高い音が聞こえづらい方を補聴器で改善する【後編】〜聞こえの改善〜
前回では、高い音が聞こえづらい方を補聴器で改善する。という事で、合う補聴器の選び方について、記載していきました。
今回は、補聴器で聞こえを改善するための、聞こえの改善編となります。
この聞こえの改善部分は、表からは見えない部分で、カタログや補聴器を見ても分からない裏側の部分となります。
補聴器の場合、良い補聴器を購入する。というより、この聞こえを改善するための方法を理解しておくことの方が、聞こえの改善につながりやすくなります。
今回は、高い音が聞こえづらい方の聞こえを補聴器で改善していくための方法をまとめていきます。
前回:高い音が聞こえづらい方を補聴器で改善する【前編】〜合う補聴器の選び方〜
高い音が聞こえづらい方の聞こえにくさ
まずは、高い音が聞こえづらい方の聞こえにくさ、耳の状況に関して、把握していきましょう。
厳密には、低い音は聞こえており、高い音になると聞きづらくなる聞こえの状況となります。
大体の聞こえにくさにはなりますが、上記のような感覚になることが多いです。
具体的には、
- 対面だとちょっと声が小さい方は、聞きにくさを感じやすい
- 周囲が騒がしくなると聞きにくさが強くなる
- 距離が離れると呼ばれても分からない事がある
- 高い音に関する全般がわかりづらい
こういった事が起こりやすくなります。
高い音が聞こえづらい方の特徴は、声が小さい場合、聞きにくさを感じやすく、かつ、距離が離れたりすると、呼ばれていたとしても、気がつかない事が増える事です。
お話に関しては、わりかししっかり話してくれる方は、わかるのですが、少し声が小さかったりすると、音は聞こえているけれども、何をいっているのか、はっきりとはわからない。ということが増えがちです。
また、距離が離れた場合、結構、気がつかないことが多く、離れたところからの呼びかけ、音については、わからない事も増えてきます。
そして、周囲が騒がしくなると聞きにくさが強くなってしまい、複数の人とお話しする場合は、その中で声が小さい方がいたり、会議などで距離が離れている人がいたりすると、聞きにくさを感じやすくなります。
家の中で過ごす分には、意外にも平気だったりする方もいるのですが、仕事の場や人とやりとりする場だと、場合によっては、聞きにくさが出てしまい、困る事が増えてきます。
聴力的には、聞こえているところと聞こえていないところが極端に分かれていることが多い事から、困る場所、困らない場所が分かれる傾向があるのも、こういった聞こえの方の傾向です。
これが、高い音が聞こえにくい方の特徴です。
聞こえを改善していくために
さて、聞こえにくい状況を補聴器で改善していきましょう。
補聴器で聞こえを改善していくためには、
- 補聴器を使う耳
- 補聴器の調整
この2つを押さえる事が大事です。
補聴器は、この2つによって、聞こえの改善の8割が決まります。
補聴器を使う耳
補聴器を使う耳というとわかりづらいかもしれませんが、こちらは、単純にどちらの耳に補聴器を使うのか。という点です。
両耳に使うのか。そして、片方の耳に使うのか。片方の耳に使うのであれば、左側、右側、どちらに使うのか。こちらになります。
なかなか表現が難しいのですが、仮に両耳とも補聴器を装用して、聞こえの改善効果が見込める耳でしたら、両方の耳に補聴器を装用し、聞こえを改善していく事が大事になります。
両方の耳に装用するのと片方の耳に装用するのとでは
- 騒がしいところでの改善効果が変化する
- 片耳のみの場合、つけていない側からの音、お話が分かりづらい
この2つがあります。
騒がしいところでの改善効果が変化する
まず、大きな変化は、騒がしいところでの改善効果が変化する事です。
片方の耳に装用した場合は、静かなところでの聞こえの改善はしやすいのですが、騒がしい環境下になると、改善効果が大きく下がりやすくなります。
両方の耳の場合も、静かなところでの改善効果よりは下がるのですが、まだ下がりにくくする事ができます。
特に高い音が聞こえづらい方の場合は、騒がしい環境下になると急に聞きにくさが強くなってしまいますので、なるべくこの部分は、改善できるに越したことはありません。
さらに今現在、騒がしい環境下の改善効果を最も上げる方法は、両方の耳に装用することになります。
仮に両方の耳が補聴器に適合するのであれば、両方の耳に装用し、なるべく騒がしい環境下での聞き取りを下げないようにする事が大事です。
片耳のみの場合、つけていない側からの音、お話が分かりづらい
それ以外には、つけていない側からの音声や音、それは、今まで通りになる事です。
高い音が聞こえづらい方の場合、離れたところから呼ばれたり、離れたところで鳴っている音には、気づいていない事が多いです。
さらにアラーム系やお知らせ系の音に関しては、ほぼ感じることが難しい状態になりますので、なおさらです。
この場合の問題点は、聞こえていない事に気がつかず、呼ばれているのに関わらず、反応できなかったり、その事で、対人関係が悪化しやすくなってしまう事です。
耳の事を予め、周囲の方に伝えているのでしたら大丈夫なケースもあるかもしれませんが、それをしていないと周囲の方は、なぜ反応しないのか分からないこともありますので、最悪の場合、どんどん仲が悪くなってしまいます。
ですので、できれば周囲の人とコミュニケーションしやすくするために、どの方向からも聞こえるようになるのが理想です。
改善できるところは、改善し、周囲の方とやりとりしやすくなるように聞こえの改善を考えられると、お困りの状況は改善しやすくなります。
補足・両耳の場合のデメリット
両方の耳に補聴器を装用する場合、デメリットとしては、補聴器の金額が高くなりやすい事が上げられます。
補聴器は、片耳分だけでも少々高く、両耳に装用するとなると、料金は、単純に2倍になります。
その場合ですが、良い性能の補聴器を片方の耳に使うということではなく、価格を抑えたものでも良いので、そういった補聴器を両方の耳に装用する方が聞こえの改善効果は、高くなります。
仮に両方の耳に補聴器が適合するのでしたら、両耳ベースで考え、厳しい場合は、下の方から選択していきましょう。
補聴器の調整
次は、補聴器の調整になります。
補聴器の調整とは、低下した聴力の部分に音を入れて、聞こえを改善していく部分となります。
ここは、非常に難しい部分ではあるのですが、なるべく簡単にお伝えしていきます。
改善前の下準備
まずはじめに記載していくのは、改善前の下準備として、聞こえの改善状況については、できれば、把握できるようにしていきましょう。
補聴器は、耳に装用するだけでは、どんな風に音を感じるのか。はわかっても、どのぐらい聞こえが改善されているのか。自分の聴力から補えると良いところまで改善できているのかは、わかりません。
今現在、改善状況を把握しやすいものとしては、
- 補聴器の調整画面
- 補聴器の効果測定
の2つがあります。
補聴器の調整画面
一つ目は、補聴器の調整画面です。
今現在、補聴器は、パソコンとつないで補聴器を調整していくのですが、その画面には、現状の改善値と改善目標値を出してくれます。
そのおかげで今現在、どのような改善状況なのか。を把握しやすくしてくれています。
補聴器の効果測定(音場閾値測定)
もう一つは、補聴器の効果測定になります。
音場閾値測定(おんじょういきち測定)といい、ちょっと難しそうな名前ですが、これは、補聴器を装用した状態で調べる聴力検査のようなものです。
これで今現在の聞こえの状況を調べ、さらに改善目標の値をセルフで出し(お店側で出しています)、現状を把握しやすくできると、現状を把握しやすくなります。
2つに共通するポイント
どちらもポイントは、今現在、どこまで改善できているのか。そして、どこまで改善できると良いかを把握しやすくなる事です。
補聴器は、残念ながら耳を治すことはできないため、ちゃんと把握できる状態にしておかないと、どこまで補聴器で改善できると良いのか。がわかりません。
できる範囲で可能な限り改善していくためには、下準備として、現状を把握できる環境を整える事が何よりも大事なこととなります。
音場閾値測定での改善目標値
ここからは、改善のヒントとして、音場閾値測定での改善目標値について、記載していきます。
高い音が聞こえづらい方の場合、聞こえているところと聞こえにくくなっているところの差が大きいため、
- 聞こえやすくするポイント
- 聞きにくくならないようにするポイント
の2つが出てきます。
まずは、聞きにくくならないポイント。という事で、低い音の部分です。
高い音のみ下がっているケースでは、低い音の部分は、聞こえていることが多いです。
この部分は、できればですが、補聴器を装用することで下がらないようにしておきましょう。
だいたい補聴器がない状態とある状態の違いがない状態にできればベストです。
ここからは、聞こえやすくするポイントですね。
音声に関してですが、だいたい500〜2000Hzあたりが大きく関係しますので、できればですが、このあたりは、35dBぐらいまでは、改善できると良いです。
この35dBという数値は、重要な数値で、だいたいちょっと声の小さい方の声の大きさ、あるいは、3〜4mぐらい離れたところからの音声や呼びかけ、これが改善しやすくなる数値になります。
そして、もう少し改善しても良い方、音を入れられる方は、音声に影響する部分(500〜2000Hz)だけでも、30dBぐらいまで改善できると、より改善度は、上がりやすくなります。
ただ、一つだけ注意点があり、500〜2000Hzは、紙の音の基本周波数になりますので、あまりにも上げすぎると新聞紙の音や紙をめくる時の音が大きくなります。
あくまでも補聴器が使える範囲内で音を調整する事が大事になります。
次は、高い音の部分です。
2000〜4000Hzに関しては、これもまた35dBぐらいまで改善できると、聞きにくさを改善しやすくなります。
この辺りは、アラーム系の音や離れたところからの音などが大きく影響します。
高い音が聞こえづらい方の場合、特にこの部分が非常に弱いため、できれば改善目標のところまで補えると良いです。
今まで聞こえなくて反応できていなかったところも反応しやすくなり、周囲の方とのコミュニケーションの改善に繋がったり、周囲の状況がよりわかりやすくなります。
ただ、このあたりは大きくしすぎると、音が響きすぎてしまったり、音がキンキンして使いづらくなる事があります。
こちらもあくまでも、ご自身が使える範囲内で調整し、聞こえの改善をしていけると良いですね。
補聴器の難しいところは、音を入れすぎれば聞こえてくる音が大きすぎて、使いづらくなり、入れる量が足りなければ、聞きにくさが強くなってしまうことです。
あくまでもバランスが大事になりますので、聞こえの改善状況を補聴器の効果測定や補聴器の調整画面で確認しつつ、バランスを取りながら、改善していくことが大事です。
高い音が聞こえづらい方の改善のまとめ
こちらでは、高い音が聞こえづらい方の聞こえの改善について、まとめてみました。
基本的には、両耳に補聴器が適合するのでしたら、両耳に補聴器を装用し、なるべく騒がしいところでの環境下でも聞こえが下がらないようにし、かつ、どの方向からもわかるようにできると良いです。
そして、改善目標となる部分まで聞こえの改善ができると、聞きにくさの改善はしやすくなります。
ただし、改善目標となる部分まで聞こえを改善する。という部分に関しては、無理をする必要はありません。
音を入れてキツく感じるのでしたら、まずは、その手前までで全然大丈夫ですので、一つ一つ、改善していく事が大切です。
上記には、高い音が聞こえにくい方の聞こえの改善について記載していきました。実際には、補聴器を選ぶ。という所も含めて、一つの内容となります。
こちらの内容で少しでも改善するイメージを掴めたのであれば幸いです。
前回:高い音が聞こえづらい方を補聴器で改善する【前編】〜合う補聴器の選び方〜