補聴器のFAQ

難聴者の私が自分の聞こえを改善するのに役立った事

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

このお店では、よく補聴器や耳の事で、一度、うまくいかなかった方が来られます。

私自身、生まれつきの難聴者で、小学校2年生の頃から、補聴器に関して使っています。しかし、自分の聞こえの状況に関しては、特に10代は、あまりうまく行きませんでした。

その事から、補聴器専門店に就職し、自分自身で、自分の聞こえを改善するに至りました。

では、その際、どのようにして改善していったのか。

聞こえの改善。というと非常に範囲が広くなってしまうのですが、私があまりうまくいかなかったのは、補聴器の形とか、性能とか、そういったものではなく、「この聞こえで良いのだろうか?」という最終的な聞こえの改善状況になります。

これを解決するのに役立ったのは、聞こえの改善状況の可視化でした。

補聴器は、耳につけただけだと、聞こえる音の感覚は、わかっても、どのぐらい聞こえが改善されていて、この状態で良いのか。というのが非常にわかりづらくなります。

その事から、補聴器による聞こえの改善状況を可視化し、改善できるところは改善する。それを繰り返した結果、私は、今現在、自分の聞こえに関して、納得して生活をしています。

もちろん耳が治った訳ではありませんので、それでも聞きにくい部分はあります。

しかし、補聴器を使って、聞こえが改善できているところもあり、後は、人とのコミュニケーション方法を考えたり、どうやって自分の能力を活かしていこうか。という部分を考えることに時間を使えるようになりました。

このお店には、一度、うまくいかなかった方がよく来られ、さらに私自身も補聴器については、何度か失敗している人間ですので、どのようにして、自分の状況を改善したのか。こちらについて、記載していきます。

少しでも、ご自身の状況を改善するヒントになれば幸いです。

当時の状況と問題点

いきなり改善について書きたいところですが、まずは、私の耳の状態です。こちらに関しては、

  • 症状:生まれつきの感音性難聴
  • 聴力:両耳とも中等度難聴
  • 補聴器:両耳に装用
  • 種類:耳かけ形補聴器(標準BTE補聴器)
  • 備考:約2007年頃(15年前)

かなり大雑把にはなりますが、このような状態になります。

聴力は、このような状態で、左右、両方ともそこまで差はありません。その事から、両方の耳に補聴器を装用し、なるべく聞こえを改善できるようにしていました。

その際、私がわからなかったのは、「この聞こえで良いのだろうか」という事でした。

補聴器を装用する事によって、聞こえる感覚は、確かにわかり、それによって、聞きやすくなっている感覚はあります。

しかし、その場合でも、聞きにくいところもあり、その聞きにくいところは、改善できる聞きにくさなのか。それとも改善できない聞きにくさなのか、それがわかりませんでした。

言い方を変えると補聴器による問題の聞きにくさなので、それは改善できる。なのか。それとも、耳の問題の聞きにくさなので、それは改善できない。なのか。当時の私は、全くわかりませんでした。

ですので、それなりに補聴器は使ってはいたものの、それが果たして良いのか。それはさっぱりわからない状況でした。

私の場合、生まれつきの感音性難聴と聞いており、感音性難聴は、補聴器で治す事はできない。とも聞いていました。この感音性難聴は、補聴器どころか、今現在、この地球上に治療するすべがありません。

この点は、感音性難聴だけではなく、感音系の難聴と言われる突発性難聴、老人性難聴(遺伝、年齢による聴力低下)、メニエール病も同様です。

補聴器をつけて、聞こえる感覚はあるけれども、聞きにくい事もある。それは果たして良い状態なのかどうか。私はさっぱりわからず、この状況が長く続きました。

感音性難聴という病

私自身、この事に関して、うまく相談できなかったり、相談してもうまく改善に結びつかなかった事から、補聴器専門店に就職し、自ら補聴器のことを学ぶ事になるのですが、ここで、ようやく補聴器の難しさに気づきます。

それは、「どこまで改善すれば正解なのかは、厳密には、答えはない」という事です。

※一応、ここまで改善できると改善効果が高くなるという一定のラインはあり、医療側の規定のラインもあります。

「感音性難聴は、どこまで改善できるかを明確化する事ができないし、その事から今、困っている事が改善できる保証もない」これが補聴器が難しいと言われる所以である事に気付きました。

私の耳は、生まれつきの感音性難聴になりますので、そもそも補聴器を装用しても、耳は、治りません。

耳が治らないとなると、補聴器を装用しても、どこかしらに聞こえにくさが出てくる事になります。

では、その聞きにくさが出てきた時に、それは補聴器の限界だから改善する事ができないのか。あるいは、実は、まだ改善できる部分なのか。これを見分ける事がかなり難しいのです。

それは、感音性難聴という耳が治らないものに対して、言い方を変えれば、不完全なものに対するアプローチの方法が非常に難しい。という事になります。

どう解決したのか

では、どう解決したのか。結論から記載しますと

  • 改善できる問題と改善できない問題を分ける
  • 補聴器の改善状況を分析し、改善しやすい環境を作る

の2つになります。

私自身が初めに陥ったのは、「感音性難聴だから、耳は治らない。なので、補聴器を使っても、聞こえにくい部分がある。聞きにくい部分は、これ以上は無理か……」という事でした。

しかし、一方、疑問に感じる部分もありました。

「補聴器では確かに耳は治せない。でも改善できている部分もある。この違いは何だろうか?」「耳は治せないのは、確かに事実だが、だからと言って、聞こえにくい=改善できない。とすべてのものがなるのだろうか?」そして何より「仮に耳が治らないとした場合、補聴器の善し悪しは一体どこで判断するんだ?」という事です。

ここまで記載すると、勘の良い方は、気づくかもしれません。

実は、この問題は「改善できる問題と改善できない問題」この2つを一緒にしてしまっているからこそ、わかりづらくなってしまいます。

「感音性難聴は補聴器では治せない」は、事実ですが、その中でも改善できる部分があるのも、また事実なのです。

ですので、補聴器で聞こえを改善する際に大事になるのは、まず改善できる問題と改善できない問題を分ける事。そして、補聴器による聞こえの改善を改善しやすい形(形式)に変えていく事になります。

具体的には、補聴器の改善状況を分析できる環境を作り、改善できる問題に集中しやすくする環境を作る事。これが補聴器の場合、何よりも大事になります。

今現在、補聴器は、耳に合わせるために音の調整をするのですが、その際、パソコンを使って、調整をします。

そして、その画面には、おおよそですが、その聴力からどのぐらい改善できると良いのか。その目安が出てきます。

このように今現在、どこまで改善できているのか。そして、自分の聞こえの改善の目安は、どこなのか。それを把握できるようになると、自分の体感と目安。そして、今現在、聞こえている感覚を比較する事で、今現在、どのような状況なのかがわかりやすくなります。

補聴器による聞こえの改善効果を可視化する方法は、これだけではありません。

補聴器を装用した状態で調べる音場閾値測定というものもあり、こちらで測定すると、各周波数でどのぐらい聞こえが改善されているのか。を可視化する事ができます。

こちらを使って、聴力からの改善目標値とさらに今現在の改善状況。これを比較する事で、どの部分は、改善は足りていて、どの部分は、改善が足りていないのか。というのもわかります。

例えば、このような状態だったとしますと、目標と比較すると、高い音の部分が少し足りない事がわかります。

さらにより改善したい。となった場合、この足りない部分をより上げていければ良い。という事がわかりますので、改善に繋がりやすくなります。

このように改善状況を分析したり、自分が補聴器を使っている状態を確認できると、改善できる部分を煮詰めやすくなります。

これが、「補聴器による聞こえの改善を改善しやすい形(形式)に変えていく事」の意味です。

私が陥っていたのは「今現在の自分の状況がわからない」でした。補聴器を使った感覚は、わかるけれども、聞こえる感覚もあり、聞こえにくい感覚もある。さらに、これが限界なのか、まだ改善できるのか。それもわかりませんでした。

その事から、感覚ではなく、数値(眼に見える形)で、どこまで改善できると良いかを把握できるようにした際に一気に自分の状況がわかり、改善に向かいました。

まさに「補聴器による聞こえの改善を改善しやすい形(形式)に変えていく事」で私は変わりました。

聞こえの改善状況を可視化し、改善できる行動に集中する

私自身が自分の聞こえを改善するのに一番役に立ったのは、この部分でした。

すなわち、自分自身の聞こえの改善状況を可視化する事です。可視化すると、どの部分の周波数は、聞こえていて、どの部分の周波数は、聞こえていないのか。がわかりやすくなります。

補聴器をつけている時は、感覚しかわかりませんでした。「こんな風に音が聞こえる」「この人の声が聞きにくい」という感覚のみです。しかし、このような状態だと、それは改善できるのか、改善できないのかがよくわかりません。

感覚だと「1000Hzの音が足りていなくて、聞こえづらいんだな」という事はわからないですし「この聞こえ方は、2000Hzの音が足りていない」という事は、わかりません。

感覚は、「聞こえにくい」という事や「こんな風に音を感じる」ぐらいしかわからない。

ですので、それを”改善できる問題にする”ために「自分自身の聴力から、改善できると良い目標値を定めて、そこまで改善していく」という事をしました。

これであれば、測定しながら、目標値に近づけたか、そうでないのかを判断する事ができ、さらにどの部分が足りていて、どの部分が足りていないのかがわかります。

そして、足りない部分をより改善していく。というように可視化する事で、改善できる行動に集中しやすくなります。

自分自身としては、なるべく補聴器で改善できる部分は、改善したい。という気持ちがありました。改善できれば改善できるだけ、聞こえにくい事で困る部分が減るからです。

その事から、改善できない問題と改善できる問題にわけ、改善できる問題に集中する事。こちらをしました。

そうする事で、今現在、私は聞こえを改善し、補聴器に関しては、それなりに満足しています。

確かに聞きにくい部分はありますし、耳が治ったわけではありません。

しかし、改善できる部分は、しっかりと改善をする事で「補聴器に関して、最善を尽くせた」という感覚がありますので納得しています。

私の場合、自分自身の状況を可視化した事。そして、可視化する事によって、補聴器による聞こえの改善を改善しやすい形(形式)に変えていく事で、改善に関して、最善を尽くす事ができました。

まとめ

こちらでは、自分自身の聞こえの改善に関して、役立った事を記載してみました。

私の場合は、補聴器を使った状態の聞こえの改善状況を可視化した事。これが一番大きかったです。

一つのものだけではなく、複数のものを使い、自分の聞こえの改善状況を可視化し、そして、改善できる問題に集中して、改善できるところを一つ、一つ改善していきました。

補聴器をつけた感覚だけですと、どのぐらい聞こえが改善されていて、それは良い状態なのか、あまり良くないのかは、正直、よくわかりません。

その事から、私の場合は、特にデータでちゃんと自分自身の状態を把握できるようにして聞こえを改善していきました。

このお店では、補聴器による聞こえの改善状況の可視化に力を入れたご対応をしているのですが、それは、私自身が実際に補聴器を使っていて、感覚ではうまく聞こえを改善できなかった経験から、このようにしています。

そして、聞こえの改善状況を可視化する事によって、どの部分を改善できると良いかがわかると、より改善しやすくなったり、聞こえの改善相談がしやすくなる事に繋がります。

私自身としても、なるべくわかりづらい補聴器の事を相談しやすくしたり、補聴器による聞こえの改善に最善を尽くせるようにしたいと考えています。

その経験から、このお店では、補聴器による聞こえの改善の可視化に力を入れて、ご対応しています。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で7歳の頃に補聴器を使用、補聴器の販売会社へは2006年に就職し、7年間勤め、2年間の空白と準備期間を経て、2016年に独立。2024年現在、補聴器使用歴は31年、補聴器販売業の従事歴は16年、お店の継続歴は8年に。現在は120名以上の既存のお客様のサポートと、どのようにしたらより聞こえを改善できるのかの勉強、試行錯誤をよくしています。
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