補聴器のFAQ

耳の補い方、に関する基本的な考え方

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

こちらでは、耳の補い方に関する基本的な考え方について、記載していきます。

耳の補い方、というと非常に分かりづらい表現で申し訳ないのですが、これは、どの耳に補聴器を使うか、まさに補聴器をつける耳のことを意味します。

この点は、単純に補聴器をどの耳につけるか、というシンプルな内容なのですが、聞こえの改善は、この耳の補い方と補聴器の調整の2つで、ほとんど決まってしまいます。ですので、もし、なるべく聞きにくさをなくしていきたいなら、非常に大事な部分になります。

結論から言いますと、仮に両方の耳が補聴器の適性があるのであれば両耳とも補聴器をつけたほうがよく、仮に片方しか付けられない場合は、効果の高い方に補聴器をつける。それが最善の補い方になります。

補聴器の効果は、耳の状況が9割

初めに、なぜ耳の補い方なんてものがあるのか、というところからスタートしていきたいのですが、それは、表題の通り、補聴器の効果は、耳の状況が9割だからです。

よく高い補聴器を購入すれば良くなる、高いだけ、聞こえの改善ができる。とお考えの方がいるのですが、それは、間違いではないにしても、実際は耳の状況が大きく関わってきます。

補聴器をつける方は、感音性難聴という音が聞こえにくくなるほか、言葉の認識までしづらくなってくる非常に厄介な病状です。この厄介なポイントは、音が聞こえにくくなることのほか、言葉の認識(識別)がしづらくなり、その識別のしづらさは、補聴器では改善が難しいという事です。

感音性難聴の場合、内耳と呼ばれる部分の中にある有毛細胞というものが損傷し、音が聞こえにくくなることのほか、言葉の識別がしづらくなります。で、この内耳の機能の損傷度が高くなると、言葉の識別のしづらさが強くなってきます。

すると、難聴の方の中には、補聴器をつけたとしても音声の認識、理解にまるでつながらない方も出てきます。音は、耳で理解しているわけではなく(耳は音を受け取る場所)、音を理解しているのは、脳です。その脳に音の情報が適切に送れなくなり、言葉がわかりづらくなります。

補聴器のことをご存知の方であれば、明瞭度という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、この明瞭度が残っているかどうかで補聴器の効果は決まります。

明瞭度が残っている場合は、補聴器をつけることで、聞こえの改善、音声の認識はまだしやすいのですが、明瞭度が残っていない方は、補聴器をつけてもまるで音声が理解できるような感覚にはなりません。

ここで大事なのは、耳は単に音を補えば、聞こえるようにすれば無条件で聞きやすくなるわけではないことです。ですので、耳の補い方、なんてものが存在します。

耳の補い方に関する基本

で、これらの前提を踏まえた上でお話しさせていただきますと、耳の補い方に関する基本は、最善の方法で補うこと、すなわち、仮に両方の耳が補聴器の適性があるのであれば、両方の耳に補聴器を装用し、仮に片方しか使えないのであれば、補聴器の適性がある方に使う、になります。

これは、上記の通り、補聴器というのは、耳の状況により聞こえの効果が決まるため、基本的な考え方としては、補聴器の効果が出る耳、出やすい耳につける。が基本になります。

初心者の方がよく行う間違いの一つは、聞こえにくさが強い耳に補聴器をつけることです。聞こえにくさが強いから、その聞こえにくさが強い方を改善できれば、聞こえやすくなる。確かに筋が通った考え方です。

ただ、問題は、聞こえにくさが強い耳は、補聴器をつけることで本当に改善ができるのか?ということです。

上記の通り、補聴器というのは、補聴器の性能の良し悪しではなく、耳の状況が9割です。そして、都合が悪いことに聴力低下が大きい耳というのは、内耳の損傷度が大きいことが多く(というか内耳の損傷度が大きいから大きく聴力が低下している)、実は、その耳側に補聴器をつけても、思ったより聞こえが改善できない、ということも起こります。

そういったことから、耳の補い方、というものが存在します。このように考えるのはまさに補聴器は耳の状況が9割で、中には、補聴器をつけてもまるで効果が見込めない、効果が出ない耳があるからです。

両耳と片耳の違い

さて、仮に両方の耳に補聴器が適合する、と考えた場合、気になるとは、実際に片方の耳と両方の耳で、聞こえ方、あるいは、聞こえの改善状況は違うの?ということがあるかもしれません。

それについては、このようになります。少しみづらいのですが、灰色が健聴の方、つまり一般の方の聞こえですね、そして、両耳補聴器を使っている方が、オレンジ色、片方のみ補聴器を使っている方は、青っぽいグレーになります。

一言でいうと、静かなところでの聞こえの改善度は、そこまであまり変わらないけれども、騒がしいところでの聞こえの改善度は変わります。補聴器でまだまだ改善が難しいところの一つは、騒がしい環境下ですので、ここの底上げをするのに役立ちます。

また、これ以外には、2つあり、一つは、死角がなくなりやすいこと、もう一つは、仮に片側で聞きづらくてももう片側だけでも聞こえていると理解できること、の2つがあります。

片方だけ改善していた場合、改善していない側から話された際に気づくことができないデッドポイントが出てくる。

死角がなくなりやすいこと、については、実は、片方だけ補聴器をつける場合、もう片方は、補聴器をつけて改善していないため、その耳側からの音、呼びかけは、かなり気づきにくいです。

ですので、その方向からくる音、呼びかけが死角になります。家の中やお話をする人が自分のこと、聞こえづらいことを理解できている人であればいいのですが、これが仕事の際やお客さんとの対応などになってくると話が変わります。

というのも呼びかけや話をしても反応がないと人によっては、無視している、無視された、などのあらぬ誤解を与えてしまうことがあり、その人からの印象を悪くしてしまうことがあります。

難聴の困るところの一つは、このような対人関係に影響してしまうことなのですが、死角があると、どうしてもそういったあらぬ誤解を与える機会を与えやすくなってしまうので、これは、なるべくなくせると良いところの一つです。

また、両方の耳につけると良いことの一つは、どちらか片方だけでも聞こえていれば、話を理解することができることです。

これは、片方だけイヤホンをつけ、音楽を聞いたり、何か音を聞くと理解ができるように、人は、両方の耳で音を聞いた時のみ、音や言葉を理解できるのではなく、片方だけでも聞き取れていれば、話の内容がわかる、ということを意味しています。(なので、電話は片方だけでも話を理解できる)

両方の耳につけられると、仮に片方の耳で理解ができなくても、もう片方の耳で理解ができると話の内容を理解することができます。つまり、単純に聞き取りのチャンスが2倍になる、ということです。

そのようにして、なるべく理解ができる量、機会というのを増やしていけると、これもまた聞き取りづさらを減らすことにつながるようになります。

そういったこともあり、全体的に聞きやすくするのが、両方の耳に装用することになります。

補足・なぜ片方だけだと聞きづらくなるの?

ここで、念の為、なぜ片方の耳だけだと聞き取りづらくなるのか、その点に関して、触れておきます。

上記にちらっと記載した通り、片方の耳のみにつけた場合、もう片方の耳は、改善していませんので、その方向からの音や呼びかけ、音声は、死角になります。ですので、その聞きづらいまま側から来た音は、思っている以上に聞こえていなかったりします。

頭があることで音が減衰することを頭部陰影効果と呼びます。

これは、頭があることによって起こることで、私たちは、頭があることで、左から右、あるいは、右から左までに音が移行するまでに、10〜13dBほど減衰するようになります。

すると仮に右側は、補聴器をつけていて、左側は補聴器をつけていない、となった場合、右側に音が移行するときに10〜13dBもの量が減衰するようになります。

頭があることで、片耳側を改善したとしても、もう片方は、あまり改善されない傾向がある。

片方だけでも聞こえやすくなれば、その耳側で全部取れるのではないか、と感じがちですが、実際には、頭があることで、大きく音が減衰するようになりますので、思ったより、聞こえていない側の音を聞こえている耳側では、受け取れていません。

なので、聞こえていない側は、そのまま聞こえていないままで放置されることが多くなります。

これは、片方のみ難聴の方が起こりやすいことで、片方のみ難聴の方は、聞こえる耳側は、正常です。しかし、それでも聞こえていない側からの音や音声が聞こえないことがあります。それは、頭があることで、音が減衰するため、その減衰のため、聞こえる耳側で音を受け取れないことがあるためです。

両方の耳に補聴器をつけられるのであればつけたほうがいいというのは、こういった側面があるためです。

まとめ

こちらでは、耳の補い方、というところについて記載してみました。耳の補い方については、ちょっと難しいのですが、聞こえの改善において、大事な部分になります。この部分と補聴器の調整の2つで、聞こえの改善度が決まるため、押さえておきたいポイントの一つです。

ただ、書いておいて申し訳ないのですが、ここの部分は、ケースバイケースが多く、その方の耳の状況によって補い方が変わります。

ですので、私がお伝えできることは、両耳とも補聴器の適合があるのであれば両方に使い、仮に片方のみ適合があるなら、その耳に使う、ぐらいしかお伝えすることができません。耳の状況が人によって異なる以上、それ以上は、書きようがないためです。

その点は、申し訳ないのですが、少しでも耳の補い方、というところで、お話が伝わったのであれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年7月1日生まれ。生まれつき難聴で小学2年生の頃から補聴器を使っています。このお店では、完全予約制にして、ご対応することで、お客様のご要望や現状をお伺いできる環境を作り、お客様が求めているものを提供できるよう、お店作りをしています。
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