片耳のみ難聴を補聴器で改善する【後編】〜補聴器ver〜
前回は、片耳のみ難聴の方を補聴器で改善する。という事で、その改善案について、記載させていただきました。
今回は、補聴器で聞こえを改善していく場合において、どのように改善していくと良いのか。その点を中心に記載していきます。
今回、対象にしていくのは、主にこのような聞こえの方となります。片方は、正常に聞こえており、もう片方は、主に中等度の難聴の方となります。
片耳のみ難聴の方の場合、低下した聴力は、70dBの範囲内であることが条件ですので、主に中等度難聴までの耳を想定して、補聴器による改善案を記載していきます。
補聴器で聞こえを改善していく場合、大事になってくるのは、
- 補聴器の形状
- 補聴器の音の調整
の2つとなります。
ご自身にとって使いやすい補聴器の形を選び、なるべく改善できるところは、改善していくようにしましょう。
前回:片耳のみ難聴を補聴器で改善する【前編】〜聞こえの改善案〜
補聴器の形状
補聴器の形は、耳につけた際の扱いやすさ、そして、全体的な使いやすさが影響します。
形状の全体像とオススメの形状
まずは、形の全体像から記載していきます。
今現在、補聴器の全体像を見てみると、このような種類、形状があります。
主には、耳にかけて使用する耳かけ形補聴器。
そして、耳の穴の中に入れて使用する耳あな形補聴器。
これらのものがあります。
補聴器の形状というのは、補える聴力が異なるのですが、今回対象となる方の場合、ほぼ全ての種類を使うことができます。
この中で、あえて選択を絞る。としたら、オススメの形状は、
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器(リック補聴器)
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器(シーアイシー補聴器)
になります。
こちらが、RIC(リック)補聴器になり
こちらが、CIC(シーアイシー)補聴器になります。
どちらも小さいタイプの補聴器で、補聴器で補える聴力の方が補聴器を使う際に欠点となりやすい部分を軽減しやすい補聴器の形です。
補聴器で補える聴力で気をつけたい事
まず、今回対象となる方の場合、注意しなければならないのは、補聴器を使用すると、自分の声が大きく響いたり、自分の声が低く唸るような感覚で聞こえやすくなる事です。
この感覚は、補聴器を使用する際の不快感に繋がりやすく、125〜500Hzの間が60dBの範囲内で、かつ、この部分の聞こえが良いと、良いほど、この不快感を感じやすくなります。
その事から、この不快感を感じにくい補聴器の方が使いやすくなるのですが、それが、先ほどの耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器、耳あな形補聴器なら、CIC補聴器になります。
これらの補聴器は、耳を塞ぐ量を減らしたり、なるべく塞がないようにして、補聴器を使用した時に感じる不快感、それを軽減しやすくしてくれます。
補聴器を使用する際に不快感を感じやすい聴力の方の場合、その部分に関しては、なるべく軽減できるものを使った方が良いです。
そうした方が結果的に使いやすく、聞こえも改善しやすくなります。
耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器の違い
さて、先ほど耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器、耳あな形補聴器なら、CIC補聴器と記載しました。
では、この2つは、どのような違いがあるのでしょうか。それに関して、簡単にまとめますと、上記の通りとなります。
耳かけ形補聴器のRIC補聴器の特徴
この形状の良いところは、耳に装用した時の不快感。先ほどの自分の声の不快感が少ない事です。
この不快感の軽減は、今のところ、全補聴器の形状の中で、このRIC補聴器が一番軽減しやすく、この部分を軽減しやすくなると、補聴器の使いやすさを上げやすくなります。
これが利点です。
逆に欠点は、耳にかけて使うため、マスクやメガネを使っている方は、人によっては、邪魔に感じてしまう事です。
この点は、使い方さえ理解すれば問題なく使える方もいるのですが、中には、気になる方もいます。
そのような方は、耳あな形補聴器の方が使いやすいです。
また、電話をする際は、音を拾うマイクが上にありますので、上に受話器をずらして行う必要があります。
この点は、問題なくできる方もいるのですが、電話を取る数が頻繁にある。という場合や受話器を上にずらして行うこと自体が面倒に感じたり、煩わしい場合は、耳あな形補聴器の方が使いやすくなります。
これらの事から、RIC補聴器は、補聴器を使う感覚が楽なものが良かったり、初めて補聴器を使う方にオススメの形状になります。
耳あな形補聴器のCIC補聴器の特徴
この形状の利点は、邪魔にならない事です。
耳の穴の中に入っているため、メガネだとか、マスク。こういったものの邪魔になりません。
さらに耳の中に直接入っているため、今まで通り、電話ができる。という利点もあります。
これが、主な利点になります。
逆に欠点は、耳を割と強く塞ぐため、自分の声が大きく聞こえたり、低く唸るように聞こえやすい事です。
自分の声が不快に聞こえる感覚は、強いと違和感が強くなり、補聴器の使いづらさが強くなってしまいますので、なければないに越したことはありません。
その事から、
- 邪魔にならない補聴器が良い
- 電話がしやすい補聴器が良い
というケースは、このCIC補聴器の方が使いやすくなります。
補足・スマホ対応と充電形補聴器
補聴器について詳しい方だと、今現在、スマホと連動する補聴器と充電形の補聴器の事もご存知かと思います。
今回のケースの場合、どちらのケースも対応することができます。
あくまでも耳かけ形の補聴器ですが、RICタイプの補聴器でスマホと連動したり、充電形の補聴器が出ていますので、こういったタイプでも、改善する事ができます。
このお店でも、スマートフォンと連動する補聴器や充電形の補聴器は扱っていますので、こういったものでの改善も行なっています。
補聴器の調整
次は、補聴器の調整になります。
補聴器の調整とは、低下した聴力の部分に音を入れて、聞こえを改善していく部分となります。
ここは、非常に難しい部分ではあるのですが、なるべく簡単にお伝えしていきます。
改善前の下準備
まずはじめに記載していくのは、改善前の下準備です。聞こえの改善状況については、できれば、把握できるようにしていくと良いです。
補聴器は、耳に装用するだけでは、どんな風に音を感じるのか。はわかっても、どのぐらい聞こえが改善されているのか。自分の聴力から補えると良いところまで改善できているのかは、わかりません。
そして、片耳のみ難聴の方の場合、補聴器をつけている側の聞こえの改善状況がどのような状況になっているのか。少し自覚しづらい傾向があります。
今現在、改善状況を把握しやすいものとしては、
- 補聴器の調整画面
- 補聴器の効果測定
の2つがあります。
補聴器の調整画面
一つ目は、補聴器の調整画面です。
今現在、補聴器は、パソコンとつないで補聴器を調整していくのですが、その画面には、現状の改善値と改善目標値を出してくれます。
そのおかげで今現在、どのような改善状況なのか。を把握しやすくしてくれています。
補聴器の効果測定(音場閾値測定)
もう一つは、補聴器の効果測定になります。
音場閾値測定(おんじょういきち測定)といい、ちょっと難しそうな名前ですが、これは、補聴器を装用した状態で調べる聴力検査のようなものです。
これで今現在の聞こえの状況を調べ、さらに改善目標の値をセルフで出し(お店側で出しています)、現状を把握しやすくできると、状況を把握しやすくなります。
2つに共通するポイント
どちらもポイントは、今現在、どこまで改善できているのか。そして、どこまで改善できると良いかを把握しやすくなる事です。
補聴器は、残念ながら耳を治すことはできないため、ちゃんと把握できる状態にしておかないと、どこまで補聴器で改善できると良いのか。がわかりません。
できる範囲で可能な限り改善していくためには、下準備として、現状を把握できる環境を整える事が何よりも大事なこととなります。
音場閾値測定での改善目標値
ここからは、改善のヒントとして、音場閾値測定での改善目標値について、記載していきます。
まず、音声に関してですが、だいたい500〜2000Hzあたりが大きく関係しますので、できればですが、このあたりは、35dBぐらいまでは、改善できると良いです。
ちょっと声の小さい方の声の大きさ、あるいは、3〜4mぐらい離れたところからの音声や呼びかけ、これが改善しやすくなる数値が、35dBになります。
ですので、できればではありますが、この辺りまで改善できるようになると補聴器の効果としては、上げやすくなります。
ただ、一つだけ注意点があり、500〜2000Hzは、紙の音の基本周波数になりますので、あまりにも上げすぎると新聞紙の音や紙をめくる時の音が大きくなります。
あくまでも補聴器が使える範囲内で音を調整する事が大事になります。
次は、高い音の部分です。
2000〜4000Hzに関しては、これもまた35dBぐらいまで改善できると、聞きにくさを改善しやすくなります。
この辺りは、アラーム系の音や離れたところからの音などが大きく影響します。
今回対象となる方の場合、離れているところからの音は、気がつかない事も多いため、ここもできるのであれば、ここまで改善できると良いです。
改善できると聞こえなくて反応できていなかったところも反応しやすくなり、周囲の方とのコミュニケーションの改善に繋がったり、周囲の状況がよりわかりやすくなります。
ただ、このあたりは大きくしすぎると、音が響きすぎてしまったり、音がキンキンして使いづらくなる事があります。
こちらもあくまでも、ご自身が使える範囲内で調整し、聞こえの改善をしていけると良いですね。
補聴器の難しいところは、音を入れすぎれば聞こえてくる音が大きすぎて、使いづらくなり、入れる量が足りなければ、聞きにくさが強くなってしまうことです。
あくまでもバランスが大事になりますので、聞こえの改善状況を補聴器の効果測定や補聴器の調整画面で確認しつつ、バランスを取りながら、改善していく事が重要です。
まとめ
こちらでは、主に片耳のみ難聴で、補聴器で聞こえを改善していく方法について、記載してみました。
補聴器で改善していく場合は、補聴器の形状について、ご自身が使いやすいタイプを選び、そして、補聴器の音の調整の部分で、なるべく改善できると良いところまで、改善していくことが大事になります。
無理に改善する必要はありませんので、あくまでもできる範囲にはなるのですが、その範囲内で改善していくようにしましょう。
以上、片耳難聴を補聴器で改善する方法について、まとめてみました。