補聴器は、どうやって聞こえを改善している?
難聴の人の聞こえを改善する道具の一つには、補聴器がありますが、では、補聴器は、どのようにして、聞こえを良くしているのでしょうか。
このようにお話をしてみると、聴力に対して、聞こえを改善している。という風に答える方が多いと思うのですが、これは、半分正解で、半分不正解になります。
補聴器は、厳密には、聞こえている音の範囲に対して、音を調節して、聞こえを良くするようにしているんですね。
今回は、こちらに関して記載していきます。
補聴器は、聴力に合わせている訳ではない?
冒頭の通り、補聴器は、聴力。というより、難聴の人が聞こえている音の範囲に合わせて、聞こえを改善しています。
難聴の人の耳というのは、実に不思議なもので、その人にとっての小さい音は、聞こえないのですが、大きい音は、意外にそのまま聞こえている状態です。
ですので、70dB未満ぐらいの聴力であれば、声(音)を大きくして話すと、言葉もわかりやすくなったりします。
聞こえの状態を示すものとして、よく聴力検査のデータが使われますが、一般の人の感覚というのは、こんな感じです。
0〜10dBで聞こえはじめ、だいたい95〜100dBあたりで音が辛くなります。
一方、難聴の人は、どんな感じかといいますと、例で出してみると、こんな感じですね。
50dBから聞こえ始め、徐々に音が大きくなり、50dBぐらいの方だと105dBぐらいで結構、辛く感じやすくなります。
ここで大事なのは、小さい音の認識、聞こえは、大きく違うけれども、大きい音の許容範囲。どこまで音が大きくなっても大丈夫かの、その許容範囲は、あまり変わっていない。という事です。
難聴の人の状態は、一般の方と比べて、聞こえにくいのは、事実なのですが、大きい音になれば、意外にも聞こえていたりするんですね。
この聞こえている音の範囲が徐々に狭くなってくる。というのが、難聴の本質です。
どう聞こえを改善させると良い?
耳の状況が簡単にでも、わかったところで、じゃあ、このような感覚の耳を改善していこう。となる訳ですが、どう改善していくと良いのか。
それが今現在、補聴器がやっている事に繋がってきます。
ここからは、また同じように聴力が約50dBほどの方をイメージして、お話ししていきます。
大事なポイントとしては、上記のように聞こえる音の範囲が変化しているのが、難聴の方の特徴になる事です。
それにより
- 数値よりも小さい音は、聞こえない
- 数値よりも大きい音は、聞こえている
- 元々、大きい音は、普通に聞こえている
という状態が起こっている状況ですね。
このように記載してみると、小さい音は、全然、聞こえていない訳ですから、しっかりと音を入れる必要がありそうですし、数値よりも大きい音は、小さい音と同じぐらい音を大きくする必要があるか。と言われれば、そんな事は、なさそうですよね。
そのぐらいの音は、ちょっと小さいかもしれませんが、聞こえているので、全く聞こえていない小さい音と同じように音を大きくしてしまうと、音が強く聞こえてきそうです。
さらに元々、大きい音は、普通に聞こえている訳ですから、その大きい音をより大きくしたら、余計にうるさく聞こえてきそうな印象があります。
そう考えると、そこの部分は、そもそもの部分として、それ以上、大きくする必要があるか。と言われれば、そんなになさそうですよね。
補聴器は、このような耳の状況をなるべく適切に改善するため、実は、音の大きさ別にどのぐらい音を大きくするか。それを変えているんですね。
赤で囲んである部分がありますが、そこに記載されているG50は、50dBの時にどのぐらい音を大きくするか。G65は、65dBの時にどのぐらい音を大きくするか。G80は、80dBの時にどのぐらい音を大きくするか。になります。
それぞれ音の大きさ別に変えられるようにこんな仕様になっているんですね。
周波数、音の高さ別にも、もちろん変えているのですが、それ以上に、この音の大きさ別に音の改善を変えている。というのが非常に大事なポイントです。
それをする事によって、使っている人が認識できないくらい小さい音は、大きく入れて、認識できるように、ちょっと小さく感じる音は、それがよりわかりやすくなるくらい少し音をプラスする。
そして、元々、聞こえている大きい音は、大きくしすぎるとかえって辛くなるだけですので、そんなに音を大きくしません。
このように音の音量別に聞こえを改善する事により、それぞれの音の大きさ別に音や言葉を認識しやすくして、聞こえの改善をしています。
これが補聴器がしている事です。
集音器と補聴器
上記の事がわかりやすい例が、まさに集音器と補聴器ですね。
集音器は、ただ単に音を大きくして、聞こえを改善するのですが、集音器で音を大きくすると、小さい音も普通の音の大きさも、大きい音の大きさも、同じ量だけ大きくします。
そうすると、全然、聞こえない。という事で声が小さい人の声を軸に音量を合わせると、大きい音の大きさがかなり大きくなってしまい、家の中ではいいけど、外に出たら、びっくりするぐらい音が大きかった。なんてことが起こりやすくなります。
上記の通り、難聴というのは、聞こえている音の範囲が変化している状態ですので、各音の大きさを同じレベルで大きくしてしまうと、音が大きく聞こえすぎてしまう問題と逆に全然聞こえない問題が起こりやすくなります。
例えば、音が大きい。という事で、大きく聞こえる音のレベルを中心に音量を合わせたとすると、小さい声は、認識できないぐらい小さくなりますし、小さい声の人に合わせた場合は、大きい音が大きくなりすぎて、音が辛い。と感じる要因になってしまうんですね。
簡単にいうと、小さい人の声の大きさが聞きやすくなるのに必要な音量と大きい音が不快にならないレベルの音量が違うので、これを同じ音量で実現しよとすると、どちらかを諦めなければならなくなってしまいます。
ですので補聴器の場合は、それぞれの音量のレベルごとに調整できるようにして、さらに最後に一番上に黒い線があると思うのですが、それが、最大出力となり、そこまでしか音を出しませんよ。と制限をかけています。
補聴器での聞こえの改善設計というのは、この聞こえの範囲。ラウドネスとも言ったりするのですが、この範囲内に合わせて、聞こえを改善しています。
このラウドネスを越えると、音が辛くなってしまったり、逆に全然、聞こえなかったりすることがあるため、その中に合わせて、最大限、聞こえを改善するようにしているんですね。
ただ音を周波数別に合わせている訳ではなく、音の大きさ別に適した音量をプラスする。という高度な事をしていますので、補聴器は、ちょっと高額になっています。この点は、負担がかかっている方もいると思うので、申し訳ないです。
こんな感じに合わせています
補聴器は、上記の通り、聞こえている音の範囲。それに合わせて聞こえを改善しています。
上記に紹介したのは、主に感音性難聴の方の特徴ですね。正常の人の聞こえの範囲と感音性難聴の方の聞こえの範囲を比べてみると、小さい音は、聞こえないのに関わらず、大きい音の許容範囲は、あまり変わっていないことに気づくと思います。
ですので、この狭くなった範囲の中で音を大きくして、聞こえを改善するようにしています。
もちろん、補聴器を装用して、聴力低下や耳への負担が大きくなっては困りますので、聞こえは改善するけれども、出力には、制限をかけて、ここまでしか音は、出さない。という風にしている訳ですね。
聞こえの改善は、するけれども、それと同時に必要以上に音は、出さないようにする。
そうして、なるべく聞きにくい人の聞こえを改善しようとしているのが、補聴器になります。