突発性難聴の事例

【聞きにくい側の音声が理解しやすく】突発性難聴、片耳中等度難聴の方をクロス補聴器にて改善しました

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

30代、男性、右耳は健聴で、左耳が突発性難聴により聴力低下した方をクロス補聴器にて改善を行いました。こちらの方は、約半年前ほどに突発性難聴になり、左耳の聴力が低下。治療をした結果、いくらか改善したものの治ることはなく、聞きにくくなったことにより、いくつか生活に支障を感じていました。それらの部分で改善できないか。との相談を受けました。

当店で聞こえの改善を行なった結果

  • 会議では聞きやすくなった
  • 聞こえない側からの音や呼びかけがわかりやすくなった
  • 騒がしいところは聞きやすくなったところもある

とのことでした。

今現在は、仕事場で使用したり、日常生活上でも使用されています。今まで感じていた聞きにくさに関して改善でき、何よりです。

では、どのようにして改善したのでしょうか。こちらの方の状況から改善まで、記載していきます。

お客様の状況

まず、お客様の状況ですが

  • 名前:D・Oさん
  • 年齢:30代
  • 性別:男性
  • 聴力:左耳のみ中等度難聴
  • 症状:突発性難聴
  • 備考:突発性難聴により聴力低下

となります。聴力に関しては、

このようになります。D・Oさんの行きつけの耳鼻科より、聴力データを拝見いただき、上記のような状況でした。失聴(全てが90dB以下)というレベルではありませんが、平均50dBとなると、日常生活上では、離れたところからの音が聞きにくくなる状態で、かつ、聞こえない左耳側で話されても半分会話が理解できないレベルが平均50dBの聴力です。

耳の状況に関してですが、H28年8月に突発性難聴になり、聞こえにくくなった後、すぐに耳鼻科にかかったようですが、少し改善したものの、上記の状態となったようです。しかし現状、聞きにくさを感じており、その状況をなんとか改善できないか。そのため、ご相談いただきました。

D・Oさんからのお話で、改善したいところは、

  • 騒がしいところでの会話
  • 会議の際の聞きにくさ

の2点でした。状況として、ざわついたところや雑踏の中などでは、聞こえる耳側を相手側に向けないとまず聞こえないことが多く、それらの負担を軽減したい、また、仕事上、少し騒がしいところでお話することも多くそれらの部分で改善できるならしたい。とのことでした。

会議の際の聞きにくさは、聞こえない側にいる人の会話は聞きにくく、聞き漏らしたり、言っていた内容を理解できていないこともあるため、なるべくそのようなものも改善したいとのことでした。

これらの部分を補聴器で改善させていくこととなります。

改善へのプロセス

さて、改善へのプロセスですが、まず、このようなケースの場合、補聴器で改善した方が良いのか、それともクロス補聴器で改善した方が良いのかを見極めることとなります。

片耳のみ難聴の場合、基本的に

  • 補聴器で補えれば補聴器で補う
  • 補聴器で効果が薄いのであればクロス補聴器で補う

というように補っていきます。

聴力が平均100dB以下という非常に重い難聴の場合、補聴器を装用しても効果が薄くなってしまうため、クロス補聴器という聞こえない耳側にくる音を聞こえる耳側へ常時転送する機器で補った方が確実に良いのですが、そうではなく中等度難聴くらいの聴力の場合は、補聴器を装用し、聞こえる耳側をそのまま聞こえさせてしまった方が効果が高くなる傾向があります。

では、中等度難聴までの方は、無条件に補聴器が良いかと言われますとそうでもありません。耳には、音が聞こえることと音声が理解できることは別で考えます。聴力レベルがよければ必ずしも音声の聞きやすさに結びつかないためです。※基本的に聴力レベルが軽いと軽いほど音声の理解度は、高い傾向はありますが、必ずしも一致する訳ではありません。

そのため、まず音を大きく入れた際にどれだけ音声が理解できるのか。それを調べる語音明瞭度測定というものがあるのですが、そちらにて測定してみました。その結果

聴力からすると音量が大きいが、音量を確認しながらやった結果、このような結果に。
聴力からすると調べる音量が大きいが、ちょうど良い音量を確認しながらやった結果、このような結果に。

という結果になりました。実際に測定後、感想を伺いますと、何か言っているのはわかるが、はっきりする様子がない。かなりわかりづらいとのことでした。

こちらの数値の見方は、

となります。補聴器を装用し、聞こえない耳側を直接聞こえるようにするやり方(補聴器で補うやり方)は、60%は欲しく、欲を言えば70〜80%は、欲しい状態です。こちらの方は、大きく音声を聞かせたとしても35%しか得られなかったため、クロス補聴器で補っていくこととしました。

実際の対応

実際の対応に関してですが、

  • 初回の対応
  • 補聴器での改善
  • クロス補聴器の選定

の3つに分けて記載していきます。

初回の対応

上記に記載した内容をそのままご説明し、クロス補聴器で補っていく旨、お伝えしました。ちょうどクロス補聴器に関してお問い合わせいただいたため、そのままクロス補聴器に関するご説明、試聴、貸出を行うこととなりました。

お店で試聴する限りですが、静かなところではあまり変わった様子は、ないのですが、聞こえる耳側を少し塞いだり、電話を聞こえない耳側ですると、よく聞こえることから、効果そのものに関しては、ある程度、体感できたようでした。

そのため、実際に日常生活上や仕事場で使用いただくため、貸出を行いました。

幾日か実際に使っていただいたところ

  • 会議では聞きやすく
  • 騒がしい環境下でもいくつかは改善された

とのことでした。実際に聞きやすくなったところですが、騒がしい環境下は、聞こえるようになったところもあれば、聞きにくいままであるところもあるとのことでした。少し騒がしいところ(ファミリーレストランや会社の中、人が少し多いところ)では、聞きやすくなり、かなりガヤガヤしている居酒屋さんクラスは、聞こえたり聞こえなかったりで、50%ほど理解できる感覚であるということでした。

実際に使用していただき、ある方が便利でかつ仕事やプライベートで役に立つことから、補聴器を考えていくこととなります。

補聴器での改善結果

クロス補聴器を試聴した後、D・Oさんの方から「クロス補聴器と実際に聞こえない耳に補聴器をつけた場合の聞こえの差は、どのくらいなのか」や「聞こえない耳側に補聴器を使用してどのくらい聞こえるのか」と気にされていたため、実際にこちらも行なってみることにしました。

初めの段階になりますので、上記の耳にかける補聴器になるのですが、耳に合わせ調整し、

このような聞こえにしました。

聞きにくい側を補う場合、補聴器により改善させていくわけですが、こちらに関しては、聴力によって聞こえを改善できるレベルが異なります。軽度〜中等度難聴くらいですと、30〜40dBくらい目指せる状態です。

D・Oさんの場合、数値上、このくらいは目指せる状態です。一部の高域(3000Hz〜4000Hz)が目標まで達成できていない状態ですが、装用状況により、そのまま貸出を行い、日常生活において使っていただくこととなりました。

その結果、

  • 聞こえに関しては、全体的に40〜50%の理解
  • 騒がしい環境下では、ほぼわからず

とのことで、聞こえに関しては、クロスの方が良いの結果でした。全体的に理解度が30〜50%で音は、聞こえやすくなっているものの、音声の理解のしやすさは、クロスの方が上だったようです。測定した限りの最良の明瞭度が35%であれば、確かにそうなのかもしれません。

クロス補聴器の選定

上記の結果より、クロス補聴器の選定をしていくこととなります。クロス補聴器の全体像としては、

このようになります。聞こえの効果を一番に望まれたため、中央の

こちらに選定しました。こちらに関しては

厳密には、上記のように2つあるのですが、電池の保ち<形状の小ささを選ばれたため、小さいタイプにしました。

お客様の声

ご購入になった後に改めて

  • 実際に補聴器をお使いになって見ていかがですか?素直なご感想をお聞かせください
  • 他にも似たような販売店があったにも関わらず、なに(どの部分)が決め手となって当店でご購入いただけたのでしょうか?

とお伺いしてみました。

実際に補聴器をお使いになって見ていかがですか?素直なご感想をお聞かせください

初めに言えるのは、聞こえにくさをいくつか改善でき、本当に何よりです。今現在の改善に関しましては、治療ができないものは、補聴器で改善していくしかないのですが、それですら改善できないとなると、打つ手がありません。耳の状態を調べ、D・Oさんの状況から、クロス補聴器で状況の改善を試みましたが、現状より、よりよくなり、本当に何よりです。

他にも似たような販売店があったにも関わらず、なに(どの部分)が決め手となって当店でご購入いただけたのでしょうか?

大変恐縮ではありますが、評価いただき、ありがとうございます。実際のところに関しては、聴力だけで見ますと聞こえない耳側に補聴器をつけた方が効果が高い印象を受けましたが、明瞭度が低いため、クロス補聴器を勧めました。

しかし、では、必ずそちらの方が効果が高いのかと言われると、その可能性が高いという程度しかありませんでしたので、実際に聞こえない耳側に補聴器を試して、どちらが良いのか。いくつか不明な部分もあり、信憑性としては、70%くらいではありますが、それらの部分を説明しつつ、試した感覚も含めて判断し、最終的にクロス補聴器にしてよかったと思っています。

私の目的は、聞こえを改善させることであり、改善度が高いものを提供する。ただそれだけにすぎません。その部分に関して、貢献できたのであれば、何よりです。

なお、実際にご記入いただいた用紙に関しては、以下のようになります。

まとめ

以上、D・Oさんの症例でした。突発性難聴により、左側が聞きにくくなったケースになります。聴力だけを見ますと、聞こえない耳側に補聴器を装用して改善した方が効果が高くなりやすいように見えますが、音声を理解する力が低下していること、測定後の感想を伺うとはっきりしない、あまりよくわからないとの言葉により、クロス補聴器にて改善を行いました。

正直なところを言いますとデータに関しては、少し不明確な部分もあります。例えば、聴力データとこちらで補聴器を装用して測定した音場域値測定の結果では、中音域は、良いのですが、低音域に関して、大きな異なりがあります。そのため、実際に測定した後、ちゃんと補聴器側から聞こえているのか、その確認を行なったり、実際に使用し、聞こえている感覚なども伺ったのですが、どうも聞こえているようですので、こちらに記載させていただきました。

突発性難聴に限らず、片耳のみ聞こえない方の改善方法としては、

  • 聞こえない耳を直接補う(補聴器を使う)
  • 聞こえる耳で聞こえない耳側の音を補(クロス補聴器)

の2つしかありません。今回は、耳の状況や実際に試聴し、結果を見ながらクロス補聴器にて改善を行いました。

今まで聞きにくい状態で常に過ごされていたようで、こちらとしては、現状、感じているいくつかの不自由なところが改善でき、本当に何よりでした。今現在は、お仕事の際やプライベートでも使用されています。この度は、こちらこそ、ありがとうござました。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器の販売員としての知識、技術に加え、一人の難聴者が自分自身の聞こえを改善した知識、技術も組み合わせながら、聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
記事URLをコピーしました