耳・補聴器のこと

Google glassから考える未来の骨伝導補聴器と市場の変化

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

皆さんは、Google glassというウェアラブル機器をご存知でしょうか。かなり前に2013年にアメリカで一部特殊な方々へ販売されたメガネ型ウェアラブル機器です。

このディバイスは、音声認識を利用し、動画撮影やメールの送信などができます。ウェアラブル機器というよりもネットディバイスという感覚が強いのが特徴です。

今更感がかなり強いのですが「よく考えたらGoogle glassが世に出れば、骨伝導補聴器いらなくなるかも?」と、ふと思いつきました。それはなぜなのでしょうか。今回はこれらについて、考えてみます。

なお、骨伝導補聴器について理解している事を前提に進めていきます。骨伝導とは?という方は、こちらをご覧下さい。

リンク:骨伝導補聴器の対象者とメリット、デメリット

Google glassは骨伝導で伝える

初めから結論を記載しますが、Google glassは、骨伝導で音を伝えてくれます。骨伝導補聴器について理解がある方なら、もうここで「ああ……なるほど……」と思います。

これは、骨伝導補聴器は、どこに優位性があるかを考えると良くわかります。

骨伝導は何が良いのか

骨伝導補聴器は、単純に骨伝導で音を伝える補聴器です。Google glassも同様で、骨伝導で音を伝えてくれます。ここで「補聴器なんだから、音の調整が必要なのではないか?」という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、骨伝導補聴器を装用する方は、そもそも耳の中にある神経そのものは良いため、滅多な事で調整する事がありません。骨伝導補聴器の真価は、聞こえにくいところを通り越して、聞こえるところに直接音を伝えられるところにあります。そのため、マイクから入力される音そのものを聞こえるところに送っているだけにすぎません(内耳の聞こえは良いので、そもそも調整する必要はほとんどありません)。

骨伝導補聴器の優位性は、骨を振動させて聞こえにくい部分を通り越して聞こえるところに音を送る方法にあります。ここを理解すると骨伝導補聴器の優位性は、ほとんどない事に気が付きます。

それであれば、その他の骨伝導の機器が骨伝導補聴器の変わりをする事もできるのではないか?と思いました。

骨伝導補聴器の難点とGoogle glassの利点

「こうなったら良いな」と思うのはいくつか理由があります。

  • 難点の改善
  • Google glassの優位性

これらの点で考えていきます。

骨伝導補聴器の難点

骨伝導補聴器の難点の一つは、デザイン性です。何人かの骨伝導補聴器を装用している方に聞いた事があるのですが、デザインが気に入らないという方は、結構聞きます。また、デザインが気に入らないので、装用しないというケースもいました。

骨伝導メガネ型の形状はこんな感じです。

mega

※骨伝導補聴器のスターキージャパンより引用

どうしても古くさいデザインであったり、ご年配の方が使うようなデザインであるため、使用者も困惑しているのが現状です。骨伝導補聴器そのものの市場は、かなり小さいので予算をかけられず、開発が進まないのだと思いますが、これでは確かに装用者側から見ると装用しようと思わなくなるのもうなずけます。個人的には、装用する人の気持ちを考えると変わった方が良いのではないかと思ってしまいます。

ちなみにGoogle glassのデザインは、こんな感じです。

google-glass

カ、カッコいい……。(見せ方の問題もありますが)

Google glassは、色、フレームについてもいくつか種類があります。また、レンズなしにもできます。色々と自由が効くのも嬉しいですね。こういった部分は、使用者からすると意外に重要なポイントです。

骨伝導補聴器は、聞こえこそ良いのですが、いまいちなデザインのせいで大きく損しているような気もします。

Google glassの優位性

Google glassの優位性は、

  • 様々な事ができる事
  • 価格が安い

この二つがあります。

様々な事ができる

Google glassであれば、これ以外にも色々できます。Google glassの場合、どちらかというとメガネ型のパソコンですので、カメラを動作させたり、動画を見たり、メール送ったり、電話したり……など様々な事ができます。

ただし、こちらはスマートフォンを持っている場合に限ります。スマートフォンがない場合は、音楽再生、カメラ、動画撮影のみが可能のようです。なお、iPhoneでも使用できます。ちなみについさっきまでAndroidしか使用できないと思ってました……。

骨伝導補聴器は当然そんな事はできません。様々な事ができるという点では、Google glassの方が優位性は上がるでしょうね。

価格が安い!

金額は、290ドル(だいたい3万〜4万円)を予定しているのだとか、骨伝導補聴器は、片耳で10万以上です。価格が下がるのも大きいです。これは、市場の大きさが関係しますので、ある意味仕方ない部分でもあります。多くの物が必要とされる市場では、大量生産で一つあたりのコストを下げる事ができますので、安くする事ができます。補聴器は限られた人が使うため、大量生産向きの商品ではありません。

一方Google glassは、パソコンのようなものですので、使う人は、間違いなく骨伝導補聴器より多くなります。骨伝導補聴器の出荷台数は、H23年の補聴器工業界の発表によるとたったの551台です(よく消滅しませんね……)。この数値は、メーカーから出荷された台数ですので、実際の販売台数は、これよりも下がります(販売店で在庫を持った場合は、販売されていない事になりますね)。間違いなくGoogle glassの方が売れますし、市場もありますし、ニーズもあります。

このような視点から見ると骨伝導補聴器が安くならないのがわかります。そしてGoogle glassは今後、もっと安くなってくる可能性も考えらえられます。価格に関しては、骨伝導補聴器は全く歯が立たないでしょう。

ここが最も大きいです。

今後市場はどう変化するのか

さて本題。このようなものが流行るとどのように市場が変化するのでしょうか。こちらについても考えていきます。

流通する事によりコストが下がる

一つは、市場に多く流通すれば、当然本体価格を下げられるという事があげられます。骨伝導補聴器は、対象者が少なく流通が非常に少ない補聴器です。そのため、価格が高いのも欠点です。しかし、現在、注目されているディバイスに骨伝導が利用されれば、ディバイスそのものの流通がされます。そして有効性がわかると各社こぞって同じような仕組みのものを作ります。その結果、多くのディバイスが世に流通し、骨伝導そのものが安くなったり(もしかしたらもう安いのかも?)もっと手に入れやすい価格に変化するかもしれません。

そうなると骨伝導補聴器も変わるかもしれません。現在は、補聴器の調整機能がついているから結構なお値段がするのだと思いますが、個人的にその機能の有無は懐疑的です。というのも上記の通り、骨伝導補聴器の優位性は、骨伝導の技術そのものにあり、補聴器のような調整技術ではありません。元々聞こえる部分に音を送る仕組みそのものに優位性があります。であれば、安くなった骨伝導にボリュームだけつけて調整できるようにし、軽量化し、デザイン性に富んだものの方が、お客さんにとって喜ばれるのではないかと考えてしまいます。

市場の二極化

骨伝導補聴器の価格が低下し、骨伝導を利用したものが気軽に作られるようになると市場は二極化すると考えられます。一つは、今までの骨伝導補聴器の役割だけを果たすタイプを使用する層、もう一つは、Google glassのようなハイテク機器を使用するタイプの層です。

このように変化すれば、難聴の方のスタイルに合わせて、補聴器を購入するように変化するかもしれませんね。仕事をする方であれば、Google glassのようなものの方が良いですし、ご年配の方であれば、今までと変わらない骨伝導補聴器を選択するかもしれません。どちらにせよ選択肢が増え、さらにできることまで増えるのは、良い事だと個人的には思っています。

補聴器の意識が変わる?

また、音を聞くだけでなく様々なものができるようになると市場そのものも変化しますが、補聴器の意味合いも変化するのかもしれません。仮にGoogle glassを補聴器がわりにしたとしても誰もGoogle glassが補聴器だとは思わないでしょう。このような意識の変化が起こる可能性もないとは言い切れませんね。

あとがき

Google glassを見た時に思った事を記載してみました。私がGoogle glassを知ったのは、一年前くらいです。当時はGoogle glassを見ても凄いな〜程度にしか見ていませんでしたが、ついさっきふと思いましたので、書いてみました。

ただ色々と気になるポイントもあるのも事実です。Google glassで本当に聞こえが良くなるのか?と言われればそれはわかりません。そしてバッテリーの持ちの問題です。ここは、スマートフォンも問題となっている部分です。これらの事があるため、実際に試してみないとわかりません。何とも言えないところは、申し訳ないです。骨伝導の仕組みからすると有効であるのは確かです。

また、Google glassを火蓋に、各社メガネ型ディバイスを開発しているのは事実です。骨伝導の技術が使われる事が増えれば、価格が安くなってくる可能性は、0ではありません。ここに関しては、今すぐではありませんが、今後恩恵を受けられる可能性はあります。

なお、Google glassに関しては、アメリカでプライバシーの問題等で色々一悶着ありました。その結果、発売に関しては現在見合わせています。しかし、新たなGoogle glassを作っているという情報もありますので、この製品そのものが無くなったわけではありません。今後どのようになるかはわかりませんが、色々と期待ができる製品であることは間違いないでしょう。Googleもテストプレイを通じて、プライバシーの保護、違法行為ができないように改良してくると考えられます(本来はマナーの問題なんですけどね……)。そうなってくれば、いよいよ現実味がわいてきます。どのくらい時間がかかるかはわかりませんが、少しずつ状況は変わってきています。

今後、機器が発達することにより、様々なことができるようになってくると考えられます。今のうちから色々ITについて知っておくと乗り遅れなくて済みます。そして、機会損失そのものも最小に抑えられるようになるでしょう。ここが非常に重要です。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で7歳の頃に補聴器を使用、補聴器の販売会社へは2006年に就職し、7年間勤め、2年間の空白と準備期間を経て、2016年に独立。2024年現在、補聴器使用歴は31年、補聴器販売業の従事歴は16年、お店の継続歴は8年に。現在は120名以上の既存のお客様のサポートと、どのようにしたらより聞こえを改善できるのかの勉強、試行錯誤をよくしています。
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