片耳がほとんど聞こえない聴力を補聴器で改善する

深井 順一|パートナーズ補聴器

こちらでは、片耳がほとんど聞こえない聴力を補聴器で改善する方法について、簡単にまとめていきます。

このような聞こえの方の特徴は、片耳がほとんど聞こえないために、その方向からの音、音声に気づきにくくなることです。片方だけ、聞こえているので、わりかし聞こえるか?というと、聞きやすい時もあれば、聞きにくい時も出てきてしまいます。

さらに補聴器で改善しようとしてもその耳側は、ほとんど効果が出ないことが多数あります。補聴器は、あまりにも聴力低下が大きすぎたり、全く音を聞いていない耳だと、補聴器をつけても聞こえやすくなった感覚を感じにくくなります。

その事から、今現在は、このような聞こえの方のために、クロス補聴器と呼ばれるものが作られるようになり、こういったもので聞こえを改善することができるようになってきています。

片耳がほとんど聞こえない聴力のレベル

今回、対象になるのは、主にこのような聴力になります。

片方は、問題なく聞こえており、片方は、ほとんど何も聞こえない状態になります。わかりづらい方に補足しますと、0〜10dBが一般の人が聞こえている範囲、0〜25dBが正常の方の聞こえの範囲です。

聞こえている耳側は、一般の人が聞こえている感覚に入っているのですが、もう片方は、だいぶ下がり切ってしまっています。このようになると、下がってしまっている側からは、音を感じることができず、全ての音を聞こえる耳側で聞くことになります。

このようなケースに関しては、だいたいこんな感じのことが起こるようになります。

静かな中での会話、環境であれば問題なく聞こえたりするのですが、少し騒がしくなってきたり、複数の人がいるような会議、会話だと、聞きにくい側にいる人の話を聞くのが難しくなってきます。

また、音の方向感覚も掴めなくなってきてしまいますので、大きい音がした際にご自身だけ違う方向を向いたりなども起こります。全ての音が聞こえる耳側からしか聞こえないので、そう錯覚(厳密には錯聴と言います)してしまうのですが、こういったことが起こります。

ということで、このような状況をなるべく良くしていきます。

聞こえを改善する全体像

こちらでは、このような聞こえの方を改善する全体像について載せていきます。このような聞こえの方は、特殊な状況ではあるのですが、補聴器で聞こえを改善する考え方は、そこまで変わるわけではありません。

このような聞こえの方の場合、押さえておくと良いのは、

  • 耳の補い方
  • 補聴器の形状
  • 補聴器の性能
  • 改善を上げる(安定させる)ために

の4つになります。

のち、補聴器の性能は、金額が大きく関わる部分になり、選べる、選べないが出てきてしまいますので、それ以外の3つの部分をまとめていきます。

事前にお伝えさせていただきますと、聞こえの改善における影響度は、

  1. 耳の補い方:
  2. 改善を上げる:
  3. 補聴器の性能:
  4. 補聴器の形状:※形状による選択肢はなし

になります。ですので、聞こえの改善を本当の意味できちんと考えたい場合は、上2つのところは、押さえておきましょう。

耳の補い方

耳の補い方とは、どの耳に補聴器をつけるのか、右側、左側、両方、はたまた特殊な耳の状況なので、特殊な補聴器を使うか、という耳を補う際の全体の部分です。

結論からお伝えしますと、このような聞こえの方の場合、クロス補聴器というものだと改善しやすくなります。

クロス補聴器とは、聞こえる耳側に補聴器をつけ、聞こえない耳側にクロスという音の転送機器を載せて、聞こえない耳側に来た音を聞こえる耳側に転送して聞こえを改善する機器です。

このようにすることで、聞こえない耳側に来る音を聞こえる耳側へ転送して聞こえを改善するのが、クロス補聴器になります。

補聴器をつける耳側の耳せんに加工があり、耳を塞がないようにすることで、片側からの音が入りつつも、聞こえる耳側からの音は塞がないため、そのまま聞くことができます。

このようにして聞く、なんとも不思議な補聴器がクロス補聴器になります。

まず、なぜこのような補聴器が出てきたのか、が大事なのですが、今現在、あまりにも聴力が低下すると補聴器による聞こえの改善度は下がります。

実は補聴器というのは、どのような聴力でも一律で改善できるというものではありません。実際には、聴力低下が少なければ改善度は高くなりやすく、聴力低下が大きい、耳の内耳と呼ばれる音を感じ取る神経の部分の損傷度が大きくなれば聞こえの改善に貢献できるレベルは下がります。

ですので、耳によっては、補聴器をつけてもほとんど聞こえやすくなった感覚を感じない耳があります。その典型的なケースが、このような聞こえの方になります。

その事から、聞こえなくなった耳側に補聴器をつけても改善できないのであれば、聞こえる耳側に音を転送して聞こえを改善すればいいのではないか。ということで生まれてきたのがこの補聴器です。

そして、今現在、スマートフォンなどの普及により、BluetoothやWifiなどの通信機器が発達してきました。そういった時代背景から、補聴器も通信技術を使って、クロスと呼ばれる通信機器を作ることができるようになり、より改善度が上がるようになりました。

元々、クロス補聴器は(こういったのをクロス補聴システムと言います)、20〜30年前からありました。が、ここ最近の技術の発達により、クロス補聴器自体も良くなってきている状態です。

補足:クロス補聴器の効果

クロス補聴器の効果については、以下のとおりです。

主に聞こえない耳側からの音を受け取れるようになる。というのがこの補聴器の特徴です。

ですので、今まで感じていた部分の改善に繋がるのですが、一部、全く改善されない部分があります。それは、音の方向感覚がわからないというものです。

音の方向感覚は、両方の耳が聞こえないと掴むことができず、クロス補聴器による聞こえは、基本、聞こえる耳側で全ての音を聞く補聴器になります。

ですので、音の方向感覚のみ掴むことができません。ここだけ、ご注意ください。

補聴器の形状

補聴器には、本来、いくつか形状、補聴器の形があるのですが、クロス補聴器の場合は、耳かけ形補聴器しかありません。

一般的な補聴器には、これらのものがあります。ただ、クロス補聴器は、クロス仕様にできる補聴器のみしか使うことができません。ご注意ください。

上記にチラッと記載しているのですが、クロス補聴器で改善する場合、聞こえる耳側には補聴器を使い、聞こえない耳側には、音を転送するクロスと呼ばれる機器を使います。

この際、聞こえる耳側の補聴器は、耳を塞がないようにします。耳を塞いてしまうと、聞こえる耳側からの音が聞きづらくなってしまうからです。

聞こえる耳側を塞ぐと聞こえている耳側の音が聞きづらくなるため、このような穴が空いた耳せんを使います。

昔は耳かけ形補聴器以外にも耳あな形補聴器仕様のクロス補聴器というものがありました。耳あな形補聴器は、耳の形をとって、耳にピッタリ合う形に作る補聴器です。

昔のクロス仕様の耳あな形補聴器。このように耳をかなり塞ぐような形状になります。

が、こちらを見てお気づきの方もいるかもしれませんが、このように耳を塞ぐため、聞こえる耳側がより聞きにくくなるという欠点が出ました。

その事から、今現在は、耳あな形補聴器はなく、こういった聞こえの改善、全体的な改善の設計ができる耳かけ形補聴器のみ、残っている状態になります。

ですので、基本的にクロス補聴器を使う場合は、耳かけ形補聴器で改善していくことになります。

改善度を上げるために

ここからは、できると良いこと、ということで、改善度を少しでも上げる方法について、簡単に載せていきます。

まず、クロス補聴器で大事になるのは、きちんと装用できる状態にすることです。補聴器をつけている耳せん、さらには、音が出る部品があるのですが、そのような部分から安定して音が伝わるようにしていく必要があります。

クロス補聴器で使われる補聴器は、この先端から音が出ています。ですので、ここの部分はしっかりと耳の中に入れ、聞こえやすくできるようにすると良いです。

特に音が出る部品の部分が耳の中にきちんと収まっていないと、音が伝わりづらくなりますので、そのままの場合できちんと使える方の場合は、それでよく、耳から抜けてくるなどがあれば、きちんと対策しましょう。

耳から抜けてくる場合、単純に抜けてくるという問題だけではなく、音が伝わる音量が小さくなりますので、聞きにくくなります。補聴器で大切なのは、単に買えば良いということではなく、きちんと聞こえの改善がされる状態に設計することです。

ここが大事なことですね。

お客様の声

実際に片方のみ、ほとんど聞こえない聴力の方の改善を行なったケースがありますので、ご紹介いたします。参考程度にどうぞ。

原因不明の感音性難聴の方

  • 改善:クロス補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:右側は補聴器では補えないため、クロス補聴器にて改善

突発性難聴により失聴の方

  • 改善:クロス補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:右側は明瞭度が低く、効果が薄いため、クロス補聴器にて改善

生まれつきの感音性難聴の方

  • 改善:クロス補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:左側は補聴器では補えないため、クロス補聴器にて改善

生まれつきの感音性難聴の方

  • 改善:バイクロス補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:元々、片方のみ補聴器を装用

クロス補聴器の亜種版として、バイクロス補聴器というものがあります。こちらは、片方の耳の聴力が少し低下し、もう片方はほとんど聞こえない方に使われるものです。詳しい内容は、左右の聴力差が大きい難聴を補聴器で改善するへどうぞ。

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まとめ

こちらでは、片耳がほとんど聞こえない聴力を補聴器で改善する方法について、簡単にまとめてみました。

このような聞こえの方の場合、大事になるのは、まず耳の補い方を間違えないことです。片方の耳に補聴器をつけて聞こえが改善されるのであれば、それで良いのですが、聴力低下が大きすぎる場合は、それではほとんど効果が出なかったりします。

そのような場合は、クロス補聴器で改善していけると良いです。クロス補聴器は、上記の通り、音を転送して聞こえを改善するため、その耳の状況の有無に関わらず、改善することができます。

一応、考え方としては、片方の耳に補聴器をつけて改善できるケースは、補聴器をつけて改善するとよく、それでは改善が難しい、改善度が低くなるケースは、クロス補聴器と分かれます。何でもかんでもクロス補聴器というわけではありませんので、その点に注意が必要です。

今現在は、こういった危機も出てきましたので、耳の状況に応じて、ご自身の状況が最も良くなる方法で改善していくこと。それが大事ですね。

私自身も生まれつきの難聴者ですので、こちらの内容が何か参考になったのであれば幸いです。

なお、お店の方でもこのような聞こえの方のご相談、クロス補聴器に関するご相談については承っておりますので、ご希望の方は、お気軽にご相談ください。

よろしくお願い致します。

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