補聴器の調整について、考えていること
補聴器において、補聴器の調整は、だいぶ大事な部分になります。
低下した聴力のところに対し、音を入れて聞こえを改善してく作業そのものを補聴器の調整と言ったりしますが、その事から、聞こえの改善の8割に該当するぐらい重要な部分です。
私自身、生まれつきの感音性難聴で補聴器を使っていて、さらに補聴器の仕事をしているのですが、そのような身から感じるのは、補聴器とはつくづく共創だなと感じます。
私の場合は、補聴器の世界に入り、ちょっと長いのですが、そのことで感じるのは、いかにお客様とお話しし、共に良い状態を作っていけるか、そこに尽きる。ということです。
補聴器の調整とは
基本的に補聴器の調整とは、低下した聴力のところに音を入れて、聞こえを改善していく作業のことになります。
今現在、聴力ごとにある程度、改善できると良い数値というのは、あらかた出てきており、そこを目指して改善していくのが、一応、補聴器の基本です。
この改善値が良ければ良いだけ、補聴器による効果、聞こえやすさというのは、良くなります。
補聴器をつける方は、聞こえにくさに困っている方々になりますので、なるべく良い状態を目指して、よくしていき、聞こえにくいことによる不自由さ、不便さをなくせると良い、ということになります。
ただ、ここには、いくつか課題があります。
調整における課題
調整における課題は、大きく分けて
- 目標値と実際に改善できる数値は違う
- 補聴器は付けただけでは状況がよくわからない
の2つがあります。
目標値と実際に改善できる数値は違う
いきなり何を言っているのかよくわからないかと思いますが、補聴器側としては、概ねどのぐらい聞こえが改善できると良くなるのか、その点はわかっています。
ですので、ここを目指していくわけですね、まさに聞こえの改善のための目標値ということになります。
ただ、問題は、目標値に関して、誰もが達成できるわけではない、ということです。
ここは言葉で説明するのが難しいのですが、あくまでも聴力ごとに改善できる数値がわかっても、そこまで実際に音を入れるとうるさくて使えない、という方がいたり、少し珍しいですが、実際には少し音が足りず、もう少し音を付け足すケースもあります。
目標と実際は違う。もっというと理論と実践は違う。ということです。皆が理論通りにいけば一番楽なのですが、そうもいかないのが補聴器の難しいところです。
簡単にいうと、ただ大きくすれば良いというわけではない、ということです。
補聴器は付けただけでは状況がよくわからない
これは、私自身がよく感じていることですが、補聴器は耳につけただけだと良くわからない、というものがあります。
難聴の方の特徴の一つは、聞こえにくいことはわかっても、どういった状況なのかはわからない。があります。
例えば、あの人の声が聞きづらい、ということは、体感として感じるかもしれませんが、じゃあ、自分自身が一般の人の聴力と比較して、どのぐらいの聞こえなのか、これは、なかなか自覚できることではありません。
なので、聴力検査とかで、聞こえにくさを数値化するわけですね。検査をする理由は、感覚ではよくわからないからです。
で、こうなってくると問題が一つ起こるのですが、それは、補聴器をつけて聞こえやすくなることはわかるけれども、それは良い状態なのか、そうじゃないのかが良くわからない、ということです。
ですので、補聴器の場合は、主観評価と客観評価というものがあります。主観評価というのは、単純に自分で補聴器を使って感じる感覚ですね。使ってみて、音が大きいと感じるとのか、音が小さいと感じるのか、そういった感覚です。
一方、客観評価は、数値化して、客観的にわかるようにすることです。補聴器の場合だと、実際に補聴器をつけた状態の聞こえの改善値を可視化することにより、初めて、自分の状態がわかるようになるわけですね。
実は、それぞれに欠点があり、この2つは2つあってセットになります。主観評価だと、使った感覚はわかるけれども、どこまで改善できているのか、自分はどこまで改善できると良いのかがわかりません。
一方、客観評価は、聴力的にどこまで改善できるとよく、今現在、どこまで改善できているのか、はわかるけれども、その状態で使ってみて、そもそも使える状態なのか、それはわかりません。
なので、主観評価と客観評価は、2つセットで使います。これは、補聴器に限らず、どのような物事にも共通する要素です。
いかに共創できるようにするか
前提が長くなってしまったのですが、上記のように補聴器の調整には、いくつか気をつける部分があります。
主観と客観を組み合わせて良くしていくのですが、問題は、誰もが目標値までいけるわけではない、ということです。
誰もが目標値まで改善できるのであれば、何も考えずにひたすら改善だけ行えば良いのですが、中には、そこまで大きくすると辛くなってしまう方、キツくなってしまう方がいます。
補聴器の調整において完璧なものはありません。よく聞こえるようにする、ということは、聞こえにくい声も聞きやすくなりますが、同時に周りの騒音や細かな音もよく聞こえるようになります。
これは、よく聞こえる、ということの良い部分と悪い部分がある。ということです。
補聴器の調整の本質は、このようなトレードオフにあります。トレードオフとは、あちらを立てれば、こちらが立たない。というものです。ですので、誰にとっても良い方法、良い状態というのは存在しません。
じゃあ、完璧なものがないとすると、どうすれば良いのか。になるのですが、それが、きちんとお客様とお話しして(補聴器を使っている方であれば、調整者とお話をして)、どのような状態にできると良いかを突き詰めていくこと、完璧なものがない以上、そこが大事になります。
ですので、補聴器は、共創である。共に良い状態を作っていくことが大事、ということですね。
ということで、私自身もより貢献できるよう、いかに共創できるか、を考えていきたいと思います。