違いになってくることがなんとなくわかるかと思います。
これは、補聴器をつける方は、感音性難聴の方が大半で、その方々の大きな欠点は、(私もそうですけど)騒がしい中での聞き取りやノイズに弱いという耳の機能上の問題にあるからです。
補聴器における聞こえの改善に影響する要素は
- 耳の補い方
- 補聴器の形状
- 補聴器の性能
- 補聴器の調整(聞こえの改善度)
の4つになるのですが、それぞれ、聞こえの改善に及ぼす影響度は、
- 耳の補い方:
- 補聴器の調整:
- 補聴器の性能:
- 補聴器の形状:
そして、本質的なことをお伝えしますと、
- 耳の補い方:聞こえの改善度を上げる要素
- 補聴器の形状:主に扱いやすさに影響
- 補聴器の性能:聞こえの改善度を下げない要素
- 補聴器の調整:聞こえの改善度を上げる要素
になります。
ですので、優先順位としては、上記の通り、耳の補い方、補聴器の調整(聞こえの改善)の2つを押さえて聞こえの改善度をあげ、補聴器の性能で、その聞こえの改善度を下げないということができると、聞こえの改善については、良くしやすくなります。
ここからは、どれだけご予算があるかにより変わるのですが、予算が厳しめの方は、耳の補い方と補聴器の調整の部分を押さえることに集中し、予算があり、かつ、より良くしていきたいとお考えの方は、そこにプラス、性能の部分に関して、投資できると良いです。
補聴器の性能は、聞こえの改善度を上げる要素ではなく、聞こえの改善度を下げない要素である。ここが理解できるようになると、何を優先すればより良くしやすくなるのか、がわかるようになります。
まとめ
こちらでは、補聴器の性能に関して、なるべく簡単にではあるのですが、お伝えしてみました。
補聴器をつける方は、(私も含めて)感音性難聴という音を感じ取る神経の部分がなんらかの理由によって損傷してしまい、うまく音を認識できない状態になります。
その事から、音を区分けするのが苦手で、様々な音があると混ざってしまい、騒がしい中などは特に躊躇ですが、音が覆い被さるようになり、聞きづらくなったりします。
ですので、補聴器は、元々の聞こえの部分を上げることのほか、なるべく邪魔されないような機能を作り、聞こえの改善をサポートするようになりました。ノイズにどうしても弱くなってしまうため、聞こえを改善するだけではなく、その部分も必要だったためです。
これらの機能の良さ、機能の有無が補聴器の性能となり、クラスごとの違いになってきます。
これが性能ですね。
私自身も生まれつきの難聴者で補聴器を使っていますので、なるべくなら、お使いになる方には、より良くなって欲しいと思っています。こちらに関して、少しでもわかりやすく伝わったのであれば幸いです。
なお、このお店でも補聴器に関するご相談は承っております。ご希望の方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
よろしくお願い致します。