左右差が少しある聴力を補聴器で改善する
こちらでは、左右の聴力が少し異なる方をどのように補聴器で聞こえを改善していけると良いのか。その点について、まとめていきます。
左右の聴力が異なる聞こえの場合、基本的には、聞こえにくい側からの声、音が聞こえづらくなりますので、いかに聞こえない耳側を改善していくか、そして、聞こえる耳側と聞こえにくい側の聞こえの改善のバランスをとっていくかが大事になります。
こちらでは、左右の聴力が少し異なる場合において、どのように補聴器で改善していけると良いのか、その点について、全体像、改善方法について記載していきます。
左右の聴力が少し異なる方の聞こえ
こちらで対象になる聴力の方は、このような聞こえになります。左右で聴力が異なるのですが、ものすごく聞こえに違いがある、というよりも聴力図的には、少し差がある、というレベルです。
このぐらいの違いでも明らかに聞こえやすい耳側と聞こえにくい耳側というのは、感覚的に感じるのですが、このように聴力図的にみた場合、少し変化がある状態、それも10〜15dBぐらいの方が対象になります。
左右の聴力が少し異なる方の場合、主に聞こえにくくなるのは、聞こえにくい側から来る音、あるいは、音声です。
聴力低下のレベルにより、全体的な聞こえにくさは変わるのですが、共通するのは、聞こえにくい側の方が聞こえにくい。聴力が低下しているので、当たり前といえば当たり前なのですが、そちら側からの音、音声により弱くなります。
私たちは頭があることにより、様々な恩恵を受けているのですが、注目すべきポイントは、右から左、あるいは、左から右に音が移行する時、大きく音が減衰することです。
片方だけ聞こえが良ければ、その耳で全てを聞けるのではないかと考える方もいるのですが、実際には、頭があることで、特に聞こえにくい耳側からの音、音声は、聞きづらくなります。
その方向からの声、音、騒がしい環境だったり、複数の人とのお話だったり、さらには、離れたところから呼ばれた際など、こういった様々なところで聞きにくさが出てきます。
これが、このような方の聞こえの状況になります。
左右差が少しある方の改善案
では、早速、改善していきましょう。
まず、左右の聴力が異なるケースにおける聞こえの改善の仕方は、
- 聞こえにくい耳側が補聴器で補えるのであれば、両耳装用で改善
- 聞こえにくい耳側が補聴器で補えないのであれば、バイクロス補聴器で改善
このように分かれてきます。
補聴器は、今現在、どのような聴力でも、どのような耳の状況でも一定の効果を出すことができる、というわけではありません。
聴力低下が大きくなれば大きくなるほど、聞こえの改善効果は低下してしまいますし、音を識別する能力が低下すると、音は聞こえるけれども言葉がよくわからない……となりがちです。
特に左右の聴力が異なる方は、もともと左右の聴力に差がある生まれつきの難聴の方から、左右、別々の症状(病気)により、聞きにくくなった方まで千差万別です。
そのことから、聴力的には、同じような聞こえでも、片方の耳が補聴器に合わないケース、つけると非常に音がキツく感じてしまうケースもあります。
結論から言うと、左右の聴力の差が少しであれば、聞こえにくい耳側が補聴器で補えるケースが多くあったりしますので、そのような場合は、両方の耳に補聴器を装用して、聞こえを改善できると良いです。
この場合は、特に聞こえにくい耳側からの聞こえが聞きにくさに強く影響していますので、そちら側を改善し、さらに聞こえている耳側も改善することで、より聞きにくさを減らしていけるようになります。
たまに聞こえにくい側だけで十分では?と言う方もいるのですが、片方のみだと、割と聞こえていない部分が多くあります。特に補聴器をつけていない側の聞こえは、聞こえる音の範囲が狭くなっており、音がしていても気が付かない、などのことが起こります。
音は匂いがするわけでも目に見えるわけでもないので、聞こえていないことに気が付かない。ということが起こります。ですので、そもそも自分が聞こえていないことに自覚しづらい傾向があります。
ですので、なるべく聞こえを改善していくのであれば、両方とも改善するようにしましょう。
左右差が少しある聴力を補聴器で改善する
こちらでは、仮に補聴器で改善していく場合において、どのように改善していけると良いのか。その点について、まとめていきます。
こちらで理解しておけると良いのは、
- 補聴器の形状
- 補聴器の調整(聞こえの改善)
の2つです。
補聴器の形状
補聴器の形状による全体像は、こちらの通りです。こちらは主に補聴器を選ぶ要素で、カタログなどに載っているものになります。目に見えやすい部分ですね。
今現在の補聴器は、耳かけ形補聴器の中に、いくつか耳かけ形補聴器があり、耳あな形補聴器の中に、いくつか耳あな形補聴器があります。
左右の聴力が異なる方の場合に大事になってくるのは、補聴器の形状欄には対象となる聴力があることです。
右側に軽、中、高、重、と書かれているのですが、これらは、それぞれ、聴力のレベル、軽度、中等度、高度、重度とどのぐらいの聴力まで補えるのか、が記載されています。
これは、補聴器の形により、どこまで補えるのか。音の出力、補聴器から出る音のパワーですね、それが形状ごとに異なります。
で、大事になってくるのは、両方とも同じ形状、補聴器を選ぶことです。
聴力の違いが出てくると、個々に合わせた方が良いように思えるのですが、ここは、個人的経験で誠に申し訳ないのですが、個別に違う補聴器をつけると左右で聞こえてくる音が違うことで、違和感を感じやすくなります。
特に違う補聴器、違う形状にすると、その違和感を解消するのは、かなりの困難が伴います。
ですので、左右とも同じ形状で同じ補聴器を使うこと。実際には、聴力低下が大きい方へ形状を合わせることになるのですが、きちんと補聴器を合わせることが大事になります。
ここの部分は、きちんとご相談する先で相談しながら、両方とも同じ補聴器、同じ形状のもので改善するようにしましょう。
なお、耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器の違いは、こちらの通りです。
聞こえの改善効果による違いは、ほとんどなく、聞こえ方は異なるものの、聞こえの改善効果については、同じくらいになることが多いです。
形状で大きく異なるのは、補聴器の扱いやすさ、どっちの方がご自身にとって扱いやすいかですね。
耳あな形補聴器は、耳の穴の中に入れて使うものになりますので、メガネやマスクの邪魔にならず、電話もそのままスムーズに行えます。ここが良いところです。
ただ、その代わり、耳を塞ぐことになりますので、聴力によっては、自分の声が低く唸るように聞こえたり、自分の声が大きく感じ、不快感を感じやすくなります。ここが欠点ですね。
耳かけ形補聴器は、耳の上にかけて使いますので、耳あな形補聴器の欠点だった自分の声の不快感、これを軽減しやすいです。
その代わり、耳の上に乗せて使いますので、人によって、メガネやマスクの邪魔になったり、電話の際は、少し上にずらして行う必要があったりします。
耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器は、どちらの方が使いやすいかの違いであり、どっちの方が優れているか、ではありません。
ここの部分は、文章だけではわかりづらいかと思いますので、実際に使ってみてどうか。そこから判断できると良いです。
耳かけ形補聴器を使ってみた際に、思いの外、メガネやマスクの邪魔にならないな。であれば、耳かけ形補聴器で良いですし、耳あな形補聴器が良さそうだと思って、使ってみたけど、思いの外、自分の声の不快感がきついな、であれば、耳かけ形の方が使いやすくなります。
これらの部分はあくまでも傾向であり、人により、どのように感じるかは異なります。ですので、使ってみて、そこから判断できると良いです。
補聴器の調整(聞こえの改善)
補聴器の調整は、今現在、聞こえの改善の大部分を占めるものになります。
聞こえの改善とは、言い方を変えると、どこまで聴力を改善するか、になります。その事から、ほぼここの改善度がそのまま聞こえの改善効果に直結します。
今現在、補聴器は聴力ごとにある程度、補えると良い数値の部分がわかってきています。どのように表現するとわかりやすいのか、表現に悩むところですが、補聴器版聴力検査のようなもので表現すると、このようになります。
左右の聴力が異なる方の場合、聴力により、左右の聴力別にどのぐらい改善できると良いのかが変化するのですが、仮定している聴力で改善できると良い数値を出してみると、このようになります。
これらの部分でいくつか記載していきますと、まず、音声に影響しやすい部分は、500〜2000Hzの部分です。ですので、この辺りは、きちんと両方とも改善できると、それだけ聞こえの改善度に影響しやすくなります。
また、2000〜4000Hzは、高い音の聞こえから音声の明瞭度に影響する部分で、できるのであればここも改善できると良いです。ただ、あげすぎるとキツく感じるケースが出てきますので、できる範囲内で改善できると良いですね。
そうなると全体的に聞こえを改善していくことになるのですが、左右の耳とも、聴力ごとに改善できると良い部分にまで改善できると、それだけ聞こえの改善には、貢献しやすくなります。
おまけ:左右の聴力差があるケースでの調整の注意点
念の為、こちらでは左右の聴力が異なる方の場合、両耳に補聴器で聞こえを改善していく場合における注意点を記載していきます。
それは、
- 測定数値は、聞こえる耳側しか出てこない
- 良くできるのであれば左右のバランスを良くする
があります。
上記では、補聴器版聴力検査(音場閾値測定)により、数値化して、どのぐらいまで聞こえを改善できると良いかを記載させていただきましたが、注意点として、両方の耳に補聴器をつけた状態で調べると聞こえの良い側の数値しか出てきません。
聴力的に聞こえの良い側の聞こえですね。ですので、聞こえの良い側で測定したものと聞こえにくい耳側で測定したもの、それぞれ別で測定し出していく必要があります。
特にこのような聞こえの方の場合、聞こえの改善度の底上げに大事になってくるのは、聞こえにくい耳側がどれだけ改善できたかです。
聴力低下が大きければ大きいほど、聞こえにくさやその方向からの音、音声が聞きづらくなりますので、ここの改善度が良くなれば良くなる程、日頃の不自由さや不便さを改善することに繋がります。
ただ、その場合、聞こえにくい耳側は、聞こえにくい耳側で個別で測定し、きちんと改善できているのかを確認することが大事になりますので、その点を意識できると良いです。
そして、もう一つは、できるのであれば左右のバランスは良くできると良い。ということです。
上記では、補聴器の形状の選択の際、同じ補聴器、同じ形状を推奨していますが、これは、左右の聴力が異なる場合、調整の際に左右のバランスがどうしても整えづらくなるからです。
左右別々で調べてみて、同じぐらいまで改善できるようになると、左右のバランスが良くなりやすく、ここは、聴力によっては、難しいところも出てきてしまいますので、表現が難しいのですが、できるのであれば、バランスは整えられると良いです。
それができると自然に使いやすくなります。
お客様の声
生まれつきの感音性難聴の方
- 改善:ITC補聴器
- 機器:耳あな形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善
生まれつきの感音性難聴の方
- 改善:パワー形BTE補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善
突発性難聴、原因不明の難聴の方
- 改善:RIC補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善
この他のお客様の声(総合)
まとめ
こちらでは、左右の聴力が少し異なる方を補聴器で改善する方法についてまとめてみました。
左右の聴力が異なる場合、その違いにより、補い方が異なるのですが、低下している耳側が補聴器で補えるのであれば、補聴器で両方の耳を補い、仮に何らかの理由で難しいのであればばいクロス補聴器というもので補っていけると良いです。
そして、仮に補聴器で改善していく場合、気をつけたいのは、補聴器の形状の部分と補聴器の調整の部分ですね。
形状の部分では、両方とも補える形状、補聴器を使うこと、そして、調整では、聴力ごとにある程度、改善できると良い目標のラインがありますので、両方ともそれを目指せると良いです。
これらの部分を気をつけながら、ご相談先と相談していただければ、聞こえの改善は、しやすくなるかと思います。
どのようなことをしても今現在、補聴器は、耳を治すレベルにまでは行きません。しかし、しっかりと押さえるところを押さえることができれば、それなりに改善できるようになるのも事実です。
ですので、もし改善するのであれば、押さえるところは押さえた上で改善していきましょう。
不自由な部分や不便な部分は少なくできればできるほど、ご自身の生活は良くしやすくなりますので、そのようにし、なるべく良くなるようにしていくことが大事になります。