中等度難聴までの聞こえの改善の要点
前回は、両耳とも中等度難聴の方の聞こえの改善事例に関して、記載させていただきました。
中等度の難聴と言っても、聞きにくさは強く出てきますので、困る要素が結構出てきます。
ですので、しっかりと改善できるところは改善できるようになると、それだけ、聞こえの改善に貢献しやすくなります。
今回は、前回記載したものに関して、よりまとめの部分を書いていきたいと思いまして、タイトルの通り、中等度難聴までの聞こえの改善の要点をまとめていこうと思います。
感音性難聴と補聴器
補聴器で聞こえを改善する要素には、いくつかありますが、中等度の難聴までの方の場合、聞こえの改善に大きく関与するのは、どこまで聞こえを改善できたか。というシンプルな部分になります。
聴力が低下することにより、聞こえにくさというのが出てるのですが、この聞こえの部分に関して、どれだけ補聴器で補えるようになったか。という部分ですね。
聞いたことがある方もいらっしゃるかと思うのですが、今現在、難聴は、治療する方法がありません。
主に感音性難聴と呼ばれるもの、老人性難聴も突発性難聴もメニエール病の方も、耳の中にある内耳と呼ばれる器官が何らか損傷してしまい、音をうまく取れなくなって、聞き取りが低下します。
問題はここからなのですが、あまりにも損傷度が大きい、言い方を変えれば聴力の低下が大きくなったりすると、音を補ったとしても、うまく聞き取れない事、言葉の聞き取りに寄与しないことも出てきます。
補聴器はどのような聞こえの方でも改善できるような都合の良い機械ではないということです。ただ、中等度難聴までの方であれば、特殊なケースを除く、大半の方が補聴器で聞こえを補うことで、聞こえの改善に貢献しやすくなります。
そして、その改善の要点は、どこまで聞こえを改善できたか。という部分によるものが大きくなります。
聴力と改善の数値
さて前置きはこのぐらいまでにして、早速、記載していきます。
今現在、中等度難聴ぐらいまでの聞こえの場合でしたら、同じグラフを使いますと、大体30〜35dBぐらいまでは改善できるようになってきています。
この数値は、一般の人が聞こえている範囲が0〜10dB、正常の範囲が0〜25dBになりますので、あと一歩届かない。というレベルですね。
逆に言えば、あと一歩のところまでは改善できるということになるのですが、あくまでも数値だけで見た場合は、このぐらいまで改善できるようになってきています。
ですので、仮に中等度の難聴の方の場合は、この辺りまで聞こえの改善ができるようになると、聞き取りの部分においても、日々の生活に関しても、改善しやすくなります。
各音の関係と改善したいポイント
もう少しこの数値に関して見ていくと、優先して改善したい数値は、500〜2000Hzの部分です。
この辺りは音声の改善に直結しやすい部分の周波数で、できれば目標の部分、35dBなり、30dBぐらいまで、改善できると、それだけ音声がしっかり入ってくる傾向があります。
500Hzよりは、男性の声、1000Hzは、男女入り、2000Hzよりは、女性の声といったところでしょうか。
実際には、男性でも2000Hzの声の部分はありますし、女性においても、500Hzの音の部分はありますので、一概には言いづらいのですが、影響度は、上記のような状態になります。
どちらにしても、音声に直結しやすい部分ですので、この辺りは改善したい部分になります。
次は、高い音ですね。2000〜4000Hzになります。
2000Hzが入ってしまっているのですが、この辺りから、アラーム系の音や言葉の子音と呼ばれる部分が影響しやすくなりますので、ここも規定の部分まで上げられるようになるとそれだけ改善効果を得やすくなります。
特にアラーム系の音や知らせる系の音は、意外と聞こえていないことが多いです。さらに音声の理解度にも影響する部分がありますので、上げても辛くならないのであれば、音を入れて、よりわかりやすくできると良い部分です。
最後は、低い音で250〜500Hzになります。
正直、ここは意見が分かれるところなのですが、250Hz、厳密には、もっと低い音からですが、この部分は、割と周囲の騒音の部分で影響することが多く、あまりここは大きくしすぎると、周囲の音に邪魔される機会が多くなる傾向があります。
感音性難聴を含む、内耳と呼ばれる器官が何らか損傷すると、音の細かな聞き分けが難しくなります。細かな周波数の聞き分けができなくなってしまうので(これを周波数分解能と言います)、周りが騒がしいと、音声と周囲の音が混ざり合ってしまい、まるで音声に周囲の音が覆いかぶさるように聞こえてしまいます。(音声と周囲の音を脳が分けることができない)
ですので、程々の改善を行い、500Hzあたりは男性の声が割と強く影響されますので、ここはしっかりと改善したい部分ですね。
音声だけで言えば、正直、250Hzも入ります。本当に低い声(低音の声)の男性の場合は、200Hzぐらいから出ている状態になりますので、そういった部分も含めると、上げた方が良いように思います。
ただ、低い音は、周囲の騒音やガヤガヤするような音の感覚も同時に大きくしてしまいがちなので、ここは人によって、評価が分かれる周波数です。
私自身は、どうしても感音性難聴の性質上、入れすぎると逆に音声が阻害される傾向が出てしまいますので、250Hzを入れるかどうかは、程々派(ほどほどに入れる)で考えています。
音声と改善の数値
上記に記載していったのは、あくまでも周波数別の改善値になります。
補聴器は耳に付けただけだと、どの周波数がどのぐらい改善できているのかを体感で理解することはほぼ不可能です。
きちんと改善すべきところが改善されているのか、あるいは、改善されていないのでより補った方が良いのか。といった判断のために改善状況を可視化するツールがあります。
上記のものは、そう言ったもので調べた周波数の数値になるのですが、これがじゃあどう音声に繋がるのか。というところも記載していくと、
グラフにすると、このようになります。
いくつか説明をしていきたいのですが、まず、縦軸が正解数、音声の理解度ですね。横軸が音の大きさになります。
初めに正常な方の聞こえについて記載すると、このラインの部分が正常の方の聞こえになります。正常語音明瞭度曲線と書かれている部分ですね。
正常の方は、40dBで音声の正解率がMAXになり、それ以降、50dB、60dB、と正解率がMAXな状態が続きます。
それぞれのdBでの音声の大きさは、グラフの通りです。(下にある40dB:小さい声の大きさ。など書かれているものです)
この40dBで音声の正解率がMAXになる数値が、聴力図で示すと25dBまでなので、0〜25dBの範囲内なら、特殊なケース(APDとか)を除けば音声の聞き取り、音が聞こえないなどで困ることはほとんどないだろう、ということで、ここが正常の範囲になります。
で、今現在、補聴器で改善できる数値は、大体30〜35dBになりますので、大体ですが、50dBからのもの、ちょっと声の小さい方、普通くらいの声の大きさ(60dB)ちょっと声の大きい方(70dB)、これらの部分で改善ができるようになってきています。
一つの周波数だけ改善すれば、それらの音声の音量帯で理解できる訳ではなく、全体的に改善しなければならないのですが(例えば、ちょっと小さい声(50dB)の場合は、全周波数が大体35dB前後必要)、中等度難聴の方の場合、音を入れることによる補聴器の改善の効果は、まだ感じやすい状態の方が多くありますので、ここはしっかりと改善したいところです。
こういったところがわかっておけると、より改善しやすくなるかと思います。
まとめ
ちょっと難しい内容が入ってきてしまって、申し訳ないのですが、今回は、中等度難聴の方の場合における改善の要点ということで、こちらに関して、記載してみました。
どうしても補聴器というと見える部分、どのような補聴器の形にしようか、とか、どのぐらいの性能のものにしようか(お金的に)という部分が多いと思うのですが、それ以上に、どのぐらい改善させるかにより、聞こえの改善度は、変化します。
特に今現在の補聴器は、低下した部分に音を入れるという機能は、一番下のランクのものでもかなり充実してきました。これは、どの補聴器でも基本的な聞こえの改善という部分に貢献しやすくなったということでもあります。
ですので、より聞こえの改善について知ることが大事になってくる訳ですね。
感音性難聴になりますので、しっかり改善することによって全ての部分が改善できる訳ではないのですが、少なくとも音を入れることによって改善できる部分は、しっかりと音を入れることができればできるほど生活の改善、聞こえの改善への貢献へ繋がりやすくなります。
ということで、今回は、こちらに関してまとめてみました。ちょっと難しかったですよね。その点は、申し訳ありません。m(_ _)m