突発性難聴の事例

【実例】突発性難聴で、片耳が聞えない方(中等度)を補聴器で改善した方法

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

30代、女性。数年前に突発性難聴になり、右耳が聞こえなくなってしまった方より、改善のご相談をいただきました。

聞きにくくなった当時、治療を行うものの、残念ながら聴力は改善しませんでした。

聞きにくいことにより、気がつかず、他人から見たら、無視したように思われたり、それにより、少し気まずいことになってしまったりなど、聞きにくいことで、様々な部分で不便を感じるようになった事から、改善のご相談をいただきました。

ご相談の結果

  • 聞きにくい側から話されても、わかることが増えてきた
  • 聞こえない方に人が来ても怖くなくなった
  • 少し騒がしいところくらいなら、聞こえることが増えてきた

とのことでした。

聞きにくさが減り、かつ、聞こえない側に人が来たとしても、怖くなくなったとの事で、本当に何よりです。

では、どの様に改善させていったのでしょうか。こちらに関して記載していきます。

お客様の状況

まず、お客様の状況ですが、

  • お名前:K・Kさん
  • 年齢:30代
  • 性別:女性
  • 聴力:左耳、中等度難聴
  • 症状:突発性難聴により、聴力低下(2007年、発症)
  • 備考:治療したけれども残念ながら改善せず

この様になります。

聴力の重さは、中等度の難聴になります。

中等度の耳といっても、音声がわかりづらくなる聴力のレベル(対面での会話が、半分わかるか、わからないかくらいです)にはなりますので、実感として、聞こえない耳側は、結構わかりづらい状態です。

現状に関してお伺いしてみますと、片耳のみ聞こえにくいことで、そちらからの呼びかけに気がつきにくく、呼ばれていても気がつかなかったり、周囲が騒がしくなると、途端に聞こえにくくなってしまうため、特に仕事の場で困ることが多い。との事でした。

基本的に片耳のみ聞こえにくい場合は、これらの部分が当てはまったりするのですが、全部、当てはまるとのこと。そして、特に②と③に困るとのことで、状況を改善させていくことになります。

突発性難聴の耳を補聴器で改善する

さて、突発性難聴によって耳が聞こえにくくなった場合、どのように補聴器で改善していくのか。その点に関して、まとめていきます。

基本的には、上記の内容の通りになるのですが、基本的に片耳のみ難聴の場合

  • 補聴器で補える耳なら補聴器で改善
  • 補聴器では改善できない場合、クロス補聴器で改善

の2つの選択肢があります。

よく考えるのは、聞こえなくなった耳側に補聴器をつける事です。しかし、一部の耳の状態の方は、この方法では、ほとんど改善できない事があります。
よく考えるのは、聞こえなくなった耳側に補聴器をつける事です。しかし、一部の耳の状態の方は、この方法では、ほとんど改善できない事があります。

一般的に耳が治療できない場合、聞きにくさに困るケースでは、片耳のみ難聴でも、補聴器で改善させていくことを考えます。

しかし、補聴器で聞こえを改善させるケースでは、片耳のみ難聴の場合、中等度くらいまでが対象になります。

突発性難聴の場合、大きく聞こえなくなったり、耳に言葉が聞こえるくらいの音を入れても、聞き取りがうまく行かない。というケースもあります。

そのような場合は、クロス補聴器。というもので、改善してあげると、現状をよくしやすくなります。

クロス補聴器は、聞こえる耳側に補聴器をつけ、聞こえない耳側にクロス。と呼ばれる機器をつけます。

そのようにすることで、片方の耳で、全ての音を聞く事ができる補聴器になります。

片耳のみ難聴になった場合、上記の通り、このような部分で困る事が増えます。

クロス補聴器を装用する事で、全てではないのですが、聞きにくさを改善させる事ができます。

どのような耳の状態でも、改善できるのであれば、補聴器だけで済んだのですが、残念ながら、耳の状態によっては、補聴器では、ほとんど改善できないケースがあります。

そのようなケースは、クロス補聴器で改善できると、良くしやすくなります。

K・Kさんの場合は?

さて、K・Kさんの状態に戻っていきます。

K・Kさんの聴力は、この通り。聴力だけをみてみますと、まだ、補聴器で補える範囲内です。
K・Kさんの聴力は、この通り。聴力だけをみてみますと、まだ、補聴器で補える範囲内です。

聴力だけで判断しますと、まだ補聴器で聞こえを補える範囲です。

そのため、その耳に言葉を理解できるくらいの音の大きさで、どのくらい理解できるか。を調べていきます。

内耳が悪化するケースは、基本的に感音性難聴。と呼ばれています。耳の中の音を感じる神経が、内耳のなかにあり、その働きが悪くなってしまっている状態です。
内耳が悪化するケースは、基本的に感音性難聴。と呼ばれています。耳の中の音を感じる神経が、内耳のなかにあり、その働きが悪くなってしまっている状態です。

突発性難聴の場合、音を理解する神経の部分。内耳(ないじ)という部分が悪化して、起こる難聴です。この場合

  • 音が聞こえにくくなる
  • 言葉がわかりづらくなる

という症状がでます。

そして、突発性難聴は、言葉がわかりづらくなる。という症状が強く出る傾向があります。単に音が聞きづらいから理解しづらい。という状態でもないのです。

耳には、言葉が理解しづらくなる。という症状がでます。その症状の程度を調べるのが、こちらの測定です。
耳には、言葉が理解しづらくなる。という症状がでます。その症状の程度を調べるのが、こちらの測定です。

この測定は、語音明瞭度(ごおんめいりょうど)測定と呼ばれます。こちらで、耳の状況を調べていきます。

調べた結果がこちらです。最良の数値で、判断していくのですが、実際には、ご本人様がどう感じたかも、判断の一つとして、使用します。なお、結論から言いますと、結構、低い数値で、補聴器の効果は、見込みづらい数値になります。
調べた結果がこちらです。最良の数値で、判断していくのですが、実際には、ご本人様がどう感じたかも、判断の一つとして、使用します。なお、結論から言いますと、結構、低い数値で、補聴器の効果は、見込みづらい数値になります。

こちらが、調べた結果になります。基本的に最良の数値が50%以上になると、基本的には、補聴器の適合になります。

そして、この測定を受けていただき、言葉の聞こえに関してK・Kさんに確認しますと、正解しているところも、ほぼ当てずっぽうで、ちゃんと聞こえた感覚は、ほとんどなかった。という状況でした。

数値は、補聴器適合のギリギリ。そして、ご本人様の評価としては、ちゃんと聞こえた感覚はない。この二点により、補聴器ではなく、クロス補聴器で改善させていくことになります。

実際に行なった事

実際に行なった事ですが、いくつかに分けて記載していきます。

初回にした事

初回にご来店いただいた際にしたのは、状況の確認〜補聴器の試聴です。

耳のことをお伺いしながら、上記の測定を行い、補う方針に関して決めていきました。補う方針というのは、補聴器で補っていくのか、クロス補聴器で補っていくのか。という部分ですね。

耳の状況を説明後、改善に関しては、最も効果が見込めるクロス補聴器で改善していくこととなります。

K・Kさんに関しても、耳の状況的にクロス補聴器をやってみたいとのことでしたので、試聴から初めていくこととなります。

今現在の状況を確認しますと、騒がしいところでの聞き取りを重点に改善したいとのことで、このようなタイプから試聴してみることにしました。

幾日か試聴した結果ですが、

  • 騒がしいところは、厳しいこともあるが、聞こえることも増えた
  • 聞こえない側から話される怖さが減った
  • 周囲がうるさくなければ、聞こえることが増えた

とのことで、色々とクロス補聴器に関して、考えていくことになります。

クロス補聴器の形状選定

補聴器に関して選んでいく場合、形状の部分を決めていく必要があります。

クロス補聴器には、主に上記の3つがあります。

両耳とも耳あなタイプは、K・Kさんの場合、聞こえる耳側が聞こえにくくなってしまうため、選択肢としては、無しにし、それ以外のもので選んでいきます。

初めにこのタイプを試聴しましたが、こちらのタイプの特徴としては、

クロス補聴器の中では、全体的に改善できる傾向があるのが、このタイプの特徴。特にクロス補聴器の場合、騒がしい中が厳しかったりするのだが、まだ、こちらの方が改善できる傾向がある。
クロス補聴器の中では、全体的に改善できる傾向があるのが、このタイプの特徴。特にクロス補聴器の場合、騒がしい中が厳しかったりするのだが、まだ、こちらの方が改善できる傾向がある。

このようになります。

あくまでも聞こえの効果の補足ですが、お客さんからの評価を聞きますと、このような傾向を感じます。

その次に、比較として、こちらを試聴しました。両方とも耳にかけるタイプですね。

複数の方とのお話の体感は、3.5くらい。両耳とも耳かけのタイプは、音を拾う範囲が広いのか、聞こえる感覚はあるものの、逆に音を拾いすぎる感覚もある。それ故、騒がしいところでの聞き取りは、少し低下しやすい。
複数の方とのお話の体感は、3.5くらい。両耳とも耳かけのタイプは、音を拾う範囲が広いのか、聞こえる感覚はあるものの、逆に音を拾いすぎる感覚もある。それ故、騒がしいところでの聞き取りは、少し低下しやすい。

聞こえの特徴としては、このような状況になります。実際に使っていただくと

  • 後ろから聞こえる感覚が結構ある
  • 前の声が耳あなクロス、耳かけ補聴器に比べ、入りにくい
  • 静かなところや音が多くなければ聞こえる感覚はある

とのことでした。

職場が少し騒がしいことと、全体的な聞きやすさの評価をすると、耳あなクロス、耳かけ補聴器の方が良いとのことで、こちらに決定になります。

最終的な決定

さて、最後ですが、実際には、耳あなクロス、耳かけ補聴器のタイプには、

形状の大きさが2つあります。電池の寿命をとるか、扱いやすさをとるか。という部分になるのですが

最終的には、大きい方を選択され、扱いやすさを重視されました。

K・Kさんの場合は、会社で主に使う事が多く、できるなら、長持ちするもので、使いやすいタイプが良い。という事でした。

実は、小さいタイプは、電池が小さいため、結構な頻度(2〜3日に1回くらい)で、電池の交換が必要になります。

K・Kさんにとって使いやすいものは、大きい方でしたので、こちらに決定です。

お客様の声

実際にご相談いただいて、どうだったのか。その点に関してお客様に聞いてみました。

どのようなことでお困りでしたか?

実際にクロス補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか

このお店でご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか?

実際のアンケート

ご協力ありがとうございます。完全に改善することは難しい点は申し訳ないのですが、少しでもよくなり、かつ、聞こえない方に人が来たとしても、怖くなくなったのは、非常に良いことかなと、感じます。

片耳のみ聞こえにくいと、無視している訳ではないのに関わらず、そのように見られてしまう。いわゆる誤解が多くなってしまうのですが、耳が聞こえにくいなどは、外見ではわからないため、どうしてもそのような傾向があります。

自分としては、そのようなことをしたつもりはなくてもそのように取られてしまうと、人間関係も少しかわってきてしまいます。

その点が辛いところですね。中には、精神的なストレスがすごくかかるとも聞いていますので、私が想像している以上に、そのような部分を気にしている方は、多いと感じます。

そのような誤解を少しでも軽減できたり、気にすることがなくなるというのは、すごい大きなことだと思っています。

それらの部分で貢献できたのであれば、こちらとしては、何よりです。

突発性難聴の方の改善、まとめ

今回のケースに関しては、耳の状況を確認し、クロス補聴器の方が良いと考え、改善していきました。

実際には、上記のような聴力でも、補聴器を使うケースはあるのですが、音声を理解する力が数値以上に低下している傾向があったため、クロスで改善させています。

突発性難聴になった場合は、聴力もバラバラですし、耳の状況も様々です。ですので、耳の状況を把握しながら、良い選択をしていく必要があります。

アンケートでもご記入いただいたのですが、全てが良くなった訳ではありません。

特に周囲が騒がしいと、どうしても音声の部分がかき消されてしまうような状態になりやすく、理解する。という部分は、少なくなってくる傾向があります。

しかし、それでも聞きやすくなる部分はあり、例えば、呼びかけに気がつきやすくなったり、隣に人が来ても気がつくことが増えれば、自ずと、ご自身にも自信を持つようになってきます。

そして、誤解も少なくなると、精神的なストレスもかなり軽減されてきます。

全てを改善できた訳ではないのですが、それらの部分は、より良くすることができ、できる限りの改善ができたのは、こちらとしては、幸いでした。

ということで、こちらが参考になれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器の販売員としての知識、技術に加え、一人の難聴者が自分自身の聞こえを改善した知識、技術も組み合わせながら、聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
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